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論文

全反射高速陽電子回折法(TRHEPD)

深谷 有喜

陽電子科学, (13), p.3 - 10, 2019/09

全反射高速陽電子回折(TRHEPD)法は、物質表面や2次元物質の原子配置を決定するための表面構造解析手法である。陽電子はプラスの電荷を持つため、物質表面に入射する際、斥力を受ける。特にすれすれ入射の場合には全反射が起こり、その物質表面への侵入深さは原子1個分の厚みにしか満たない。このことがTRHEPD法を最表面に敏感な構造解析手法たらしめる。本稿では、電子ビームの場合との比較を交えながら、TRHEPD法の原理と特徴について紹介する。

報告書

多様な処分概念に共通して利用可能な生活圏評価手法の整備

加藤 智子; 深谷 友紀子*; 杉山 武*; 中居 邦浩*; 小田 治恵; 大井 貴夫

JAEA-Data/Code 2019-002, 162 Pages, 2019/03

JAEA-Data-Code-2019-002.pdf:2.78MB

東京電力福島第一原子力発電所の事故により発生した放射性廃棄物(事故廃棄物)を安全かつ合理的に処分するためには事故廃棄物の特徴を考慮した適切な処分概念の構築が必要である。このような検討に資するため、既往の処分概念である地層処分, 中深度処分, ピット処分, トレンチ処分等既存の処分概念の事故廃棄物処分への適用可能性の検討が行われている。処分概念の適用性評価においては、処分概念の違いによる影響が小さいと考えられる生活圏評価のシナリオ、モデル・パラメータを共通して利用する評価手法を整備することが可能である。本検討では、さまざまな処分概念において共通的に利用可能な生活圏共通モデル・パラメータセットの整備を目的とし、地下水移行シナリオを対象として、既往の処分概念における生活圏評価手法に基づきモデルの整備、パラメータ値の更新などを実施した。これらの検討に基づき、地下水移行シナリオに対して、処分概念に依らない生活圏共通モデル・パラメータセットを整備し、事故廃棄物の処分の適用性評価に用いるための線量への換算係数を算出した。

論文

Total-reflection high-energy positron diffraction (TRHEPD) for structure determination of the topmost and immediate sub-surface atomic layers

深谷 有喜; 河裾 厚男*; 一宮 彪彦*; 兵頭 俊夫*

Journal of Physics D; Applied Physics, 52(1), p.013002_1 - 013002_19, 2019/01

 パーセンタイル:100(Physics, Applied)

最近、物質の表面構造を調べることを目的に、全反射高速陽電子回折(TRHEPD)法を開発した。TRHEPD法は反射高速電子回折(RHEED)の陽電子版である。入射する視射角に依存して、陽電子は物質表面で全反射もしくは、表面下数層に徐々に侵入する特徴がある。したがって、深いバルクからの影響なしに、最表面およびその直下の構造についての情報を得ることができる。本レビュー論文では、TRHEPDの特徴と固体表面および2次元物質の構造決定に適用した例について報告する。

論文

Study on Pu-burner high temperature gas-cooled reactor in Japan; Introduction scenario

深谷 裕司; 後藤 実; 植田 祥平; 橘 幸男; 岡本 孝司*

Proceedings of 9th International Topical Meeting on High Temperature Reactor Technology (HTR 2018) (USB Flash Drive), 9 Pages, 2018/10

日本におけるプルトニウム燃焼高温ガス炉の導入シナリオの研究を経済産業省が2015年に示した「長期エネルギー需要見通し」に基づき実施した。その予測では、原子力による発電容量が2010年付近のピークである50GWeから減り、2030年には30GWeになる。その発電容量を保つために、軽水炉は2025年から2030年まで導入されなければならない。2030年以降は安全性、経済性の観点で軽水炉より優れた高温ガス炉が電力需要とプルトニウム燃焼の観点から導入される。この評価では、ウラン燃料高温ガス炉の導入も想定する。プルトニウム燃焼高温ガス炉は再処理により分離されるプルトニウムを燃焼するため、優先的に導入される。さらに、水素製造とそれによるCO$$_{2}$$削減効果も評価した。その結果、効果的なプルトニウム燃焼とCO$$_{2}$$削減効果が確認できた。

論文

Conceptual plant system design study of an experimental HTGR upgraded from HTTR

大橋 弘史; 後藤 実; 植田 祥平; 佐藤 博之; 深谷 裕司; 笠原 清司; 佐々木 孔英; 水田 直紀; Yan, X.; 青木 健*

Proceedings of 9th International Topical Meeting on High Temperature Reactor Technology (HTR 2018) (USB Flash Drive), 6 Pages, 2018/10

商用炉に向けて高温工学試験研究炉(HTTR)を高度化した高温ガス実験炉のシステム概念検討を実施した。安全設備については、実用炉技術を実証するため、受動的炉容器冷却設備、コンファインメントの採用など、HTTRから高度化を図った。また、商用炉におけるプロセス蒸気供給の技術確立に向けて、HTTRの系統構成から中間熱交換器(IHX)を削除し、新たに蒸気発生器(SG)を設置した。本論文では高温ガス実験炉のシステム概念の検討結果を述べる。

論文

Study on Pu-burner high temperature gas-cooled reactor in Japan; Test and characterization for ZrC coating

植田 祥平; 相原 純; 水田 直紀; 後藤 実; 深谷 裕司; 橘 幸男; 岡本 孝司*

Proceedings of 9th International Topical Meeting on High Temperature Reactor Technology (HTR 2018) (USB Flash Drive), 7 Pages, 2018/10

プルトニウム燃焼高温ガス炉に用いるセキュリティ強化型安全(3S-TRISO)燃料においては、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)を不活性母材とするPuO$$_{2}$$-YSZ燃料核へ、遊離酸素ゲッターの特性を有する炭化ジルコニウム(ZrC)を直接被覆する。2017年度に実施した模擬のCeO$$_{2}$$-YSZ粒子への臭化物化学蒸着法に基づくZrC被覆試験の結果、粒子装荷量100gの条件において被覆層厚さ約3から18$$mu$$mのZrC層の被覆に成功した。

論文

全反射高速陽電子回折によるゲルマネンの構造決定

深谷 有喜

陽電子科学, (11), p.41 - 44, 2018/09

本研究では、全反射高速陽電子回折(TRHEPD)を用いて、ゲルマニウムの2次元原子シートであるゲルマネンの原子配置を決定した。回折強度の定量解析から、Al(111)基板上に合成したゲルマネンは、先行研究で予測されたような単位格子中2個のGe原子が突出した対称的なバックリング構造ではなく、Ge原子1個だけが突出した非対称な構造をとることがわかった。

論文

Structure analysis of two-dimensional atomic sheets by total-reflection high-energy positron diffraction

深谷 有喜

e-Journal of Surface Science and Nanotechnology (Internet), 16, p.111 - 114, 2018/04

最近、2次元トポロジカル絶縁体等の新奇電子・スピン物性の発現が期待される、IV族元素を用いた2次元原子シートの創製が様々な基板表面上で試みられている。それらの基板上の原子シートは、基板元素との結合性や相互作用を通して様々な原子配置をとりうる。特に、原子シートのバックリング配置や基板との間隔などの構造パラメータは、その物性をつかさどる重要な因子である。本レビュー論文では、全反射高速陽電子回折(TRHEPD)を用いた金属基板上のグラフェン,シリセン,ゲルマネンの構造決定について報告する。

報告書

実用高温ガス炉の安全要件を達成するための燃料・炉心の設計事項

中川 繁昭; 佐藤 博之; 深谷 裕司; 徳原 一実; 大橋 弘史

JAEA-Technology 2017-022, 32 Pages, 2017/09

JAEA-Technology-2017-022.pdf:3.59MB

実用高温ガス炉の設計において、燃料設計、炉心設計、原子炉冷却材系設計、2次冷却材系設計、崩壊熱除去系設計、格納施設設計については、重要性が高く、かつ、その安全要件が軽水炉のそれと大きく異なる。実用高温ガス炉の安全基準の策定に資するため、これらの設計項目の中から、燃料及び炉心の安全要件を達成するための設計事項を検討した。検討にあたっては、受動的な安全性や固有の安全性に基づく高温ガス炉の特長を十分に反映させた。また、炉心設計に関し、キセノン135の生成と消滅による空間出力振動に対する安定性を検討した。検討の結果得られた燃料及び炉心の具体的な設計事項は、今後の実用高温ガス炉の設計に適用可能であり、また、IAEAや国内規制当局における高温ガス炉の安全指針の策定に資することが期待される。

論文

ゲルマニウム単原子シート「ゲルマネン」の原子配置の非対称化

深谷 有喜; 松田 巌*

物性研だより, 57(2), p.7 - 8, 2017/07

最近我々は、全反射高速陽電子回折法を用いて、アルミニウム基板上のゲルマネン(グラフェンのゲルマニウム版)の構造を明らかにした。ゲルマネンは新奇スピン物性の発現が期待される新材料である。本稿では、ゲルマネンが理論予測に反して非対称なバックリング構造を形成することを報告する。

論文

Development of security and safety fuel for Pu-burner HTGR, 2; Design study of fuel and reactor core

後藤 実; 植田 祥平; 相原 純; 稲葉 良知; 深谷 裕司; 橘 幸男; 岡本 孝司*

Proceedings of 25th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-25) (CD-ROM), 6 Pages, 2017/07

PuO$$_{2}$$-YSZ燃料核にZrC被覆を施して3S(核不拡散、安全、核セキュリティ)を向上させた3S-TRISO燃料をプルトニウム燃焼高温ガス炉に導入することが提案されている。本研究では、ZrC被覆の遊離酸素ゲッターとしての有効性を熱化学平衡計算に基づき評価するとともに、3S-TRISO燃料の成立性の予備検討を、燃料内圧に着目して行った。また、炉心燃焼計算を行い炉心成立性について予備検討を行った。熱科学平衡計算の結果は、1600$$^{circ}$$C以下の温度条件で、発生する遊離酸素の全量を薄いZrC層で捕獲されることを示し、燃料核へのZrC被覆は内圧抑制に非常に有効と考えられる。燃焼度500GWd/tでの3S-TRISO燃料の内圧計算結果は、既に概念設計が行われた炉心の同じサイズのUO$$_{2}$$燃料の内圧より低いことから、3S-TRISO燃料の成立性は十分見込まれる。また、炉心燃焼計算の結果は、軸方向燃料シャッフリングの採用により約500GWd/tの高燃焼度の達成が可能なこと及び反応度温度係数を燃焼期間にわたり負を維持できることを示しており、炉心の核的な成立性も十分見込まれる。

論文

Research progress at the Slow Positron Facility in the Institute of Materials Structure Science, KEK

兵頭 俊夫*; 和田 健*; 望月 出海*; 木村 正雄*; 峠 暢一*; 設楽 哲夫*; 深谷 有喜; 前川 雅樹*; 河裾 厚男*; 飯田 進平*; et al.

Journal of Physics; Conference Series, 791(1), p.012003_1 - 012003_8, 2017/02

 被引用回数:2 パーセンタイル:9.52

本論文では、高エネルギー加速器研究機構(KEK)物質構造科学研究所(IMSS)低速陽電子実験施設(SPF)で得られた最近の成果を報告する。全反射高速陽電子回折(TRHEPD)実験では、ルチル型TiO$$_{2}$$(110)($$1times2$$)表面、Cu(111)およびCo(0001)基板上のグラフェン、Al(111)基板上のゲルマネンの構造を明らかにした。ポジトロニウム負イオン(Ps$$^{-}$$)ステーションでは、Ps$$^{-}$$の共鳴状態の観測に成功した。ポジトロニウム飛行時間測定(Ps-TOF)ステーションでは、ポジトロニウムの生成効率の増大とポジトロニウム生成・放出過程におけるエネルギー損失を観測した。陽電子ビームラインにパルスストレッチングセクションが導入され、陽電子ビームのパルス幅が1.2$$mu$$sから20msまで可変になった。

報告書

STACYにおけるMOX溶解試験残液の安定化処理

小林 冬実; 住谷 正人; 木田 孝; 石仙 順也; 内田 昇二; 神永 城太; 大木 恵一; 深谷 洋行; 曽野 浩樹

JAEA-Technology 2016-025, 42 Pages, 2016/11

JAEA-Technology-2016-025.pdf:17.88MB

日本原子力研究開発機構原子力科学研究所のSTACY施設では、平成12年から15年にかけて、プルトニウム溶液臨界実験に向けたMOX粉末燃料の溶解に関する基礎試験を実施した。溶解試験で生じた硝酸ウラニル溶液と硝酸プルトニウム溶液からなるMOX溶解試験残液を貯蔵設備にて貯蔵するにあたり、溶液の状態から酸化物へ転換する安定化処理が必要である。さらに、臨界安全の観点から、安定化処理後の酸化物に含まれる水分量を管理する必要がある。MOX溶解試験残液を安定化する方法として、溶液中のウランをアンモニアにより、プルトニウムをシュウ酸により沈殿させ、焙焼して酸化物とする方法を選定した。本報告書は、MOX溶解試験残液に含まれるウラン及びプルトニウムの安定化処理に係る検討及び作業の結果をまとめたものである。本報告書で示した手順に基づく実規模での安定化処理の結果、ウランの回収率は95.6%、プルトニウムの回収率は95.0%であった。また、安定化処理後の酸化物を窒素雰囲気下で再焙焼し、速やかにビニールバッグで溶封することで、酸化物の含水率を低く保つとともに水分の再付着を防止した。

論文

全反射高速陽電子回折による金属表面上のグラフェン・シリセンの構造決定

深谷 有喜

表面科学, 37(11), p.547 - 552, 2016/11

本稿では、全反射高速陽電子回折(TRHEPD)法による金属基板上のグラフェンとシリセン(グラフェンのシリコン版)の構造決定について紹介する。グラフェン(シリセン)におけるバックリング(座屈構造)の有無や基板との間隔は、基板上に吸着したグラフェン(シリセン)の物性の起源を調べるうえで重要な因子である。本研究では、TRHEPDの表面敏感性を利用して、CoとCu基板上のグラフェンとAg基板上のシリセンにおけるこれらの構造パラメータを決定した。

論文

Examination of analytical method of rare earth elements in used nuclear fuel

小澤 麻由美; 深谷 洋行; 佐藤 真人; 蒲原 佳子*; 須山 賢也; 外池 幸太郎; 大木 恵一; 梅田 幹

Proceedings of 53rd Annual Meeting of Hot Laboratories and Remote Handling Working Group (HOTLAB 2016) (Internet), 9 Pages, 2016/11

For criticality safety of used nuclear fuel, it is necessary to determine amounts of such rare earth elements as gadolinium(Gd), samarium(Sm), europium(Eu) since those rare earth elements involve the isotopes having particularly large neutron absorption cross sections. However, it is difficult to measure those isotopes simultaneously by mass spectrometry because some of them have same mass numbers. Thus fine chemical separation of those rare earth elements is indispensable for accurate determination prior to measurement. The conventional separation method with anion exchange resin has been utilized in JAEA mainly for the separation of uranium and plutonium. Therefore rare earth elements such as Gd, Sm and Eu except Nd are wasted without being separated in the conventional method. The authors have examined to improve the conventional method in order to separate those rare earth elements mutually.

論文

Sensitivity analysis of xenon reactivity temperature dependency for HTTR LOFC test by using RELAP5-3D code

本多 友貴; 深谷 裕司; 中川 繁昭; Baker, R. I.*; 佐藤 博之

Proceedings of 8th International Topical Meeting on High Temperature Reactor Technology (HTR 2016) (CD-ROM), p.704 - 713, 2016/11

高温ガス炉は固有の安全性を保有しており、この安全性を実証するために高温工学試験研究炉(HTTR)を用いて強制冷却喪失試験(LOFC試験)を実施している。原子炉出力9MWにおけるLOFC試験では、原子炉出力低下後に再臨界が確認された。これまで、強制冷却喪失事象を評価するため、RELAP5-3Dコードを用いて一点炉動特性解析手法の高度化を進めてきている。本研究では、高温ガス炉は原子炉出入口に大きな温度差があり、過渡時の温度変動領域が大きいことから、Xe-135反応度の温度依存性に着目し、Xe-135の吸収断面積の温度依存性について、原子炉出力9MWにおけるLOFC試験における再臨界への影響を評価した。その結果、このXe-135反応度の温度依存性の影響は非常に大きく、高温ガス炉の強制冷却喪失事象においてはこの温度依存性を適切に考慮することが重要であることを明らかにした。

論文

Asymmetric structure of germanene on an Al(111) surface studied by total-reflection high-energy positron diffraction

深谷 有喜; 松田 巌*; Feng, B.*; 望月 出海*; 兵頭 俊夫*; 社本 真一

2D Materials (Internet), 3(3), p.035019_1 - 035019_7, 2016/09

 被引用回数:20 パーセンタイル:16.62(Materials Science, Multidisciplinary)

本研究では、全反射高速陽電子回折(TRHEPD)法を用いて、アルミニウム基板上のゲルマネン(グラフェンのゲルマニウム版)の構造決定を行った。測定した回折スポット強度の非対称性から、ゲルマネンの構造が$$<110>$$方向に対して鏡面対称性を持たないことがわかった。動力学的回折理論に基づく強度解析から、単位格子当たり1個のゲルマニウム原子が真空側に突出する非対称な構造であることがわかった。これは、これまでに提案されている2個のゲルマニウム原子が突出した対称的な構造モデルとは異なる。これまでに報告された他の実験結果は、今回決定した構造モデルにより説明可能である。

論文

全反射高速陽電子回折(TRHEPD)法によるルチル型TiO$$_{2}$$(110)(1$$times$$2)表面の構造決定

望月 出海*; 有賀 寛子*; 深谷 有喜; 和田 健*; 前川 雅樹*; 河裾 厚男*; 設楽 哲夫*; 朝倉 清高*; 兵頭 俊夫*

表面科学, 37(9), p.451 - 456, 2016/09

本論文では、30年間構造が確定しなかった、触媒の担体として知られるルチル型の二酸化チタン表面の構造解析について報告する。全反射高速陽電子回折(TRHEPD)を用いて、陽電子の回折スポット強度の視射角依存性の測定および、動力学的回折理論に基づく強度解析を行った。その結果、最近Wangらが理論的に提唱した構造モデルを用いると実験結果をよく説明できることがわかった。

論文

全反射高速陽電子回折法による最表面構造解析の新展開

深谷 有喜

Isotope News, (746), p.10 - 14, 2016/08

物質の表面は、物質と真空との界面であり、原子, 分子, クラスターなどと相互作用する場である。また近年では、物質の表面はナノテクノロジーを研究する重要な舞台となっている。表面の原子配置は、表面エネルギーを下げるように物質内部(バルク)のものから変位し、バルクとは異なった新たな構造を形成する。そのため、表面の構造物性を研究するには、バルクからの情報をできるだけ排除し、表面だけの情報を引き出さなければならない。このように、実験プローブには極めて高い表面敏感性が要求される。我々は、表面研究における陽電子ビームの有用性を実証するために、様々な表面構造の解析に全反射高速陽電子回折(TRHEPD)法を適用してきた。最近、加速器を用いて発生させた高強度の陽電子ビームを利用することにより、この手法の高度化に成功している。本稿では、TRHEPD法の最近の進展について紹介する。

論文

Spacing between graphene and metal substrates studied with total-reflection high-energy positron diffraction

深谷 有喜; 圓谷 志郎; 境 誠司; 望月 出海*; 和田 健*; 兵頭 俊夫*; 社本 真一

Carbon, 103, p.1 - 4, 2016/07

 被引用回数:9 パーセンタイル:38.68(Chemistry, Physical)

本研究では、全反射高速陽電子回折法を用いて、貴金属および遷移金属基板上のグラフェンの構造を調べた。動力学的回折理論に基づく構造解析から、CuおよびCo基板上のグラフェンの高さをそれぞれ3.34${AA}$および2.06${AA}$と決定した。Cu基板上のグラフェンの高さはグラファイトの層間距離に近く、グラフェン・Cu基板間の相互作用は非常に弱いことがわかった。一方、Co基板上のグラフェンの高さは、Cu基板上のものに比べ1${AA}$以上も低く、Co基板上のグラフェンは基板と強く相互作用していることが実験的に確かめられた。

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