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論文

Microstructural evolution and mechanical hardening of Cr-coated MDA cladding under high-dose Fe ion irradiation

Mohamad, A. B.; Chen, J.*; 井岡 郁夫*; 鈴木 恵理子; 近藤 啓悦; 阿部 陽介; 山下 真一郎; 大久保 成彰; 根本 義之; 岡田 裕史*; et al.

Journal of Nuclear Materials, 625, p.156513_1 - 156513_9, 2026/04

 被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Materials Science, Multidisciplinary)

Ion irradiation was carried out on Cr coating Zry cladding to investigate their microstructure evolution and mechanical properties. The sample was irradiated at reactor normal operation conditions. Microstructural observation and mechanical testing of non-irradiated samples and irradiated samples were performed to understand irradiation damage to the Cr-coated Zry cladding. Results of High Resolution Transmission Electron Microscopy and chemical analysis revealed Fe enrichment at the Cr coating and Zr substrate interface of irradiated samples due to irradiation enhanced diffusion or irradiation induced mixing. Irradiation led to the formation of Fe enrichment at the Cr Zr interface approximately 15nm. Moreover, hardening of the Cr coating and Zr substrate regions was observed in the irradiated sample.

論文

Introduction to the simulation disaster challenge of world robot summit harsh environment F-REI challenge pre-tournament event

中村 啓太*; 鈴木 健太; 金子 瑛一郎*; 阿部 佳峻*; 清水 優*; 大金 一二*

Journal of Robotics and Mechatronics, 38(1), p.192 - 201, 2026/02

This paper shows the design and results of a Simulation Disaster Challenge held at the Fukushima Robot Test Field in October 2024 as part of the World Robot Summit Harsh Environment F-REI Challenge Pre-tournament event. In this challenge, we built a new simulation environment that can safely and repeatedly evaluate tasks under extreme conditions that are difficult to verify in the real world while simultaneously reproducing the complex and harsh environment of debris scattering and poor visibility that can be expected in actual plant disasters. This paper first provides an overview of the history of major disaster response robot simulation competitions that have been held to date. Next, we report on the design of the competition course and the competition results for this pre-tournament event. Furthermore, its applicability to STEM education will also be discussed. Finally, we describe the current status of preparations for the main competition scheduled for October 2025.

論文

Anomalous-magnetic-moment-enhanced Casimir effect

藤井 大輔; 中山 勝政*; 鈴木 渓

Physical Review D, 113(3), p.036002_1 - 036002_12, 2026/02

 被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Astronomy & Astrophysics)

ディラックフェルミオンの異常磁気モーメント(AMM)が磁場中のフェルミオン・カシミール効果に及ぼす影響について、理論的に検討する。この解析では、既存のリフシッツ公式を拡張するかたちでAMMの効果を組み込む。我々の導出した拡張公式により、AMMの存在がフェルミオン・カシミールエネルギーを増加させることが明らかになる。特に、AMMが十分大きい場合、最低ランダウ準位のギャップレスな性質によってカシミールエネルギーが大きく強化される。さらに、電子、ミューオン、構成クォークといった異なるフェルミオンに対して、磁場下でのカシミールエネルギーを定量的に評価する。

論文

Structure of heavy quarkonia in a strong magnetic field

Arifi, A. J.; 鈴木 渓

Physical Review D, 112(9), p.094013_1 - 094013_18, 2025/11

 被引用回数:3 パーセンタイル:70.82(Astronomy & Astrophysics)

本研究では、構成子クォーク模型を用いて、強磁場下における重いクォーコニウムの構造変化の解析を行う。磁場中のクォークのダイナミクスを記述する模型として、スピン固有状態の混合効果とクォークのランダウ準位の効果を取り込んだ非相対論的ハミルトニアンを採用する。2体シュレーディンガー方程式は、磁場中で現れる円筒対称性を尊重した円筒型ガウス展開法を用いて数値的に解く。ライトフロント波動関数(LFWF)密度を計算することで、その横方向および縦方向の構造を解析し、横方向運動量の広がりなどの特徴的な性質を明らかにする。縦方向の構造は模型の範囲ではわずかに変化するだけだが、そこで大きな影響を与える可能性のある補正についても説明する。さらに、励起状態の構造変化について説明し、LFWF密度の顕著な変化と、回避交差付近の状態再シャッフルを示す。これらの結果は、ハドロン構造が外部磁場に敏感であることを示し、相対論的なアプローチへの理解を深めるのに役立つ。

論文

Lifshitz formulas for finite-density Casimir effect

藤井 大輔; 中山 勝政*; 鈴木 渓

Physics Letters B, 868, p.139758_1 - 139758_6, 2025/09

 被引用回数:1 パーセンタイル:55.05(Astronomy & Astrophysics)

リフシッツ公式は、有限温度におけるカシミール効果を解析するための基本的な理論枠組みとして広く知られている。本研究では、この公式を有限化学ポテンシャルのもとでの量子場に由来するカシミール効果へと拡張する。得られた一般化された公式の有用性を示すために、境界条件の違いや有限温度、空間次元の一般化、化学ポテンシャルの不均衡など、さまざまな設定における典型的なカシミール効果の特徴を検討する。この枠組みは、密なクォーク物質やディラック/ワイル半金属といった系にも適用可能であり、そこでは化学ポテンシャルがカシミール効果を制御するための調整パラメータとして機能する。

報告書

原子力科学研究所放射性廃棄物処理場の新規制基準対応; 第3廃棄物処理棟、解体分別保管棟及び減容処理棟の耐震補強

池谷 正太郎; 鈴木 武; 横堀 智彦; 菅原 聡; 横田 顕; 菊地 絃太; 村口 佳典; 北原 理; 瀬谷 真南人; 黒澤 剛史; et al.

JAEA-Technology 2025-001, 169 Pages, 2025/08

JAEA-Technology-2025-001.pdf:14.22MB

原子力科学研究所の放射性廃棄物処理場は、多様な施設により構成されており、その中に、第3廃棄物処理棟、解体分別保管棟及び減容処理棟がある。これらの3建家は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律による規制を受けており、耐震重要度分類でCクラスに分類されている。東京電力福島第一原子力発電所の事故を契機として原子力規制委員会が策定した新規制基準に対応するため、最新の建築基準法に基づき3建家の耐震評価を実施したところ、許容応力度評価で一部基準を満足しない箇所が認められた。これに対応すべく、令和3年3月5日に設計及び工事の計画の認可(設工認)を取得し、令和3年(2021)から令和4年(2022)までの期間にて耐震補強を行った。本報告書は、第3廃棄物処理棟、解体分別保管棟及び減容処理棟の各建家の耐震設計の概況をはじめ、耐震改修工事の工事概要、作業体制、安全管理、使用前事業者検査について取りまとめたものである。

論文

Casimir effect in magnetic dual chiral density waves

藤井 大輔; 中山 勝政*; 鈴木 渓

Physical Review D, 112(3), p.034020_1 - 034020_17, 2025/08

 被引用回数:1 パーセンタイル:38.00(Astronomy & Astrophysics)

磁場中の有限密度物質において、ディラックフェルミオンに由来するカシミール効果を理論的に解析する。特に、強い相互作用をもつディラック系における不均一な基底状態の候補として知られる「磁気二重カイラル密度波(MDCDW)相」におけるクォーク場に注目する。この相では、化学ポテンシャル・外部磁場・基底状態の空間的変調が複雑に干渉することで、カシミールエネルギーが距離に対して非自明な振動的挙動を示す。全カシミールエネルギーをランダウ準位ごとに分解することで、最低準位と高次準位のどちらが寄与するかによって、異なるタイプのカシミール効果が現れることが明らかになる。さらに、アップクォークとダウンクォークといったフェルミオンのフレーバー間の準位分裂に起因する特徴的な振る舞いも指摘する。

論文

Casimir effect in dual chiral density waves

藤井 大輔; 中山 勝政*; 鈴木 渓

International Journal of Modern Physics A, 40(10-11), p.2543022_1 - 2543022_9, 2025/04

 被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Physics, Nuclear)

本発表では磁場がゼロかゼロでない場合の、高密度で薄いクォーク物質において、クォーク場から発現する新しいカシミア効果の発見について講演した。驚くべきことに、密なクォーク物質の基底状態の候補である二重カイラル密度波(DCDW)相では、カシミアエネルギーが厚さの関数として振動する。この発見は、極限状態におけるQCDダイナミクスによって駆動されるユニークな振動カシミール現象を浮き彫りにするものである。

論文

Casimir effect at finite density

藤井 大輔; 中山 勝政*; 鈴木 渓

International Journal of Modern Physics A, 40(10-11), p.2543020_1 - 2543020_8, 2025/04

 被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Physics, Nuclear)

本講演では、有限の化学ポテンシャル、特に、有限密度系の量子場から誘起されるカシミール効果について議論する。有限温度系のカシミール効果には長い歴史があり、実験による検証も含めて一定の理解が得られているが、有限密度系のカシミール効果についての先行研究は非常に少ない。これは、平衡状態として光子場の化学ポテンシャルを実験的に制御することが困難なためである。一方、フェルミオン系に着目したとき、フェルミオンの化学ポテンシャルは実験で比較的制御可能なパラメータであり、カシミール効果の性質を制御するのに役立つことが期待される。さらに、有限密度フェルミオン系で実現する多彩な量子多体現象は、カシミール効果の典型的な性質を劇的に変化させる可能性がある。本研究では、有限密度のディラック場から誘起されるカシミール効果を定式化し、カシミール効果に起因する物理量が境界条件間の距離や化学ポテンシャルの関数として振動することなどを示す。このような「有限密度カシミール効果」が現れる物理系の例として、ディラック半金属薄膜や高密度クォーク物質が平たく広がった状態への応用について議論する。

論文

Casimir effect on the lattice spacetime

藤井 大輔; 中山 勝政*; 鈴木 渓

International Journal of Modern Physics A, 40(10-11), p.2543017_1 - 2543017_8, 2025/01

 被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Physics, Nuclear)

本研究では、格子正則化された時空におけるカシミールエネルギーの特性を解析する。カシミールエネルギーは一般に、量子場のゼロ点エネルギーによる発散を取り除くための正則化を必要とする。本研究では、格子間隔が有限である限り格子効果が残るという点を活かして、格子正則化によりカシミールエネルギーを定義する。まず、ナイーブ型およびウィルソン型フェルミオンを用いた計算手法を示す。格子効果がごく限られた点にのみ現れる場合には、連続極限を取ることで連続時空におけるカシミールエネルギーを得ることが可能である。具体的な物理系としては、格子効果が重要となるディラック/ワイル半金属における電子場や、連続極限が正確に再現されるアクシオン電磁気学における光子場のカシミールエネルギーを調べている。

論文

Development of an electron spin resonance spectroscopy code for measuring carbonate radicals in tooth enamel and verification of its practicality using irradiated Japanese macaque teeth

山下 琢磨*; 林 哲平*; 光安 優典*; 小野 健太*; 岩見 聡音*; 木野 康志*; 関根 勉*; 岡 壽崇; 高橋 温*; 清水 良央*; et al.

International Journal of Radiation Biology, 8 Pages, 2025/00

 被引用回数:1 パーセンタイル:54.69(Biology)

東京電力・福島第一原子力発電所事故による野生ニホンザルに対する低線量率で慢性的な被ばくによる放射線生物影響を調べている。放射線生物影響をきちんと理解するには、個々の個体の被ばくを推定する必要があり、我々は歯のヒドロキシアパタイト中に生成する炭酸ラジカルを指標に被ばく線量を推定している。本研究では、電子スピン共鳴(ESR)測定して得たESRスペクトルから炭酸ラジカル成分を抽出する分離プログラムを開発し、その実用性を評価した結果を報告する。

論文

Optimization of microwave power in ESR dosimetry of tooth enamel in Japanese macaques

林 哲平*; 山下 琢磨*; 光安 優典*; 小野 健太*; 岩見 聡音*; 木野 康志*; 関根 勉*; 岡 壽崇; 高橋 温*; 清水 良央*; et al.

International Journal of Radiation Biology, 8 Pages, 2025/00

 被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Biology)

福島第一原子力発電所事故によって放出された放射性核種による長期的な慢性被ばくによる生物影響を調べている。放射線によって野生ニホンザルの歯のエナメル質中に生じる炭酸ラジカルを電子スピン共鳴(ESR)装置で測定することで、個体の被ばく線量を推定している。本研究では、マイクロ波出力や掃引速度などのESR測定条件を検討した。

論文

ガンマ線照射した歯エナメル質の電子スピン共鳴スペクトルの多成分解析法の改良

山下 琢磨*; 岩見 聡音*; 光安 優典*; 小野 健太*; 岡 壽崇; 高橋 温*; 木野 康志*; 関根 勉*; 清水 良央*; 千葉 美麗*; et al.

KEK Proceedings 2024-6, p.85 - 90, 2024/12

東京電力・福島第一原子力発電所事故による生物への放射線影響を明らかにするためには、各個体の正確な被ばく線量推定が重要であり、我々は被ばくによって歯中に生成される炭酸ラジカルを測定することで線量推定を行っている。ESR測定で得たスペクトルから炭酸ラジカル由来の成分だけを抽出するため、乱数最適化を用いた多成分解析プログラムを整備した。

論文

歯中炭酸ラジカルの電子スピン共鳴法測定におけるマイクロ波パワーの検討

岩見 聡音*; 山下 琢磨*; 光安 優典*; 小野 健太*; 岡 壽崇; 高橋 温*; 木野 康志*; 関根 勉*; 清水 良央*; 千葉 美麗*; et al.

KEK Proceedings 2024-6, p.91 - 95, 2024/12

ESR線量計測法の検出限界線量の改善を目指している。本研究では、ESR測定時にマイクロ波出力を変化させ、各ラジカルの飽和挙動を調べた。炭酸ラジカルと有機ラジカルのスピン緩和時間の違いから、マイクロ波出力を4.0mWにすると、S/N比が改善し検出限界線量を引き下げることができるという見込みを得た。

論文

Large spontaneous Hall effect with flexible domain control in the antiferromagnetic material TaMnP

小手川 恒*; 中村 彰良*; Huyen, V. T. N.*; 新井 祐樹*; 藤 秀樹*; 菅原 仁*; 林 純一*; 武田 圭生*; 田端 千紘; 金子 耕士; et al.

Physical Review B, 110(21), p.214417_1 - 214417_8, 2024/12

 被引用回数:4 パーセンタイル:35.67(Materials Science, Multidisciplinary)

In this study, we show that the orthorhombic system TaMnP exhibits a large anomalous Hall conductivity (AHC) in spite of the small net magnetization. Neutron scattering experiment and the observation of the AH effect comprehensively suggest a dominant AF structure in TaMnP is represented by $$B_{3g}$$. The AHC is one of the largest among those observed in AF materials at zero fields. First-principles calculations suggest that the spin-orbit interaction originating in nonmagnetic Ta-5$$d$$ electrons significantly contributes to the enhancement of Berry curvatures in the momentum space. We found that the AF domain switching is triggered by the magnetic fields along all the crystal axes. This indicates that the AF domain determining the sign of the Hall response can be controlled even through the small net magnetization symmetrically different.

論文

Biofilm formation on excavation damaged zone fractures in deep neogene sedimentary rock

廣田 明成*; 幸塚 麻里子*; 福田 朱里*; 宮川 和也; 佐久間 圭佑; 尾崎 裕介; 石井 英一; 鈴木 庸平*

Microbial Ecology, 87, p.132_1 - 132_15, 2024/10

 被引用回数:3 パーセンタイル:32.75(Ecology)

深部の地下坑道は、鉱山や放射性廃棄物の地層処分のような工学的利用に加え、地下生命圏へのアクセスにおいても有用である。掘削損傷領域(EDZ)に人工的に形成した割れ目のネットワークは、物質の移行経路となると共に、空間と栄養を微生物に提供する場となる可能性がある。本研究では、幌延深地層研究所の深度350m坑道において掘削されたボーリング孔と検層結果を用いて、EDZ割れ目上の微生物バイオフィルムを調査した。顕微鏡観察と赤外分光分析により、EDZの高透水性割れ目表面に微生物が密集してバイオフィルムを形成していることを確認した。16S rRNA遺伝子配列分析の結果、微生物はGammaproteobacteria綱の好気性メタン資化細菌が優占した。好気性メタン資化細菌と同一種のゲノム配列は、幌延深地層研究所での先行研究で取得されており、活性酸素種からO$$_{2}$$を生成するcatalaseやsuperoxide dismutase、およびNOからN$$_{2}$$とO$$_{2}$$を発生する可能性のあるnitric oxide reductaseの遺伝子を有することがゲノム解析により明らかとなった。これらの結果から、EDZ割れ目における微生物のO$$_{2}$$生成が示唆され、地下微生物の生息に有利な環境であると結論される。

論文

Dual chiral density wave induced oscillating Casimir effect

藤井 大輔; 中山 勝政*; 鈴木 渓

Physical Review D, 110(1), p.014039_1 - 014039_15, 2024/07

 被引用回数:6 パーセンタイル:63.48(Astronomy & Astrophysics)

カシミア効果は、微小体積に閉じ込められた光子場から誘起されることが知られており、また、そのフェルミオン的な対応物も、幅広い量子系で予言されている。ここでは、薄い有限密度クォーク物質において、どのような種類のカシミア効果がクォーク場から起こりうるかを調べる。特に、有限密度クォーク物質の基底状態の候補である二重カイラル密度波において、カシミアエネルギーが物質の厚さの関数として振動することを見いだした。この振動するカシミア効果は、Weyl半金属におけるカシミア効果と類似しており、クォーク場の運動量空間におけるWeyl点に起因すると考えることができる。さらに、クォークのフェルミ海からも振動が誘起され、全カシミアエネルギーは複数の振動の重ね合わせから構成されることを示す。

論文

ゲノムの構造と機能、およびエネルギー代謝に及ぼす放射線の長期影響

廣瀬 エリ; 横谷 明徳*; 野口 実穂*; Huart, L.*; 鈴木 啓司*

放射線生物研究, 59(2), p.134 - 156, 2024/06

細胞が放射線照射を受けた後、どのようなプロセスをたどって長期期間を経て現れる発がんなどの放射線影響につながるのか、放射線の長期影響をゲノムの構造・機能変化とエネルギー代謝の2つの視点から論じる。放射線によるゲノムへの長期影響の一つとして、ゲノム不安定性が子孫細胞に受け継がれることがわかってきた。X線照射によりX染色体上のHPRT1遺伝子座に欠失を有するヒト細胞のクローン株を樹立し、これらを用いて筆者らが子孫細胞に受け継がれた大規模なDNA欠失を調べたところ、欠失部位の両端にはっきりとした境目がなく、少なくともX染色体上の約130-137 Mbにわたって、DNA欠失部分と残存部分がパッチワーク状に混在していることが分かった。これはX線照射時における細胞核内でのDNAの収納のされ方に依存して、放射線エネルギー付与の空間密度を反映したDSBの分布を示していると考えられる。また、一般に考えられている1Gyあたり約40個/細胞に生じるDSBの頻度を考慮すると、非DSB型クラスターDNA損傷の塩基除去修復によって引き起こされる 二次的なDSBに起因する欠失も生じたと考えられる。さらに、複雑なDNA欠失パターンがゲノム全体の機能に及ぼす影響を、遺伝子発現を指標に調べたところ、遺伝子発現変動は大規模欠失領域の近傍だけでなくDNA欠失が位置するX染色体全域に及んでいた。これは、二次的なDSBに伴うCTCF結合サイトの欠失が要因であることを示唆している。他方、放射線照射後に細胞周期から離脱し細胞周期を不可逆的に停止した細胞(放射線誘発早期老化細胞)の場合、放射線の長期影響がエネルギー代謝に現れる。放射線誘発早期老化細胞は、細胞周期が回転しないため、DNA合成や細胞分裂に必要なエネルギーは不要で、このため、正常細胞と比較してエネルギー代謝活性は、一見、低いと予想されがちである。しかし、ミトコンドリアの膜電位差を通じて代謝活性を調べたところ、放射線誘発早期老化細胞では、代謝活性が上昇する様子が観察され、代謝活性化に伴うATP量の増加も合わせて報告された。ミトコンドリア活性の亢進に伴い生産された活性酸素種が近傍の細胞の損傷を誘発すると考えられることから、放射線誘発早期老化細胞は長期にわたって周囲の正常細胞にも影響を与えることが予想される。本稿ではこのような、長い時間が経っても残り続ける放射線の"爪痕"について論じる。

論文

Non-Hermitian Casimir effect of magnons

仲田 光樹; 鈴木 渓

npj Spintronics (Internet), 2, p.11_1 - 11_6, 2024/06

量子場の真空ゆらぎによって創発されるカシミア効果は、古典力学には対応物が存在しないという意味において、真に量子力学的な効果である。本研究では、従来の「散逸のないエルミート系」におけるマグノンカシミア効果を「散逸のある非エルミート系」に拡張する。そして「例外点に誘起される非エルミートカシミア振動」をはじめとする、従来のエルミート系にはない、非エルミート系に固有のマグノン・カシミア量子物性を明らかにする。本研究は、カシミア効果を制御・デザインする「カシミア・エンジニアリング」の基礎学理の構築に大きく貢献することが期待される。

論文

Degradation of a lithium cobalt oxide cathode under high voltage operation at an interface with an oxide solid electrolyte

伊藤 耕太郎*; 田村 和久; 清水 啓佑*; 山田 悟史*; 渡邊 健太*; 鈴木 耕太*; 菅野 了次*; 平山 雅章*

RSC Applied Interfaces (Internet), 1(4), p.790 - 799, 2024/04

LiCoO$$_{2}$$はリチウムイオン電池の正極材料として広く使われている材料である。しかしながら、電解質の酸化分解により、高電圧領域での可逆容量はよくわかっていない。本研究では、LiCoO$$_{2}$$とLi$$_{3}$$PO$$_{4}$$をエピタキシャル成長させて作成した高電圧(4.6V)で動作する薄膜全固体電池の作成に成功した。一方で、4.7V以上では、充放電容量は減少した。放射光を用いたX線回折実験を行い、LiCoO$$_{2}$$の結晶構造がO1型に変化することで不活性化することがわかった。O1型構造では、層間距離が短くなっており、Liイオンのインターカレーションが阻害されている可能性が示唆された。

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