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執行 信寛*; 魚住 祐介*; 今林 洋一*; 板敷 祐太朗*; 佐藤 大樹; 梶本 剛*; 佐波 俊哉*; 古場 裕介*; 高田 真志*; 松藤 成弘*; et al.
JAEA-Conf 2014-002, p.81 - 87, 2015/02
高エネルギー加速器施設の遮蔽設計には、原子力機構を中心に開発されているPHITSや欧州原子核研究機構を中心に開発されているFLUKAなどのモンテカルロ法に基づく放射線輸送コードが利用されている。これら放射線輸送コードの予測精度を検証するには、核反応の素過程に関する二重微分断面積の実験データとの比較が必要である。しかし、重イオン入射反応に関する実験データは乏しく、荷電粒子生成に関するものはほとんど存在しない。そこで、放射線医学総合研究所のHIMAC加速器を用い290MeV/uのAr入射反応に対する炭素原子核からの陽子,重陽子及び三重陽子生成二重微分断面積を測定した。生成した荷電粒子は、ビーム軸に対して15, 30, 45, 60, 75及び90度方向に配置した液体有機シンチレータで検出した。各荷電粒子は、飛行時間と検出器でのエネルギー損失の情報から識別できる。実験データをPHITS及びFLUKAと比較したところ、陽子生成については実験データの傾向を再現するものの、重陽子及び三重陽子生成については、両コードで全く再現できず、各コードによる計算値の間にも大きな差があることが分かった。これは、既存の核反応模型では重陽子や三重陽子の放出に必要な核子の同伴および癒着過程を適切に取り扱えていないためと考えられる。本研究で得られる知見は、放射線輸送コードにおける核反応模型の改良に貢献することが期待できる。
津田 修一; 佐藤 達彦; 渡辺 立子; 高田 真志*
Journal of Radiation Research, 56(1), p.197 - 204, 2015/01
被引用回数:2 パーセンタイル:12.34(Biology)重粒子線に対する生物学的効果を実験的に評価するうえで、重粒子線の飛跡及びその近傍における詳細なエネルギー付与分布データは重要となる。本研究では機構で開発し最新の生物学的線量評価モデルに組み込まれているエネルギー付与分布計算モデルの精度検証を行うために、放射線医学総合研究所HIMACにおいて、壁なし型組織等価比例計数管にペンシル状のビームを照射し、径方向の線エネルギー(y)分布データ及びyの線量平均値を得た。ペンシルビームによって生成される信号をビームモニタと比例計数管で同時計測することによって、構造材から発生する二次粒子及びノイズの影響を低減した条件で径方向のy分布データを取得した。yの線量平均値は、ブロードビーム照射と同様に20%以内で計算値と一致した。一方で、PHITSコードのエネルギー付与計算モデルが入射イオンと二次粒子の寄与を独立して表現することに起因して、数100keV/m以上の高LETイオン入射の場合、同モデルによる結果は実験で得られたy分布を過小評価することがわかった。
執行 信寛*; 魚住 祐介*; 上原 春彦*; 西澤 知也*; 水野 貴文*; 高宮 大義*; 橋口 太郎*; 佐藤 大樹; 佐波 俊哉*; 古場 裕介*; et al.
Nuclear Data Sheets, 119, p.303 - 306, 2014/05
被引用回数:0 パーセンタイル:0.02(Physics, Nuclear)重粒子線がん治療は、他の放射線治療に比べて正常部位への影響が小さいなどの利点により、近年注目を集めている。この治療では、患者の体内に入射した重イオンによる核反応で、中性子, 線等の二次放射線が生成される。治療施設の放射線安全設計のためには、二次放射線の生成量や角度分布を把握することが重要である。そこで、放射性医学総合研究所HIMAC加速器で、重粒子線がん治療に利用される290MeV/Aと体内での減速を想定した100MeV/Aの炭素ビームを用い、生体を構成する炭素,窒素及び酸素からの中性子生成断面積の実験データを15度から90度の角度領域で取得した。炭素ビームを入射するターゲットは、固体の炭素、アルミニウム化合物(窒化アルミニウム,酸化アルミニウム)及びアルミニウムで構成した。窒素及び酸素の断面積データは、アルミニウム化合物に対するデータから、アルミニウム単体によるデータを差し引き導出した。検出効率をSCINFUL-QMDコードで値づけた液体有機シンチレータ(NE213)を用いて中性子を検出し、運動エネルギーは飛行時間法(TOF)で求めた。取得した実験データと粒子・重イオン輸送計算コードPHITSの計算値との比較から、PHITSの核反応模型の精度を検証し、PHITSの重粒子線がん治療施設における放射線安全設計への応用についても議論する。
執行 信寛*; 魚住 祐介*; 上原 春彦*; 西澤 知也*; 平林 慶一*; 佐藤 大樹; 佐波 俊哉*; 古場 裕介*; 高田 真志*; 松藤 成弘*
Progress in Nuclear Science and Technology (Internet), 4, p.709 - 712, 2014/04
重粒子線治療では、患者体内に入射した重イオンビームによる核反応により、中性子をはじめとする2次放射線が生成される。重粒子線施設における治療室の遮へい設計のためには、患者を線源とした2次中性子の放出エネルギー及び角度分布を精度よく知る必要がある。これまでに測定された実験データは、独国GSIグループによる前方角度領域におけるもののみである。そこでわれわれは、放射線医学総合研究所HIMACにおいて、患者を模擬した水ファントムに治療に用いる290MeV/uの炭素ビームを入射し、15度から90度の広い角度領域で中性子生成量を測定した。水ファントムは厚さ20cmであり、入射炭素イオンはファントム内で完全に停止する。中性子検出器には、液体有機シンチレータNE213を採用し、その検出効率はSCINFUL-QMDコードを用いて求めた。中性子エネルギーは、飛行時間(TOF)法にて決定した。床散乱の寄与を評価するため、水ファントムとシンチレータの間に鉄製のシャドウバーを挿入した測定も行った。データ解析において、荷電粒子及び線によるイベントを除去することにより、広い放出エネルギー、放出角度における中性子エネルギースペクトルの導出に成功した。また、取得した実験データとPHITSコードによる計算結果との比較を通して、PHITSコードの重粒子線治療施設の遮へい設計への応用についても議論した。
執行 信寛*; 魚住 祐介*; 上原 春彦*; 西澤 知也*; 水野 貴文*; 佐藤 大樹; 佐波 俊哉*; 古場 裕介*; 高田 真志*; 松藤 成弘*
JAEA-Conf 2013-002, p.137 - 142, 2013/10
重粒子線がん治療では、患者の体内に入射した重イオンによる核反応で中性子や線等の二次放射線が発生する。これら二次放射線による患部外臓器への線量付与とそれに伴う二次発がんリスクを評価するためには、核反応で生成する放射線の生成断面積データが不可欠となる。平成23年度までに、治療に用いる290MeV/u炭素イオンと生体構成元素である炭素,窒素及び酸素との核反応による中性子生成断面積データを、広い生成エネルギーと角度領域において取得し、粒子・重イオン輸送コードシステムPHITSの核反応模型の精度検証を行った。平成24年度は、人体内で減速した炭素イオンが起こす核反応を調べるため、100MeV/u炭素イオンを炭素ターゲットに入射した際の断面積を測定した。実験は、放射線医学総合研究所HIMAC加速器にて実施した。6台のNE213液体有機シンチレータを、ビーム軸から15, 30, 45, 60, 75及び90方向に配置し、広い角度領域での測定を可能にした。中性子の運動エネルギーは飛行時間法によって決定し、入射エネルギーから約1MeVまでのエネルギー領域におけるデータ取得に成功した。NE213シンチレータの中性子検出効率は、機構が開発したSCINFUL-QMDコードにより求めている。取得した実験データはPHITSの計算値と比較し、核反応模型では再現の難しい低ネルギー重イオン入射反応の精度を検証した。
魚住 祐介*; 執行 信寛*; 上原 春彦*; 西沢 知也*; 水野 貴文*; 佐藤 大樹; 佐波 俊哉*; 古場 裕介*; 高田 真志*; 松藤 成弘*; et al.
HIMAC-140, p.234 - 235, 2013/08
平成24年度に放射線医学総合研究所のHIMAC加速器を用いて行った研究の成果について報告する。重粒子線がん治療では、入射重イオンと生体構成元素との核反応から中性子及び線が、患者体内で生成される。これら放射線による二次発がんリスクの推定には、重イオン核反応における生成断面積データが不可欠である。前年度までの研究により、広いエネルギー領域での断面積測定手法を確立し、治療に供される290MeV/u炭素イオンに対する炭素、窒素及び酸素原子核からの中性子生成断面積データを整備した。平成24年度は、患者体内にて減速した重イオンによる中性子及び線の生成を調べるため、100MeV/u炭素イオンを炭素及び窒素ターゲットに入射する実験を行った。その結果、15から90までの6角度において、下限エネルギー0.6MeVまでの精度の良い断面積測定に成功した。今後は、本エネルギー領域における実験データの拡充とともに、粒子・重イオン輸送コードシステムPHITSとの比較から、二体衝突近似が成立する下限エネルギーでの理論模型の妥当性について考察する。
津田 修一; 佐藤 達彦; 佐藤 大樹; 高田 真志*
HIMAC-138, p.225 - 226, 2012/08
重荷電粒子に対する生物学的影響を評価するうえで、重荷電粒子ビームの飛跡及びその近傍におけるエネルギー付与分布データは重要な情報である。本研究では、機構で開発した壁なし型組織等価比例計数管を用いて、290MeV/u炭素及び500MeV/u鉄ビームの飛跡沿いに生成される高エネルギー電子を含めたエネルギー付与分布データ測定を実施した。平成23年度に新たに導入したビームモニタによって、比例計数管に入射する重荷電粒子ビーム数を測定することが可能となり、これまでより精度のよいエネルギー付与分布データを取得できた。その結果、入射ビームによって二次的に生成される高エネルギー電子のエネルギー付与分布は、入射ビームと検出器までの距離によって異なることを実験的に明らかにした。
魚住 祐介*; 執行 信寛*; 梶本 剛*; 平林 慶一*; 上原 春彦*; 西澤 知也*; 佐藤 大樹; 佐波 俊哉*; 古場 裕介*; 高田 真志*; et al.
HIMAC-138, p.237 - 238, 2012/08
本発表では、平成23年度に放射線医学総合研究所のHIMAC加速器を用いて行った研究の成果について報告する。重粒子線がん治療では、入射重イオンと生体組織を構成する元素との核反応から中性子及び線が患者体内で生成される。これらの放射線による二次発がんリスクの評価には、重イオン核反応における生成断面積のデータが不可欠である。平成22年度までの研究では、炭素+炭素及び酸素+炭素反応における中性子生成二重微分断面積を測定し、そのデータを公表した。平成23年度は290MeV/u炭素ビームを窒素化合物ターゲットに入射し、炭素+窒素反応における二重微分断面積を測定した。その結果、下限エネルギー0.6MeVまでの中性子断面積データを精度よく導出することに成功した。この成果をもって、所期の技術目標であった低エネルギー領域までの高精度中性子測定手法の確立は達せられた。今後は、確立した手法を用いて、生体構成元素に対する系統的な断面積データを整備する。また、前年度までのデータから線生成二重微分断面積の導出を行った。得られた実験データは、粒子・重イオン輸送コードシステムPHITSの計算結果と比較され、線生成模型の検証・改良に応用される。
津田 修一; 佐藤 達彦; 高橋 史明; 佐藤 大樹; 佐々木 慎一*; 波戸 芳仁*; 岩瀬 広*; 伴 秀一*; 高田 真志*
Journal of Radiation Research, 53(2), p.264 - 271, 2012/04
被引用回数:14 パーセンタイル:55.77(Biology)重粒子線に対する生物効果を実験的に評価するうえで、重粒子線の飛跡及びその近傍における詳細なエネルギー付与分布データは重要である。本研究では重粒子の飛跡沿いに生成される高エネルギー電子を含む線エネルギー分布(分布)計算モデルの精度検証に必要なデータを取得するために、壁なし型の組織等価比例計数管を製作し、放射線医学総合研究所重粒子線がん治療装置HIMACの重粒子線を利用して実験を行った。核子あたり数100MeVの陽子,ヘリウム,シリコンビーム等に対する分布データを取得し、機構で開発された計算モデルで得られる分布とその線量平均値を比較した。その結果、これまでに報告した炭素ビームに加え、陽子等他のイオン種についても、測定データは計算結果とほぼ一致することがわかった。これより計算モデルは、炭素ビーム以外の阻止能の異なるイオン種についてもエネルギー付与分布を再現できることを示すとともに、分布の線量平均値は生物影響評価の指標として有用であることを示した。
津田 修一; 佐藤 達彦; 高橋 史明; 佐藤 大樹; 佐々木 慎一*; 波戸 芳仁*; 岩瀬 広*; 伴 秀一*; 高田 真志*
KEK Proceedings 2011-8, p.100 - 108, 2011/12
重粒子線に対する生物効果を実験的に評価するうえで、重粒子線の飛跡及びその近傍における詳細なエネルギー付与分布データは重要である。本研究では重イオンの飛跡沿いに生成される高エネルギー電子を含む線エネルギー分布(分布)の計算モデルの精度検証に必要なデータを取得するために、壁なし型の組織等価比例計数管(Wall-less TEPC)を製作し、放射線医学総合研究所重粒子線がん治療装置HIMACの重粒子線を利用して実験を行った。核子あたり数100MeVの陽子,ヘリウム,炭素ビーム等に対する分布データを取得し、機構で開発された計算モデルで得られる分布とその線量平均値を比較した。その結果、これまでに報告した炭素以外に、陽子等他のイオン種についても、測定データは計算結果とほぼ一致することがわかり、機構で開発された計算モデルは、炭素線以外の阻止能の異なるイオン種についてもエネルギー付与分布を再現できることが示された。
魚住 祐介*; 執行 信寛*; 梶本 剛*; 森口 大輔*; 上山 正彦*; 吉岡 正勝*; 佐藤 大樹; 佐波 俊哉*; 古場 裕介*; 高田 真志*; et al.
HIMAC-136, p.248 - 249, 2011/11
本発表では、平成22年度に放射線医学総合研究所のHIMAC加速器を用いて行った測定について報告する。重粒子線がん治療では、入射重イオンと生体組織を構成する元素との核反応により中性子及び線が患者の体内にて生成される。これらの放射線による二次発がんリスクの評価には、重イオン核反応における生成二重微分断面積を広いエネルギー範囲で精度よく測定する必要がある。平成21年度は、既存の実験データのある炭素+炭素反応に対して測定を行い、最適な測定条件を検討した。平成22年度は、前年度までの検討を踏まえ、データの存在しない酸素+炭素反応の断面積を測定した。その結果、数百MeV領域から0.6MeVまでの極めて広いエネルギー範囲に渡って精度よく中性子生成二重微分断面積を取得できた。さらに、取得した実験データを利用してPHITSコードの精度検証を行った。PHITSは、前方角度領域において断面積をわずかに過小評価するものの、全体的に実験値をよく再現することがわかった。
津田 修一; 佐藤 達彦; 佐藤 大樹; 高橋 史明; 佐々木 慎一*; 波戸 芳仁*; 佐波 俊哉*; 斎藤 究*; 高田 真志*
HIMAC-136, p.219 - 220, 2011/11
重粒子線に対する生物効果を実験的に評価するうえで、重粒子線の飛跡及びその近傍における詳細なエネルギー付与分布データは重要である。本研究では重粒子の飛跡沿いに生成される高エネルギー電子を含む線エネルギー分布(分布)の計算モデルの精度検証に必要なデータを取得するために、壁なし型の組織等価比例計数管を製作し、放射線医学総合研究所重粒子線がん治療装置HIMACの重粒子線を利用した実験を行った。最終年目の2010年度は、160MeV陽子線及び490MeV/uシリコンビームに対する分布データを取得し、原子力機構で開発された計算モデルによる結果と比較した。その結果、計算モデルはこれまでに報告したヘリウム及び炭素ビームに加え、阻止能の異なる陽子及びシリコンビームについてもエネルギー付与分布を再現することを示すとともに、分布の線量平均値は生物影響評価の指標として有用であることを示した。
佐藤 達彦; 仁井田 浩二*; Shurshakov, V. A.*; Yarmanova, E. N.*; Nikolaev, I. V.*; 岩瀬 宏*; Sihver, L.*; Mancusi, D.*; 遠藤 章; 松田 規宏; et al.
Cosmic Research, 49(4), p.319 - 324, 2011/08
被引用回数:11 パーセンタイル:60.36(Engineering, Aerospace)重イオン輸送計算コードは、宇宙船の遮へい効果を評価するために不可欠なツールである。そこで、われわれは、200GeVまでの粒子・重イオンの3次元空間における挙動を模擬できるシミュレーションコードPHITSを開発している。このPHITSを用いて、国際宇宙ステーション・ロシアサービスモジュール内における放射線環境を評価した。その結果、宇宙飛行士の寝室外壁に設置した水タオルは、線量を効果的に減衰することが明らかとなった。発表では、この評価結果も含め、PHITSの宇宙開発への適用例を紹介する。
佐藤 大樹; 森口 大輔*; 梶本 剛*; 古場 祐介*; 中村 泰博*; 執行 信寛*; 上山 正彦*; 魚住 祐介*; 吉岡 正勝*; 松藤 成弘*; et al.
Journal of the Korean Physical Society, 59(2), p.1741 - 1744, 2011/08
被引用回数:3 パーセンタイル:27.54(Physics, Multidisciplinary)重イオン相互作用からの中性子生成二重微分断面積に関する既存の実験データは、検出器の検出効率の評価に問題があり断面積を過大評価していることが知られていた。そこで、最新の検出効率計算コードを用いて既存のデータを再解析することにより、過大評価を改善した系統的な断面積データの評価を行った。また、放射線医学総合研究所の重イオン加速器を用いて、新たに中性子生成二重微分断面積を測定した。取得したデータは、既存のデータに比べ測定角度領域が後方角にまで及び検出下限エネルギーも10倍程度低い。両データは、同一核反応の同一角度において非常に良い一致を示した。さらに、各種シミュレーションコードの予測値と比較したところ、いずれのコードも前方角度領域の高エネルギー中性子生成を適切に再現できておらず、重イオン核反応模型の修正が必要であることが示唆された。
佐藤 大樹; 森口 大輔*; 梶本 剛*; 上原 春彦*; 執行 信寛*; 上山 正彦*; 吉岡 正勝*; 魚住 祐介*; 佐波 俊哉*; 古場 裕介*; et al.
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A, 644(1), p.59 - 67, 2011/07
被引用回数:18 パーセンタイル:77.43(Instruments & Instrumentation)重粒子線がん治療の普及に伴い患者体内に入射した重イオンビームの核反応で生成される二次中性子の放射線影響に関心が集まっている。しかし、二次発がんの潜在的なリスク評価のために必要となる重イオンビームと生体構成元素との核反応に関する実験データは整備されておらず、放射線輸送コードの計算精度も十分に検証されていない。そこでわれわれは、放射線医学総合研究所HIMAC加速器を利用し、炭素+炭素反応及び酸素+炭素反応における中性子生成二重微分断面積(DDX)を測定した。論文では、有機シンチレータと飛行時間法を利用した測定手法の詳細を説明し、得られた結果を過去の実験データ及びPHITSコードの計算値と比較することで、測定手法の妥当性や放射線輸送コードの有用性について議論した。実験データは、数百MeVから0.6MeVまでの極めて広いエネルギー領域で精度よく取得されており、PHITSの結果は全エネルギー領域に渡りファクター2以内で実験値を再現した。
魚住 祐介*; 岩元 大樹*; 古場 祐介*; 松藤 成弘*; 佐波 俊哉*; 佐藤 大樹; 執行 信寛*; 高田 真志*; 上山 正彦*; 吉岡 正勝*; et al.
Progress in Nuclear Science and Technology (Internet), 1, p.114 - 117, 2011/02
重イオン治療における二次的発ガンリスクを評価するために、患者の体内に入射した重イオンにより誘起される二次中性子の線量を知ることは極めて重要である。しかし、さまざまな放射線の混合場である患者体内において、高エネルギー中性子の線量を実験的に求めることは難しく、線量評価はシミュレーションコードに頼らざるを得ない。シミュレーションコードにおける重イオンと生体構成元素の核反応計算の精度向上のため、放射線医学総合研究所の重イオン加速器を用いた中性子生成二重微分断面積の測定を計画している。実験に先駆け既存のシミュレーションコードを用い、最適な実験体系を検討した。これにより、重イオンの輸送経路にある空気及びビームダンプからの寄与が大きく、精度の良い断面積データを取得するためには適切な遮蔽が必要であることがわかった。発表では、断面積測定計画の概要及びシミュレーション解析の結果を示す。
保田 浩志*; 矢島 千秋*; 高田 真志*; 佐藤 達彦; 中村 尚司*
Progress in Nuclear Science and Technology (Internet), 1, p.356 - 359, 2011/02
航空機乗務員の宇宙線被ばく線量計算モデルの精度を検証するためには、航空機高度に混在する高エネルギー中性子と陽子を的確に弁別し、それぞれのエネルギースペクトルを精度よく導出可能な測定システムを開発する必要がある。そこで、本研究では、複合型シンチレータ検出器と高計数率デジタル波形解析装置を組合せ、高エネルギー宇宙線スペクトル測定専用システムCREPASを開発した。そして、その性能を加速器実験や航空機搭載実験で検証したところ、CREPASは、10MeV以上の高エネルギー中性子を他の放射線と的確に弁別して測定可能であることがわかった。今後、エネルギースペクトル導出の精度を向上させることにより、システムの実用化を目指す。
津田 修一; 佐藤 達彦; 高橋 史明; 佐藤 大樹; 遠藤 章; 佐々木 慎一*; 波戸 芳仁*; 岩瀬 広*; 伴 秀一*; 高田 真志*
Radiation Protection Dosimetry, 143(2-4), p.450 - 454, 2011/02
被引用回数:5 パーセンタイル:38.65(Environmental Sciences)重粒子線に対する生物効果を評価するうえで、重粒子線の飛跡及びその近傍における詳細なエネルギー付与分布に関する知見は重要である。本研究では重イオンの飛跡沿いに生成される高エネルギー電子(線)を含んだ線エネルギー分布(y分布)を精密に測定するために、壁なし型の組織等価比例計数管を製作し、放射線医学総合研究所HIMACにおいて核子あたり500MeVのアルゴンビームを用いた直径0.72mの細胞サイズを模擬した領域に対する照射実験を行った。本実験で得た測定データを粒子・重イオン汎用モンテカルロコードPHITSに組み込まれた生物線量計算モデルによる計算と比較し、線量平均したyを算出した結果、アルゴンビームによるエネルギー付与割合はLETに基づく推定値の約5060%となり、4050%のエネルギーは飛跡から離れた位置に付与されることがわかった。講演では実験の詳細を述べるとともに、線の生成に関する検討結果等について発表する。
高田 真志*; 矢島 千秋*; 保田 浩志*; 佐藤 達彦; 中村 尚司*
Radiation Measurements, 45(10), p.1297 - 1300, 2010/12
被引用回数:3 パーセンタイル:24.08(Nuclear Science & Technology)航空機乗務員の被ばく線量を実測により評価するためには、1MeV以上の高エネルギー中性子スペクトルを測定することが重要となる。そのために、液体シンチレータとプラスチックシンチレータを組合せ、中性子による信号とそれ以外の放射線による信号を弁別可能なフォスウィッチ型検出器を製作した。また、その検出器からの信号を解析するため、12bit500MHzのフラッシュADCを搭載したDAQシステムを開発した。開発したDAQシステムの最大適応計数率は約350/秒であり、航空機高度における中性子を測定するためには十分な性能を有する。この測定システムを航空機に搭載し、日本上空(北緯42度,高度11km付近)の中性子スペクトルを測定した。その結果、開発したシステムは、陽子と中性子による信号を明確に弁別できるものの、高エネルギー電子による信号と中性子による信号を的確に弁別できないことがわかった。現在、この問題の対処法を検討中であり、会議では、日本上空の中性子スペクトルを報告する予定である。
高田 真志*; 矢島 千秋*; 保田 浩志*; 佐藤 達彦; 中村 尚司*
Journal of Nuclear Science and Technology, 47(10), p.932 - 944, 2010/10
被引用回数:7 パーセンタイル:45.04(Nuclear Science & Technology)放射線医学総合研究所が開発したホスウィッチ型検出器を用いて、日本上空高度10.8kmにおける宇宙線中性子及び光子スペクトルを測定した。測定した中性子及び光子のエネルギー範囲は、それぞれ、7180MeV及び3.542MeVである。得られた測定値を、ボナーボール中性子検出器による測定値や、LUIN2000, EXPACS及びRMCコードによる計算値と比較した。その結果、本研究による測定値は、過去における測定値と比較して、絶対値は一致するがスペクトルの形状が違うことがわかった。