オーステナイト鋼の原子間ポテンシャル開発
Development of interatomic potential for austenitic steel
板倉 充洋 ; 宮代 聡*; 沖田 泰良*
Itakura, Mitsuhiro; Miyashiro, Satoshi*; Okita, Taira*
現在さまざまな金属について性能の良い分子動力学ポテンシャルが開発され、大規模な分子動力学計算によって新たな知見が得られているが、実用材料、特に合金に関しては分子動力学ポテンシャルの開発はあまり進んでいない。オーステナイト合金の軽水炉での照射脆化等の計算科学研究によるモデル化には分子動力学ポテンシャルの開発が必須であるため、その出発点として本研究では基本的な物質特性を再現するポテンシャルを開発して基礎プラットフォームを構築する。これまでの研究で、鉄・クロム・ニッケルをランダムに配置した小規模な系での電子構造計算を多数のケースについて行い、このような三元系のポテンシャル開発を行う場合に必要となる電子構造計算の原子配置ケース数や計算精度を見積もった。その結果、32原子程度の小規模な系では50ケース程度の原子配置ケースが必要であること、及び各原子の最近接ペア間の相互作用は最大でも0.08eV程度と大きくなく、オーステナイト鋼が急冷されて製造されることを考慮すると、電子構造計算において完全にランダムな配置を用いることは物理的にも妥当であることがわかった。今後このポテンシャルを改良し点欠陥や点欠陥クラスタのエネルギー及び移動障壁エネルギーが再現できるようになれば、照射によって生成する格子欠陥の分布を知ることが可能となり、また耐蝕性を担うクロム原子が照射により材料中でどのように移動するかを調べることで照射が耐蝕性に与える影響を調べることが可能となる。
There are very few studies for the development of interatomic potential for Austenitic steel, owing to the complexity of ternary system of Iron, Chromium and Nickel. In the present study we develop a preliminary version of an embedded atom method type potential for this ternary system. We have carried out first-principles calculations of 50 cases of randomly generated Fe23Cr5Ni4 configurations and observed relaxed crystal structure and total energy. Both the electron density and the crystal structure is found to be very close to that of a perfect FCC lattice system. By a least square fitting, we found that the energy difference between the different configurations is mainly explained by the number of nearest neighbor Cr-Cr and Ni-Ni pairs. The interaction energy between these atoms is on the order of 0.08 eV, and this result endorses the use of randomly generated configurations.