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寺岡 有殿; 吉越 章隆
表面科学, 23(8), p.519 - 523, 2002/08
O分子のSi(001)表面での初期吸着確率を室温で並進運動エネルギー3.0eVまで測定した。また、O分子とSi(001)表面の反応で脱離するSiO分子の収率を900Kから1300Kの範囲で代表的な並進運動エネルギー(0.7eV,2.2eV,3.3eV)で測定した。初期吸着確率は0.3eVで極小となり1eV以上では一定値を示したが、SiO脱離収率は1000K以上では並進運動エネルギーに依存して増加した。これはシリコン二量体の架橋位置とサブサーフェイスのバックボンドほの直接的な解離吸着によると解釈された。
吉越 章隆; 寺岡 有殿
Surface and Interface Analysis, 34(1), p.432 - 436, 2002/08
被引用回数:3 パーセンタイル:8.62(Chemistry, Physical)超音速0分子線と高分解能放射光光電子分光法を組み合わせることにより、Si(001)初期酸化反応の実時“その場"観察を行うことに成功したので報告する。これまで、われわれはSPrin-8原研専用軟X線ビームライン(BL23SU)に表面化学の実験ステーションを設置し、Si電子デバイス作製で極めて重要なSi(001)初期酸化反応に着目し研究を開始した。Si-2p光電子スペクトルの内殻準位シフト(ケミカルシフト)を用いて、分子線照射時間にともなう酸化状態の変化を分子線照射下で観察することに成功した。特に、並進運動エネルギーが3.0eVの場合、Siに加えてSiの成分が分子線照射時間とともに増加することを見いだした。このように、高分解能放射光光電子分光法を用いることにより酸素の並進運動エネルギーによって引き起こされる酸化状態の時間変化を明らかにすることができた。さらに、Si-2s、Valence bandスペクトルをSi-2p光電子スペクトルと比較することにより酸化状態の並進運動エネルギー依存性を明らかにした。会議ではこれらの知見をもとにSi(001)表面初期酸化におよぼす並進運動エネルギーの役割とその反応メカニズムを詳細に議論する。
吉越 章隆; 寺岡 有殿
真空, 45(3), p.204 - 207, 2002/03
超音速分子線技術を用いることにより酸素分子の並進エネルギーを制御した状態で、Si(001)-12表面の酸化状態(サブ・オキサイド)の時間変化を高分解能放射光を用いた光電子分光法によって初めてリアルタイムに観察した。実験は、SPring-8の軟X線ビームライン(BL23SU)に設置した表面反応分析装置(SUREAC2000)で行った。並進エネルギーの表面垂直成分が2.9eVの酸素分子線を室温でSi(001)-21表面に照射した時の分子線照射量によるSi-2p光電子スペクトルの変化を調べた。約40秒と極めて短時間で高分解能Si-2p光電子スペクトルが測定でき、各酸化状態に対応するサテライト・ピークが明瞭に観測された。分子線照射量が増加するにつれて各酸化状態が変化し、そのピーク位置は変化しないことが明らかとなった。光電子スペクトルから求めた酸化膜厚と各酸化状態の分子線照射に伴う変化から以下のことが明らかとなった。(1)分子線照射の初期段階(34.4L)においては、Si,Si及びSiの急激な増加が観測されるものの、Siは観測されない。そのときの酸化膜厚は、0.30nmであった。(2)Siが徐々に増加し、最終的に0.57nmに相当する酸化膜厚まで緩やかに増加した。並進エネルギーを2.9eVとすることにより通常の酸素ガスの吸着と異なり、室温において0.57nmの酸化膜を形成できることがわかった。Siの増加に対応して膜厚の緩やかな増加が観測された。(3)Siが増加するにつれて、Si,Si及びSiが減少するが、特にSiが急激に減少した。この結果、Siが主にSiが変化したものと考えられる。
寺岡 有殿; 吉越 章隆
表面科学, 22(8), p.530 - 536, 2001/08
Si(001)面のパッシブ酸化に与えるO分子の並進運動エネルギーの影響を光電子分光法を用いて研究した。加熱ノズルを使用した超音波シードビーム法を用いて、O分子の並進運動エネルギーを最大3eVまで制御した。第一原理計算の結果に対応するふたつの並進運動エネルギー閾値(1.0eV,2.6eV)が見いだされた。代表的な並進運動エネルギーで測定されたSi-2p光電子スペクトルはO分子の直接的な解離吸着がダイマーとサブサーフェイスのバックボンドで起こることを示唆している。さらに、O原子の化学結合の違いもO-1s光電子スペクトル上で低結合エネルギー成分と高結合エネルギー成分として見いだされた。特に低結合エネルギー成分が並進運動エネルギーの増加とともに増加することが確認された。これもバックボンドの並進運動エネルギー誘起酸化を示唆している。
寺岡 有殿; 吉越 章隆; 佐野 睦*
JAERI-Tech 2000-080, 33 Pages, 2001/02
SPring-8の原研軟X線ビームラインの実験ステーションとして表面反応分析装置を設計・製作した。本装置では固体表面と気体分子の表面反応における並進運動エネルギーの影響を研究することを目的とし、超音速分子線発生装置、電子エネルギー分析器、質量分析器を設置して、おもに放射光を用いた光電子分光実験と分子線散乱実験を可能とした。本装置を用いてO分子によるSi(001)表面の初期酸化の分析を行った。理論的に予測されていたO分子が解離吸着するときのエネルギー閾値が実験的に検証された。さらにSi-2pの光電子ピークの構造から並進運動エネルギーに依存して酸化数の大きなSi原子が形成されることが明らかとなった。分子線散乱の実験においても並進運動エネルギーが2eV以上のとき表面温度が700以上でSiO分子の生成速度が急激に増大する現象が発見された。
吉越 章隆; 佐野 睦; 寺岡 有殿
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1, 39(12B), p.7026 - 7030, 2000/12
被引用回数:9 パーセンタイル:41.33(Physics, Applied)超音速O分子線を用いて、O分子の並進運動エネルギーを変化させ、それによって誘起されるSi(001)表面酸化過程をXPS及び散乱分子線測定により明らかにしたので発表する。SiOの脱離を伴う酸化(Active oxidation)では、O分子の運動エネルギーが、3.0eV及び2.0eVの場合、基板温度700において、SiOの脱離及びO分子の散乱割合に大きな変化が見られた。しかし、並進運動エネルギーが、0.5及び1.0eVではこれらの現象がみられないことから、O分子の並進運動エネルギーがActive oxidationを増強する効果があることを見いだした。SiOの脱離を伴わない酸化(Passive oxidation)においても並進運動エネルギーの効果が見いだされた。酸化が、1.0eV及び2.6eVの並進運動エネルギーで増加した。これらは、Si表面の第1層のback bond及び第2-第3層間の酸化に対応することが、理論計算のこれまでの報告との比較よりわかった。