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百合 庸介; 宮脇 信正; 神谷 富裕; 横田 渉; 荒川 和夫; 福田 光宏*
no journal, ,
ビーム輸送系における非線形磁場による横方向強度分布の均一化に関する詳細な理論解析の結果を報告する。八極電磁石等が作り出す奇数次の非線形磁場を用いて荷電粒子ビームのガウス型強度分布を均一化できることは以前から知られている。本研究では、無限大までの次数を含んだ理論モデルを構築し、ビームを均一化する際に必要となる非線形磁場強度及び形成される均一分布の幅を、ビーム光学系を規定するTwissパラメータを用いて表した。これにより、六極電磁石等の偶数磁場を用いたビーム均一化、及び、複数の多重極磁場を組合せることによる非対称な強度分布を持つビームの均一化が可能であることを初めて明らかにした。また、この理論に基づいて設計した六極及び八極電磁石から成るTIARAのサイクロトロン施設に設置する均一照射システムについても解説する。
飯村 秀紀; Buchinger, F.*
no journal, ,
原子核質量の計算に用いられるFinite Range Droplet模型(FRDM)のパラメータを用いて核荷電半径を計算した。このうち変形パラメータは、Finite Range Liquid Drop模型(FRLDM)に非軸対称変形を取入れた最近のMller達の計算値を用いた。ここで、FRLDMはFRDMからクーロン力による核子の再配置を除いた模型である。得られた核半径を多数の原子核について実験値と比較した結果、従来の計算に比べて一致が改善されることがわかった。これは、FRLDMに非軸対称変形を取入れたことで、変形パラメータの予測精度が上がったことによる。
西尾 勝久; 池添 博; 光岡 真一; 西中 一朗; 永目 諭一郎; 渡辺 裕*; 大槻 勤*; 廣瀬 健太郎*; Hofmann, S.*
no journal, ,
S+U反応における核分裂片の質量数分布を測定した。実験は、原子力機構タンデム加速器施設で行った。質量数分布は、クーロン障壁より高い反応エネルギーでは質量対称性を示したのに対し、サブバリヤー領域では非対称性を示した。この非対称分裂では、質量数200及び74近傍の核分裂片が生成されており、複合核を生成することなく分裂する準核分裂過程で生成されたと考えられる。サブバリヤエネルギーでは、Sはラグビーボール型に変形したUの先端部とだけ衝突する。一方、エネルギーを高くすると赤道面からの反応が始まるが、ここで観測された質量対称分裂は、複合核を経由する核分裂と解釈できる。今回観測された質量数分布の変化は、準核分裂と複合核生成の競合が、ウラン標的の向きに敏感であることを示す。
川瀬 啓悟; 神門 正城; 早川 岳人; 大東 出; 近藤 修司; 本間 隆之; 亀島 敬; 小瀧 秀行; Chen, L. M.; 福田 祐仁; et al.
no journal, ,
原子力機構関西光科学研究所において、Nd:YAGレーザーとマイクロトロン電子加速器からの150MeV電子ビームとを用いた逆コンプトン散乱によるX線発生の研究を開始している。ここで発生するX線の最大エネルギーは400keVである。本学会において、この研究の現状と将来的な展望について報告する。
松田 達磨; 芳賀 芳範; 青木 大*; 池田 修悟; 立岩 尚之; 本間 佳哉*; 塩川 佳伸*; 摂待 力生*; 大貫 惇睦
no journal, ,
重い電子系NpPdAlは、超ウラン元素であるネプツニウムを含む化合物において世界で初めて発見された超伝導体である。さらにこの物質では、電子比熱係数が200mJ/Kmolと非常に大きく、また電気抵抗は温度に比例する振る舞いを示すなど特異である。この化合物における特異な電子状態を明らかにするため、常伝導状態の物性研究を行った。特に、大きな異方性を明らかにするために電気抵抗の異方性を測定した。
橋本 美絵; 深谷 有喜; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
no journal, ,
Si(111)-41-In表面は擬1次元金属鎖を形成することが知られている。この表面は120K以下で8'2'構造へ相転移し、金属-絶縁体転移を起こす。しかし、低温相である8'2'構造の原子配置や相転移のメカニズムの詳細については、未だ解明されていない。本研究では、最表面に敏感な反射高速陽電子回折(RHEPD)を用いた8'2'表面の構造解析と走査型トンネル顕微鏡(STM)像の観察,第一原理シミュレーションの結果について報告する。293KのRHEPDロッキング曲線の解析から、41構造はX線回折実験で決定されたジグザグチェーン構造であることを確認した。60Kの8'2'構造については、理論的に提案されている2つの構造モデルを参考にして、ロッキング曲線のフィッティングを行った。RHEPDの解析から、最終的にヘキサゴン構造に近いモデルを得た。さらに、RHEPDの解析から決定した8'2'構造の原子位置を用いてSTM像を第一原理的に計算したところ、完全ではないがSTM像の観察結果を説明できることがわかった。また、バンド構造計算から、この構造では約60meVのエネルギーギャップが現れ、120Kで見られる金属-絶縁体転移が説明できることがわかった。
松田 巌*; 深谷 有喜; 橋本 美絵; 成田 尚司*; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
no journal, ,
バルク固溶体の金属合金の中には、Cu-Zn系で知られているように、電子数と原子数の割合によって結晶構造が決まるものがあり、それらはHume-Rothery型化合物と呼ばれている。形成にはフェルミ球とブリルアン・ゾーン境界の接触が重要であることがわかっているもののその安定性は現在でも議論されており、最近では準結晶との密接な関係も指摘されている。本研究グループでは、半導体結晶表面上の金属単原子層についてこれまでのさまざまな系について研究してきた。Si結晶表面への金属吸着系には300以上も表面秩序相が存在する。その中でSi(111)基板上への一価金属(アルカリ金属,貴金属)の共吸着で形成する相は、吸着金属の原子数と表面状態の電子数の割合は常に一定であることに気が付いた。そこでこの2次元表面合金相について、角度分解光電子分光法でフェルミ面マッピングをしたところ、フェルミ面とブリルアン・ゾーン境界は効率よく交差しており、フェルミ準位近傍に擬ギャップが形成していることがわかった。すなわちこの合金相は、珍しい純粋な2次元系におけるHume-Rothery型化合物である。当日は光電子フェルミ面マッピングによる電子構造と回折やSTMなどによる原子構造に関する実験データを詳細に解説し、さらにJones model及びpseudopotential modelによる理論計算から安定化エネルギーについても議論する。
森林 健悟
no journal, ,
X線自由電子レーザー(XFEL)の利用研究の1つとしてタンパク質などの単生体分子のX線による立体構造解析がある。XFELの場合、従来のX線源よりもX線の数が非常に大きいため、生体の損傷の影響が大きいと考えられている。生体の損傷は、構造解析のノイズとして現れるが、ここでは、損傷とXFELのパラメータ(X線数,パルス幅等)との関係を明らかにして、X線数の上限値を決めることを目指す。XFELが生体分子に照射されると内殻電離及びそれに伴って発生する電子の衝突電離、さらに数fs後、オージェ過程が起こり、電子密度分布の変動が生じる。これらの電子密度分布の変動は立体構造解析のノイズとして現れる。本講演では、XFELのパラメータと元素の電荷数の変化の関係を計算し、立体構造解析に対する最適なパラメータを提案する。
五十嵐 誉廣; 中沢 哲也; 都留 智仁; 加治 芳行
no journal, ,
原子レベルからの粒界型応力腐食割れ(IGSCC)機構解明のため、量子論的議論を含めた計算科学的アプローチによる粒界の安定性解析を行った。本研究では特にIGSCCが多く発生しているランダム粒界に着目し、半経験的計算手法によるランダム粒界を模擬したFe(鉄)クラスターの構造安定性解析を行った。鉄クラスター中に他元素が含有された系のエネルギー解析を行ったところ、クロム含有系では鉄-クロム間の結合が強まり、逆にニッケル含有系では鉄-ニッケル間の結合が弱まるという結果を得た。この結果は、ニッケル原子の富化とクロム原子の欠乏が粒界安定性を低下させ、粒界強度を劣化させる可能性があることを示している。
徳永 陽; 鈴木 博之*; 酒井 宏典; 神戸 振作; 中堂 博之; 本間 佳哉*; 青木 大*; 塩川 佳伸*
no journal, ,
PrPbは結晶場基底状態に非磁性二重項を有し、=0.4K以下で非整合な長周期反強四極子秩序が出現する。われわれはこのPrPbの長周期反強四極子秩序とその磁気励起を微視的観点から調べるため、PrPbのPrサイトの一部をLaで置換したPrLaPbにおいてLa-NMRによる研究を行っている。発表では最近行った希釈冷凍機を用いて行った1K以下でのNMR測定の結果を中心に、長周期反強四極子秩序相における超微細相互作用について報告する。
石井 哲朗; 牧井 宏之; 浅井 雅人; 塚田 和明; 豊嶋 厚史; 松田 誠; 静間 俊行; 牧嶋 章泰*; 當銘 勇人*; 重松 宗一郎*; et al.
no journal, ,
東海タンデム加速器施設において、放射性標的Cmと重イオンビームを用いた中性子ストリッピング反応によりCmを生成し、インビーム線分光法により励起状態を調べた。Cmの脱励起線は、Si-検出器を用いて、散乱粒子の質量数と原子番号を識別するとともに運動エネルギーを選択することにより同定した。大きな負の値を持つ(O,O)反応は、の(C,C)反応等よりも、高スピンの状態が励起されることを確認した。同時相関,線角度分布,線強度比などのデータを解析し、の8本のNilsson軌道を決定した。この中に、軌道から派生した1/2[880]軌道の候補も含まれている。
米田 安宏; 吉井 賢資; 小原 真司*
no journal, ,
ビスマスフェライトは磁性と強誘電性を合わせ持つ物質として注目されている。常誘電体の構造はcubicで、一度の相転移で強誘電体相であるrhombohedral相へと構造が変わる。同じperovskite構造を持つBaTiOと共通の常誘電体相と強誘電体相を持ちながら、異なる相転移系列を持つことに着目し、両者の局所構造の違いをPair-distribution function(PDF)を用いて広い温度領域に渡って観測した。その結果、BaTiOは広い温度領域に渡ってほとんどピークの形状が変化していないが、BiFeOは相転移点で大きく局所構造が変化することがわかった。
坂井 徹; 岡本 清美*
no journal, ,
数値対角化の解析に基づいて、桁方向の交換相互作用が強磁性的なスピンラダー系で、スピンフロップ転移が2段階の二次相転移として現れることを理論的に示し、最近IPA-CuClで観測された磁場誘起2段階転移のメカニズムを検討する。
柴田 薫; 高橋 伸明; 川北 至信*; 佐藤 卓*; 筑紫 格*; 目時 直人; Mamontov, E.*; 中島 健次; 新井 正敏
no journal, ,
J-PARC/MLFに設置が計画されている逆転配置型分光器(DNA)用結晶アナライザーにPG(002), Ge(311)を大強度測定モード用、Si(111), Si(311)を高エネルギー分解能測定モードに使用することを検討している。今回、アナライザー結晶に用いるPG(002), Ge(311)結晶について反射強度・モザイク幅の評価及び制御方法の検討を行った。評価のための中性子ビーム実験はJAEA・JRR-3研究用原子炉熱中性子ガイドMUSASI-LポートにおいてEi=13.5meVを用いて実施した。Ge結晶に関しては、(A)As-cut Ge wafer(厚さt=0.25mm)を重ねた場合の重ね合わせ枚数に対する反射強度・モザイク度の依存性、及び(B)Ge板のHot-Press加工条件(温度・圧力等)に対する反射強度・モザイク度の依存性についてそれぞれ測定・検討結果を報告する。併せて複数メーカーが作成した数種類のPG結晶に関する評価結果(反射強度・モザイク幅)を報告する。このほか、Si(111), Si(311)を用いる高エネルギー分解能測定モード用結晶配置方法とその分光仕様について検討結果を報告する予定である。
髭本 亘; 伊藤 孝; 大石 一城; 佐藤 一彦*; 才賀 裕太*; 小坂 昌史*; 松林 和幸*; 上床 美也*
no journal, ,
YbCoZnは低温において極めて大きな電子比熱係数を持つ重い電子系物質である。われわれは基底状態を調べる目的で、ミュオンスピン緩和法による磁性研究を行った。その結果、20mKまでの温度域で静的な磁気秩序がないことを確認した。一方、低温域では揺らいだ内部磁場が検出され、量子臨界点の極めて近くに位置する物質であると考えることができる。
大原 宏太; 石川 法人; 境 誠司; 道上 修*; 太田 靖之*
no journal, ,
燃料酸化物セラミックス中の高エネルギー核分裂片発生に起因する照射損傷挙動を調べるために、東海タンデム加速器においてCeOセラミックスに高エネルギーイオン(200MeV Au)照射を行った。特に、照射損傷を特徴付ける酸素欠損について調べるために、ラマン分光測定及びX線回折測定を行った。高エネルギーイオン照射後、MeV領域の低エネルギーイオン照射では観測されないブロードなラマンバンドが観測され、酸素欠損量が照射量に対して単調増加していくことが明らかにできた。X線回折ピークの照射挙動も、その結果を支持する。
鳴海 一雅; 楢本 洋*
no journal, ,
10-400keV C, Cイオンを照射したSi(100)ウェハーについて、チャネリング法を併用したラザフォード後方散乱(RBS)法によってSiのスパッタリング収量を評価し、また、C(d, p)C核反応を利用して表面近傍の炭素量を評価した。スパッタリング収量の評価は、事前に200keV Arイオンを510 Ar/cm照射して表面近傍を非晶質化し、非晶質層の厚さの変化を測定した。50keVと400keVのCイオンを照射したSi表面の炭素量を評価した結果、照射量が少ない領域では、照射したCイオンに由来する量以上の炭素が観測された。照射量が10 C/cm台になると表面の炭素濃度が飽和する傾向を示し、飽和炭素量は入射イオンのエネルギーに依存した。この結果は、入射Cイオンに由来する炭素と表面に残存する有機炭素分子の反跳注入に由来する炭素の両者の蓄積とスパッタリングの競合によって、表面近傍に蓄積する炭素原子の量が決まることを示唆している。講演では、Cイオンのスパッタリング収量を評価した結果を併せて議論する。
奥 隆之; 菊池 隆之; 篠原 武尚; 鈴木 淳市; 石井 佑弥; 武田 全康; 加倉井 和久; 佐々木 勇治*; 岸本 幹雄*; 横山 淳*; et al.
no journal, ,
FeNを主成分とする球状Fe-N微粒子は、大きな結晶磁気異方性を有することから、これまで磁気記録テープ材料としておもに用いられてきた針状メタル(Fe-Co合金)粒子に代わる高密度記録テープの新材料として注目され、企業による研究開発が進められている。FeNについては、bcc構造のFeよりも大きな磁気モーメントの発現が、実験やバンド計算の結果から示唆されており、このFe-N微粒子の磁気モーメントの絶対値評価は、材料学的にも意義がある。また、Fe-N微粒子の表面は、酸化及び焼結防止の非磁性ラミネート層で被覆されているが、この非磁性層厚の最適化が、磁気テープの記録性能を最大化するための重要な要素の一つである。そこでわれわれは、微粒子表面の酸化処理により、系統的に表面の非磁性層厚さのみを変化させた試料について、偏極中性子小角散乱実験を行い、Fe-N微粒子の表面非磁性層厚さと磁性コア部の磁化の安定性等の関係について調べた。その結果、表面非磁性層の厚さがある一定の値を超えると磁化が減少する傾向があることがわかった。
相羽 信行
no journal, ,
Newcomb方程式に基づいた物理モデルと理想MHDモデルを併用した2つのMHD安定性解析手法を構築し、それぞれを用いて抵抗性壁モードの実時間制御へ応用可能な数値コード、及びELM現象の物理解析・実験解析が可能な数値コードの開発を行った。講演においては、これらの2つの安定性解析手法の紹介,数値コードのベンチマーク結果及びそれらを用いてこれまでに得られた主な成果について発表する。具体的には、抵抗性壁モードの原因である理想外部キンク・バルーニングモード安定性解析を行い理想内部MHDモードの安定性と外部MHDモードの安定性の相関について明らかにした結果、及びELM現象(安定性)に対するプラズマ上部形状の影響に関する解析を行い、上部形状を尖鋭化することにより局所磁気シアが向上することでELMが安定化されることを明らかにした結果について報告する。
岡崎 良子; 山極 満
no journal, ,
レーザー駆動陽子ビームを強度変調放射線治療(IMRT)に適用するため、ビームの発生から生体への照射までの一連のプロセスを、さまざまなシミュレーションコードを利用することにより詳細に検討する作業を進めている。薄膜から発生する陽子ビームの特性については、既にParticle-in-Cell(PIC)シミュレーションにより研究が進められている。今回は、イオン光学コードTRANSPORT及び荷電粒子輸送コードPHITSを利用して試験的なビーム輸送系を作成し、レーザー駆動陽子ビームと類似のエミッタンスを有するガウシアン・ビームがその輸送系を経ると、どのような照射ビームが得られるのか、また、そのビームによる標的(水)内の線量分布について報告する。本研究により、輸送系を経たレーザー駆動陽子ビームの特性や、そのビームを治療に利用するうえでの問題点を定性的・定量的に明らかにし、今後のレーザー駆動陽子ビームの実用化に向けての基礎とする。