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深谷 有喜; 松田 巌*; 橋本 美絵*; 久保 敬祐*; 平原 徹*; 山崎 詩郎*; Choi, W. H.*; Yeom, H. W.*; 長谷川 修司*; 河裾 厚男; et al.
Surface Science, 606(11-12), p.919 - 923, 2012/06
被引用回数:7 パーセンタイル:30.39(Chemistry, Physical)反射高速陽電子回折と光電子分光を用いて、Si(111)--Au表面上へのAg原子吸着により発現するSi(111)-
超構造(Si(111)-
-(Au,Ag)表面)の原子配置を調べた。光電子分光による測定から、Si(111)-
-(Au,Ag)表面は、AuとAg原子の組成比の異なった他のSi(111)-
超構造のものと似た電子状態を形成していることがわかった。反射高速陽電子回折のロッキング曲線と回折パターンの解析から、AuとAgの原子配置もまた、他のSi(111)-
超構造のものに近いことがわかった。これらの結果は、二次元電子化合物に特有の特徴と一致する。
松田 巌*; 中村 史一*; 久保 敬祐*; 平原 徹*; 山崎 詩郎*; Choi, W. H.*; Yeom, H. W.*; 成田 尚司*; 深谷 有喜; 橋本 美絵*; et al.
Physical Review B, 82(16), p.165330_1 - 165330_6, 2010/10
被引用回数:9 パーセンタイル:39.19(Materials Science, Multidisciplinary)一価金属の共吸着でSi(111)表面上に形成される超構造は、表面状態の電子数と吸着金属の原子数の割合が常に一定で形成される。このことは、
超構造が電子化合物の特性を持つことを意味している。われわれは、二次元表面合金相である
超構造の安定性を調べるために、Hume-Rothery型化合物における代表的な2つの理論、Jones model及びpseudopotential modelを用いて解析を行った。解析の結果、二次元表面合金相においてはJones modelが破綻しており、pseudopotential modelにおける二次元の表面状態電子を介した中距離原子間相互作用の重要性を見いだした。
深谷 有喜; 橋本 美絵; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
Journal of Physics; Conference Series, 225, p.012008_1 - 012008_8, 2010/06
被引用回数:1 パーセンタイル:49.20(Physics, Applied)近年、原子サイズのワイヤーやシートなどの低次元構造の物性に注目が集まっている。例えば、理想的な一次元金属鎖は、パイエルス転移により、低温で金属絶縁体転移を起こす。現在では、結晶表面上への異種原子の吸着により、バルクでは見られないさまざまな一次元・二次元の超構造の作製が可能になってきている。反射高速陽電子回折は、表面敏感な表面構造解析手法である。陽電子ビームが結晶表面に対して低い視射角で入射すると、全反射を起こす。全反射条件下において、結晶への陽電子の浸入深さは約0.2nm以下となる。したがって、全反射回折時における反射強度は、最表面構造に非常に敏感なものとなる。われわれは、結晶表面上の超構造を調べるために反射高速陽電子回折装置を開発してきた。これまでに、反射高速陽電子回折装置を用いて、結晶表面上の超構造の詳細な原子配置とその相転移について調べてきた。本研究では、反射高速陽電子回折を用いることによって明らかにした、Si(111)--Ag表面とSi(111)-4
1-In表面における構造と相転移について報告する。
橋本 美絵; 深谷 有喜; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
e-Journal of Surface Science and Nanotechnology (Internet), 7, p.436 - 440, 2009/04
Si(111)-41-In表面超構造は擬1次元物質として知られており、120K以下で8
2構造へ相転移し、金属-絶縁体転移を起こす。しかし、8
2構造の原子配置や相転移のメカニズムについては、未だ解明されていない。本研究では、最表面に敏感な反射高速陽電子回折(RHEPD)を用いて、相転移前後のIn/Si(111)表面からのロッキング曲線を測定し、動力学的回折理論に基づく強度計算との比較から、In原子鎖の原子変位について報告する。4
1構造のRHEPDロッキング曲線の結果から、X線回折実験で決定されたジグザグチェーン構造であることを確認した。また、低温相においては理論的に提案されている2つの8
2構造モデルを参考にして、RHEPDロッキング曲線のフィッティングを行い、最終的にヘキサゴン構造に近いモデルを得た。さらに、決定した原子位置を用いて走査トンネル顕微鏡(STM)像を第一原理的に計算したところ観察結果を再現できることがわかり、バンド構造計算からこの構造では約60meVのエネルギーギャップが現れた。以上の結果から、120Kで見られる金属-絶縁体転移は、In原子がジグザグチェーン構造からヘキサゴン構造へ原子変位することに起因していることを明らかにした。
深谷 有喜; 松田 巌*; 橋本 美絵; 成田 尚司*; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
e-Journal of Surface Science and Nanotechnology (Internet), 7, p.432 - 435, 2009/04
Si(111)--Ag表面上に、微量のAgやAuなどの貴金属原子を吸着させると、電気伝導度の上昇を伴って、
超構造が形成される。
-Agと
-(Ag,Au)超構造の原子配置は、これまでにさまざまな研究手法を用いて調べられており、これらの超構造はほとんど同一であると考えられる。最近、Si(111)-5
2-Au表面上へのAg原子の吸着によっても、
超構造(
-(Au,Ag))が発現することが見いだされた。この新しい
超構造の原子配置は、現在のところ全く不明である。そこで本研究では、反射高速陽電子回折(RHEPD)を用いて、この新しい
超構造の解明を行った。
-(Au,Ag)超構造からのRHEPDパターンの強度分布とロッキング曲線の形状は、
-(Ag,Au)超構造からのものに似ていることがわかった。これらの観測結果は、新しい
-(Au,Ag)超構造が他の
超構造に近い原子配置をとっていることを示唆している。詳細な原子配置を決定するために、動力学的回折理論に基づく強度計算を行い、他の
超構造との比較から、今回の新たな
-(Au,Ag)超構造を議論する。
深谷 有喜; 橋本 美絵; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
JAEA-Review 2008-055, JAEA Takasaki Annual Report 2007, P. 154, 2008/11
荷電粒子が結晶に入射すると、さまざまなエネルギー損失過程が起こる。電子ビームの微小角入射の場合、表面プラズモンが主要なエネルギー損失過程であることが知られている。電子ビームによる表面プラズモンの励起過程は、実験,理論の両面から詳細に調べられている。一方、陽電子によるエネルギー損失過程の研究は、電子ビームを用いた研究に比べると非常に限られている。陽電子では、電荷の符号が正値であるため、微小角入射の場合、全反射を起こす。そのため全反射条件下では、陽電子によるエネルギー損失過程は、電子のものとは異なると考えられる。本研究では、エネルギー分析器を反射高速陽電子回折装置に組み込み、Si(111)-77表面からの全反射回折強度のエネルギー損失スペクトルを測定した。測定したスペクトルにおいて、明瞭な5つの損失ピークとゼロロスピークを観測することができた。観測した損失ピークはそれぞれ約10eV間隔で現れており、シリコンの表面プラズモン励起に対応している。スペクトルの解析から、全反射条件での表面プラズモンの平均励起回数は、2.6回であることがわかった。これは、電子ビームの場合に比べると大きい値であり、全反射回折陽電子ビームが結晶表面で表面プラズモンを多数励起することを意味する。
河裾 厚男; 深谷 有喜; 橋本 美絵; 一宮 彪彦; 成田 尚司*; 松田 巌*
Materials Science Forum, 607, p.94 - 98, 2008/11
現在、われわれは反射高速陽電子回折による表面物性研究を行っている。反射高速陽電子回折の優位性は表面第一層での陽電子全反射の発現にある。報告では、幾つかの未知の表面構造と相転移について、最新の研究結果を報告する。
橋本 美絵; 深谷 有喜; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
Applied Surface Science, 254(23), p.7733 - 7736, 2008/09
被引用回数:3 パーセンタイル:16.10(Chemistry, Physical)Inを吸着させたSi(111)の表面は擬一次元構造を形成する。この表面構造は130K以下でパイエルス型の金属-絶縁体転移を起こすことが知られている。これに伴い表面周期性も41から8
2周期に変化する。しかしながら、8
2構造の原子位置がまだ未知であるため、相転移のメカニズムについては解明されていない。本研究では、反射高速陽電子回折を用いてSi(111)-8
2-In表面の擬一次元構造と相転移について研究を行った。ロッキング曲線を詳細に解析した結果、ヘキサゴンモデルを仮定することで実験結果がよく再現できることがわかった。一方Si(111)-4
1-In表面のロッキング曲線は、表面エックス線回折で決定されたジグザグチェーン構造により説明できる。以上より、In/Si(111)表面の金属-絶縁体転移に伴って、Inの原子配列がジグザグチェーン構造からヘキサゴン構造に変化することが明らかになった。また、最適化されたヘキサゴン構造をもとにして第一原理計算から、STM像とバンド分散関係を求め実験結果と比較した結果についても報告する。
深谷 有喜; 橋本 美絵; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
Applied Surface Science, 254(23), p.7827 - 7830, 2008/09
被引用回数:3 パーセンタイル:16.10(Chemistry, Physical)Pb/Ge(111)表面は、典型的な2次元金属系として、実験・理論の両面から精力的に研究されている。この表面は、220K付近で33から
構造へ相転移することが知られているが、その相転移のメカニズムと原子配置は未解決のままである。本研究では、反射高速陽電子回折(RHEPD)を用いて、Pb/Ge(111)表面の相転移と原子配置について調べた。3
3と
相からロッキング曲線を測定したところ、曲線のプロファイルに顕著な違いが見られなかった。動力学的回折理論に基づく強度解析から、3
3と
相ともに、単位格子内の一つのPb原子の垂直位置が他の2つのPb原子より高い、通称1U2D構造を形成していることがわかった。相転移の詳細を調べるために、全反射条件下におけるRHEPD強度の温度依存性も測定した。220K以上の強度変化は、通常のデバイ・ワーラー因子の効果によって説明できる。しかし220K以下では、温度が減少するとともに強度が増大する特異な変化が見られた。これは、相転移に伴ってPb原子の熱振動状態が変化したことを意味している。これらの結果から、この相転移は表面フォノンのソフト化を伴った秩序・無秩序相転移であると考えられる。
深谷 有喜; 橋本 美絵; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
Surface Science, 602(14), p.2448 - 2452, 2008/07
被引用回数:19 パーセンタイル:60.08(Chemistry, Physical)本研究では、反射高速陽電子回折(RHEPD)と第一原理計算を用いて、擬一次元金属鎖を形成し、低温において金属絶縁体転移を起こすIn/Si(111)表面の原子配置とバンド構造を調べた。動力学的回折理論に基づくロッキング曲線の解析から、130Kにおける41構造から8
2構造への相転移に伴って、In原子鎖がジグザグチェーン構造からヘキサゴン構造へ原子変位を起こすことを明らかにした。さらに、最適化したヘキサゴン構造を用いてバンド構造を計算したところ、この構造では60meVのバンドギャップが開くことがわかった。すなわち、ヘキサゴン構造は半導体的な表面であることがわかった。これは、最近の理論計算で予測されたように、低温ではヘキサゴン構造がエネルギー的に安定であることを示している。
橋本 美絵; 深谷 有喜; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
Surface Science, 601(22), p.5192 - 5194, 2007/11
被引用回数:6 パーセンタイル:30.23(Chemistry, Physical)Si(111)41-In表面超構造は、さまざまな表面解析方法で研究が行われ、擬1次元金属鎖であることが確認されている。また、このSi(111)4
1-In表面を室温から冷却すると、120K程度で8
'2'構造へと相転移することが知られている。この相転移については、低温相の持つ
2超周期及び低温で見られる金属バンドピークが高束縛エネルギー側へシフトしていることから、Peierls型の金属-絶縁体転移、すなわちCDW転移が示唆された。しかし、実験手法によって結論も異なるため、低温における8
'2'構造への相転移のメカニズムについてはまだ解明されてないこともあり、興味深い表面である。これまで原子構造や電子状態については注目されてきたが、有限温度による熱的揺らぎについてはあまり考慮されていない。本研究では、反射高速陽電子回折を用いてロッキング曲線を測定し、動力学的回折理論に基づく強度解析から、低温と室温におけるIn/Si(111)表面構造について調べた。
河裾 厚男; 深谷 有喜; 林 和彦*; 橋本 美絵; 一宮 彪彦
Physica Status Solidi (C), 4(10), p.3924 - 3927, 2007/09
被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Physics, Atomic, Molecular & Chemical)電子による表面プラズモン励起過程は、電子エネルギー損失分光を通じて精力的に研究されてきた。一方で、表面における陽電子のエネルギー損失過程は十分には研究されていない。入射角度が十分に低い場合、陽電子は表面で全反射回折する。全反射回折は電子の場合には原理的に起こらない。本研究において、われわれはエネルギー分析型の反射高速陽電子回折を用いて幾つかの表面における陽電子エネルギー損失分光測定を行った。Si(111)-77表面において、明瞭に分離された5本のエネルギー損失ピークを観測した。そのエネルギー間隔は約10eVであり、シリコンの表面プラズモンエネルギーに一致している。エネルギー損失スペクトルは、大略ポアソン分布により近似できる。プラズモンの平均励起回数は2.6回であり、電子回折の低角度極限に対する値に一致する。このように陽電子は電子よりも効率的にエネルギーを損失することが明らかになった。さらに鏡面反射点プロファイルの裾部分が、プラズモン励起により拡がることを見いだした。
河裾 厚男; 深谷 有喜*; 林 和彦; 橋本 美絵; 一宮 彪彦
Physica Status Solidi (C), 4(10), p.3924 - 3927, 2007/09
よく収束された高平行な陽電子ビームを物質表面に小角入射させると全反射が起こる。そのため、反射高速陽電子回折(RHEPD)は最表面構造をバルクの影響なく決定するのに適した方法である。電磁レンズを用いることで、われわれは以前よりもコヒーレントな陽電子ビームを形成した。われわれは、Si-77表面からの陽電子回折図形が電子回折図形と強度分布において大きく異なっていることを見いだした。その違いは、表面における陽電子の熱散漫散乱を考慮することで合理的に説明できることがわかった。さらなる応用として、われわれはSi-Ag超薄膜の相転移を研究し、表面敏感な陽電子回折強度が特徴的な温度依存性を示すことを見いだした。動力学回折理論に基づき、その温度依存性は秩序・無秩序相転移によって説明できることが解明された。この結果は、表面分野において長い間論争となっていた問題に決着をつけた。さらに最近になり、われわれは陽電子と表面の相互作用が、特に非弾性散乱過程に関して、電子の場合とは異なることを見いだした。
橋本 美絵; 深谷 有喜; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
no journal, ,
Si(111)-41-In表面は擬1次元金属鎖を形成することが知られている。この表面は120K以下で8
'2'構造へ相転移し、金属-絶縁体転移を起こす。しかし、低温相である8
'2'構造の原子配置や相転移のメカニズムの詳細については、未だ解明されていない。本研究では、最表面に敏感な反射高速陽電子回折(RHEPD)を用いた8
'2'表面の構造解析と走査型トンネル顕微鏡(STM)像の観察,第一原理シミュレーションの結果について報告する。293KのRHEPDロッキング曲線の解析から、4
1構造はX線回折実験で決定されたジグザグチェーン構造であることを確認した。60Kの8
'2'構造については、理論的に提案されている2つの構造モデルを参考にして、ロッキング曲線のフィッティングを行った。RHEPDの解析から、最終的にヘキサゴン構造に近いモデルを得た。さらに、RHEPDの解析から決定した8
'2'構造の原子位置を用いてSTM像を第一原理的に計算したところ、完全ではないがSTM像の観察結果を説明できることがわかった。また、バンド構造計算から、この構造では約60meVのエネルギーギャップが現れ、120Kで見られる金属-絶縁体転移が説明できることがわかった。
橋本 美絵; 深谷 有喜; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
no journal, ,
Si(111)-41-In表面超構造は擬1次元物質として知られており、120K以下で8
2構造へ金属-絶縁体転移を起こす。しかし低温相である8
2構造の原子配置については、未だ解明されていない。本研究では、最表面に敏感な反射高速陽電子回折(RHEPD)を用いて、相転移前後のIn/Si(111)表面からのロッキング曲線を測定し、動力学的回折理論に基づく強度計算との比較から、擬1次元In鎖の原子変位について報告する。RHEPDロッキング曲線の結果から、4
1構造はX線回折で決定されたジグザグチェーン構造であることを確認した。また8
2構造からのロッキング曲線の測定を行ったところ、相転移に伴ってロッキング曲線の形状が変化することを見いだした。理論的に提案されている2つの8
2構造モデルを参考に、ロッキング曲線のフィッティングを行い、最終的にヘキサゴン構造に近いモデルを得た。さらに、RHEPD解析から決定した原子位置を用いて走査トンネル顕微鏡(STM)像を第一原理的に計算したところ、STM像の観察結果を再現できることもわかった。以上の結果から、120Kで見られる金属-絶縁体転移は、In原子がジグザグ構造からヘキサゴン構造への原子変位に起因していることを明らかにした。
河裾 厚男; 前川 雅樹; 深谷 有喜; 橋本 美絵; 一宮 彪彦
no journal, ,
低エネルギー陽電子ビームを用いると、物質表面層の格子欠陥や異種物質間の界面構造の評価が可能となる。今日では、陽電子マイクロビームを走査することで、材料局部に存在する欠陥の検出やその空間分布も得られる。一方で、陽電子消滅誘起オージェ電子分光(PAES)や低エネルギー陽電子回折などの陽電子分光技術も開発されている。これらを使うと、従来の手法よりも精度よく表面構造解析が行える。筆者等が開発した反射高速陽電子回折(RHEPD)でも、電子にはない全反射回折が発現し、表面構造解析が高い精度で行える。陽電子の重要な属性としては、さらにスピンがある。電子との違いは、スピンベクトルと磁化ベクトルが同一方向であることである。ベータ崩壊核種から放出される陽電子は、パリティ非保存のため進行方向にスピン偏極している。この特性が今後十分に開拓されれば、磁性などに関する知見が得られると期待される。講演では、筆者等が行っている陽電子ビームを用いた表面層の格子欠陥の研究,界面構造の研究、そして表面超構造の研究について紹介するとともに、新たな陽電子ビーム技術の開発について述べる。さらに、陽電子ビームを用いた物性研究の今後について展望する。
深谷 有喜; 橋本 美絵; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
no journal, ,
本研究では、結晶表面における陽電子ビームの非弾性散乱過程を調べるために、エネルギー分析器を製作した。製作したエネルギー分析器は、静電型の円筒レンズと障壁グリッドから構成されている。円筒レンズを用いることにより、陽電子ビームの透過強度の減少の原因となるグランドメッシュを取り除き、透過強度の増大と分解能の向上を図った。ビーム軌道のシミュレーションでは、回折ビームが障壁グリッドに対して垂直に入射することを確認した。製作したエネルギー分析器を用いて、7kVに加速した陽電子ビームのエネルギー分析スペクトルを測定したところ、阻止電圧7kV近傍で入射ビームの透過強度が急激に減少し、この分析器が表面プラズモンと体積プラズモンが分離可能な分解能を持っていることを確認した。講演では、エネルギー分析器の分解能試験と全反射条件下におけるSi(111)-77清浄表面からのエネルギー分析スペクトルの測定結果について報告する。
橋本 美絵; 深谷 有喜; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
no journal, ,
Si(111)-41-In表面は、表面上に形成される擬1次元物質として有名であり、120K程度で電荷密度波の形成を伴うパイエルス転移を起こすと考えられているが、低温相であるSi(111)-8
'2'-In表面の原子配置がわかっていない。本研究では、最表面に敏感な反射高速陽電子回折(RHEPD)を用いて、In/Si(111)表面からのRHEPD強度のロッキング曲線を測定し、動力学的回折理論に基づく強度計算による解析から、相転移前後における擬1次元金属鎖の原子変位について報告する。4
1構造(293K)のRHEPDロッキング曲線の測定結果は、X線回折から決定されたジグザグチェーンから構成されていることを確認した。また、8
'2'構造(60K)からのRHEPDロッキング曲線の測定を行い、理論的に考えられている8
'2'構造を参考に解析を行ったところ、ヘキサゴン構造の理論値に近いモデルを得た。以上の結果から、120Kで見られる金属絶縁体転移は、In原子がジグザグ構造からヘキサゴン構造への原子変位に起因していることがわかった。さらに、RHEPDから決定した原子位置を用いてSTM像を第一原理的に計算し、STM像観察との比較から、擬1次元金属鎖の相転移について総合的に検証する。
深谷 有喜; 橋本 美絵; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
no journal, ,
Ge(111)表面上に1/3原子層の鉛原子を吸着させると、室温において構造を形成する。この
構造は、220K以下で3
3構造へと相転移する。Pb/Ge(111)表面の相転移は、これまでに実験,理論の両面から詳細に調べられてきているが、未だにわかっていない。本研究では、反射高速陽電子回折(RHEPD)の最表面構造敏感性を利用し、相転移前後の表面構造決定から、3
3-
構造相転移のメカニズムについて調べた。110Kと室温でロッキング曲線を測定したところ、温度の違いによる曲線の明確な差異は見られなかった。この結果は、Pb原子の平衡位置が3
3相と
相で同じであることを意味している。したがって、Pb/Ge(111)表面構造相転移は、高温相において熱的に揺らいでいるPb原子が、低温相において凍結する、秩序・無秩序型の相転移であると考えられる。RHEPD強度の温度依存性の測定と動力学的回折理論に基づく強度解析から、Pb/Ge(111)表面構造相転移のメカニズムの詳細について報告する。
橋本 美絵; 深谷 有喜; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
no journal, ,
擬1次元金属鎖を形成するSi(111)-41-In表面は、120K程度で電荷密度波の形成を伴うパイエルス転移を起こすと考えられている。しかし低温相の原子配置がわかっておらず、相転移のメカニズムの詳細は解明されていない。本研究では、最表面に敏感な反射高速陽電子回折を用いて、In/Si(111)表面のロッキング曲線を測定し、動力学的回折理論に基づく強度計算との比較から、相転移前後における擬1次元金属鎖の原子変位について報告する。前回、高温相のロッキング曲線の測定結果とX線回折から決定された原子配置を用いて計算した結果がよい一致を示したことから、In原子はジグザグチェーンを形成していることを明らかにした。今回、低温相のロッキング曲線の測定を行い、従来から考えられているトライマー構造を用いた計算では、実験結果の特徴を再現できなかった。そこで、最近理論的に予測されたヘキサゴン構造を用いて計算したところ、実験結果をよく説明できた。以上の結果から120Kで見られる金属-絶縁体転移は、In原子がジグザグ構造からヘキサゴン構造への原子変位に起因していることがわかった。