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小川 達彦; 岩元 洋介
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 549, p.165255_1 - 165255_4, 2024/04
被引用回数:0原子欠陥は固体の照射効果を決定する重要な要素である。入射放射線やその二次粒子の撃力によって原子が弾き出されると、その標的物質の機械的・電気的。化学的性質が変化する。PHITSのDPAタリーのように、非弾性核反応断面積やラザフォード散乱断面積を元にした欠陥生成計算モデルは存在するが、巨視的な平均的欠陥密度の計算に用いられ、転移のように欠陥の空間的配置に影響される現象の計算には直接使えない問題があった。そこで本研究では、原子力機構が開発する汎用放射線輸送計算コードPHITSの飛跡構造解析コードITSARTを応用し、放射線による原子欠陥の空間的配置を計算した。ITSARTは原子の弾性散乱を含め、荷電粒子の反応をナノスケールで一個づつ計算することができるため、欠陥を生じるような反応を個として識別した計算が可能である。まず精度検証のためITSARTにより銅のDPA(Displacement Per Atom)を計算したところ、文献値と合致することが確認できた。同じ方法を用いて600MeVの陽子線に照射されたSiOで、欠陥の空間的配置を計算することに成功した。ユーザーはPHITSの出力を分子動力学モデルなどの後段の計算に送ることで、欠陥の更なる時間発展を計算することが可能になると期待される。
外川 織彦; 奥野 浩
JAEA-Review 2023-043, 94 Pages, 2024/03
日本語で記載された原子力防災分野の文書を英語に翻訳するために、災害対策基本法、原子力災害対策特別措置法及び原子力の安全に関する条約について、日本語と英語の対訳を調査した。調査結果を統合し、統一的な英対訳を選択した。この結果として、原子力防災分野における専門 用語の和英対訳表を作成し、提案した。
外川 織彦; 外間 智規; 平岡 大和; 齊藤 将大
JAEA-Research 2023-011, 78 Pages, 2024/03
原子力災害時に大気へ放射性物質が放出された場合には、住民等の被ばくを低減するための防護措置として、自家用車やバス等の車両を利用して避難や一時移転が実施される。避難等を実施した住民等や使用した車両の汚染状況を確認することを目的として、原子力災害対策重点区域の境界周辺から避難所までの経路途中において避難退域時検査が行われる。その際に、我が国では表面汚染密度の測定によるOIL4=40,000cpmという値が除染を講じる基準として用いられる。しかし、この値が設定された経緯や導出方法については、系統的かつ詳細な記述や説明は公式文書には見受けられず、また原子力防災の専門家でさえも全体に亘って詳細に説明できる人はほとんどいないことを認識した。本報告書では、我が国の避難退域時検査における除染の基準として用いられるOIL4を科学的・技術的に説明するために、その導出方法を調査・推定するとともに、それらの結果について検討と考察を行うことを目的とした。この目的を達成するために、我が国における除染基準を設定する上での根拠を示すとともに、被ばく経路毎の線量基準に対応した表面汚染密度限度を導出する方法を調査・推定した。さらに、我が国におけるOIL4の位置付けと特徴、OIL4の改定時における留意点という観点から、OIL4に関する考察と提言を行った。
藤田 奈津子; 三宅 正恭; 松原 章浩*; 石井 正博*; 渡邊 隆広; 神野 智史; 西尾 智博*; 小川 由美; 木村 健二; 島田 顕臣; et al.
第35回タンデム加速器及びその周辺技術の研究会報告集, p.17 - 19, 2024/03
日本原子力研究開発機構東濃地科学センター土岐地球年代学研究所には加速器質量分析装置(AMS)が3台あり、2台のAMSで実試料の年代測定を行い、さらにAMSの小型化に向けた試験装置1台で技術開発を行っている。2台の実試料測定用AMSでは炭素-14、ベリリウム-10、アルミニウム-26、ヨウ素-129の4核種を測定している。小型化に向けた試験装置は、イオンチャネリングを利用したAMSの同質量分子の分別を実施するための装置であり、現在炭素-14測定を目指して実証試験中である。発表ではそれぞれの研究開発状況を報告する。
名越 康人*; 深堀 拓也*; 岡田 裕*; 高橋 昭如*; 下平 昌樹; 上田 貴志*; 小川 琢矢*; 八代醍 健志*; 高橋 由紀夫*; 大畑 充*
Transactions of the 27th International Conference on Structural Mechanics in Reactor Technology (SMiRT 27) (Internet), 9 Pages, 2024/03
日本溶接協会CAF小委員会では、塑性拘束効果を考慮した破壊評価手法ガイドラインの策定を目指している。この評価手法では、脆性破壊を評価するためのBereminモデルと延性亀裂成長を評価するためのGTNモデルを用いる。そこで、これらの評価モデルの適用性を検証するため、CAF小委員会の参加機関によるベンチマーク解析が行われた。ベンチマーク解析は、各機関が有する有限要素解析コードを用い、2種類の低合金鋼(A及びB)の破壊試験に対して実施されてきた。本発表では、低合金鋼Bに対する解析結果を報告する。Bereminモデルにおいて、一般的なワイブル形状母数( = 10, 20, 30)を用いた場合、各機関で計算されたワイブル応力が概ね一致することを確認した。また、Toughness Scaling Modelに基づいて、塑性拘束度が異なる2種類の試験片を用いてワイブル形状母数を算出した。算出されたワイブル形状母数は解析機関によりばらつきはあったものの、最終的に算出されるワイブル応力は一致することを確認した。GTNモデルに関して、評価に用いるパラメータを1T-C(T)試験片の室温での荷重-変位関係に基づいて最適化した。最適化されたパラメータを用いてGTNモデルに基づき評価されたJ-R曲線が各機関で一致することを確認した。
外間 智規; 木村 仁宣; 外川 織彦
JAEA-Research 2023-010, 57 Pages, 2024/02
原子力災害時に住民の甲状腺中放射性ヨウ素放射能の簡易測定を行うことが計画されている。簡易測定にはスクリーニングレベル:0.20Sv/hが目安として設定されており、原子力災害等の状況に応じて適切に見直すこととされている。しかしながら、スクリーニングレベルの見直しに関する具体的な方針は定められていない。スクリーニングレベルの見直しについては、甲状腺内部被ばく線量の判断レベルや簡易測定の実施期間等、簡易測定の可否に係る要因について考慮する必要がある。本研究では、スクリーニングレベル:0.20Sv/hの設定根拠を整理するとともに、原子力災害時におけるスクリーニングレベル見直しの実行性について考察を行った。スクリーニングレベルを0.0250.50Sv/hの範囲で見直した場合の判断レベルと実施期間との関係を計算し、スクリーニングレベル見直しの実行性について考察を行った。その結果、スクリーニングレベルの見直しについては、適切な判断レベルと実施期間を選択しなければならないという技術的な制約はあるものの実行可能であることが分かった。しかしながら、原子力災害時の簡易測定の実際を想定した場合、スクリーニングレベル見直しについては、実施期間の延長が必要な状況において0.0300.20Sv/hの範囲で設定することが妥当であろうと評価した。
石川 法人; 福田 将眞; 中嶋 徹; 小河 浩晃; 藤村 由希; 田口 富嗣*
Materials, 17(3), p.547_1 - 547_21, 2024/02
被引用回数:0 パーセンタイル:0.02(Chemistry, Physical)340-MeV Auイオンビームを照射した天然ジルコニアにおいて形成されたイオントラックとナノヒロックを透過型電子顕微鏡で微細観察した。ナノヒロックの寸法が10nm程度であり、局所溶融した領域の寸法と同程度であることが分かった。したがって、一旦溶融した結果としてイオントラックとナノヒロックが形成されたことが分かる。次に、イオントラックを観察すると長方形の断面形状をしており、かつ結晶構造が大きく溶融前と変化していないことが分かった。したがって、他のセラミックスと異なり、ジルコニアにおいては、局所溶融後に、結晶構造を反映した異方的な再結晶化が起きていることが強く示唆される。一方で、イオントラックの中心部には、飛跡に沿った低密度のコア領域が形成されており、イオンビームが入射した表面への物質移動により物質欠損が形成されていることも判明した。物質欠損を伴う条件では再結晶化が不十分となり、飛跡のごく近くでは低密度コア領域が形成されていると説明できる。
平田 悠歩; 甲斐 健師; 小川 達彦; 松谷 悠佑; 佐藤 達彦
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 547, p.165183_1 - 165183_7, 2024/02
被引用回数:0 パーセンタイル:0.02(Instruments & Instrumentation)蛍光体の粒子線に対する発光効率は消光効果により低下することが知られている。蛍光体検出器を用いて正確な線量分布を得るためには、消光効果のメカニズムを理解することが不可欠である。本研究では、PHITSに実装された任意の物質に対する飛跡構造解析モードに基づいて蛍光体の発光強度を推定する新しいモデルを開発した。開発したモデルにより、BaFBr検出器の消光効果のシミュレーションが可能となり、その結果を対応する測定データと比較することにより検証した。このモデルは、様々なの蛍光体検出器の開発に貢献することが期待される。
直江 崇; 涌井 隆; 木下 秀孝; 粉川 広行; 勅使河原 誠; 羽賀 勝洋
JAEA-Technology 2023-022, 81 Pages, 2024/01
大強度陽子加速器研究施設(Japan Proton Accelerator Research Complex, J-PARC)の物質・生命科学実験施設に設置されている核破砕パルス中性子源水銀ターゲットでは、高エネルギーのパルス陽子ビーム入射時に、核破砕反応による中性子の発生と同時に水銀の急激な熱膨張によって、圧力波が発生する。この圧力波は、水銀中を伝ぱする過程で負圧によるキャビテーションを誘発する。水銀を充填するステンレス鋼製の水銀ターゲット容器の内壁近傍でキャビテーションが崩壊することによって、内壁表面には激しい壊食損傷が形成される。水銀ターゲット容器は、陽子ビームが入射することによって先端部分の内部発熱に起因する熱応力を低減するために、先端部を厚さ3mmの薄肉構造としている。陽子ビーム強度の増加に伴って、キャビテーションによる攻撃性は増加するため、壊食損傷がターゲット容器の疲労破壊や水銀の漏洩につながる。したがって、設計出力である1MWでの長期的な安定運転を実現するために損傷の低減化が求められている。キャビテーションによる容器壁面の壊食損傷を低減することを目的として、圧力波を低減するための水銀中への微小気泡注入や、ターゲット容器先端部の2重壁構造化などの対策を施している。損傷低減化策の効果の確認や、ビーム出力と壊食痕による損傷深さの相関を評価し、今後の運転条件を検討するために、使用済みのターゲット容器の先端部から試験片を切出し、損傷の観察を実施している。これまでに、内壁に形成されたキャビテーションによる損傷形態の観察と壊食痕による損傷の深さを測定することで、運転条件との相関について検討を実施し、気泡注入によって著しい損傷低減効果が発現されること、2重壁構造によって、先端部分の損傷形成がビーム出力に依存せず抑制できることを確認した。これらの成果によって、施設の設計目標である1MWの安定運転を実施可能な見通しを得た。本報では、これまでに開発、適用した実機水銀ターゲット容器内壁の損傷観察の手法、測定結果及び運転条件との相関についてこれまでに得られた成果をまとめる。
森山 潤一郎*; 高桑 脩*; 山口 正剛; 小川 祐平*; 津崎 兼彰*
Computational Materials Science, 232, p.112650_1 - 112650_11, 2024/01
被引用回数:0 パーセンタイル:0(Materials Science, Multidisciplinary)本研究ではいくつかの実用Fe-Cr-Ni基オーステナイト合金において、強度-延性バランスを改善する水素の影響に着目している。面心立方構造を持つFe-Cr-Niモデル合金の水素吸収エネルギーを第一原理計算で調べ、合金中の水素溶解度に対するFeからのCrおよびNi置換の寄与を検証した。Cr置換はNi置換に比べて水素吸収エネルギーを大幅に減少させ、Cr/Ni比の増加により高い水素溶解性を発揮することがわかった。計算で得られた傾向は、様々なCr/Ni比を持つ実用合金で以前に得られた実験結果と一致した。
村瀬 清華*; 片岡 龍峰*; 西山 尚典*; 佐藤 薫*; 堤 雅基*; 田中 良昌*; 小川 泰信*; 佐藤 達彦
Space Weather, 21(12), p.e2023SW003651_1 - e2023SW003651_11, 2023/12
被引用回数:0 パーセンタイル:0.01(Astronomy & Astrophysics)大気に降り注ぐ高エネルギー粒子によるオゾン層などの影響を調べるには、それら粒子による電離量の空間・時間分布を正確に把握する必要がある。そこで、我々は、2017年9月に発生した太陽フレア時における大気圏内電離量の空間・時間分布に対する観測値を粒子・重イオン輸送計算コードPHITSによる計算値と比較した。その結果、計算値は観測値をファクター2の範囲内で再現できることが分かり、本研究で開発した手法が宇宙天気研究に貢献できることを明らかにした。
和田 有希*; 鴨川 仁*; 久保 守*; 榎戸 輝揚*; 林 省吾*; 澤野 達也*; 米徳 大輔*; 土屋 晴文
Journal of Geophysical Research; Atmospheres, 128(21), p.e2023JD039354_1 - e2023JD039354_20, 2023/11
被引用回数:0 パーセンタイル:0.01(Meteorology & Atmospheric Sciences)During the 2020-2021 winter season, we detected 6 gamma-ray glows at Kanazawa University, Japan. Negative surface electric fields (E-fields) were observed by a field mill during all the glow cases. In five of the six cases, the maximum E-field reached 12 , and the E-field during the glow detection was the strongest in 3 hours before and after the detection time. Therefore, negative charges should have been dominant in the thunderclouds that produced the gamma-ray glows, and electrons were probably accelerated and multiplied by the E-fields between a predominantly negative charge layer and a localized positive charge layer below. In addition, we extracted 8 non-detection cases in the 2020-2021 winter season, in which surface E-fields were stronger than 12 . In 5 of the 8 cases, radar echoes were inadequately developed, suggesting insufficient charge accumulation. On the other hand, the remaining 3 cases had well-developed radar echoes, and there was no significant difference from the detection cases.
永山 晶大; 原田 寛之; 下川 哲司*; 佐藤 篤*; 山田 逸平; 地村 幹; 小島 邦洸; 山本 風海; 金正 倫計
Proceedings of 20th Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan (インターネット), p.526 - 530, 2023/11
本研究では、ビームの遅い取り出しのための非破壊型静電セプタムを開発している。従来型と異なり、この装置はビームと衝突しないようにビーム周辺に配置した多段電極で構成されており、発生させた電場によって非破壊でビームを分離する。本研究ではその電場分布を評価すべく、電子銃とビームモニタで構成された試験装置を開発した。その装置に試作電極を設置し、細い電子ビームで電場分布測定の実験を実施した。その測定結果は計算結果との良好な一致を示した。しかし、ビームの分離能力はまだ十分ではない。そこで、電場分布の改良に向けた電極形状や配置の最適化の検討を行った。本発表では、試験装置を用いた電場分布測定実験の結果や改良案を報告する。さらに、本開発の今後の展望についても述べる。
丹羽 正和; 島田 耕史; 末岡 茂; 藤田 奈津子; 横山 立憲; 小北 康弘; 福田 将眞; 中嶋 徹; 鏡味 沙耶; 小形 学; et al.
JAEA-Review 2023-017, 27 Pages, 2023/10
本計画書では、高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する研究開発のうち、深地層の科学的研究の一環として実施している地質環境の長期安定性に関する研究について、第4期中長期目標期間(令和4年度令和10年度)における令和5年度の研究開発計画を取りまとめた。本計画の策定にあたっては、これまでの研究開発成果や大学等で行われている最新の研究成果に加え、地層処分事業実施主体や規制機関等の動向を考慮した。研究の実施にあたっては、地層処分事業における概要・精密調査や国の安全規制に対し研究成果を適時反映できるよう、(1)調査技術の開発・体系化、(2)長期予測・影響評価モデルの開発、(3)年代測定技術の開発の三つの枠組みで研究開発を推進する。
丹羽 正和; 島田 耕史; 末岡 茂; 石原 隆仙; 小川 大輝; 箱岩 寛晶; 渡部 豪; 西山 成哲; 横山 立憲; 小形 学; et al.
JAEA-Research 2023-005, 78 Pages, 2023/10
本報告書では、高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する研究開発のうち、深地層の科学的研究の一環として実施している地質環境の長期安定性に関する研究について、第4期中長期目標期間(令和4年度令和10年度)における令和4年度に実施した研究開発に係る成果を取りまとめたものである。第4期中長期目標期間における研究の実施にあたっては、地層処分事業における概要・精密調査や国の安全規制に対し研究成果を適時反映できるよう、(1)調査技術の開発・体系化、(2)長期予測・影響評価モデルの開発、(3)年代測定技術の開発の三つの枠組みで研究開発を進めている。本報告書では、それぞれの研究分野に係る科学的・技術的背景を解説するとともに、主な研究成果等について取りまとめた。
平田 悠歩; 甲斐 健師; 小川 達彦; 松谷 悠佑*; 佐藤 達彦
Japanese Journal of Applied Physics, 62(10), p.106001_1 - 106001_6, 2023/10
被引用回数:2 パーセンタイル:71.03(Physics, Applied)半導体検出器の設計を最適化するには、半導体物質内において放射線がキャリア(励起電子)に変換されるまでの過程を理論的に解析する必要がある。本研究では、任意の半導体物質に対し、放射線により生じる二次電子の挙動を極低エネルギー(数eV)まで追跡し、励起電子が生成される過程を模擬できる機能(ETSART)を開発し、PHITSに実装した。具体的には、ETSARTを用いて計算した電子の飛程はICRU37で推奨されたデータ別の計算結果と一致することを確認した。さらに、半導体検出器の特性を表す重要な指標である、一つの励起電子の生成に必要な平均エネルギー(値)について検討し、これまで値とバンドギャップエネルギーの関係は単純な直線モデルで考えられていたが、その関係は非線形関数であることを明らかにした。ETSARTは半導体検出器の最適化設計や応答解析に留まらず、新しい半導体物質の特性評価への応用も期待できる。
外川 織彦; 外間 智規; 平岡 大和
JAEA-Review 2023-013, 48 Pages, 2023/08
原子力災害時に大気へ放射性物質が放出された場合には、住民等の被ばくを低減するための防護措置として、自家用車やバス等の車両を利用して避難や一時移転が実施される。避難等を実施した住民等の汚染状況を確認するため避難退域時検査が行われるが、その迅速性を損なわないことが重要である。現状の検査では、車両の指定箇所検査をワイパー部とタイヤ側面で実施し、要員によるGMサーベイメータ等の表面汚染検査用測定器で検査することを基本としている。また、車両の迅速かつ効率的な検査実施のため、可搬型車両用ゲート型モニタの活用も計画されているところである。本報告書では、迅速かつ効率的な避難退域時検査に資するため、原子力災害時における車両の汚染状況と除染措置に関する調査を実施した。利用可能な関連文献や情報はごく少数であったが、当該文献等に記載された調査結果を目的に応じて抽出して整理するとともに、避難退域時検査の迅速かつ効率的な運用という観点からその調査結果について検討を行った。
小川 理那; 天澤 弘也; 仲田 久和; 菅谷 敏克; 坂井 章浩
JAEA-Review 2023-011, 116 Pages, 2023/08
研究施設等廃棄物の埋設事業の実施主体である日本原子力研究開発機構は、埋設事業の実施に向けて、平成22年に、当時の「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」(原子炉等規制法)に適合する埋設施設の概念設計を実施した。一方で、平成25年以降、原子炉等規制法の第二種廃棄物埋設事業に係る規則等が改正されており、埋設施設の基本設計に向けて、新たに制定された規則類に対応する検討が必要な状況となった。研究施設等廃棄物の埋設事業の許可申請の際には、廃棄物埋設施設の立地環境及び施設設計等についての基準が示されている「第二種廃棄物埋設施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則」等に計画している埋設施設が適合していることを示す必要がある。そのため、日本原子力研究開発機構は、新規制基準に適合した埋設施設の設計における技術的検討を進めている。本報告書では、現行の「第二種廃棄物埋設施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則」等のトレンチ処分を行う廃棄物埋設施設への要求事項を整理し、課題の抽出を行った。
有吉 玄; 猿田 晃一; 粉川 広行; 二川 正敏; 前野 航希*; Li, Y.*; 筒井 喜平*
Proceedings of 20th International Topical Meeting on Nuclear Reactor Thermal Hydraulics (NURETH-20) (Internet), p.1407 - 1420, 2023/08
水銀を核破砕標的とするパルス中性子源では、陽子線励起圧力波による標的容器のキャビテーション損傷が問題視されている。このような損傷の抑制手法として、旋回流式気泡注入器で水銀中に微小He気泡を混合し、その圧縮性効果を用いる手法や、標的容器内側に流路壁を追加した二重壁流路構造を設ける手法が採用されている。本研究では、二重壁流路体系において内壁部に生じ得るキャビテーション由来の貫通損傷を標的容器外部から検出する異常診断技術の確立を目指す。本論文では、貫通損傷が生じた場合の水銀流れを有限要素法に基づく流動解析で明らかにし、流体励起・音響振動の観点から、損傷の影響を評価した結果を報告する。
小川 理那; 戸塚 真義*; 坂井 章浩
JAEA-Technology 2023-012, 57 Pages, 2023/07
コンクリートピット埋設施設は、支持能力を有する地盤に設置する必要があると考えられることから、地下水面より下位に設置することが想定される。そのため、施設の設置環境(施設の周辺岩盤)及び施設の構造物(コンクリートピット埋設施設及びこれを取りまくベントナイト混合土)のそれぞれの透水係数をパラメータとしてモデル計算を行い、施設への浸入水量及び施設からの浸出水量を評価した。地下水流動解析は、有限要素法による2次元地下水流動解析コードMIG2DFを用いて行った。設置環境を考慮した評価では、これまでの技術検討で施設底面における地下水浸入水量及び浸出水量が相対的に多量となったことから、その底面と接する新鮮な岩盤の透水係数をパラメータとして、地下水浸入水量及び浸出水量の評価を実施した。また、施設の構造物を考慮した評価では、コンクリートピット埋設施設の経年的な劣化及びベントナイト混合土の化学的な変質による劣化を想定したコンクリート及びベントナイト混合土の透水係数を設定し、地下水の浸入水量及び浸出水量の変化を評価した。その結果、岩盤新鮮部の透水係数は施設における地下水浸入水量及び浸出水量に大きく寄与することが分かった。また、ベントナイト混合土の化学的劣化に伴う透水係数の増加に伴い、その周囲の覆土へ移行する浸出水量が増加する結果となった。以上からこれらの透水係数は、コンクリートピット埋設施設の設置及び安全評価における重要な影響因子であることが分かった。