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川村 英之; 広瀬 直毅*; 中山 智治*; 伊藤 集通
JAEA-Data/Code 2021-004, 34 Pages, 2021/05
日本原子力研究開発機構は1999年10月から2008年1月の期間中、津軽海峡を航行するフェリーに設置した超音波流速計を使用して、当該海域における海流調査を実施した。津軽海峡における海流の特徴を把握することは、周辺に立地する原子力施設から放出される放射性物質の海洋拡散を予測する上で重要なことである。さらに、津軽暖流のメカニズムを解明することは、海洋学の観点からも非常に興味深いことである。本調査で整備した海流のデータセットは日毎のデータファイルから構成されており、各データファイルには表層から底層までの流速の東西・南北成分が記録されている。データが欠損している期間があるが、データセットには1999年10月から2008年1月まで合計2,211日分のデータファイルが格納されている。本報では、ユーザーが適切にデータセットを解析するために必要な情報を記載している。第1章では、海流調査の背景と目的を述べる。第2章では、超音波流速計を使用した調査方法について説明する。第3章では、データファイルのレコード形式とデータ取得率について説明するとともに、解析結果の一例を示す。最後に、第4章で本報の結論を述べる。
川村 英之; 伊藤 集通; 小林 卓也; 乙坂 重嘉; 広瀬 直毅*; 外川 織彦
Journal of Oceanography, 66(5), p.649 - 662, 2010/10
被引用回数:2 パーセンタイル:6.13(Oceanography)日本海におけるストロンチウム90とセシウム137の濃度分布と全存在量を計算するために数値実験を行った。モデル結果は、日本原子力研究開発機構が1997年から2002年の間に行った日本海海洋調査で得られた観測結果とよく一致した。表層におけるストロンチウム90濃度とセシウム137濃度は、それぞれ1.0-1.5Bq/mと2.0-2.5Bq/mの範囲であり、これらは北西太平洋における表層濃度と同程度である。しかしながら、中深層における濃度は外洋に比べて高く、このことは日本海において冬季の鉛直混合が活発であることを示唆している。数値実験により見積もられた日本海の海水中に含まれるストロンチウム90とセシウム137の全存在量は1.34PBq(1PBq=10Bq)と2.02PBqとなり、これらは日本海海洋調査で得られた観測データから計算された値と同程度であった。また、ストロンチウム90とセシウム137の全存在量の経年変化を計算し、1960年代半ばにそれぞれ4.86PBqと7.33PBqの最大値を示すことがわかった。
川村 英之; 伊藤 集通; 小林 卓也; 乙坂 重嘉; 広瀬 直毅*; 外川 織彦
Proceedings of Joint International Conference of 7th Supercomputing in Nuclear Application and 3rd Monte Carlo (SNA + MC 2010) (USB Flash Drive), 4 Pages, 2010/10
日本原子力研究開発機構は、1997年から2002年の間に日本海海洋調査を実施して、日本海における人工放射性核種濃度の分布を明らかにした。本研究の目的は、海洋大循環モデルを使用して数値実験を行い、日本海海洋調査で得られたさまざまな知見を確証することである。数値実験は、大気中核実験が主な起源である大気降下量を海面の境界条件とし、東シナ海の平均表層濃度を対馬海峡からの流入境界条件とした。モデル結果は、SrとCsの濃度に関して、観測結果とよく一致した。表層におけるSrとCsの濃度は、それぞれ1.01.5Bq/mと2.02.5Bq/mであり、表層から深層にかけてこれらの濃度は指数関数的に減少する。また、日本海全域におけるSrとCsの全存在量は、それぞれ1.34PBq(1PBq=10Bq)と2.02PBqとなり、日本海海洋調査で得られた観測データによる見積もりとよく一致した。さらに、1945年から2000年における全存在量を計算して、1964年にSrは4.86PBq、Csは7.33PBqの最大値を示すことがわかった。
乙坂 重嘉; 鈴木 崇史; 田中 孝幸; 伊藤 集通; 小林 卓也; 川村 英之; 皆川 昌幸*; 荒巻 能史*; 千手 智晴*; 外川 織彦
JAEA-Data/Code 2009-020, 27 Pages, 2010/02
原子力機構が実施した日本海海洋調査の最終成果物のひとつとして、日本海の海洋環境パラメータと放射性核種に関するデータベース(JASPER)の第1巻が2007年に公開された。第1巻では、代表的な人工放射性核種(ストロンチウム-90,セシウム-137及びプルトニウム-239,240)について、海水及び海底土中の濃度データが収録された。今回はその第2巻として、海水中の放射性炭素同位体比データと、栄養塩濃度(ケイ酸,リン酸,硝酸及び亜硝酸)を含む海洋学的指標(塩分,水温,溶存酸素濃度)のデータが公開される。この第2巻には、現時点で20,398データレコードの登録があり、その内訳は、放射性炭素が1,660データ,水温が2,695データ,塩分が2,883データ,溶存酸素濃度が2,109データ,栄養塩濃度が11,051データである。このデータベースは、人工放射性核種による日本海の汚染状況の継続的な監視,日本海内の生物地球化学的循環,数値シミュレーションモデルの開発検証の各分野において強力なツールとなることが期待される。
小林 卓也; 外川 織彦; 伊藤 集通; 乙坂 重嘉; 川村 英之; 林 圭佐*; 島 茂樹*; 中山 智治*; 印 貞治*
JAEA-Research 2009-040, 63 Pages, 2009/12
使用済燃料再処理施設の平常運転時には、施設から少量の放射性核種が海洋へ計画的に放出される。このため、再処理施設の平常時に海洋へ放出される放射性核種に起因する環境影響を把握することは、施設に対する周辺住民の理解・安心の醸成に貢献するうえで重要なことである。そこで筆者らは、再処理施設から六ヶ所村沖合の下北海域へ放出される放射性核種の移行を予測することを目的として、それまでの日本原子力研究開発機構での研究成果を当該海域に適合させるために、気候値を使用した海水循環予測コードの整備、及び海水中放射性核種移行予測コードの整備を行った。これに併せて、下北海域において沈降粒子特性データを実測し、海水中放射性核種移行予測コードに用いるパラメータを検討した。本報告書は、平成15年度から20年度までに実施した下北沖海域を研究対象海域とした研究成果から、特に重要と思われる成果についてまとめたものである。
川村 英之; 伊藤 集通; 広瀬 直毅*; 滝川 哲太郎*; Yoon, J.-H.*
Journal of Oceanography, 65(4), p.439 - 454, 2009/08
被引用回数:5 パーセンタイル:15.26(Oceanography)本研究では、日本海における汚染物質の移行解明に重要となる沿岸表層流をより正確に推定するために、海洋大循環モデルを使用して対馬暖流の分枝を現実的に再現することを検討・評価した。日本海と外海を結ぶ対馬海峡と津軽海峡の境界条件として、音響ドップラー流向流速分布計(ADCP)観測で得られた流量を使用した。また、人工衛星海面高度計データと沿岸潮位計データを数値モデルに同化した。数値実験の結果、沿岸潮位計データは沿岸域の海況場を修正するのに有効であることが確認された。
大西 光代*; 伊藤 集通
RikaTan(理科の探検), 3(6), p.26 - 27, 2009/06
原子力機構と海洋科学振興財団が、東日本海フェリーの協力を得て、共同研究として実施した津軽海峡における音響ドップラー流行流速分布計(ADCP)を用いた測流について、音響を用いた流れの計測の原理,計測結果の一部、及び津軽海峡における流速測定の環境科学における意義について、小・中学生向きに平易に解説する。
伊藤 集通; 川村 英之; 中山 智治*; 島 茂樹*; 大西 光代*; 磯田 豊*
Proceedings of International Workshop on Monitoring and Forecasting of the Rapid Change in Ocean-Atmosphere Environment in the East Asia, p.13 - 14, 2007/11
本研究では、2000年4月から2002年6月の期間の、フェリー搭載音響ドップラー流向流速分布計(ADCP)観測から見積もられた、津軽暖流の流量変動について解析した。この期間の流量は0.6-2.5Sv(=10ms)の幅で変動し、その平均として1.30.3Svを得た。観測期間の前半は季節変動よりも20-30日周期の変動が卓越し、逆に後半では季節変動(春最小,秋最大)が卓越した。この変動と海峡周辺の水位差の変動との間にはよい相関が見られた。これについては予想の範囲内であった。一方で、流量変動に海峡周辺の局地風が影響していることを示唆する結果も得られた。
外川 織彦; 伊藤 集通; 乙坂 重嘉
保健物理, 42(3), p.234 - 246, 2007/09
原子力機構は、日本海における海水循環及び放射性核種移行過程を解明するために、日本海の日露双方の排他的経済水域での海洋調査を10年に渡って実施してきた。原子力機構による日本海海洋調査は、1994年と1995年における日韓露共同海洋調査へ参加することで始まった。18回に及ぶ海洋調査を通じて、現時点で調査可能な日本海の全域をほぼ網羅することができた。この結果、日本海の人工放射性核種分布マップを作成するとともに、放射性核種の移行過程を概観することができた。さらに、日本海の海水循環及び海洋学的特徴に関する結果も取得した。本解説は、原子力機構による日本海海洋調査で得られた代表的かつ重要な結果をまとめている。本研究で作成された人工放射性核種分布に関するデータセットは、日本海における放射性廃棄物投棄の場合、あるいは日本海内・周辺海域での放射性核種の事故放出に対する原子力緊急時対策の場合に、放射線影響を評価するための基礎データとなる。
伊藤 集通; 乙坂 重嘉; 川村 英之
Journal of Nuclear Science and Technology, 44(6), p.912 - 922, 2007/06
被引用回数:11 パーセンタイル:60.92(Nuclear Science & Technology)日本海における人工放射性核種「Sr, Cs, Pu」の全存在量を初めて見積もった。各調査地点における海水及び海底堆積物中の核種インベントリ、そしてその合計である全インベントリは調査地点の水深に対応して変動することがわかった。そしてSr, Cs, Puに対する全インベントリはそれぞれ、0.52-2.8kBqm, 0.64-4.1kBqm, 27-122Bqmの範囲にあった。海水,海底堆積物中の核種インベントリの測点水深への依存性と格子化水深データを用いて見積もられた日本海における全存在量はSrで約1.20.4PBq, Csで約1.80.7PBq, Puで約6914TBqとなり、これらの総量はおよそ3.1PBqであった。これら3核種の存在量比(Sr:Cs:Pu)は1.0:1.6:0.059でプルトニウムの選択的な蓄積を示唆した。これは存在量と供給量のバランスからも支持されており、それは、SrとCsについては存在量と供給量がほぼ同じレベルにあるが、Puにおいては存在量が 40%弱の超過になっていることを示した。なお、この研究は、日本とロシアの排他的経済水域を網羅して、1997-2003年に実施された広域調査プロジェクト「日本海海洋調査」で得られたデータに基づいて行われた。
伊藤 集通; 川村 英之; 大西 光代*; 磯田 豊*; 中山 智治*; 島 茂樹*
Proceedings of 14th PAMS/JECSS Workshop, p.222 - 223, 2007/05
原子力機構では、現在開発中の日本海海水循環予測モデルの境界値とするため、旧法人時代を含め1999年11月以降、津軽海峡における通過流の計測を継続して実施している。これまでに、1999年から2000年の冬季の津軽海峡(青森-函館)における通過流の流量が 1.02.1Sv(平均1.50.3Sv)の範囲で変動し、それが日本海と太平洋の水位差によって駆動されている可能性があることを示唆した。これに対して本研究期間においては、流量(大間-汐首)が、1.01.8Sv(平均1.40.2Sv)であると見積もられた。また、1999年の結果と比較して、流量の変動範囲及び平均値に大きな違いはないものの、顕著な季節変動が見られないかわりに約30日周期の変動が見られることがわかった。この流量変動は日本海内外の水位差の変動である程度説明できること(R0.5)、また、函館の風の東西成分と弱いながら相関がある(R0.3)ことがわかった。
川村 英之; Yoon, J.-H.*; 伊藤 集通
Journal of Oceanography, 63(2), p.243 - 253, 2007/04
被引用回数:13 パーセンタイル:27.17(Oceanography)日本海では冬季の強い対流混合によって、亜表層や中層の水塊が活発に形成されている。日本海に存在する人工放射性核種等の環境負荷物質の一部がこれらの水塊とともに表層下に輸送されることを考えれば、表層下に存在する水塊の形成量と滞留時間を見積もることは環境負荷物質の挙動を知るうえでも重要である。本研究は、三次元海水循環モデルと粒子追跡法を用いて、日本海の水塊の形成量と滞留時間を計算することを目的としている。その結果、日本海の表層下に存在する水塊の形成量は全体で約3.63Sv(1Sv=10m/s)となった。また、数値実験では水深約1500m以深の深層水はほとんど形成されなかったが、日本海の中層に存在する日本海固有水上部と日本海中層水の形成量はそれぞれ約0.37, 1.51Svと見積もられた。滞留時間に関しては、日本海固有水上部と日本海中層水の滞留時間はそれぞれ約22.6, 2.1年となり、日本海の中層に存在する水塊は数年から数十年の時間スケールの循環を持つことが定量的に確認された。
伊藤 集通; 乙坂 重嘉; 鈴木 崇史; 田中 孝幸; 常山 鉄平; 外川 織彦
JAEA-Data/Code 2007-008, 41 Pages, 2007/03
日本海の海洋環境パラメータと放射性核種に関するデータベース(JASPER)が、日本とロシアの排他的経済水域にまたがって行われた日本海海洋調査(第1期)の最終成果物の一つとして構築された。そして今、他の核種,化学トレーサー,海洋学的データの一連の分冊の最初の巻として、人工放射性核種のデータが一般に公開された。現時点では、データベースには、この分類で252データレコードの登録があり、その内訳は、SrとCsが193データ、Puが163データ、Puが236データとなっている。そしてこれらは、海水,海底堆積物,ろ過粒子から得られたものである。データベースの構築により、近年の日本海環境が可能な限りのパラメータを用いて記録された。われわれは、このデータベースが、人工放射性核種による日本海の汚染の監視,日本海内の物質輸送の研究,数値シミュレーションモデルの開発検証の各分野において強力なツールとなることを信じている。さらに、海洋における人工放射性核種の世界規模での研究,監視に貢献するためデータベースをIAEA-MELとリンクする準備を遂行中である。
常山 鉄平; 伊藤 集通; 乙坂 重嘉
Proceedings of International Symposium on Environmental Modeling and Radioecology, p.236 - 239, 2007/03
本研究の目的は、日本海における人工放射性核種(, , )の収支を見積もることである。このために、これまでに蓄積された対象核種の濃度データを解析した。日本海の海水における対象核種の収支は、総量と流入量,流出量についての時間変化を評価することで見積もられる。対馬海峡を通る供給量と降下量の和が流入量となり、津軽・宗谷の両海峡を通る排出量と海底土への沈降量の和が流出量となる。総量はインベントリーを日本海の表面積で積分することにより見積もられる。それゆえ、総量の時間変化を見積もるために、インベントリーの時間変化がわかっている必要がある。現在までの、解析の結果、インベントリーと表層の核種濃度の相関に時間変化があることがわかった。これらの結果から、ゆっくりとした深層への沈降と急速な深層への沈降の二つがあることがわかった。講演時には、日本海海水における収支の見積もりまでを発表する予定である。そして、その次のステップとして、本結果に海底堆積物に対する解析結果を加味する予定である。
乙坂 重嘉; 伊藤 集通; 外川 織彦
第48回環境放射能調査研究成果論文抄録集(平成17年度), p.57 - 58, 2006/12
本講演は、原子力機構がこれまでに実施した日本海における海洋調査のうち、海底堆積物及び沈降粒子の分析結果から、粒子状物質の輸送過程をまとめたものである。主な解析結果として、(1)日本海における人工放射性核種の分布は、人為的な要因ではなく日本海が持つ物質循環過程を反映している。(2)日本海の北西部では、春季の活発な生物生産によって放射性核種が表層から除去され、深層に運ばれる。(3)日本海北西部深層にもたらされた粒子状物質の一部は東方に水平輸送され、比較的素早く混合・均一化される。(4)アジア大陸起源の粒子状物質の大部分は黄砂によってもたらされることがわかった。これらの知見は、日本海における堆積物中の人工放射性核種分布の決定因子を評価する重要な情報となる。
外川 織彦; 伊藤 集通; 小林 卓也; 乙坂 重嘉; 鈴木 崇史
JAEA-Research 2006-004, 132 Pages, 2006/02
本報告書は、1994年から2002年まで原子力機構(旧原研)が実施した、あるいは原子力機構が参加した日本海海洋調査(第1期)の成果をまとめたものである。最初に、日本海の海洋学的特徴,過去における主な海洋調査、及び日韓露共同海洋調査の主たる結果について説明する。次に、日本海海洋調査の概要を示し、調査で得られた観測・分析の結果と考察を記述する。最後に、成果の概要,関連したモデル開発及び今後の研究を含めて、結論を述べる。これらの調査では、水温,塩分,海流等の海洋学データを取得するとともに、調査海域内において海水,海底土及び沈降粒子試料を採取し、それらに含まれる放射性核種等の分析を行った。これまで実施した調査によって、現時点で日本海の調査可能な海域を大まかではあるがほぼ網羅し、広く連続した放射性核種等分析データ及び海洋学データを取得することができた。これまでの調査で得られた、海洋学的データ,海水及び海底土における人工放射性核種,沈降粒子中の主成分と微量元素及び放射性核種,放射性炭素とクロロフルオロカーボン類など各種のデータを解析し、日本海における海水循環及び放射性核種の移行過程に関する重要かつ新たな知見を得た。
乙坂 重嘉; 天野 光; 伊藤 集通; 川村 英之; 小林 卓也; 鈴木 崇史; 外川 織彦; Chaykovskaya, E. L.*; Lishavskaya, T. S.*; Novichkov, V. P.*; et al.
Journal of Environmental Radioactivity, 91(3), p.128 - 145, 2006/00
被引用回数:20 パーセンタイル:42.02(Environmental Sciences)1998年から2002年にかけて、日本海の22観測点で観測した堆積物中の放射性核種(Sr, Cs及びPu)の存在量と存在比から、同海域における粒子状放射性核種の輸送と蓄積過程を明らかにした。日本海における堆積物中のSr, Cs及びPuの存在量は、それぞれ0.6-87Bq/m, 5.9-379Bq/m及び0.6-78Bq/mの範囲であった。日本海盆及び大和海盆では、深海(水深2km以深)部における堆積物中の放射性核種存在量は同程度であったが、堆積物中の平均Pu/Cs比は大和海盆に比べて日本海盆で大きかった。特に西部日本海盆で見られた大きなPu/Cs比は、この海域表層へのPu/Cs比の大きな粒子の生成と深海への急速な粒子沈降がもたらした結果であると結論付けられた。対馬海盆及び大和海盆縁辺部では、堆積物中の放射性核種の存在量及びPu/Cs比が大きかった。対馬暖流による粒子状放射性核種の水平輸送が南部及び東部日本海における堆積物への大きな放射性核種の蓄積をもたらしたと考えられた。
川村 英之; 小林 卓也; 広瀬 直毅*; 伊藤 集通; 外川 織彦
WIT Transactions on Ecology and the Environment, Vol.88, p.273 - 278, 2006/00
日本原子力研究開発機構では、原子力関連施設の事故等によって海洋に放出される環境負荷物質の挙動を再現・予測するための海洋環境評価システムの開発を行っている。このシステムは、海水循環モデル・海洋中物質移行モデル・被ばく線量評価モデルの三つの数値モデルにより構成されている。研究の目的は、1997年1月に日本海で起こった船舶事故により流出した重油の挙動を再現することによって、本システムの有効性を確認することである。特に現実的な海況場を再現するため、データ同化手法の一つである近似カルマンフィルターを適用した。ロシア船「ナホトカ号」の事故は1997年1月2日に島根県隠岐諸島の北100kmの海域で起こった。流出した重油はその後、兵庫県・京都府・福井県・石川県沖に広がったが、一部は21日頃までに能登半島を越えて新潟県の沿岸に漂着した。この海域には、対馬暖流が卓越しており、対馬暖流の変動・中規模渦・海上風等によって、兵庫県から石川県西部における海域に重油が広く分布したものと考えられる。一方で、日本沿岸を強く流れる対馬暖流の本流により、流出重油の一部は能登半島を越えて新潟県沿岸にまで運ばれたものと思われる。数値実験の結果、データ同化を適用して計算した海流場を用いると流出重油の分布をより現実的に再現することが可能であることが確認された。
伊藤 集通; 乙坂 重嘉
第47回環境放射能調査研究成果論文抄録集,平成16年度, p.59 - 60, 2005/12
日本海における放射性核種の濃度分布の把握と、これらの移行過程及び海水等の循環過程の解明を目的として、日本海における調査研究を1997年から2002年にかけて行い、日本及びロシアの排他的経済水域内で11調査航海を実施した。これまでに海水,海底土中の人工放射性核種の濃度レベルや分布,移行に関して報告してきた。ここでは、これら核種の日本海での全存在量について報告する。Srの全存在量(=海水中存在量+海底土中存在量)は5502900Bq/mの範囲にあった。全存在量の測点間の差は、各測点の水深の違いに依存しており、海域の違いによる目立った差は見られなかった。海水中と海底土中での存在量の比を見ると、多くの測点で全存在量の99%以上を海水中の存在量が占めていたが、大和海盆の縁辺部では海底土中の存在量の寄与が、1.68.6%と比較的大きくなっていた。Csでは、全存在量は6804400Bq/mの範囲にあり、Sr同様目だった海域差は認められない。また、Sr同様、大和海盆の縁辺部にあたる測点で海底土中の存在量の寄与が最大26.9%と大きくなっていた。一方、Puでは、全存在量は、37136Bq/mで、基本的には測点の水深に依存するものの、大和海盆内でのばらつきが大きくなっていた。とくに、Sr及びCsで海底土中の存在量の比率が大きくなっていた大和海盆縁辺部の測点では、海底土中の存在量が全体の50%を越え、最大で93%に達する結果を得た。
伊藤 集通; 木下 正高*; 斎藤 実篤*; 町山 栄章*; 島 茂樹*; 賀佐 信一*; 外川 織彦; 岡野 眞治*
JAERI-Research 2005-028, 121 Pages, 2005/09
本報告書は、日本原子力研究所(原研),海洋科学技術センター(JAMSTEC)及び(財)日本海洋科学振興財団(海洋財団)の3機関が、平成13年度から15年度に実施した共同研究「海洋放射能測定用検出器の運用とデータ解析手法に関する研究」の成果をまとめたものである。本研究では、海洋放射能測定用検出器を搭載した無人探査機等による現場放射能測定により、海洋における放射性核種の分布状況を明らかにすることを目的とする。併せて、測定データの効率的な処理,解析及び評価の手法について検討する。また、海洋に放出される放射性核種の分布状況を迅速に測定する簡易型海洋モニタリングシステムの整備に必要なデータを収集する。このため、本共同研究へ参加した各研究機関がこれまでに開発・整備した海洋放射能測定用検出器(原研:深海用小型電気冷却式Ge検出器,JAMSTEC:深海用NaI検出器,海洋財団:浅海用小型電気冷却式Ge検出器及び浅海用NaI検出器)を無人探査機等に搭載して、実海域において海洋試験を行い、海洋放射能の分布状況を調査した。また、異なる検出器及び異なる手法で測定・解析したデータを比較・検討した。