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鹿園 直哉; 鈴木 智広*; 北村 智; 渡辺 宏*; 田野 茂光*; 田中 淳
Journal of Experimental Botany, 56(412), p.587 - 596, 2005/02
被引用回数:121 パーセンタイル:91.05(Plant Sciences)シロイヌナズナ乾燥種子に炭素イオン150Gy、及び対照として電子線750Gyを照射し、誘発される突然変異の特徴を調べた。炭素イオンでは大部分が短い欠失からなる点様突然変異と、逆位,転座,欠失等の大きな構造変化が誘発された。大きな構造変化で切断点を解析したところ、多くの場合短い相同性を利用して再結合がなされていること,切断末端では短い欠失が生じることが見いだされた。それに対し電子線では、短い相同性を利用する点は同じだが、切断末端では欠失ではなく、その末端の配列が重複するかたちで再結合がなされることが多かった。これらの結果は、炭素イオン及び電子線によって誘発されるDNA鎖切断は異なる経路によって修復される可能性を示し、イオンビームの突然変異原としての有用性を示唆するものである。
鹿園 直哉; 横田 幸彦*; 北村 智; 鈴木 智広*; 渡辺 宏; 田野 茂光; 田中 淳
Genetics, 163(4), p.1449 - 1455, 2003/04
高等植物におけるイオンビームの突然変異誘発効果を調べるため、シロイヌナズナにカーボンイオンを照射した。カーボンイオンは電子線に比べ胚発生致死及び葉緑素欠損突然変異体をそれぞれ高頻度(11倍,7.8倍)に誘発した。カーボンイオン照射後の突然変異体選抜の過程で2つの新しいフラボノイド突然変異体()を単離した。3系統の
のうちの2系統では
遺伝子内に小さな欠失をもつこと、残りの1系統では
遺伝子を含む断片に大きな構造変化が起こっていることがPCR及び塩基配列解析からわかった。分離頻度を用いて突然変異率を算出したところ、カーボンイオンは電子線に比べ17倍突然変異率が高いことが明らかになった。新しい突然変異体が単離できたこと、及び突然変異率が高いことは、イオンビームが植物遺伝学において有用な変異原として利用できることを示唆する。
田中 淳; 坂本 綾子; 石垣 靖人*; 二階堂 修*; Sun, G.; 長谷 純宏; 鹿園 直哉; 田野 茂光; 渡辺 宏
Plant Physiology, 129(1), p.64 - 71, 2002/05
被引用回数:75 パーセンタイル:82.68(Plant Sciences)シロイヌナズナ種子にTIARAの炭素イオンビームを照射し、その後代において紫外線に耐性になる系統を初めて発見した。得られた4系統のうち、uvi1と名付けた系統では、紫外線高濃度環境下で野生株よりも約2倍の成長があったが、形態的には差異がなかった。紫外線損傷DNAの修復機構として明回復,暗修復の存在が植物で知られているが、これについてuvi1の能力を根の伸張テストやELISAで解析したところ、野生株に比べてuvi1は明回復,暗修復ともに向上していた。また、修復酵素であるCPDフォトリアーゼの遺伝子発現を調べたところ、uvi1では発現量が高まっていた。以上の結果から、uvi1では紫外線損傷DNAに対する修復能力が高まっているため、紫外線耐性が付与されたものと考えられる。
鹿園 直哉; 田中 淳; 北山 滋*; 渡辺 宏; 田野 茂光*
Radiation and Environmental Biophysics, 41(2), p.159 - 162, 2002/04
被引用回数:41 パーセンタイル:70.08(Biology)植物における重イオン照射効果を調べるため、シロイヌナズナの乾燥種子に炭素イオン,ネオンイオン,アルゴンイオンを照射した。ネオンイオン,アルゴンイオンによる致死の生物効果比(RBE)は350keV/mを超える線エネルギー付与(LET)の値でピークを示した。この値は100-200keV/
mでピークを示すほ乳類細胞等の値に比べ高いものである。さらに、不稔率を調べると、LETが354keV/
mのネオンイオンのほうが113keV/
mの炭素イオンより高いRBEを示した。これらの結果はシロイヌナズナ種子における致死のRBEピークは単細胞系に比べて高いLETで生じることを示している。致死及び不稔はDNA損傷によって引き起こされることが知られている。このLETのシフトは種子中の化合物組成やDNAの水和状態の違いに主に起因すると推察される。
久米 民和; 渡辺 和夫*; 田野 茂光*
JAERI-Conf 2002-001, 171 Pages, 2002/02
アジア原子力協力フォーラム(FNCA)の「植物の突然変異育種ワークショップ2001」(分子生物学的手法)がタイ国バンコク市において開催された。本ワークショップではFNCA参加8か国(中国,韓国,マレーシア,フィリピン,ベトナム,インドネシア,タイ,日本)から突然変異育種の専門家が参加し、各国の現状に関する発表,討論が行われた。また、フェイズIIのまとめ,今後のワークショップのあり方について意見交換を行った。本ワークショップには招待参加者も含め24名が参加し、各国における突然変異育種の現状に関して3件の招待講演を含め11件が報告された。本論文集はそれらを収録したものである。
久米 民和; 渡辺 和夫*; 田野 茂光
JAERI-Conf 2001-003, 209 Pages, 2001/03
「RI・放射線による植物の品種改良ワークショップ」(物理的/化学的変異原の効率的利用法)が、2000年10月9日~13日にベトナム国・ハノイ市において開催された。本ワークショップには、FNCA参加8か国、中国,韓国,マレーシア,フィリピン,タイ,インドネシア,ベトナム,日本からプロジェクト・リーダーと突然変異育種専門家の各国2名(韓国のみ1名)が参加した。その他、日本,ベトナムから各7名が参加した。本ワークショップの参加者は、招待参加者,オブザーバーを含めると約60名に達し、「参加国における突然変異育種の現状」に関して8件の招待講演を含め計16件が報告された。今回は、特に植物突然変異における物理的/化学的変異原の効率的利用法に焦点を絞り、参加各国で実施された研究の現状を報告するとともに、突然変異育種のデータベース構築等今後の研究計画について討議され、植物突然変異研究に関する情報交換及び今後の研究協力の進め方について討議した。本論文集はそれを収録したものである。
鹿園 直哉; 田中 淳; 渡辺 宏; 田野 茂光
Genetics, 157(1), p.379 - 387, 2001/01
イオンビームによって誘発される突然変異の分子機構は全くわかっていない。そこで、シロイヌナズナに炭素イオンビームを照射し、誘発したgl1-3,tt4(C1),ttg1-21の3つの突然変異体から変異遺伝子を単離し、塩基配列の解析を行った。gl1-3突然変異は、第3染色体に存在するGL1遺伝子座とAtpk7遺伝子座間で逆位を起こしており、そのサイズは、2,3百kbpに及ぶものであった。逆位は第2染色体の107bpの挿入をも伴っていた。tt4(C1)突然変異も、2,3百kbp程度の逆位を誘発していた。一方、ttg1-21突然変異では、第3染色体と第5染色体の相互転座に由来するものであった。これら3つの突然変異に共通して観察された現象は、すべての変異が、わずか数塩基のホモロジーを介して再結合されているということであった。また、その接合点では数塩基の欠失も伴っていた。これらの結果から、イオンビームによるDNA損傷は、非相同組換え修復によって変異が誘発していることが示唆された。
鹿園 直哉; 田中 淳; 横田 幸彦*; 渡辺 宏; 田野 茂光*
DNA Sequence, 9(3), p.177 - 181, 1998/00
シロイヌナズナのコロンビア系統からGLI遺伝子を単離し、その塩基配列を決定した。既に塩基配列が決定されていたgl1-2対立遺伝子と塩基配列を比較したところ、gl1-2では2箇所に変異を生じていることがわかった。1つはエキソン3での14塩基対の欠失であり、その変化がgl1-2変異体の変異形質の原因である可能性が高い。もう1つは遺伝子のS'上流域でのTCからCTへの塩基置換である。遺伝子発現に必要であるS'上流域での配列は正確に特定されていないため、このS'上流域での変異が変異形質の原因である可能性は否定できない。本研究で決定したコロンビア系統のGLI遺伝子の塩基配列を、シロイヌナズナの別のエコタイプであるWS系統のGLI遺伝子の塩基配列と比較したところ、幾つかの変化が見られた。これら2つのエコタイプでGLIタンパク質は同様に機能すると考えられるため、配列の変化はGLIタンパク質の機能及び発現に大きく影響しないと思われる。
鹿園 直哉; 横田 幸彦*; 田中 淳; 渡辺 宏; 田野 茂光*
Genes and Genetic Systems, 73(3), p.173 - 179, 1998/00
被引用回数:29 パーセンタイル:54.36(Biochemistry & Molecular Biology)植物におけるイオンビーム誘発突然変異の特徴を調べるため、カーボンイオン(220MeV)によって誘発されたシロイヌナズナの突然変異体をPCR及びサザンブロット法によって解析した。カーボンイオン照射後分離された突然変異体は、gl1突然変異体が2系統、tt4突然変異体が2系統である。これら4つの突然変異体のうち、1つは欠失、2つは転座もしくは逆位、1つは点突然変異であった。以上の結果から、イオンビームは植物において様々な種類のDNAの構造変化を誘発することが示唆された。イオンビームは、新しい突然変異原として、植物の遺伝学や育種学に非常に有用であると考えられる。
坂本 綾子; 田中 淳; 田野 茂光*; 中嶋 敏*; 山本 和生*; 渡辺 宏
Plant Physiol. (Plant Gene Register PGR98-180), 118, 1101 Pages, 1998/00
太陽光のエネルギーを利用して独立栄養を営む植物は有害なUV-Bを含む日光を一日中浴び続けなければならない。紫外線があたると、細胞内のDNA上にシクロブタン型ピリミジダイマー(CPD)や6-4光産物といったDNA損傷が蓄積し、これが転写や複製といった細胞の活性を阻害する。こうした紫外線の作用に対抗するため、植物は独自の防御法を発達させてきている。そのうちの1つであるDNA修復に関しては、これまで植物や微生物で研究されてきた修復酵素のホモログと思われる酵素が、最近高等植物にも存在することが明らかとなった。そこでこの酵素(6-4)フォトリアーゼをコードする遺伝子をシロイヌナズナから単離し、ゲノム上での構造を決定した。その結果、この遺伝子が14個のエクソンによってコードされており、プロモーター構造も他のフォトリアーゼ遺伝子と大きく異なることが明らかになった。
田中 淳; 田野 茂光*; T.Chantes*; 横田 幸彦*; 鹿園 直哉; 渡辺 宏
Genes and Genetic Systems, 72(3), p.141 - 148, 1997/06
被引用回数:52 パーセンタイル:72.97(Biochemistry & Molecular Biology)シロイヌナズナの乾燥種子に炭素イオンビームを照射し、照射種子1,488個に由来する11,960個体の自殖後代で、種皮にアントシアニン色素が多量に点在する、新しい突然変異体(anthocyanin spotted testa: ast)を得た。アントシアニンの蓄積量は開花後6日目で最大となり、野生株の5、6倍量に達した。また色素合成能が、異なった変異体tt7,ttgと交配した結果から、AST遺伝子は未熟種子の成熟過程において組織・時期特異的にアントシアニン合成を抑制する遺伝子であることが推測された。遺伝分析からこの変異は遅滞遺伝で単一劣性遺伝を示した。DNAマーカーを用いた染色体マッピングにより、AST遺伝子は第1染色体のnga280マーカーから約3.2cMの距離に座位すると考えられた。
田中 淳; 田野 茂光*; Chantes, T.*; 横田 幸彦*; 鹿園 直哉; 渡辺 宏
Genes and Genetic Systems, 72(3), p.141 - 148, 1997/00
被引用回数:52 パーセンタイル:72.47(Biochemistry & Molecular Biology)シロイヌナズナの乾燥種子に炭素イオンビームを照射し、種子色に変異のある突然変異体のスクリーニングを行った。150~200Gyの照射種子1,488個に由来する11,960個体の自殖後代で種皮にアントシアニン色素が多量に点在する、新しい突然変異体(anthocyanin spotted testa:ast)を得た。アントシアニンの蓄積量は開花後6日目で最大となり野生株の5、6倍量に達したが、完熟種子、幼苗、本葉、つぼみでは高い蓄積量は見られなかった。このことから、この遺伝子は未熟種子の成熟過程において組織・時期特異的に色素合成を制御する遺伝子であることが推測された。遺伝分析から、この変異は遅滞遺伝で単一劣性の遺伝を示し、またDNAマーカーを用いた染色体マッピングにより、AST遺伝子は第1染色体のnga280マーカーから約3.2cmの距離に座位すると考えられた。なお、ASTは新しい遺伝子名として登録された。
田中 淳; 鹿園 直哉; 横田 幸彦*; 渡辺 宏; 田野 茂光*
International Journal of Radiation Biology, 72(1), p.121 - 127, 1997/00
重イオンビームの植物に対する影響をシロイヌナズナの発芽率、生存率を指標として調べた。重イオンとして、17~549keV/mのLETを有するHe,C,Ne,Arを用いた。生存率では、用いた2系統でともにLET252keV/
m付近で電子線照射に対してのRBF(生物効果比)が11~12と最大になり、重イオンのDNA損傷に対する効果が大きく、またイオンのLETによってその効果が異なることを明らかにした。一方、発芽率では用いた2系統で重イオンに対する感受性が異なり、DNAの損傷以外の要因が発芽に大きな影響を及ぼすことを示唆できた。さらに生存曲線で観察される生存率低下のしきい値(生存曲線の肩)に対する重イオンの効果の解析から、生存曲線の傾きと同様に、生存曲線の肩もDNAの回復能力に依存することを示唆した。
田中 淳; 渡辺 宏; 清水 隆志*; 井上 雅好*; 菊地 正博; 小林 泰彦; 田野 茂光*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 129(1), p.42 - 48, 1997/00
被引用回数:18 パーセンタイル:78.23(Instruments & Instrumentation)イオンビームを用いた細胞への深度制御照射技術を確立した。タンデム加速器に接続した深度制御細胞照射装置を用いて、照射窓からの距離を変化させてイオンの打ち込み深度を制御した。RCDフィルムとCR-39フィルムを用いた実験から、照射窓からの距離を変化させることにより、細胞中のイオン打ち込み深度を1m~30
mまで直線的に制御できることを明らかにした。次にこの深度制御照射技術を用い、タバコ花粉への打ち込み深度を変化させて、花粉外殻の開裂によって生じる漏出花粉頻度を調べた。その結果、イオンビームが停止する直前の、花粉への打ち込み深度の浅い(約4
m)照射で漏出花粉頻度のピークが観測された。このことは、停止直前のイオンビームには生体物質への特徴的な効果があり、その結果局所的に花粉外殻の開裂が誘発されることを示唆している。
田中 淳; 田野 茂光*; 渡辺 宏; 鹿園 直哉; 横田 幸彦*
育種学雑誌, 46(SUPPL.1), 60 Pages, 1996/00
イオンビームによる突然変異の誘発は、低LET放射線等の変異原によるものとは質的に異なる可能性がある。そこで今までに報告のない、紫外線(UV-B)に抵抗性を示す突然変異の作出をシロイヌナズナを用いて試みた。野性株の種子に220MeVの炭素イオンを150、200Gy照射し、後代(M)種子を得た。一次選抜として、UV-Bを10~13kJ/m
/day照射することによって生育のよい27個体を得た。その自殖によって得られるM
~M
を通常環境下で展開すると供に、一部の種子を用いてさらに選抜を行った。その結果、1280M
種子由来の後代から4つの異なった紫外線抵抗性株を作出することができた。照射後の根の伸長測定から、選抜した4系統は光回復と暗回復のうち、少なくともいずれかの能力が高まっており、紫外線照射によるDNA損傷の修復能が野性株より高くなっていることが示唆された。
田中 淳; 横田 幸彦*; 渡辺 宏; 鹿園 直哉; 田野 茂光*
GSI-95-10, 0, p.87 - 90, 1995/00
シロイヌナズナの種子にイオンビームを照射し、発芽率と生存率への効果を調査した。用いたイオンビームは、2種類のエネルギーのHe及びC、Ne、Arの5種類であり、LETは17~549keV/mである。LETに対するRBEをプロットした結果、生存率は用いた2系統の種子共に、LET200~250keV/
mにRBEのピークを示し、単細胞系での結果と類似した傾向を示した。一方、発芽率では、RBEのピークがなく、LETの増加に伴いRBEが増加した。このことは、発芽率抑制のターゲットがDNA以外にも存在することを意味する。一方、線量に対する生存率曲線の中で、Neイオンでの生存曲線は、シロイヌナズナで通常見られる肩がなく、また傾きが他のイオンビームと比較して、緩やかな指数関数的減少を示した。このことは、イオン種間で生物効果が異なることを示唆しており、またLETだけでは説明し得ないイオンビームの効果を示す。
田野 茂光*
原子力工業, 41(3), p.24 - 26, 1995/00
原子力と基礎研究というテーマの中でイオンビームが生物に与える影響についてシロイヌナズナという植物を用いて研究をする意味についてのべた。その中で研究の背景と材料・特性、研究の意図および目的について論じた。
鹿園 直哉; 渡辺 宏; 田中 淳; 田野 茂光*; 堤 伸浩*; 平井 篤志*
Mutat. Res., DNA Repair, 337, p.41 - 48, 1995/00
細胞分化のDNA鎖切断の再結合能に対する影響を調べるため、オオムギの根において、アルカリ巻きもどし法を用い、DNA鎖切断の再結合能を解析した。DNA鎖切断の再結合は、早い再結合と遅い再結合の2相性であることが明らかとなった。線照射後6時間で、未分化の細胞でのDNA鎖切断は未照射のレベルまで再結合されたが、分化した細胞では再結合されない切断が残存した。この再結合能の違いは遅い再結合の効率に起因した。未分化の細胞の遅い再結合は、タンパク質合成阻害剤であるシクロヘキシミドの存在下では阻害され、照射後のタンパク質合成を必要とすることが示唆された。一方、分化した細胞での再結合はシクロヘキシミドにより阻害されなかった。以上の結果から、分化した細胞での再結合能の低下は、遅い再結合での誘導的な再結合が欠損しているために生ずると推察された。
田中 淳; 横田 幸彦*; 鹿園 直哉; 渡辺 宏; 田野 茂光*
Radiation Research 1985-1995, Congress Proc., Vol. I, 0, 445 Pages, 1995/00
シロイヌナズナの種子にイオンビームを照射し、発芽や生存への効果及び誘発された突然変異について調べた。生存率のRBEはLET200~250keV/mでピークを示したのに対し、発芽率のRBEはLETの増加に伴って増加した。またNeイオンを用いた生存率曲線は肩がなく、指数関数的に減少する特徴的な曲線を示した。以上から、イオンビームは低LET放射線とは量的に異なった効果を与えるばかりでなく、質的にも異なることが示唆された。一方、突然変異スペクトルは、対照とした電子線と比較し、矮化植物体や色素変異体がイオンビームにより多く誘発されるとともに、線量依存性があることも示唆された。また、今までに報告されていない変異体も誘発され、イオンビームが新しい植物遺伝子資源を作出する可能性を持つことを示した。
渡辺 宏; 田野 茂光*
原子力工業, 40(2), p.45 - 49, 1994/00
イオンビームの生物影響、特にDNA切断効率のLET依存性と生物効果との関係、また原研で進めているDNA切断の修復反応の解析、更に遺伝的影響を解析するための研究の現状などについて紹介するとともに、これから開始されるマイクロビーム照射研究の意義と生物医学分野への利用の可能性などを紹介した。