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佐竹 洋*; 北 裕一郎*; 林 はる奈*; 村田 正信*
Geodynamics of Atotsugawa Fault System, p.123 - 148, 2007/00
茂住祐延断層調査坑道において、地下水や炭酸塩について化学組成・溶存ガス組成や各種同位体などの地球化学的調査を行った。断層周辺地下水の化学組成はCa-HCO型であったが破砕帯ではNa-HCO型であった。これは断層における岩石風化作用の結果、Naが地下水に溶出して変化したと考えられた。また破砕帯内の地下水はNa/Ca比の変動が大きく、岩石の変形などにより地下水流動経路が変わり、その比が大きく変化したと考えられた。断層調査坑道の地下水は氷河期の水であり、この古い水には地下深部起源の窒素やヘリウムが認められ、断層が地下深部流体の通路となっていることが判明した。このように地下水の化学成分・同位体は断層運動と密接な関連があることが明らかになった。
平原 和朗*; 大園 真子*; 鷺谷 威*; 細 善信*; 和田 安男*; 安藤 雅孝*
Geodynamics of Atotsugawa Fault System, p.25 - 44, 2007/00
中部日本のひずみ集中帯に位置する跡津川断層周辺の地殻変動を明らかにするために、断層を横切る全長さ30kmで、7観測点からなるGPSアレーを設置した。4年間の観測で、25km離れた2観測点では5mm/年で東西に収束しているが、断層に近づくにつれ、速度は減少し、運動方向は東南東-西南西方向に変わっていくのがわかった。これらの観測を説明する簡単なモデルとして、15kmの厚さの弾性ブロックが20mm/年の速度で東西に衝突しているというものが考えられる。
田中 秀実*; 伊藤 谷生*; 野原 壯; 安藤 雅孝*
Geodynamics of Atotsugawa Fault System, p.103 - 121, 2007/00
茂住-祐延断層は、西北西-東南東走向、ほぼ垂直の姿勢を持つ跡津川断層系に属する右横ずれ断層である。地震フロンティアプロジェクトによって、この断層を垂直に横切るトンネルが掘削され、露出した壁面及び床面から直接活断層の断層岩類が採取された。その結果、断層帯の分布及び活断層帯のアーキテクチャについて次の知見が得られた。(1)茂住-祐延断層は2つの大きな破砕帯からなる。それぞれA、及びB破砕帯と呼ぶ。A破砕帯は幅15m、B破砕帯は幅50mであり、いずれも断層角礫からなる厚いダメージゾーンと葉理を持つ断層ガウジからなる断層コアからなる。断層コアはA破砕帯では8cmの厚さで一枚、B破砕帯では10cmのものが複数枚認められる。(2)断層角礫,断層ガウジともに面構造が卓越することから、変形は脆性流動を主要な機構としていることがわかる。断層コア中軸部には、高速度の変形を示す超微粒カタクレーサイトが分布し、葉理を持つ断層ガウジと共切断の関係にある。このことは流動と高速すべりの繰り返しを現している。(3)断層岩類の鉱物組合せの解析の結果、いずれの断層岩類も、スメクタイト,雲母系粘土鉱物、及び緑泥石に富んでいる。これらの鉱物は断層帯に安定滑りをもたらすと考えられている。以上の結果から、茂住-祐延断層の東部で想定されている年間1-2mmの超低速クリープは滑り面の粘土鉱物のレオロジー的な性質によるものと考えられる。
竹内 章*; 武部 晃充*; Ongirad, H.*; 道家 涼介*
Geodynamics of Atotsugawa Fault System, p.1 - 10, 2007/00
本論文では中部日本の主要横ずれ構造の一つ、跡津川断層系(AFS)に焦点を絞り、中部日本北部後期新生代構造発達を包括的に説明する。地形地質研究からは、AFSの形態が詳細に明らかになった。跡津川断層(AG)と牛首断層(UK)の主要2断層は、矩形ブロックを形成する。AGの地表トレースは連続的であるが、UKは右雁行する。AFSの一員、茂住-祐延断層(MS)はAG東端からUK西部に向かって分岐し、活動もAGに同調し従属的である。以上の様相は断層系内部及び周辺で行われている局所応力場の再編を示唆する。地震地質学的研究からは、AGとMSの最新イベントが1858年飛越地震とされた。AG東部の平均再来周期は約3,000年である。AGとMSで活動の同時性が認められるが、平均再来周期はMSが約13,500年であり、AGより有意に長い。UKの最新イベントは約1000年前であり、AD762年もしくは863年の可能性がある。結局、中部日本北部の最近の構造発達を以下のように解釈した。AFSの成立は飛騨地域の広域応力場の発現が原因である。AGとUKともその両端は、鮮新-更新世の火山深成作用で高温となり延性変形が起こる脆弱帯に位置する。AGとUKでは0.4-0.8Maに右横ずれが始まり、遅れてMSが主断層AGから分岐した。その分岐位置は、圧縮性外力が矩形ブロックの両端から掛かる場合の最大剪断帯と合致する。
道家 涼介*; 竹内 章*
Geodynamics of Atotsugawa Fault System, p.11 - 16, 2007/00
牛首断層は飛騨高原北縁に沿いNE-SW走向で長さ約52kmの右横ずれ断層である。本研究では、牛首断層東部地域において地形・地質学的な調査を実施した。その結果、北東延長部の地質断層において新たな活断層露頭及び変位地形を確認し、この地域が第四紀後期になって断層活動が活発化したことが明らかになった。また、牛首断層では東部(南東側隆起)と西部(北東側隆起)で上下変位センスに相違があり、断層の転位モデルで末端付近に予想される水平変位パタンとも異なることから、牛首断層が少なくとも2つ以上の地震性変位セグメントに区分される可能性がある。過去5年間に観測されたGPS測地データもこの考えを指示する。
吾妻 瞬一*; 石井 紘*; 浅井 康広*; 北川 有一*; 脇田 宏*; 山内 常生*; 浅森 浩一
Geodynamics of Atotsugawa Fault System, p.173 - 179, 2007/00
東濃地科学センターと東濃地震科学研究所は数本のボアホールにおいて地下水位,間隙水圧や歪の連続観測を日本の中央部東濃の西の地域において実施している。現在まで地震に関連した次のような変化が数本のボアホールにおいて観測されている。(1)地震発生後に1か月程度持続する地下水位と間隙水圧の増加が東濃鉱山周辺の上部花崗岩とその上の土岐夾炭類層下部においてしばしば観測された。これらの増加は観測ボアホールの領域よりも高い水頭を持つ領域からの地下水の流入によって説明できる。(2)地震前の地下水位の増加は土岐夾炭類層下部において観測された。1999年の地震の場合には地震前に主歪とズレ歪の変化が観測されたが面積歪には観測されなかったがこれは常に3成分歪の観測がされるべきであることを意味する。体積歪のみの観測ではそのような地震前の歪変化が観測できないからである。
伊藤 潔*; 和田 博夫*; 大見 士朗*; 平野 憲雄*; 上野 友岳*
Geodynamics of Atotsugawa Fault System, p.45 - 63, 2007/00
京都大学上宝観測所で30年間以上にわたって続けられてきた高感度地震観測及び陸域活断層フロンティア計画による臨時観測データに気象庁のデータを加えて、中部地方北西部の地震活動、特に跡津川断層帯付近の地震断層について詳細な調査を行った。その結果、新潟-神戸ひずみ集中帯の一部とされる跡津川断層帯付近を境に、地震が北西側では南西側に比べて深くなることがわかった。これはひずみ集中帯を境に地下構造又は応力が異なることを示している。また、断層帯の中でも跡津川断層と茂住祐延断層の地震はそれぞれ、地震発生層の下部15kmまでは、独立の断層面を有することがわかった。
伊藤 潔*; 上野 友岳*; 和田 博夫*; 松村 一男*
Geodynamics of Atotsugawa Fault System, p.65 - 78, 2007/00
中部地方北部、特に跡津川断層付近で実施された人工地震による地下構造調査のデータを用いて、地殻構造調査を行い地震活動との関連を調べた。地殻内には深さ15及び25km付近に顕著な地震波反射面が存在する。前者は地震発生層の下限に対応し、大地震が地震発生層の下部から破壊開始する際の構造的な根拠を与える。また、跡津川断層付近を境に速度境界は、北西側に深くなり、これは地震の下限の深さ変化と対応する。さらに、表層付近の構造は断層帯付近で浅くなる。このことはひずみ集中帯の成因に地下構造の変化が関連していることを示している。
西上 欽也*
Geodynamics of Atotsugawa Fault System, p.79 - 83, 2007/00
跡津川断層系周辺の地殻内部における地震波散乱係数の三次元空間分布を推定した。解析には、上宝観測所の10観測点で記録された28個の地震,120個の地震波形トレースを使用した。その結果は、跡津川断層系の東端付近で散乱係数が相対的に大きいことを示す。これは、この付近で微小地震活動が活発なことと合わせて、媒質のクラック密度が高い(不均質性が強い)ことを示すと考えられる。また、牛首断層に沿って散乱係数が相対的に小さく、この断層では固着が強いことを示唆する。跡津川断層のクリープ域,固着域における断層構造の違いを検出するためには、さらにデータを追加することが必要である。
西上 欽也*; 藤沢 泉*; 田所 敬一*; 水野 高志*; 儘田 豊*
Geodynamics of Atotsugawa Fault System, p.85 - 92, 2007/00
2001年から2002年にかけて跡津川断層周辺において臨時の地震観測を実施した。断層のクリープ域直上(土観測点)に設置した地震計により、分散性を示す明瞭な断層トラップ波が検出された。トラップ波は観測点より北東側の跡津川断層近傍に発生した地震に対して観測されたが、南西側に震源を持つ地震に対しては観測されなかった。これは、土観測点の南西側、すなわち跡津川断層の中央部付近に断層破砕帯の不連続(セグメント境界)が存在することを示唆する。また、波のスペクトル解析から波の減衰定数(値)を推定し、その水平分布を求めた。その結果は、跡津川断層に沿って地震波減衰が特に大きいことを示した。
西上 欽也*; 伊藤 久男*; 桑原 保人*; 水野 高志*; 儘田 豊*
Geodynamics of Atotsugawa Fault System, p.149 - 156, 2007/00
茂住祐延断層を掘り抜く地下観測坑道内において約15m間隔で32点の地震計アレイを設置した。茂住祐延断層の近傍に発生した地震に対して明瞭な断層トラップ波が観測され、そのモデル計算から、断層破砕帯の幅:160-400m,波速度低下率:周辺岩盤の85-90%、及び値:60-90を得た。この低速度層の幅は、坑道内で地質学的に観察された破砕度の大きい領域(A, B)の全体の幅とおおむね一致する。また、地震計アレイを通過する直達波及び波の見かけ速度から、破砕帯A, Bに対応する2か所の低速度域が、アレイ直下(深さ数100m)に存在することが見いだされた。
儘田 豊*; 西上 欽也*; 伊藤 久男*; 桑原 保人*
Geodynamics of Atotsugawa Fault System, p.93 - 102, 2007/00
茂住-祐延断層で行われた発破による人工地震を、断層を横断する地下300mに掘られたトンネル内に設置した直線状の地震計アレイで観測した。記録には25Hz程度までの明瞭な高周波地震波が含まれており、断層破砕帯のイメージングに有効であるヘッドウェーブ,破砕帯中を伝播した波,断層トラップ波と解釈できるフェーズが検出できた。3次元波動場の数値シミュレーションを用い、これらのフェーズの波形モデリングを行った結果、断層破砕帯の走向方向の不連続性を検出した。本観測で得られたような高品質な記録は断層破砕帯内外における波速度の推定や、不連続性(セグメンテーション)など複雑な断層構造の検出を可能にすることを示唆する。
柳谷 俊*; 山下 太*
Geodynamics of Atotsugawa Fault System, p.181 - 186, 2007/00
野島断層サイト近傍における圧力注水に伴う比抵抗変化を、新たに開発したPSDを用いた交流ダイポール測定法を用いて観測した。フィールドではとてもノイズ・レベルが高いので、そのような劣悪なる状況下でも測定できる機器を新たに開発したわけである。この手法では、電流の地下への送信・受信に、従来のDCの代わりにACを使い、その周波数をGPSの基準信号と同期させ、PSDを適用した。この結果、圧力注水に伴う比抵抗変化が検出できた。この結果の解釈のため、比抵抗モデルを作って検討したところ、検出された比抵抗変化は、岩盤への水の流入による比抵抗変化ではなく、注水によって岩盤が圧縮されたことによって生じたことを確かめた。
加納 靖之*; 柳谷 俊*; 北川 有一*; 山下 太*
Geodynamics of Atotsugawa Fault System, p.163 - 171, 2007/00
われわれは密閉したボアホール井戸を用いて正確に間隙水圧を測定する方法を開発した。これは、従来の開放井戸の周波数応答を改善するものである。1999年から2003年に、茂住調査坑道の2本の密閉したボアホール井戸を用いて間隙水圧のモニタリングを行った。間隙水圧の地球潮汐に対する応答や地震に対する応答(ハイドロサイスモグラム)を解析し、岩盤の変形と間隙水圧変化の関係を間隙弾性論に基づいて調べた。そして、間隙水も含めた岩盤の変形を間隙弾性論によって記述できることを確かめた。
伊藤 谷生*; 津村 紀子*; 竹内 章*; 石丸 恒存; 高見 明*; 井川 秀雅*; 駒田 希充*; 山本 修治*; 菊池 伸輔*; 宮内 崇裕*; et al.
Geodynamics of Atotsugawa Fault System, p.17 - 24, 2007/00
1995年の兵庫県南部地震以降、地震発生域における活断層の構造解明に関心が拡がる中で、地下構造解明の有力な手段である反射法地震探査を高角な断層に適用する方法の開発が急務となっていた。こうして、詳細な地下構造情報が得られている神岡鉱山を通過する茂住祐延断層をターゲットに1995年11月、準3次元的な反射法探査の実験が行われたのである。実験は、同断層が走向N65E,傾斜84SEであることを明らかにしたが、同時により詳細な構造解明のためには、オフライン型レコーダの新規開発が必要であることも示した。これを受けて2002年までに同レコーダの開発が行われ、その後の地震探査における強力な武器となっている。この意味で同実験はパイオニアの役割を果たしたのである。
石井 紘*; 山内 常生*; 浅井 康広*; 松本 滋夫*; 向井 厚志*
Geodynamics of Atotsugawa Fault System, p.157 - 162, 2007/00
この研究では、茂住祐延断層(活断層)で歪みについての観測と応力の測定を連続的に行った。断層破砕帯の両側に設置された2つの歪み計による特徴的な歪みパターンは、右横ずれの動きであることを示した。応力に関してもそれらと整合的なパターンを示した。その理由としてわれわれは、断層破砕帯が応力を累積できないことを提案する。歪み変化の挙動は、断層活動が構造的な応力の変化によってもたらされるが、その応力の累積は断層の周辺で小さいことを示した。