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永井 晴康; 中山 浩成; 佐藤 大樹; 谷森 達*
第52回可視化情報シンポジウム講演論文集(インターネット), 4 Pages, 2024/07
原子力施設の事故により放出された放射性プルームの3次元分布を定量的に可視化するための革新的モニタリング手法を提案し、その解析手法の実現可能性を仮想データを用いた試験により示す。提案する手法は、電子飛跡検出型コンプトンカメラ(ETCC)によるガンマ線分光イメージングとドップラーライダーによる3次元気流場測定に基づくリアルタイム高分解能大気拡散シミュレーションの組合せである。ETCCは、対象とする放射性プルーム中の特定の放射性核種からの直達ガンマ線の入射方向分布画像を取得できる。放射性プルームの3次元分布は、対象の周囲複数個所に設置したETCCの直達ガンマ線画像とリアルタイム大気拡散シミュレーションによるプルームの濃度分布予測を融合した逆解析により再構築される。解析手法を試作し、大気拡散と放射線輸送の数値シミュレーションにより生成された仮想的なデータを用いて試験を行った。
中山 浩成; 河野 孝昭*
Proceedings of 22nd International Conference on Harmonisation within Atmospheric Dispersion Modelling for Regulatory Purposes (HARMO22), 4 Pages, 2024/06
原子力緊急時において大気拡散挙動や汚染域の空間分布などの詳細情報を迅速に得るために、3次元風速場気象観測値の内挿と事前計算による風況場データベースの乱流風速データとを融合させて粒子拡散モデルの入力条件として与えた迅速な大気拡散計算手法を開発した。しかし、気象観測の平均風速から乱流風速を推定する経験式は大気安定度の違いを考慮されておらず、大気乱流の強さに応じた拡散挙動の再現に課題があった。本研究では、迅速大気拡散計算手法の精緻化のために、原子力施設オンサイト気象観測から得られる実測データを解析し、平均風速と乱流風速の関連性を大気安定度毎に類型化することを目的とする。
中山 浩成; 竹見 哲也*
Atmospheric Science Letters, 25(4), p.e1204_1 - e1204_9, 2024/04
シームレス大気拡散計算手法の確立に向け、局所域高分解能大気拡散モデルLOHDIM-LESにWRFなどの領域気象モデルにより計算される気象場が保有する乱流エネルギーを適切に反映させるために、風速変動を動的に制御可能な乱流生成手法を開発した。この手法は、気象モデルの乱流統計量の計算値と局所域モデルのものとの比を乱流駆動係数として、ターゲットとする風速変動を動的に制御してモデルを接続するものである。試験計算として、実大気の乱流統計量に関する経験式に基づく標準データをターゲットとして再現した大気乱流場での拡散シミュレーションを実施した。その結果、乱流駆動係数を用いない通常の乱流生成手法による大気拡散幅は拡散風洞実験結果よりも大幅に小さかったが、本手法により得られた拡散幅は実験結果と良好に一致した。これにより、動的に制御可能な本乱流生成手法の有効性を実証することができた。
永井 晴康; 古田 禄大*; 中山 浩成; 佐藤 大樹
Journal of Nuclear Science and Technology, 60(11), p.1345 - 1360, 2023/11
被引用回数:0 パーセンタイル:0.01(Nuclear Science & Technology)放射性プルームの3次元分布を定量的に可視化するとともに放射性核種の放出量を推定する革新的なモニタリング手法を提案し、その実現性を予備的な試験により確認した。提案する手法は、電子飛跡検出型コンプトンカメラ(ETCC)によるガンマ線画像分光測定とドップラーライダーによる3次元風速測定に基づくリアルタイム高分解能大気拡散シミュレーションを組み合わせている。複数箇所に設置したETCCで測定された放射性プルーム中の個々の放射性核種からのラインガンマ線画像とリアルタイム大気拡散計算による大気中濃度分布情報を融合した逆解析により、放射性核種ごとの3次元濃度分布を再構成する。大気拡散シミュレーションと放射線輸送計算で生成した仮想的な実験データを用いた試験により、試作した解析手法が十分な性能を有することを示した。
中山 浩成; 佐藤 大樹
日本原子力学会誌ATOMO, 65(10), p.621 - 624, 2023/10
局所域高分解能大気拡散・線量評価システムLHADDASは、現実気象条件下で建物影響を考慮した放射性物質の大気拡散の詳細評価が可能なLOHDIM-LES、建物遮蔽効果を考慮して迅速に空間線量率評価が可能なSIBYL、及び都市大気拡散の即時解析が可能なCityLBMの計算コードを統合したシステムであり、ユーザの目的に応じて計算コードの柔軟な選択が可能である。このため、LHADDASは、原子力施設の立地審査のための従来手法に代わるより現実的な事前解析、原子力緊急時対応のための対策立案や影響評価、都市市街地拡散テロにおける即時解析など局所域大気拡散の様々な課題の解決に活用できる。応用事例として、警察庁科学警察研究所との共同研究「LHADDASを用いた放射線テロ対策シミュレーション」の実施内容を紹介する。
中山 浩成; 小野寺 直幸; 佐藤 大樹
Isotope News, (785), p.20 - 23, 2023/02
LHADDASは、現実気象条件下で建物影響を考慮した放射性物質の大気拡散の詳細評価が可能なLOHDIM-LES、建物遮蔽効果を考慮して迅速に空間線量率評価が可能なSIBYL、及び都市大気拡散の即時解析が可能なCityLBMの計算コードを統合したシステムであり、ユーザの目的に応じて計算コードの柔軟な選択が可能である。このため、LHADDASは、原子力施設の立地審査のための従来手法に代わるより現実的な事前解析、原子力緊急時対応のための対策立案や影響評価、都市市街地拡散テロにおける即時解析など局所域大気拡散の様々な課題の解決に活用できる有用性を有する。LHADDASは、放出率・気象データ・地理情報データ・線量率寄与応答関数の入力ファイルの処理や計算条件等の入力データの設定を行うプリプロセス、LOHDIM-LES・CityLBMによる大気拡散計算のためのソルバー、SIBYLによる空間線量率空間分布を詳細評価するポストプロセスの3つのパートにより構成されている。計算シミュレーションに必要な入出力ファイルを整合させ、それらを公開データから生成可能とすることで、簡易工程でシミュレーション実行が可能な統合システムを完成させた。
小野寺 直幸; 井戸村 泰宏; 長谷川 雄太; 中山 浩成
第36回数値流体力学シンポジウム講演論文集(インターネット), 3 Pages, 2022/12
高解像度の風況解析は、スマートシティ設計に活用できるなど非常に重要である。都市部は高層ビルが密集した複雑な形状をしており、それらにより風の流れが乱流状態となるため、都市街区全域から細かな路地までを捉えた大規模計算が必要である。それらの課題に対して、本研究グループは、メソスケール気象データを境界条件として利用したマルチスケールの汚染物質拡散手法CityLBMコードの開発を進めている。CityLBMは、計算領域周辺の境界条件をメソスケール気象データに同化させるナッジング法を導入することで、現実の風況を反映した解析が可能である。しかしながら、従来のナッジング法では、ナッジング係数が一定のため、大気状態が変化するような長時間解析の乱流強度を再現できない問題点が挙げられる。本研究では、アンサンブルカルマンフィルタを用いた動的なナッジング・パラメータの最適化手法を提案する。CityLBMの検証として、米国オクラホマシティの風況実験に対する解析を実施した。シミュレーションと観測のそれぞれで得られる乱流強度の誤差を低減するようにナッジング係数を更新した結果、一定のナッジング係数の結果と比較して10%ほど予測精度を向上することを確認した。
中山 浩成; 小野寺 直幸; 佐藤 大樹; 永井 晴康; 長谷川 雄太; 井戸村 泰宏
Journal of Nuclear Science and Technology, 59(10), p.1314 - 1329, 2022/10
被引用回数:5 パーセンタイル:81.82(Nuclear Science & Technology)放射性物質の大気放出に対して、放出点から数km以内の局所域スケールでの放射性物質の複雑な大気濃度分布及び沈着分布を計算するとともに、それらからの放射線について建物による遮蔽効果を考慮して詳細に線量評価が行える解析システム(LHADDAS)を開発した。本システムは、個々の建物の影響を考慮して詳細に拡散計算が行える局所域高分解能大気拡散計算コード(LOHDIM-LES)、都市域に対して迅速に拡散計算が行えるリアルタイム都市大気拡散計算コード(CityLBM)、建物の遮蔽効果を考慮した3次元体系で放射線の挙動を迅速に計算できる線量評価コード(SIBYL)及び計算に必要となるデータベースと入力作成プログラムから構成されている。本解析システムは、原子力施設の安全審査における風洞実験に代わる現実的な評価手法、原子力事故時の施設内外作業員の被ばく線量評価、都市域での放射性物質拡散テロに対する汚染状況把握と被ばく線量評価など、幅広い活用が期待できる。
小野寺 直幸; 井戸村 泰宏; 長谷川 雄太; 中山 浩成
第35回数値流体力学シンポジウム講演論文集(インターネット), 3 Pages, 2021/12
高解像度の風況解析は、スマートシティ設計に活用できるなど非常に重要である。都市部は高層ビルが密集した複雑な形状をしており、それらにより風の流れが乱流状態となるため、都市街区全域から細かな路地までを捉えた大規模計算が必要である。本研究グループでは、GPUおよび適合細分化格子(AMR)法を用いた格子ボルツマン法(LBM)に基づく解析手法CityLBMを開発している。現実の風況を再現するためにメソスケール気象予測モデルの風況および地表面温度が境界条件として必要となる。本研究では、それらの境界条件の高度化として、Monin-Obukhov相似則に基づく熱流束を求める物理モデルを導入した。物理モデルの検証として、米国オクラホマシティの野外観測実験に対して解析を実施し、観測値を良く再現できていることを確認した。
中山 浩成; 佐藤 大樹; 永井 晴康; 寺田 宏明
Journal of Nuclear Science and Technology, 58(9), p.949 - 969, 2021/09
被引用回数:7 パーセンタイル:75.12(Nuclear Science & Technology)局所域高分解能大気拡散モデルLOHDIM-LESに、原子炉建屋などの建物による遮蔽効果を考慮して詳細に線量評価が行える計算手法を導入した。線量計算においては、放射線輸送計算コードPHITSにより、大気拡散モデルの計算格子ごとに地表面沈着・大気中の放射性核種から地上の評価点への線量寄与を計算して整備した応答行列のデータベースを用いた。精度検証として、六ヶ所再処理工場においてアクティブ試験により大気放出された放射性核種の局所域拡散シミュレーションを行った。敷地内のモニタリングポストにおいて得られた空間線量率と比較したところ、良好に一致することを確認した。これにより、詳細線量計算手法を導入したLOHDIM-LESは、建物影響を考慮して空気中濃度や線量を詳細に評価できることを実証した。
中山 浩成; 吉田 敏哉; 寺田 宏明; 門脇 正尚
Atmosphere (Internet), 12(7), p.899_1 - 899_16, 2021/07
被引用回数:1 パーセンタイル:5.59(Environmental Sciences)CLADS補助金事業「ガンマ線画像から大気中3次元核種分布及び放出量を逆解析する手法の開発」において、原子力機構の分担課題として実施する、大気拡散計算と放射線計測を融合して大気放出された放射性核種の濃度分布と放出量を推定する手法開発のために実施するものである。本研究では、福島第一原子力発電所の廃炉工程で発生しうる放射性物質の大気放出を想定した大気拡散予測の精度向上のために、原子力機構内にある建物を原子炉建屋と見なして、その周辺の気流の集中観測と簡易的な拡散実験を実施した。気流の集中観測としては、対象建物よりやや離れた所にドップラーライダーを設置して、上空の風速を3次元的に測定・取得した。また、建物屋根面に超音波風速計を設置して、建屋の影響で生じる非定常性の強い複雑な乱流の情報として、高周波変動風速も測定・取得した。簡易的な拡散実験としては、放射性物質の放出をミスト散布により模擬し、ミストの拡散の様子をビデオカメラで撮影した。次に、建物影響を考慮した詳細乱流計算によるデータベースと気象観測との結合による簡易拡散計算を行った。拡散シミュレーション結果とカメラ撮影したミスト拡散とを比較したところ、各時刻において良好に拡散挙動が再現できていることを確認した。これにより、本研究で提案したフレームワークの有効性を示すことができた。
中山 浩成; 竹見 哲也*; 吉田 敏哉
Atmosphere (Internet), 12(7), p.889_1 - 889_15, 2021/07
被引用回数:2 パーセンタイル:13.25(Environmental Sciences)局所域高分解能大気拡散モデルに気象シミュレーションデータ及び気象観測データを入力値として与え、2003年に米国オクラホマシティー市街地で行われた野外拡散実験を対象にした大気拡散計算をそれぞれ行い、入力条件の違いが拡散予測精度に及ぼす影響を調べた。前者では気象シミュレーションの3次元データを与え、後者では鉛直一次元の気象観測データを水平方向に一様性を仮定して、大気拡散モデルの入力条件として与えた。その結果、気象シミュレーションデータを入力条件とした場合、気象観測データを入力条件とした場合よりも再現性が良かった。ただし、後者の入力条件時における計算結果も、拡散予測精度に関する推奨値(実験値と計算値の比が0.5から2.0倍の範囲内にある割合)と同等の値を示した。以上により、気象シミュレーションデータに加え、定点観測された気象観測データをモデル入力条件とした拡散計算手法も有望であることが示された。
小野寺 直幸; 井戸村 泰宏; 長谷川 雄太; 中山 浩成; 下川辺 隆史*; 青木 尊之*
Boundary-Layer Meteorology, 179(2), p.187 - 208, 2021/05
被引用回数:13 パーセンタイル:75.07(Meteorology & Atmospheric Sciences)汚染物質の拡散解析手法CityLBMは、GPUスーパーコンピュータ上において、適合細分化格子(AMR)法を適用する事で、数kmの解析領域の実時間解析が可能である。本論文では、CityLBMの検証としてオクラホマ市で実施された野外拡散実験(JU2003)に対する解析を実施した。計算条件として、Weather Research and Forecasting(WRF)モデルを用いた風況条件および、建物と植生を考慮した地表面データをCityLBMに与えることで、JU2003の実験条件を再現した。さらにアンサンブル計算の実施により、乱流の不確実性を軽減した。汚染物質の時間平均濃度および最大値を実験測定値と比較した結果、アンサンブル計算により解析精度を向上すると共に、2m解像度・4km四方の解析では、24個の計測値に対して70%の高い割合でFactor2を満たす事を確認した。
佐藤 大樹; 中山 浩成; 古田 琢哉; 吉廣 保*; 坂本 健作
PLOS ONE (Internet), 16(1), p.e0245932_1 - e0245932_26, 2021/01
被引用回数:2 パーセンタイル:29.53(Multidisciplinary Sciences)本研究では、大気および土壌に不均一に分布する放射性核種からのガンマ線による外部被ばく線量評価のための計算モデルSIBYLを開発した。SIBYLは、原子力機構が開発した局所域大気拡散モデルLOHDIM-LESに接続し、LOHDIM-LESが予測した放射性核種の分布に従い地表面での線量率分布を計算できる。原子力緊急時における利用で要求される計算速度と精度を実現するため、汎用放射線輸送計算コードPHITSを用いて膨大な計算資源を要する3次元放射線輸送計算を予め行い、その結果を線量計算に利用するデータベースとして整備した。また、SIBYLは、ビル等の障害物による減衰や地表面の標高変化を考慮した線量評価ができるという特長がある。そこで、排気塔からのKrの大気放出および都市部でのCsの拡散を想定した5ケースに対して、SIBYLで地表面の線量率分布を計算し、その結果をPHITSによる線量率分布の評価結果と比較して、SIBYLの信頼性と性能を検証した。その結果、評価地域の大部分で両者の評価結果は10%以内で一致し、かつSYBILはPHITSに対して約100倍以上高速に線量を評価し、緊急時にも適用可能であることを確認した。
中山 浩成; 竹見 哲也*
Journal of Advances in Modeling Earth Systems (Internet), 12(8), p.e2019MS001872_1 - e2019MS001872_18, 2020/08
被引用回数:2 パーセンタイル:9.11(Meteorology & Atmospheric Sciences)データ同化手法は、数値モデルに観測値を入力してより現実に近い結果を出せるように計算値を修正していく技術である。しかしながら、これまでの手法は主に広域スケールを対象とした気象モデルのために開発されたものであり、通常用いられる観測値も10分から1時間程度の間隔で時間平均されたものが多い。そのため、従来の手法は、瞬間的に変化する乱流スケールの風速変動を考慮できず、乱流の非定常計算を行うLarge-Eddy Simulation(LES)モデルには適さないという問題があった。そこで本研究では、振動方程式を使用して平均風速の観測データをLESモデルに融合するデータ同化手法を開発した。まず、試計算により振動方程式中の固有角振動数を接近流が持つ風速変動のピーク振動数よりも小さくすると乱流スケールの短周期変動性状を維持しつつターゲットとする平均風速分布に近づけることが分かった。次に、この固有角振動数をもとに京都市街地で測定された気象観測データを用いてデータ同化を行ったところ、乱流構造を維持しつつターゲットとする平均風速分布に近づけることができた。以上により、振動方程式を用いた本データ同化手法はLESモデルに適合した手法として有効に利用できる可能性が示唆された。
吉田 敏哉; 中山 浩成
日本計算工学会論文集(インターネット), 2020, p.20200013_1 - 20200013_9, 2020/07
都市域で放出された有害物質の拡散を迅速かつ正確に予測するため、large-eddy simulation (LES)モデルで事前計算した流れ場を用いて、Reynolds-averaged Navier-Stokesモデルにより拡散シミュレーションを行う結合モデルを提案した。まず、本モデルを簡易なストリートキャニオン内における物質拡散に適用した。その結合モデルの結果を風洞実験と比較し、乱流スカラーフラックスの経験パラメータを調整した。最適化したパラメータを使用した場合、結合モデルが予測した水平拡散分布はLESモデルの計算結果とよく一致することが分かった。続いて、結合モデルを実在都市上の物質拡散予測へ適用した。その結果、結合モデルは短い計算時間でLESモデルに近い計算精度を示すことができた。以上より、結合モデルは都市域にて危険物質が放出された際の即時評価に対し、有効なモデルになりうると考える。
中山 浩成; 竹見 哲也*
Proceedings of 19th International Conference on Harmonisation within Atmospheric Dispersion Modelling for Regulatory Purposes (HARMO-19) (USB Flash Drive), 5 Pages, 2019/06
データ同化手法は、数値モデルに観測値を入力してより現実に近い結果を出せるように計算値を修正していく技術である。しかしながら、これまでの手法は主に広域スケールを対象とした気象モデルのために開発されたものであり、通常用いられる観測値も10分から1時間程度の間隔で時間平均されたものが多い。そのため、従来の手法は、瞬間的に変化する乱流スケールの風速変動を考慮できず、乱流の非定常計算を行うlarge-eddy simulation(LES)モデルには適さないという問題があった。そこで本研究では、振動方程式を使用して平均風速の観測データをLESモデルに融合するデータ同化手法を開発した。試計算として、まず上流側において1/7べき指数の風速分布を持つ接近流を作成し、本データ同化手法を用いて1/4べき指数の風速分布に近づけることを試みた。その結果、振動方程式中の固有角振動数を接近流が持つ風速変動のピーク振動数よりも小さくすると、乱流スケールの短周期変動性状を維持しつつターゲットとする平均風速分布に近づけることができた。以上により、振動方程式を用いた本データ同化手法はLESモデルに適合した手法として有効に利用できる可能性が示唆された。
中山 浩成; 竹見 哲也*
International Journal of Environment and Pollution, 64(1/3), p.125 - 144, 2018/00
原子力緊急時において、プルーム拡散挙動や汚染域の空間分布などの詳細情報を得るために、Large-Eddy Simulation(LES)に基づく計算流体力学モデルの活用が有効である。しかしながら、LESによる非定常計算の実行に膨大な時間が必要であることが緊急時の適用において課題となっている。そのため、局所域スケールでの大気拡散挙動を迅速かつ詳細に予測できる計算手法の開発を目的とする。本研究で提案する手法は、初めに、代表的な風速データを入力条件として与えた仮想気象条件下で原子力施設から点源放出されたプルームの大気拡散計算を36風向について行い、10分平均での風速と濃度のデータを各風向毎に作成する。次に、風洞実験で用いる重合法を応用して、対象期間での濃度分布を、平均風向の出現頻度に応じて10分平均濃度分布を重ね合わせて評価する。本手法の妥当性を調べるために、観測データを入力条件として与えた実気象条件下での大気拡散計算を行い、重合法により推定された濃度分布と比較した。その結果、変化する気象状況下での1時間平均濃度分布と良好に対応することが示された。これにより、重合法を用いた局所域大気拡散計算手法は即時対応が可能であることが示唆された。
中山 浩成; 竹見 哲也*
Proceedings of 18th International Conference on Harmonisation within Atmospheric Dispersion Modelling for Regulatory Purposes (HARMO-18) (USB Flash Drive), p.843 - 847, 2017/10
原子力緊急時において、プルーム拡散挙動や汚染域の空間分布などの詳細情報を得るために、Large-Eddy Simulation(LES)に基づく計算流体力学モデルの活用が有効である。しかしながら、LESによる非定常計算の実行に膨大な時間が必要であることが緊急時の適用において課題となっている。そのため、重合法を用いることにより局所域スケールでの大気拡散挙動を迅速かつ詳細に予測できる計算手法の開発を目的とする。本研究で提案する重合法は、初めに、代表的な風速データを入力条件として与えた仮想気象条件下での原子力施設から点源放出されたプルームの大気拡散計算を36風向について行い、10分平均での風速と濃度のデータを各風向毎に作成する。次に、対象期間での濃度分布を、風向変動の出現頻度に応じて10分平均濃度分布を重ね合わせて評価する。本手法の妥当性を調べるために、観測データを入力条件として与えた実気象条件下での大気拡散計算を行い、重合法による濃度分布と比較した。その結果、変化する気象状況下での1時間平均濃度分布と良好に対応することが示された。これにより、重合法を用いた局所域大気拡散計算手法は即時対応が可能であることが示唆された。
中山 浩成; 竹見 哲也*; 永井 晴康
Journal of Nuclear Science and Technology, 53(6), p.887 - 908, 2016/06
被引用回数:16 パーセンタイル:82.24(Nuclear Science & Technology)大気・陸域・海洋での放射性物質の移行挙動を包括的に予測できるSPEEDI-MPにおいて、Large-Eddy Simulation(LES)モデルによる都市大気拡散予測システムの開発とその導入を目指している。本研究は、気象モデルとLESモデルとの結合により、2003年米国オクラホマシティーで行われた野外都市拡散実験を対象にして、実気象条件下において局所域詳細拡散シミュレーションを行ったものである。モデルの結合の際、任意の気象シミュレーションデータが取り込めるようにLESモデルの流入境界条件の改良を行った。野外実験結果の風速・風向分布と比較すると良好に再現した計算結果が得られた。また、個々の都市建築構造物の影響の激しい所で測定された濃度変動データを計算結果と比較すると、平均値だけでなくピーク値なども良好に再現していることが分かった。これらにより、本詳細大気拡散計算手法の有効性を示すことができた。