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倉島 俊
第7回高崎量子応用研究シンポジウム要旨集, p.35 - 36, 2012/10
サイクロトロンではイオンの加速に数十MHzの高周波(RF)電圧を用いるため、加速後のビームの時間構造は同じ周波数の連続パルスである。放射線化学におけるパルスラジオリシスの実験や、(p,n)反応により発生する中性子の飛行時間計測実験などでは、繰り返し周期の長い(マイクロ秒以上、シングルパルス)イオンビームが求められる。ビームパルス数を大幅に間引くために建設当初から備わっている2台のチョッパーを併用してシングルパルスビームを形成するため、サイクロトロン磁場高安定化やビーム加速位相・位相幅の高精度制御などの技術を開発した。これらの技術開発の結果、プロトンから重イオンビームまでさまざまなイオンビームについてシングルパルスビームをユーザへ定常的に提供することが可能となった。
宇野 定則; 千葉 敦也; 山田 圭介; 横山 彰人; 齋藤 勇一; 石井 保行; 佐藤 隆博; 大久保 猛; 奈良 孝幸; 北野 敏彦*; et al.
第7回高崎量子応用研究シンポジウム要旨集, P. 119, 2012/10
TIARAの3台の静電加速器では、2011年3月11日に発生した東北大地震による損傷はなかった。しかし、その後の計画停電の影響と管理区域入域制限措置により4月下旬までは運転することができなかった。この間に損失したマシンタイムを補うために12日間の土曜日(休日)運転を追加したことで、当初に予定した年間運転計画を達成した。タンデム加速器では、タンクベースフランジからSFガスのリークが見つかったため、新規に角型断面のバイトン製ガスケットを設計し漏洩を防止した。
中山 卓也; 川戸 喜実; 目黒 義弘
no journal, ,
原子力機構で発生した可燃物,難燃物の放射性廃棄物は焼却処理し、セメント固化体として廃棄体化することが検討されている。セメント固化体は水の放射線分解により水素ガスが発生するおそれがあるため、廃棄体の健全性を評価するため水素生成のG値の算出を試みた。Coを線源とする
線照射を1時間行ったところ、焼却灰セメント固化体の吸収線量は2.7kGyであり、30から50
Lの水素ガスが発生した。吸収線量,固化体重量及び水素ガス発生量から求めた焼却灰セメント固化体のG値は、1.22
0.18molecule/100eVであった。
上松 敬; 春山 保幸; 花屋 博秋; 山縣 諒平; 清藤 一; 長尾 悠人; 金子 広久; 山口 敏行*; 八木 紀彦*; 高木 雅英*; et al.
no journal, ,
電子加速器及び線照射施設はほぼ年間計画通り照射運転を実施した。電子加速器の運転時間は1059.3時間であり、平成22年度と同程度であった。
線照射施設の運転時間は、第1棟が18,722時間、第2棟が9,976時間、食品棟が7,427時間であり、平成22年度と比較して、第1棟では10%減少し、第2棟は同程度、食品棟は5%増加した。電子加速器は、加速器タンク内の電子流制御回路の故障とSF
ガスへの空気混入の2つのトラブルが重なった。空気混入の原因となったSF
ガス回収装置の修理を行い、SF
ガス精製装置による精製と、電子流制御用光リンク回路の修理を行った。
線照射施設は、7月にコバルト第2棟の水抜き点検を実施した。
Co線源は、毎年、減衰分補充のための新規購入及び長期間使用し減衰した線源の処分を実施している。今年度は、コバルト第2棟に6本を配置し、22本の古い線源を処分した。電子加速器及び
線照射施設の年間利用件数はともに近年減少傾向である。福島関連の利用は、電子加速器で15回、
線照射施設で61回の利用があった。施設供用の利用形態別実施状況は平成22年度と比較して全体的に増加傾向であった。
前田 佳均; 西村 健太郎*; 永澤 良之*; 鳴海 一雅; 境 誠司
no journal, ,
Ge(111)基板上に成長させたHeusler合金FeMnSi(以下、FMS)について、FMS/Geヘテロ界面を拡散対とみなし、ラザフォード後方散乱(RBS)/チャネリング法によってアニール後の元素の濃度分布から構成元素の相互拡散について調べ、Mn濃度の変化による界面の相互拡散と結晶性の劣化を検討した。アニール温度300
Cまでは後方イオン散乱の最小収量
に大きな増加は見られず、また界面付近での元素の相互拡散が観察されなかった。しかし、400
Cでは急激な
の増加が見られ、これは界面でのFe、Mn原子と基板のGe原子との相互拡散によって誘発された結晶の乱れによることが明らかになった。また、この温度での
の増加(界面結晶性の乱れ)はMn濃度が大きいほど顕著になるという興味深い事実を見いだした。熱的に非常に安定で相互拡散が起こりにくい化学量論組成Fe
Si/Geへテロ界面での結果、及び非化学量論組成Fe
Si/Ge界面での結果と比較すると、後者と同じ挙動を示す。これらのことから、規則格子におけるBサイトのMn原子の占有率が増加すると格子拡散が促進され、同時に界面でのGeとの相互拡散が起こり、結晶性の劣化が著しくなる。さらにMn濃度の増加は、こうした原子空孔の増加を招きやすく、そのために高温でのFe及びMn原子の格子拡散が促進され界面での顕著なGeとの相互拡散につながると考えられる。
西村 健太郎*; 永澤 良之*; 前田 佳均*; 鳴海 一雅
no journal, ,
60keV Cイオン注入により、Si中に埋め込まれた
-FeSi
ナノ結晶に炭素ドープし、その発光挙動への影響を調べた。フォトルミネッセンス(PL)スペクトルのA及びCバンドは、C
ドーズ量によっていずれも独立に強度が変化し、特に前者(Aバンド)では1
10
C
/cm
で無添加試料の2.6倍に及ぶ顕著な増強が観測された。そこで、C
ドーズ量に対する励起子束縛エネルギーの変化をPLピークシフト(レッドシフトと発光強度の温度依存性)から調べたところ、発光に顕著な増大が見られたドーズ量1
10
C
/cm
では束縛エネルギーに1.8meVの増加が起こっていることがわかり、炭素添加によって明確に励起子の束縛エネルギーが増加することが明らかになった。以上のことから、1
10
C
/cm
の注入条件ではナノ結晶内部に炭素が効率よく添加され、シリコンを炭素で置換することで炭素原子による電子トラップを介して励起子が束縛された状態(束縛励起子:C
:X)が実現していると思われる。
服部 篤人*; 金崎 真聡; 榊 泰直; 福田 祐仁; 余語 覚文; 神野 智史; 堀 利彦; 近藤 公伯; 倉島 俊; 神谷 富裕; et al.
no journal, ,
CR-39は電子線やX線など低LET放射線との混在場において高精度なイオンビーム診断が可能である。レーザー駆動イオン加速実験は典型的な混在場であり、CR-39を用いて、より高精度なイオン計測を行うためには、真空保持時間など実験環境を考慮した応答特性を評価することが求められている。本研究では、イオン照射時及び照射前後にCR-39試料を真空環境下に保持することで検出感度が低下する真空効果と呼ばれる特性について定量的な評価を行った。これまでに行われてきた真空効果に関する研究では、プロトンやヘリウムなど比較的原子番号の小さなイオン種に対してのみ報告されてきた。本研究では炭素イオンを真空下で照射し、詳細な解析を行ったところ、重イオンに対しても真空効果があらわれることを初めて確認した。
河裾 厚男; 前川 雅樹; 深谷 有喜; Zhang, H.
no journal, ,
近年、電子のスピンを利用した新たなデバイスの創出を目指すスピントロニクスという学問分野が誕生した。新しいスピン現象を探索するためには、既存の手法にはない特徴を持った手法が必要である。スピン偏極陽電子ビームは、スピントロニクス研究の有望なプローブの一つとして期待される。スピン偏極陽電子を用いて得られる消滅線のエネルギースペクトルは、電子スピンの反転に対して非対称性を示す。この性質を利用すると、スピン分裂したバンド構造や、原子空孔に付随する電子スピンに関する知見を得ることができる。また、物質最表面では、伝導電子と陽電子の準安定結合状態であるポジトロニウムが形成される。ポジトロニウムの消滅特性は、電子のスピン偏極率に依存する。この性質を利用すると、表面伝導電子のスピン偏極率を決定することができる。放射性同位元素から放出される陽電子は進行方向にスピン偏極しており、その偏極率は放出速度に比例する。われわれは、従来の
Na線源に加えて、新たに
Ge線源を製造することでスピン偏極陽電子ビームを開発し、スピン偏極陽電子消滅の基礎を構築するとともに、スピントロニクス材料の研究を推進している。
深谷 有喜; 松田 巌*; 前川 雅樹; 望月 出海; 和田 健*; 兵頭 俊夫*; 河裾 厚男
no journal, ,
Ag(111)表面上に1/3原子層のBi又はPb原子が吸着した構造は、ラシュバ効果により200meVの巨大なスピン分裂幅を持つため、最近注目を集めている表面合金である。最表面の重元素の高さとスピン分裂幅との関連が理論的に示唆されているが、最表面重元素の原子位置が不明であるため、この関連は明らかでない。本研究では、反射高速陽電子回折(RHEPD)を用いて、さまざまな膜厚を持つPb/Ag(111)薄膜表面からのRHEPD強度のロッキング曲線を測定し、動力学的回折理論に基づく強度解析から、Pb原子の表面垂直位置のAg膜厚依存性について調べた。測定したロッキング曲線の膜厚依存性は小さいが、Ag薄膜の膜厚の増加に伴い、視射角2.0
-4.5
の強度が、徐々に減少する。動力学的回折理論に基づく強度解析から、Pb原子の高さがAg薄膜の膜厚の増加とともに表面垂直方向に緩和することがわかった。角度分解光電子分光による表面電子バンド構造の測定結果においても、スピン分裂した表面バンドがAg薄膜の膜厚に依存して変化することが観測された。これらの結果は、最表面重元素の高さとスピン分裂幅に相関があることを示しており、Ag薄膜の量子井戸状態と表面状態との混成に起因していると考えられる。
植木 悠二
no journal, ,
動植物性油脂(トリグリセリド)と低級アルコールとのエステル交換反応により製造されるバイオディーゼル燃料(BDF)は、バイオマス由来、毒性が低い、再生可能なエネルギーである等の優れた特長を有しており、軽油代替燃料として注目を集めている。近年、多孔性陰イオン交換樹脂を触媒として利用するBDF製造方法が開発されたものの、この製法では樹脂細孔内への油脂及びアルコールの拡散過程が反応律速となり、反応速度が遅いといった問題がある。本研究では、上記問題の解決を目指して、放射線グラフト重合技術を利用した新規BDF製造用触媒の開発を試みた。その結果、エマルショングラフト重合とそれに続く化学処理(グラフト鎖への第4級アミン基の導入、及び、NaOH処理)により、目的とする新規BDF製造用触媒を作製することに成功した。グラフト重合体のエステル交換反応速度は粒子状樹脂の2倍以上となった。反応時間1時間後におけるトリグリセリド(油脂)の反応率はグラフト重合体では52%、粒子状樹脂では25%となり、また、トリグリセリドの反応率が90%以上に達する時間は、グラフト重合体では3時間程度、粒子状樹脂では18時間程度となった。また、本研究で作製したグラフト重合体は、トリオレインのようなモデル試料だけではなく、天然油脂類を出発原料とするBDF製造にも適応可能であり、天然油脂であっても4時間程度で反応率90%以上に達することが確認できた。
池田 裕子; 横田 裕一郎; 舟山 知夫; 武藤 泰子; 金井 達明*; 小林 泰彦
no journal, ,
本研究では、異細胞種間バイスタンダー効果の誘導を検証し、同細胞種間の場合と比較することで特有な現象をとらえ、重粒子線誘発バイスタンダー効果が治療に与える影響を明らかにすることを目的とした。実験では、正常細胞としてヒト胎児肺由来正常線維芽細胞株WI-38を、がん細胞としてヒト肺がん細胞株H1299/wtを用いた。炭素線照射(WI-38:0.13Gy, H1299/wt
:0.5Gy)した細胞と、非照射の細胞を6時間又は24時間共培養した後、非照射細胞でコロニー形成を行い生存率を算出した。炭素線照射したWI-38と非照射WI-38を同細胞種間共培養した場合には、非照射細胞における相対的な生存率を経時的にみると、照射6時間及び24時間の共培養で約10
15%低下することがわかった。一方で、炭素線照射したH1299/wt
と非照射のWI-38を異細胞種間共培養したときには、非照射WI-38の相対的な生存率が照射から24時間共培養することで約10%増加することを見いだした。重粒子線によって誘発されたバイスタンダー効果は、照射細胞の種類が異なるとその応答が大きく変化するという知見が得られ、重粒子線がん治療に影響を与える可能性の一端をとらえたと考えている。
花岡 宏史*; 渡邉 茂樹; 富永 英之*; 大島 康宏; 渡辺 智; 山田 圭一*; 荒野 泰*; 石岡 典子; 遠藤 啓吾*
no journal, ,
近年、がんに対する特異性が高いPET薬剤として、Cや
Fで標識したアミノ酸誘導体が開発され、臨床応用されるようになってきた。しかしながら
Cや
Fは半減期が非常に短いため、それぞれの病院で製造・合成する必要があり、限られた施設でしか使えないのが現状である。一方、
Brは、半減期が16.1時間とポジトロン放出核種としては比較的長く、またハロゲン核種であるため母体化合物との結合にキレート剤等が必要ないことから、アミノ酸のような低分子化合物に対しても応用可能である。そこで本研究では、広く臨床使用することが可能な、新規がん診断用PETイメージング薬剤として
Br標識アミノ酸誘導体の開発を計画した。基礎検討には半減期が長い放射性臭素である
Br(半減期57時間)を用いて行うこととした。Br標識アミノ酸としては、
メチルフェニルアラニン(
-Me-Phe)のパラ位にBrを導入したBr-
-Me-Pheを設計した。
Br-
-Me-Pheは標識率25-40%で合成することができた。
Br-
-Me-Pheを担癌マウスに投与したところ、腫瘍への高い集積性を示し、投与3時間後の腫瘍対血液比は3.94、腫瘍対筋肉比は3.95であった。
Br-
-Me-Pheを担癌マウスに投与し、6時間後にPET撮像を行ったところ、腫瘍を明瞭に描出することができた。以上の結果から、
Br-
-Me-Pheの新規がんイメージング薬剤としての有用性が示唆された。
宮下 敦巳; 吉川 正人
no journal, ,
禁制帯幅、絶縁破壊電解ともに大きなSiCを用いた半導体デバイスは高温・高電圧でも使えることが理論的に期待されているが、現状のSiC MOS-FETはゲート酸化膜とSiC結晶との界面に存在する欠陥のため期待される性能を出せていない。実験的に界面欠陥の構造を決定するのは困難なため、原子構造モデルを計算機上に生成して界面欠陥の構造を決定し、欠陥準位を導出することを目指している。近年、4H-SiC(11-20)面を基板とするMOS-FETで非常に良いチャネル移動度が得られると報告されたことから、計算機上で当該面上にアモルファスSiO(
-SiO
)を生成し、その界面構造を調べた。まず、シリコン240個,炭素120個,酸素228個,水素48個を含む636原子による原子構造モデルに対して、4000K・2ps及び3500K・2psでの加熱を行いSiO
層を溶融した後、-1000K/psの速度で室温までの急冷を行い、
-SiO
/4H-SiC(11-20)界面原子構造を生成した。バンドギャップ中に準位を持つ欠陥を評価した所、C-C結合, Cクラスタ, C-ダングリングボンド(DB), Si-DBの欠陥準位が導出されたが、これらは(0001)面を基板とするモデルから得られた値と大きな違いは認められなかった。しかし、(11-20)面を基板とするモデルでは、(0001)面を基板とするモデルには存在していた界面近傍のSiに由来し伝導帯下端付近に準位を持つ欠陥がなく、これらの欠陥の有無が電気特性の差異に影響していると推察された。
牧野 高紘; 岩本 直也; 出来 真斗; 小野田 忍; 大島 武; 児島 一聡*; 野崎 眞次*
no journal, ,
優れた物性から耐放射線性デバイスとして宇宙等の高放射線場への応用が期待されている炭化ケイ素(SiC)デバイスのイオン照射効果を明らかにするため、6H-SiC基板上に成長させたn型及びp型エピ層を用い直径180mの電極を有するMOSキャパシタを作製し、作製した試料に、高崎量子応用研究所TIARAのタンデム加速器を用いて、酸素-18MeVを照射し、発生する過渡電流波形(TIBICシグナル)を高帯域オシロスコープで取得した。同時に、イオン照射中におけるMOSキャパシタの容量の変化もモニタした。その結果、n型p型ともに入射イオン数の増加に伴いTIBICシグナルのピーク高さが低下し、最終的にはピーク値が一定値になることが見いだされた。そのときの容量は、TIBICピークの減少に伴い増加し、TIBICピークの飽和と同時に飽和することがわかった。このことより、TIBICピークの減少は、イオン照射に伴う容量の増加、つまりキャパシタ内に形成される空乏層が減少することによって、キャパシタ内部に誘起された電荷の収集量が減少したためであるといえる。
高橋 芳浩*; 小倉 俊太*; 小宮山 隆洋*; 牧野 高紘; 小野田 忍; 平尾 敏雄*; 大島 武
no journal, ,
宇宙環境で半導体デバイスを使用する場合、重イオン照射誘起電流に起因したシングルイベント現象が問題となる。一方、SOIデバイスは高い耐放射線性が予想されるものの、支持基板で発生した電荷の埋め込み酸化膜(BOX膜)を介した収集を示唆する報告があり、われわれはこれまでに、酸化膜を介した照射誘起電流の主成分は変位電流であるとの結果を得ている。また、支持基板への電圧印加や、活性層と支持基板に逆性の半導体を用いることにより、重イオン照射誘起電流の抑制が可能となることも示した。本研究では実デバイスへの適用を目的に、支持基板の低抵抗化による照射誘起電流の抑制について検討を行った。実験は、SOI基板上にpnダイオードを作製して行った。活性層と支持基板がn形のn/nデバイス、及び低抵抗率の支持基板を有するn/n
デバイスの2種類を作製した。イオン照射の結果、照射誘起収集電荷量が減少した。この結果より、支持基板の低抵抗化がSOIデバイスの放射線耐性向上において重要となることを確認した。本手法は活性層のデバイスのタイプ(MOSFETの場合はチャネルタイプ)によらず適用可能であり、実デバイスへの応用が期待できる。
星野 英二郎*; 小林 大輔*; 廣瀬 和之*; 牧野 高紘; 大島 武
no journal, ,
CPUを動かすためのクロック信号は位相同期回路PLL(Phase-locked loop)によって供給される。PLLは、アナログ部分とデジタル部分を持ったフィードバック回路である。放射線環境下でCPUを使うにはPLLの放射線耐性を確保する必要がある。われわれは0.2mのFDプロセスのSOI基板、アナログ部分の冗長化、デジタル部分の段積み化を組合せて耐放射線化を施したSOI-PLLを設計・試作した。これまでに、そのシミュレーション結果を報告している。本研究では加速器を用いた重イオン線照射試験を行って放射線耐性を測定した。誤動作数から算出した反応断面積と、LETの関係から、飽和断面積は4
10
cm
程度であった。そして、冗長化の段階にほとんど依存していなかった。つまりシミュレーションと違って冗長化が有効に働いていないと言える。飽和断面積の値に目を向ければ回路シミュレーションの結果より約2桁大きく乖離している。これらの違いはシミュレーションで採用した仮定に起因すると考えられる。すなわち、放射線照射場所と周波数の違いがもたらしたと考えられる。さらなる測定や、エラー波形の解析が原因究明に必要である。
望月 出海*; 深谷 有喜; 前川 雅樹; 河裾 厚男; 矢治 光一郎*; 原沢 あゆみ*; 松田 巌*; 和田 健*; 兵頭 俊夫*
no journal, ,
Ge(001)表面にPtをサブモノレイヤー吸着させると、欠陥なしにサブミクロンの長さに達する1次元鎖構造が形成される。われわれは反射高速陽電子回折(RHEPD)法を用いて、この表面構造がNWモデルで説明されることを示してきた。一方で、表面に配列したGeダイマー原子鎖は、約80Kを境にパイエルス転移するとの報告があるが、その詳細は明らかではない。そこでRHEPD法と角度分解光電子分光(ARPES)法を用いて、1次元鎖の相転移について調べた。相転移前後において測定した一波条件のRHEPD回折強度は、35Kから室温への温度変化とともに上昇することが見いだされた。動力学的回折理論によるRHEPDロッキング曲線の解析から、この変化はGeダイマーが、表面垂直方向に傾いた非対称構造から、フラットな対称構造に変化することで説明されることがわかった。ARPES実験による表面電子バンドの分散関係からは、低温相においてバンドギャップが観測され、格子変位と電荷密度波形成がともに電子状態を安定化させていることが示唆された。これは相転移の駆動原理として格子変位とパイエルス転移が協奏的に作用する、新しい相転移現象として説明されるものと考えられる。
杉本 雅樹; 吉川 正人; 佃 諭志*; 田中 俊一郎*; 関 修平*
no journal, ,
高分子薄膜に入射するイオンの飛跡に沿って直径ナノオーダーの架橋体を形成し、これを溶媒抽出する方法によりナノファイバーを作製できる。このナノファイバーに高濃度で金属微粒子を内包させ、それを表面へ析出できれば、大きな比表面積を活かした触媒基材等へ応用できると考えられるが、十分な濃度の金属微粒子を内包するナノファイバーは得られていない。そこで本研究では、水溶性の高分子材料であるポリビニルピロリドン(PVP)とテトラクロロ金(III)酸(HAuCl)の混合溶液から、Au粒子を内包するナノファイバーの作製を試みた。PVPに対してHAuCl
を2.5, 5, 10, 15mass%となるよう調整した混合溶液をシリコン基板にスピンコートして薄膜を作製し、490MeVの
Os
イオンを照射してナノファイバーを形成した。その結果、HAuCl
の混合量にかかわらずナノファイバーが形成され、TEM観察によりナノファイバーにAu粒子が内包されていることが確認できた。従来ナノファイバーが作製できなかった10mass%以上の混合量でも作製できたことから、金属微粒子の凝集により表面へ析出させるブリードアウト等の技術を組合せることで、触媒能を有するナノファイバーの作製技術へ活用できると期待できる。
山崎 良雄; 吉本 政弘; Saha, P. K.; 竹田 修; 金正 倫計; 田口 富嗣; 山本 春也; 栗原 俊一*; 菅井 勲*
no journal, ,
J-PARC 3GeVシンクロトロンでは、リニアックからのHイオンのビームを、カーボン系材質の薄膜により荷電変換多重入射させることにより、H
イオンビームの蓄積を行っている。この荷電変換フォイルは、高出力ビームになればなるほどビームによる負荷が高まり、変形や損傷が生じやすく、ビーム運転を停止して交換する必要がある。よって加速器の稼働率を上げるには、より長寿命のフォイルが必要となる。現在、本施設では従来のフォイルに比較して、より長寿命化である、ボロンをドープした炭素棒を電極としたアーク放電法によるフォイル(HBCフォイル)を採用している。加速器の安定運転のために、よりフォイルの長寿命化を目指し、長寿命化のメカニズムを探究している。
武山 昭憲; 杉本 雅樹; 吉川 正人
no journal, ,
炭化珪素(SiC)セラミック薄膜は、500C以上の加湿雰囲気でH
を選択的に回収する水素分離膜として期待されている。本研究では、SiCセラミック薄膜を水蒸気に曝露しガス透過能を調べた。多孔質アルミナ管表面に、前駆体高分子であるポリカルボシラン(PCS)薄膜を塗布後、ヘリウム雰囲気で線量12MGyの電子線照射により架橋・不融化した。これを700
C又は800
Cで焼成し、SiCセラミック薄膜を作製した。塗布-照射-焼成を3回繰り返し、3層に積層したSiCセラミック薄膜を水蒸気分圧約47kPaの雰囲気に500
C, 10時間暴露後、H
及び不純物ガスである窒素N
の透過率を測定した。その結果、焼成温度800
Cで作製したSiCセラミック薄膜のH
透過率はアレニウスプロットに従い、H
が分子ふるい効果によりSiCセラミック薄膜を透過することがわかった。このガス透過率の温度依存性は水蒸気暴露前後でほぼ変わらないことから、SiCセラミック薄膜中の細孔のサイズが変わらないことがわかった。一方、700
Cで焼成したSiCセラミック薄膜のH
透過率は、水蒸気暴露前はアレニウスプロットに従うが、水蒸気暴露後は温度の逆数に対して増加することがわかった。これは水蒸気酸化によりSiCセラミック薄膜に大きなサイズの細孔が導入され、H
のクヌーセン拡散が生じたためと考えられる。