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宮村 浩子; 河村 拓馬; 鈴木 喜雄; 井戸村 泰宏; 武宮 博
情報処理学会論文誌, 55(9), p.2216 - 2224, 2014/09
数値シミュレーションでは、ある変量軸を設定して計算し、その変量の変化に応じて結果が変化する様子を観察することが行なわれる。対象となるモデルが3次元である場合、シミュレーション結果は4次元となる。このような4次元以上の多次元データの解析は、空間軸と変量軸で構成された多次元空間内を精査して特徴領域を特定する必要がある。しかし、多次元かつ大規模な対象データから特徴領域を探し出す作業は、膨大な手間と時間を要する。さらにすべての特徴領域を見逃しなく発見することは困難である。本研究では、4次元データから特徴領域を発見するために、動画像解析技術である時空間画像を応用した2次元可視化手法を提案する。具体的には、8分木構造を用いて空間軸を作成し、その軸と垂直に変量軸を作成することで4次元データを2次元画像として可視化する。実際に提案手法を原子力施設の耐震シミュレーション結果と固有値解析シミュレーション結果に適用し、応力値が相対的に高い領域の発見や、周波数ごとに影響を受ける領域の探索を実施した。その結果、提案手法を用いることで複雑かつ大規模な4次元データから特徴領域を効率的に発見できることを確認した。
宮村 浩子; 品野 勇治*; 宮代 隆平*; 斎藤 隆文*
情報処理学会論文誌; 数理モデル化と応用(インターネット), 2(2), p.103 - 112, 2009/03
分枝限定法を用いて整数計画問題を解く際に、どのような分枝戦略を選択するかは重要な問題である。分枝戦略の良し悪しは、生成される子問題の数,分枝限定木の深さ,総計算時間などに大きな影響を与える。しかしながら、大規模な数理計画問題では、分枝限定木の生成過程における出力は大量のログデータとなってしまい、それぞれの分枝戦略がどのように影響を与えているのか直感的な把握が難しい。そこで本研究では、分枝限定木の生長過程を可視化するシステムを提案する。本システムにより、分枝戦略の違いが子問題の生成過程に及ぼす影響を視覚的に捉えることができる。
辻田 祐一*; 有馬 立身*; 出光 一哉*; 鈴木 喜雄; 木村 英雄
情報処理学会研究報告2008-ARC-177, 2008-HPC-114, p.103 - 108, 2008/03
Pu含有核燃料を中心とした核燃料再利用の取り組みが盛んに行われている。この中で、われわれは分子動力学法により燃料の材料特性の研究を進めている。計算目的により、計算対象の物理系の規模を大きくしたり、多くの計算タイムステップ数を要するため、並列処理を取り入れ、ITBLが提供する計算環境により計算機シミュレーションを行っている。シミュレーションに用いるプログラムへのさまざまな計算パラメタ設定を容易に行うことや、利用者端末上で動作する可視化プログラムを引続き利用したいという利用者からの強い要望に応えるため、今回、ITBLが提供するクライアントAPIを用い、利用者端末上で動作するGUIを用いた計算支援環境の構築を行った。本稿では、本計算支援環境構築の目的,実装方法、並びに実行環境の事例紹介を行い、最後に今後の方向性について述べる。
斎藤 公明; 齋藤 秀敏*; 国枝 悦夫*; 成田 雄一郎*; 明上山 温*; 藤崎 達也*; 川瀬 貴嗣*; 金子 勝太郎*; 尾嵜 真浩*; Deloar, H. M.*; et al.
情報処理, 48(10), p.1081 - 1088, 2007/10
科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業CRESTの一環として、外部の大学,医療機関,民間企業とチームを組織し、超並列シミュレーション計算を利用して放射線治療の高度化に貢献するための研究開発を行ってきた。この中で、現在広く行われているX線治療に関して、詳細人体モデルとモンテカルロ計算を利用して高精度線量を短時間に行い、ネットワークを介して医療現場を支援するシステムを開発してきた。さらに、これからの治療として期待される陽子線治療に関して、レーザーにより発生する陽子線を利用して小型で安価な陽子線治療装置を開発するための基礎的な研究を行ってきた。平成14年に開始した本プロジェクトはそれぞれのサブテーマについて成果を挙げ、平成19年度に終了する予定である。これらのプロジェクト研究の全容についてまとめて紹介する。
柏木 裕恵*; 高田 雅美*; 佐々木 明; 城 和貴*
情報処理学会論文誌; 数理モデル化と応用(インターネット), 48(SIG15), p.189 - 198, 2007/10
原子分子データベースの構築に必要となる、科学論文から原子分子データを収集する過程の自動化支援の手法の研究を行った。インターネットなどで閲覧可能な論文のアブストラクトの中から、これまでのデータベース活動で収集された論文のアブストラクトの集合を教師データとする機械学習手法(学習ベクトル量子化法:LVQ)を用い、原子分子データを含む論文を抽出する方法について、原子分子物理分野の固有表現,専門用語など論文の特徴をよく表すと予想された情報を活用して、分類の性能の評価を行った。最適化の結果、精度82%,再現率13%が得られたが、原子分子データを含む論文が全論文中の1%以下であることから、実用化のためには適切な専門用語辞書を構築するなどによってさらに精度を高める必要があると考えられる。
今村 俊幸*; 山田 進; 町田 昌彦
情報処理学会研究報告2007-HPC-111, p.167 - 172, 2007/08
エルミート疎行列用の固有値計算アルゴリズムであるLOBPCGはブロック化することで、複数の固有状態を同時に計算することができるが、問題によっては計算が不安定になることが経験的に知られている。そのため、実装時に注目すべき項目を示し、それらの数学的な性質・振る舞い等を議論し、安定に計算するための方法を考察する。実際に、量子問題に対して、複数の固有状態のそれぞれの収束状況を考慮した方法を利用することで、安定に収束することを確認した。
山田 進; 町田 昌彦; 今村 俊幸*
情報処理学会論文誌; コンピューティングシステム(インターネット), 45(SIG6(ACS6)), p.161 - 170, 2004/05
強相関電子系の電子状態を求める際に現れる超大規模なハミルトニアン行列の固有値のベクトル・並列計算法を提案した。このハミルトニアン行列は小さい行列の直積の形で表せるため、本研究ではその構造を利用し、ベクトル計算する際のメモリアクセスが連続や奇数等間隔になるような計算方法を提案し、実際の計算から通常用いられているアクセスが間接指標となる方法より約4倍高速に計算できることを確認した。また上記の行列の形を利用し、通信量及び演算が均等に分割されている並列計算方法を提案した。これらの提案手法により1次元24サイトのd-pモデルに対応する約180億次元のハミルトニアン行列の最小固有値及び固有ベクトルを地球シミュレータを用いて計算し、提案した並列計算手法は均等に負荷分散ができ、また通信の待ち時間が少ないため、通常用いられる並列計算手法より45倍高速に計算できることを確認した。
上島 豊; 近藤 孝夫*; 磯貝 健太郎*
情報処理学会MPSシンポジウム論文集, 2003(14), p.151 - 158, 2003/10
大規模シミュレーションにおいて生成される大容量のデータをどのように扱い、どのように管理するかという問題は、最重要課題の一つである。研究者の多くが、シミュレーションや実験において、自らの経験であらかじめデータ出力を制限したり、処理をするデータを経験で限定したりすることで、データの洪水から研究の質を死守している。われわれは、上記問題に着眼して、この爆発増大するデータからより効率的に情報を取り出し、研究を推進するための仕組みの開発を行っている。その第一歩として、大規模シミュレーションに焦点を定め、研究過程で利用されるさまざまな作業を複合的に組合せ、実行,管理を行うシステムについて報告する。
辻田 祐一; 山岸 信寛*; 木村 和幸*; 大谷 孝之; 鶴岡 信彦*; 藤田 直行*
情報処理学会研究報告2002-HPC-92, p.7 - 12, 2002/10
PCクラスタにおける並列処理を支援する目的で開発されたSCoreは、利用者からはPCクラスタ内の各ホストを意識させないシステムとして作られており、SCoreが稼働しているクラスタは一つの計算機のように扱える。SCoreにおけるMPI通信ライブラリとしてMPICH-SCoreがあるが、クラスタ間通信を含む異機種計算機間ではMPI通信が出来ない。本研究では、このSCoreに、異機種計算機間MPI通信ライブラリStampiを移植し、クラスタ間の通信を可能にした。さらにStampiによるクラスタ間の通信性能の評価を行なった。
板倉 憲一; 横川 三津夫; 清水 大志; 君塚 肇*; 蕪木 英雄
情報処理学会研究報告2001-HPC-88, p.67 - 72, 2001/10
地球シミュレータは、640の計算ノードを持ち理論ピーク性能は40Tflop/sである。プロセッサノードはピーク性能8Gflop/sのベクトルプロセッサ8個,16GBの共有メモリから構成される。本研究では地球シミュレータの計算ノードによる固体分子動力学法の計算プログラムのベクトル化と並列化を行い性能評価を行った。分子動力学法では、カットオフ半径内の粒子が互いに影響を与え、その粒子ペアを行列を用いて表現することができる。ベクトル化に際して、この行列表現にcompressed row formとjagged diagonalformを考える。jagged diagonal formはベクトル長がcompressedrow formよりも長くできるので、ベクトル化により適している。しかし、標準的な粒子対の情報からjagged diagonal formに変換するには時間がかかるため、全体の性能はより簡単なcompressedrow fromよりも低下した。compressed row formでは8CPUでの並列化により2.4から2.7倍のスピードアップとなった。
上原 均; 津田 義典*; 横川 三津夫
情報処理学会研究報告2001-HPC-87, 2001(77), p.67 - 72, 2001/07
代表的なメッセージ通信APIであるMPIには、基本仕様としてのMPI-1と、拡張仕様としてのMPI-2がある。MPI-1で定義される関数のベンチマークは幾つか提案されているものの、MPI-2で定義される関数のベンチマークプログラムは少なく、その計測項目も限られている。そこでわれわれはMPI-2の、特に並列I/O(MPI-I/O)と片側通信(RMA)の性能を詳細に測定する MPI Benchmark program Library for MPI-2(MBL2)を構築した。本稿ではMBL2概要と幾つかの計算機のMPI-2性能データを報告する。
茂田 有己光*; 林 拓也*; 小出 洋; 鹿島 亨*; 筒井 宏明*; 笠原 博徳*
情報処理学会第62回(平成13年前期)全国大会講演論文集, p.1_131 - 1_132, 2001/03
科学技術計算プログラムを異機種分散計算機環境上で並列分散実行するためのメタスケジューリング手法の効果的な実現のためには、各計算機のプロセッサ負荷やネットワーク負荷の予測値を用いてタスクの各計算機への割り当てを決める必要がある。動的負荷予測の研究としては、線形時系列モデルを用いて予測を行う研究やNetwork Weather Service(NWS)における複数の予測モジュールのうち最も誤差の少ないモジュールを用いて予測を行おうとする研究がある。本稿では、データマイニングツールdataFORESTを用いて、位相論に基づいたTCBM(Topological Cace-Based Modeling)でモデリングを行い、日本原子力研究所に設置されているCOMPACS上の資源情報サーバによって収集されたプロセッサ負荷情報をもとに、プロセッサ負荷の予測を行う手法を提案し、評価を行う。
今村 俊幸; 村松 一弘; 北端 秀行*; 金子 勇*; 山岸 信寛*; 長谷川 幸弘*; 武宮 博*; 平山 俊雄
情報処理学会研究報告2001-ARC-142, p.49 - 54, 2001/03
世界各国の計算機資源のみならずさまざまなネットワーク上の装置を有機的に結合し、一つの仮想計算機システムを構築する試みとしてメタコンピューティングが提案されている。原研では、これまで開発したSTA基本システムを利用してローカルエリアネットワーク内での実験を行ってきたが、さる11月に開催されたSC2000において、世界4ヶ国のスパコンを結合して世界規模での実験の試みに成功した。本実験では放射線情報推定システムを用いて世界4機関の並列計算機を利用し最大計510CPUの計算を行うことができた。また、計算と同時に放射線源の拡散過程の実時間可視化を行うことも成功した。本報告では、実験に使用した要素技術並びに実験の結果について報告する。
小出 洋; 山岸 信寛*; 武宮 博*; 笠原 博徳*
情報処理学会論文誌, 42(3), p.65 - 73, 2001/03
分散コンピューティーング環境における効率的なタスクスケジューリング実現の一環として、われわれは、分散コンピューティング環境上のプロセッサやネットワークの負荷など計算資源に関する情報(資源情報)を収集し、それをもとに将来の値を予測する資源情報サーバ(Resource Information Server; RIS)を開発している。ひとつのプログラムの実行時間の最小化を目的とするスケジューラは、プロセッサやネットワークの負荷予測に基づいて、動的にタスクを割り付けるため、RISは必須である。現在、高速と高精度の2種類の資源情報予測を行うモジュールがRISに実装されている。高速予測モジュールは、予測を行う時点の最近接過去に記録された資源情報だけを使用し、将来の資源情報の値を迅速に予測する。高精度予測モジュールは、予測時点の最近接過去の資源情報の変化と類似した負荷パターンを過去のデータから検索するため、予測時間を要するが、より高い精度で資源情報を予測することができる。要求精度と予測時間に応じて、これらのモジュールを使い分けることにより、将来の資源情報を効率的に予測することができる。本論文では、資源情報の計測と予測方法、RISのシステム構成、予測時間と予測精度に関する評価について述べる。
磯貝 健太郎*
情報処理学会第63回全国大会報文集, p.3_475 - 3_476, 2001/00
e-Japan重点計画により、整備が進められているIT-Based Laboratory(仮想研究環境: ITBL)は、広域ネットワークに接続された高性能計算機及び情報資源を有効に利用する科学技術研究のための基盤を提供する。科学技術の多くの分野において行われる計算やシミュレーション結果である科学情報,及び文化財や美術品等に関する分化情報がGridデータベースに格納される。ITBLを利用することにより、複数の分野にまたがった共同研究や、巨大データベース、また計算機間の通信速度の向上を期待した、Gridコンピューティングの一例を挙げる。
辻田 祐一; 今村 俊幸; 武宮 博*; 山岸 信寛*
情報処理学会研究報告2000-HPC-84, p.43 - 48, 2000/12
われわれは、異機種並列計算機環境における分散並列I/OライブラリとしてMPI-2の仕様に基づいたStampi-I/OをStampiの通信基盤を用い開発した。科学技術計算分野でのアプリケーションでは大規模なデータを扱う傾向により、そのような大規模データを効率的に管理するために分散並列I/O機能が必要となってきた。このような状況に対し、複数の計算機間に効率的に分散して大規模データを管理するために、分散並列I/OライブラリStampi-I/Oを開発した。今回は開発の基礎となる機能のみに限定した開発及び性能評価を行った。本稿では、Stampi-I/Oを開発する目的、システムの構成,現状,性能評価テストそして将来の構築予定について述べる。
襲田 勉*; 丸山 訓英*; 鷲尾 巧*; 土肥 俊*; 山田 進
情報処理学会論文誌, 41(SIG8), p.92 - 100, 2000/11
共有メモリベクトル並列計算機の演算性能を最大限に引き出すような、ランダムパース行列のためのBlock(ブロック)ILU前処理付き反復法のベクトル・並列化手法を提案し、その手法を並列ベクトル型スーパーコンピュータSX-4(SRAM版,1CPUのピーク性能2GFlops)上で性能評価した結果を示す。ここでブロックとはある格子点上に定義された複数の未知数からなる集合とする。ベクトル処理をすることが難しいとされるBILU前処理演算のベクトル化のためにIDS-JAD(In Dependent Set Jagged Diagonal)形式を導入し、共有メモリベクトル並列化のためにMJAD(Multiple JAD)形式を導入した。IDS-JAD形式の導入により間接アドレス参照によるメモリアクセスの負荷が低減され、不要な演算を除去できる。MJAD形式の導入によりCPU間の周期回数が低減できる。3次元構造解析問題(GeFEM Tiger V1.0)を用いた約100万自由度の評価例題を使った数値実験において、1CPUで1.0GFlops,8CPUで6.8GFlopsを達成した。
横川 三津夫; 谷 啓二
情報処理, 41(4), p.369 - 374, 2000/04
科学技術庁では、プロセス(基礎科学)研究、観測、計算機シミュレーションの三位一体で地球環境変動予測研究を推進するプロジェクトを平成9年度より推進している。その一環として、大気大循環シミュレーションで実効性能5TFLOPS(ピーク性能40TFLOPS)の超高速並列計算機「地球シミュレータ」を開発中である。この地球シミュレータのハードウェア、基本ソフトウェア、応用ソフトウェアについてその概要を解説する。
谷 啓二; 横川 三津夫
情報処理, 41(3), p.249 - 254, 2000/03
科学技術庁では、プロセス(基礎科学)研究、観測、計算機シミュレーションの三位一体で地球環境変動予測研究を推進するプロジェクトを平成9年度より推進している。その一環として、大気大循環シミュレーションで実効性能5TFLOPS(ピーク性能40TFLOPS)の超高速並列計算機「地球シミュレータ」を開発中である。この地球シミュレータの開発の必要性、応用ターゲット、そのために求められる計算機としての要件、開発スケジュール、さらには、世界の高性能計算機開発計画における位置付けなどについて解説する。
武宮 博*; 今村 俊幸; 小出 洋
情報処理, 40(11), p.1104 - 1109, 1999/00
日本原子力研究所計算科学技術推進センターでは、並列処理にかかわる共通基盤技術研究開発の一環として、科学技術計算環境STA(Seamless Thinking Aid)を構築している。STAは、並列分散科学技術計算と呼ばれる新しい形態の科学技術計算を対象とし、プログラム開発から実行、結果解析に至る一連の作業の円滑化、消費される時間の低減を実現することで、利用者の途切れのない思考を支援する(Seamless Thinking Aid)環境である。また、センターではSTA上にいくつかの並列分散アプリケーションを構築し、それらの実用性評価を行っている。本稿では、STA及びSTA上に構築された並列分散アプリケーションについて紹介する。