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平出 哲也; Lee, J.; 岡 壽崇
no journal, ,
液体中において、陽電子消滅の最長寿命を示すオルソーポジトロニウムの寿命は、高温ほど長くなるが、唯一、水中では短くなる。水中では、オルソーポジトロニウムと入射陽電子のターミナルスパー(陽電子トラック構造の末端)内に形成されている活性種との反応が、拡散率速で進み、高温では拡散速度が大きくなる。反応の結果、短寿命を示す自由陽電子やパラーポジトロニウムとして消滅していくため、高温では寿命が短くなると考えられる。このようなオルソーポジトロニウムの反応の中で最も重要なスピン交換反応は、非常に短寿命で運動量分布の狭いパラーポジトロニウムからの消滅を増大させる。陽電子消滅寿命-運動量相関測定装置を構築し、スピン交換反応の温度依存性を、直接実験により検証することに成功した。
前川 雅樹; 河裾 厚男; 深谷 有喜; 薮内 敦
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スピン偏極陽電子を用いると、物質内部や表面・界面の余剰スピンの検出が可能となり、スピントロニクス材料分野へ応用できる。高い偏極率と強度を持つ陽電子源として、われわれはGeに注目した。これは半減期270日で
Gaに壊変し、最大エネルギー1.9MeVの陽電子を放出する。理論上のスピン偏極率は90%である。線源の生成には高エネルギープロトンビームによる
Ga(p,2n)
Ge反応を用いる。本研究ではGaターゲットを収める線源カプセルの開発、イオンビーム照射による
Geの生成、及び生成効率・スピン偏極率の測定を行った。
倉持 彰彦
no journal, ,
原子力施設の廃止措置に伴い、管理区域解除にかかわる汚染検査等に多大な時間と労力を要することが、廃止措置における放射線管理上の重要な課題の一つである。原子力科学研究所においてVHTRC(高温ガス炉臨界実験装置)及び同位体分離研究室施設の2つの施設の管理区域の解除にかかわる汚染検査を実施した。本報告は、放射線管理担当課による汚染検査に要した時間,人工数,測定上の留意点等の知見を報告するものである。汚染検査は管理区域の床,壁,天井等についてGM計数管式表面汚染検査計や放射能測定装置等を用いて、線及び
線について直接法及び間接法により実施した。これらの測定のうち、最も時間と労力を費やした直接法による測定時間と人数の関係をとりまとめた。また、本経験を踏まえ、測定上の留意点を抽出した。スキャンニングの速さは測定者の経験,過去の汚染履歴等により左右されるが、直接法で、
線と
線を合わせておおむね1m
あたり5分かかることがわかった。廃止措置の対象施設にかかわる管理区域の面積から必要とする人工数を推定する基礎データや測定上の留意点が得られた。
薮内 敦; 前川 雅樹; 河裾 厚男
no journal, ,
近年、原子空孔が応力勾配を駆動力に亀裂先端部に集積することにより、SCC亀裂が進展するという仮説が提唱されている。しかしそのような原子空孔の生成起源に関しては不明である。そこで本研究ではSCC亀裂進展に伴う格子欠陥導入について検証するため、沸騰MgCl水溶液による加速腐食処理によりSUS304箔試料にSCC亀裂を生じさせ、亀裂周辺の格子欠陥分布状況について陽電子マイクロビームを用いて評価を行った。その結果、SCC亀裂から200-400
mまでの領域で、格子欠陥の生成を示唆する消滅
線エネルギー分布のピーク中心強度の増大が見られた。SCC亀裂周辺から得た陽電子消滅スペクトルの、亀裂から離れた部位から得た陽電子消滅スペクトルに対する相対変化は、引張試験片の引張前後での陽電子消滅スペクトルの相対変化と良い一致を示し、また第一原理計算より導出した単原子空孔での陽電子消滅スペクトルの、完全結晶での陽電子消滅スペクトルとの相対変化ともよく合うことから、SCC亀裂周辺で見られたピーク中心強度の増大は亀裂進展に伴い導入された塑性変形誘起空孔がもたらしたものであると考えられる。
佐藤 裕一*; 廣木 章博; 太田 朗生*; 長澤 尚胤; 清藤 一; 岩撫 暁生; 山林 尚道*; 山本 幸佳*; 玉田 正男; 小嶋 拓治
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放射線治療時の放射線照射位置精度の管理に用いるポリマーゲル線量計の作製を目指し、ゲル材料の線に対する放射線応答性に関する研究を行った。本研究では、ゲルの母剤としてジェランガムを用いた。溶液(1)0.4wt%のジェランガム水溶液と溶液(2)所定濃度の2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA),トリエチレングリコールモノエチルエーテルモノメタクリレート(TG),ポリエチレングリコールジメタクリレート(9G)などを含む放射線検出液を混合し、分光光度測定用セルに流し込み、冷暗所で保管しゲル化させることで、ゲル線量計用ゲルを作製した。作製したゲルに最大25Gyの
線を照射し、ゲル内のポリマー生成に伴う白濁度の変化を吸光度測定により評価した。その結果、溶液2がHEMA2%/9G0.2%では、線量増加に伴い直線的に吸光度が増加し、25Gyで約3に達した。9Gの濃度が増加すると、吸光度は低い線量で急激に増加し、9G1%では約7Gyで吸光度約3に達することがわかった。また、TG/HEMA/9Gを含む場合では、その組成比に依存して、5Gy付近から10Gyの間で急激に吸光度が増加するゲルを作製できた。したがって、モノマーの組成比を変えることで、線量に応答した白濁度を制御することができ、ガン治療時の線量集中領域となる10-20Gyの領域を可視化できるゲル線量計開発の見通しが得られた。
菊地 正博; 下山 雄平; 鵜飼 光子*; 小林 泰彦
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熱帯果実を輸入する際には病害虫の侵入を防ぐため、世界的には放射線による植物検疫処理も用いられる。そこで、傷みやすい生鮮果実に適用できる迅速なESR判別法を開発した。条件の最適化により、照射された生パパイヤを液体窒素温度下でESR測定して、メインピークとサイドピークを観測することに成功した。果肉におけるピーク強度は、線量の増加につれて増加しており、線量依存性があることがわかった。一方、生パパイヤの乾燥検体のESR測定でも、凍結乾燥法を工夫することで24時間以内に測定が完了でき、そのサイドピークは線量依存性を示した。これらの結果は、検疫処理として照射された生鮮果実に対する照射の有無の判別に有効であると考えられる。
河地 有木; 鈴井 伸郎; 石井 里美; 伊藤 小百合; 石岡 典子; 藤巻 秀; 菊地 郁*; 渡部 浩司*
no journal, ,
近年のRIイメージング技術の革新は、生体内のさまざまな分子動態の可視化を可能にし、研究者はより容易に対象となる生体の機能を明らかにし、生命を理解できるようになったと言える。発表者らはPETISを用いて、植物体の葉から果実内部へ移行するC-光合成産物を可視化することで、果実へ移行した
C-光合成産物を定量的に解析する方法を開発した。しかしながらPETISが撮像可能な次元が2次元であるため、3次元的な構造を持つ果実内の炭素動態の撮像には不向きである。そこで、医療分野でトレーサの3次元撮像に実績のある小動物用PETを用いた炭素動態の撮像を試みた。実証実験では大小二つの果実が付いたトマトを用いた。約100MBqの
CO
を、ポンプと二酸化炭素吸収セルからなる簡易ガスコントロールシステムを用いて、十分な光量を与えた果実直下葉に吸収させ、2時間の撮像を行った。
CO
投与後、約30分頃から果実に
C-光合成産物が到達し始め、約1.5時間後には果実内部への移行様式が可視化されるなど、PETによる果実内炭素動態の撮像に初めて成功した。大小二つの果実に流入する炭素動態を解析したところ、果実(小)には新鮮重あたりで86倍の
C-光合成産物が移行しており、トマト果実の成長期におけるシンク能の高さが示されている。PETISと同様に、PETを用いた植物研究、特に3次元的な構造を持った対象におけるRIイメージング植物実験の有用性が示された。
藤巻 秀
no journal, ,
「植物研究でアイソトープ・放射線を使って何ができるか」と題したシンポジウムのパネル討論において、植物ポジトロンイメージング技術によって一般的に植物機能の何を明らかにすることができ、社会に何をもたらし得るのかについて、細胞膜から食糧生産・環境保全に至る階層に渡って概説する。
藤巻 秀; 鈴井 伸郎; 石岡 典子; 河地 有木; 伊藤 小百合; 石井 里美; 茅野 充男*; 中村 進一*
no journal, ,
植物ポジトロンイメージング技術(PETIS)を利用して、イネにおけるカドミウム輸送動態を包括的・定量的に明らかにすることに成功した。この成果を通して、植物ポジトロンイメージング技術を含む、RIトレーサを用いたリアルタイムイメージング技術が、植物栄養学上のどのような課題の解決に貢献できるのかの具体的な道筋についても発表を行う。
小林 泰彦; 菊地 正博; 等々力 節子*; 齊藤 希巳江*; 桂 洋子*; 亀谷 宏美*; 市川 まりこ*; 飯塚 友子*; 千葉 悦子*; 鵜飼 光子*
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収穫から約2か月後の青森県産ニンニクに30Gy以上の線を照射することによってほぼ完全に萌芽と発根を抑制できることがわかった。現在行われている低温倉庫でのCA貯蔵と高温処理の組合せよりも、低コストでニンニクの品質保持と周年供給が可能になるかもしれない。照射時期が1か月遅くなると萌芽抑制の効果は若干低下した。照射後の貯蔵温度による影響も考えられる。我が国で照射によるニンニク芽止め処理を実用化するには、生産地での収穫から出荷までの貯蔵環境を模擬しつつ、現在行われている周年供給のための長期貯蔵法と、品質及びコストの両面で比較検討する必要がある。
市川 まりこ*; 飯塚 友子*; 千葉 悦子*; 岡村 弘之*; 田部井 豊*; 森田 満樹*; 横山 勉*; 福冨 文武*; 坂上 千春*; 鵜飼 光子*; et al.
no journal, ,
日本では、食生活の変化に伴い、香辛料の消費量が増大してきているが、国内での生産は極めて少なく、大部分は熱帯,亜熱帯地方からの輸入に依存している。香辛料は熱に弱いので、加熱殺菌すると容易に色や香りや風味に影響を受けやすい。放射線照射はそのような品質劣化を回避できる優れた殺菌殺虫手段であり、EU全加盟国,米国,カナダ,豪州など、ほとんどすべての先進国で香辛料の放射線殺菌が許可され、照射されたスパイス・ハーブ類が国際的に流通している。しかし日本では、ジャガイモの芽止め以外の食品照射は法律で禁止されているため、放射線殺菌した香辛料の品質の良さを消費者が経験する機会はない。そこで、放射線処理したものと加熱処理したものに差があるのかないのか、自分の目で見て、においを嗅いで、実際にカレーを作って、体験してみようと思い立った。カレーの試食前の香りについては11名中10名が、試食中の風味については11名中9名が、照射品の方が加熱品より香りが強いと答えた。カレーの風味についての好みでは、11名中7名が照射品を用いた方が好きと答えた。試食後の感想には、「香辛料をミックスしてグツグツ煮込んだらわからなくなるのではないかと思っていたが、食べ比べると思っていたより差があり、照射品で作ったカレーの方がスパイシーな香りが強く感じられた」などがあった。今回の食べ比べの結果から、人によって程度の違いはあるが、全体としては放射線殺菌した香辛料の方が加熱殺菌したものよりも香りがよく、美味しかったと言える。
千葉 悦子*; 飯塚 友子*; 市川 まりこ*; 横山 勉*; 坂上 千春*; 鵜飼 光子*; 等々力 節子*; 菊地 正博; 小林 泰彦
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2009年9月に原子力機構・高崎量子応用研究所のCo-60線源を用いて線照射したにんにくを3名が自宅に持ち帰り、玄関や居間などで翌年4月まで保管し、発芽と発根の状態を観察した。各家庭での室温など条件が多少違っても「照射による発芽の抑制」は一目瞭然だった。むしろ「発根の抑制」が明確であることに驚き、照射の効果を鮮明に感じた。400Gy照射した2009年産秋田県産あきたこまち玄米を、3日後に精白、さらに2週間後に非照射対照試料とそれぞれ白飯とし、16名で簡易な官能検査をブラインドで行った。新米のせいか照射による違いは小さく、安価な給食や食堂といった場面なら十分使えそうと感じた。量が多い状態では照射すると多少黄みがかかるが、少量では違いがわからなかった。敏感な人には、照射した白飯の方が少し軟らかかった。市中で購入したいちご(群馬県産やよいひめ)をプラスチック・パックのままラップで包んで3kGy照射し、当日試食し、さらに冷蔵庫内で保存性を観察した。香りが薄い・やや軟らかい・酸味がやや弱いと感じる人もいたが、パックの照射臭を除けば十分食べられた。家庭用冷蔵庫保存では、1週間後もあまり変化せず、パックの外からでは照射の効果が確認できないうちに、両方が悪くなった。なお、いちごの品種や産地により、ついている微生物や収穫後の貯蔵・輸送条件も異なると考えられるので、今回の試食や保存の様子だけから「使えない技術」と結論を出すことはできないと考えた。
田子 敬典; 長澤 尚胤; 玉田 正男; 工藤 久明*; 勝村 庸介*
no journal, ,
植物由来のポリ乳酸やポリアミド11などのバイオプラスチックは、環境低負荷素材としてさまざまな分野での実用化が期待されている。特にポリ乳酸は、石油由来の汎用プラスチックと比較して耐熱性や耐衝撃性の低さが課題となっており、そのため、応用範囲が限定されている。橋かけ剤を添加したポリ乳酸の放射線橋かけ技術により耐熱性を向上できるが、耐衝撃性については汎用プラスチックの半分以下の値であり、改善点として課題になっている。そこで本研究では、耐衝撃性に優れた植物由来のポリアミド11を用いて、ポリ乳酸にブレンドして放射線橋かけにより、耐熱性とともに耐衝撃性も改質することを試みた。橋かけ剤であるトリアリルイソシアヌレートを3重量%添加したポリ乳酸/ポリアミド11(重量比50/50)ブレンド体に100kGy電子線を照射すると、ゲル分率が約83%を有する橋かけブレンド体を作製できた。この得られた橋かけブレンド体は、ポリ乳酸及びポリアミド11の融点以上の250Cでも熱変形をほとんど起こさず、かつ衝撃値が約5kJ/m
とポリ乳酸単独の2.5倍まで向上することがわかった。以上の結果から、汎用プラスチックであるポリプロピレンと同等の物性を有するバイオプラスチック材料を作製でき、バイオプラスチックの応用拡大に寄与できると考えられる。
津久井 匠隆; 渡邉 茂樹; 山田 圭一*; 花岡 宏史*; 奥 浩之*; 松尾 一郎*; 遠藤 啓吾*; 石岡 典子
no journal, ,
生理活性ペプチドの中には、抗がん作用,抗菌作用を示すものやホルモン様作用を示して受容体と結合するものがあり、創薬のリード化合物となり得る。われわれが開発したパラ位に臭素原子が置換された芳香族アミノ酸を構造中に有する環状ペプチドは、インビトロ実験において乳がん細胞の増殖抑制能を有することが明らかになっている。そこで、インビボ実験における体内分布の取得を目指し、開発した環状ペプチドへの放射性臭素の標識に関する基礎検討を実施した。構成アミノ酸である芳香族アミノ酸誘導体の標識条件では、前駆体に対しCATを1等量、NCSでは4等量加え、室温15分間反応させることで、それぞれ標識率70%で反応が進行し、効率よくBr-77を導入できることを確認した。標識前駆体の合成では、Boc-SPPS法により生成した化合物についてESI-MS分析を行った結果、目的物に相当するイオンピークは得られず、トリブチルスズアミノ酸を用いるBoc-SPPS法は環状ペプチド合成に適していないことが明らかとなった。そこで、現在新たな合成法として脱保護に塩基を用いるFmoc-SPPSによる合成について検討を行っている。
鈴井 伸郎; 山崎 治明; 河地 有木; 石井 里美; 伊藤 小百合; 石岡 典子; 藤巻 秀
no journal, ,
植物体内における亜鉛の動態をポジトロンイメージング技術により可視化する際に、これまではZnを自ら製造して用いてきたが、娘核種の
Cuがポジトロン放出核種である問題があった。そこで本研究では、購入可能なRIである
Zn(娘核種
Cuは安定同位体)をトレーサーに用いることで、亜鉛のポジトロンイメージングが可能であるかを検証した。par400kBqの
Znを含むトレーサー溶液をイネに投与し、PETISで撮像したところ、
Znが根から吸収され、地上部へ輸送され、蓄積される動画像を得ることができた。さらに、異なるキャリア濃度(基質濃度)のトレーサー溶液を投与した際の動画像から、
Znの吸収速度を算出し、ミカエリス・メンテン式を用いることで、イネにおける亜鉛の吸収特性(Km, Vmax)を評価することに成功した。
中村 進一*; 鈴井 伸郎; 伊藤 小百合; 河地 有木; 頼 泰樹*; 服部 浩之*; 茅野 充男*; 石岡 典子; 藤巻 秀
no journal, ,
これまでにわれわれが行った研究で、植物の根に与えたグルタチオン(GSH)が植物体の地上部へのカドミウムの移行と蓄積を選択的に抑制することが確認されている。本研究では、植物体内におけるCdの挙動をポジトロンイメージング技術(PETIS)を用いて可視化し、この現象の分子メカニズムの解明を試みた。供試植物として水耕栽培をしたアブラナを用いた。水耕液中に1mMのGSHを添加し、Cd及びPETISを用いて、植物におけるCdの移行・蓄積の様子をモニタリングし、得られた画像データの解析をすることで、それぞれの植物体内におけるCdの挙動を比較した。Cd処理のみを行った植物(対照区)、Cdに加えてGSH処理を行った植物(GSH処理区)において、Cdの移行と蓄積の様子を再現性よく可視化することに成功した。画像解析の結果、GSHは、植物の根におけるCdの径方向輸送に影響を与えることによって、植物体の地上部へのカドミウムの移行を抑制していることが明らかになった。
石井 里美; 鈴井 伸郎; 伊藤 小百合; 石岡 典子; 河地 有木; 大竹 憲邦*; 大山 卓爾*; 藤巻 秀
no journal, ,
ダイズなどのマメ科植物は、土壌微生物である根粒菌が根に感染すると「根粒」という共生器官を形成する。根粒は空中の窒素を固定し、固定した窒素を他の部位に輸送することで植物体に窒素栄養を供給する役割を持つ。これまで根粒による窒素固定の活性,固定窒素の輸送についてはN-15標識法を用いて研究されてきた。しかし、これらの方法は侵襲的であるために、例えば光や温度といった条件の変化に対する窒素固定や固定窒素の輸送の応答、すなわち栽培環境変化に対するそれらの生理的な応答を解析することは難しかった。そこで本研究ではN-13により標識した窒素ガス(13N標識窒素ガス)トレーサー及びPETIS(positron-emitting tracer imaging system)を用いて、窒素固定の活性及び固定窒素の輸送を非侵襲的にイメージングし、定量的に解析することを目的とした。
山崎 治明; 鈴井 伸郎; 河地 有木; 石井 里美; 伊藤 小百合; 島田 浩章*; 石岡 典子; 藤巻 秀
no journal, ,
本研究では植物の節における元素分配メカニズムの解明を目的とし、まず節の機能を人為的に阻害する実験系の確立を目指した。今回、その候補として植物の一部を局所的に冷やす試みを行った。ダイズの葉柄、及びイネの茎基部に局所冷却を施し、それぞれの葉にCO
を投与した。次に、植物が
CO
を吸収・固定し、
C-光合成産物として体内を移行・蓄積する様子を、PETISを用いてそれぞれ2時間撮像した。実験終了後、得られた動画像からダイズの節及びイネの茎基部における
C放射活性の経時変化を算出し、局所冷却を行わなかった場合と比較した。その結果、局所冷却を行ったダイズ、イネでは、ともに節での
C-光合成産物の蓄積量に減少傾向が見られた。また、ダイズでは
C-光合成産物の節への到達時間に遅延が認められた。これらの結果より、局所冷却によって篩管内及び節での光合成産物の移行量が減少することが明らかとなり、節の機能を阻害する手段として局所冷却が有効である可能性が示された。
深谷 有喜; 河裾 厚男; 一宮 彪彦*
no journal, ,
高速の陽電子ビームを結晶表面に低視射角で入射させると、全反射を起こす。全反射した陽電子は、主として表面プラズモンを励起し、そのエネルギーを失う。これまでに、Si(111)-77表面からの全反射陽電子のエネルギー損失スペクトルを測定し、全反射陽電子は電子と比較して約2倍の数の表面プラズモンを励起することがわかった。Si(111)-7
7表面上に1原子層のIn原子を吸着させると、一次元原子鎖が形成される。この表面は、120Kで金属絶縁体転移を起こす。そこで本研究では、一次元原子鎖の金属絶縁体転移における表面プラズモンの励起過程を調べるために、In/Si(111)表面からの全反射陽電子のエネルギー損失スペクトルを測定した。Si(111)-4
1-In表面(金属相)において、損失ピークの平均的な間隔は9.4eVであり、基板であるSi(111)表面の場合に比べてわずかに小さい値であることがわかった。これまでの電子エネルギー損失分光による結果から考えると、これらの損失ピークはSi(111)-4
1-In表面の表面プラズモン励起に対応する。弾性散乱ピークが弱く、表面プラズモンを3回励起した損失ピークが最も強い。この損失スペクトルの特徴は、これまでのSi(111), Al(111), Bi(001)表面で見られたものと同じである。ポアソン分布を用いた解析の結果、全反射陽電子の表面プラズモンの平均励起回数は2.6回であり、超薄膜においても全反射陽電子は多数の表面プラズモンを励起することがわかった。
Peng, J.; Hao, Y.*; Hu, S.*; Lin, M.; 勝村 庸介
no journal, ,
1-アリル-3-メチルイミダゾリウムクロライド([Amim]Cl)なるイオン液体の熱的安定性を等温熱重量分析と熱分解生成物質量分析を用いて調べた。さらに、紫外線分析や核磁気共鳴法により[Amim]Clの耐放射線性についても調べた。加熱過程において、[Amim]Clのアリル側の鎖がClアニオンと結合するのと同時にイミダゾール環から脱離することがわかり、この確率はメチル基の場合と同じであった。
線照射過程においては、[Amim]Clの脱色が見られたものの、窒素雰囲気において500kGyまで[Amim]Clの化学構造は変化しないことがわかった。