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奥野 充*; 長岡 信治*; 國分 陽子; 中村 俊夫*; 小林 哲夫*
福岡大学理学集報, 48(1), p.1 - 5, 2018/03
中部九州の九重火山群は、20座以上の溶岩ドームと小型の成層火山からなる複成火山である。黒岳溶岩ドームは、体積約1.6kmと最大であり、黒岳火砕流堆積物(Kj-Kd)と黒岳降下火山灰(Kj-KdA)を伴う。本研究では黒岳溶岩ドームの噴火年代を確認するため、Kj-Kdの炭化樹幹の放射性炭素(C)年代を日本原子力研究開発機構東濃地科学センターの加速器質量分析装置を用いて測定した。得られたC年代は150540 BP (JAT-8677、C=-23.8‰)で、暦年較正すると1310-1423cal BP (74.6%)、1430-1442cal BP (2.4%)、1456-1521cal BP (23.0%)、その中央値は1391cal BPである。この結果はKj-KdAの下位にある阿蘇N2テフラ(約1.5cal ka BP)との層位関係とも整合的であることから、より信頼できるKj-Kdの噴火年代であると考えられる。
奥野 充*; 長岡 信治*; 國分 陽子; 中村 俊夫*; 小林 哲夫*
Radiocarbon, 59(2), p.483 - 488, 2017/00
被引用回数:3 パーセンタイル:13.88(Geochemistry & Geophysics)九州,九重火山群の中央及び西側における噴火史を明らかにするため、火砕流堆積物の加速器質量分析による放射性炭素年代測定を行った。放射性炭素年代測定は、施設供用制度に基づきJAEA-AMS-TONOで行った。飯田火砕流堆積物の放射性炭素年代は、5.35万年BPであり、白丹及び室火砕流のものは4.45万年BP以上及び3.53.9万年BPであった。これらの結果は、溶岩ドームの熱ルミネッセンス年代と一致し、熱ルミネッセンス及び放射性炭素年代法が、溶岩ドームの形成や火砕流の噴火過程を明らかにするために有用な手段となりうることを示した。また、これらの結果により、これらの噴火活動が15万年間で最も大きな噴火である飯田火砕流の後にあまり期間をおかず発生したこともわかった。
奥野 充*; 長岡 信治*; 國分 陽子
月刊地球, 37(4), p.119 - 121, 2015/04
五島列島, 福江島の鬼岳降下スコリア堆積物は、鬼岳火山群最新の降下テフラである。今回、その直下の土壌試料から19,840120BPのC年代を得た。測定試料のC/N=9.14は、土壌として分解がある程度進んでいることを示唆し、年代値が若返っている可能性がある。しかし、この年代値は、長岡・古山(2004)が同じ層準から報告した18.090100BPよりも古く、広域テフラであるATやK-Ahとの層位関係とも矛盾しない。また、このC年代を暦年代に換算すると、約24cal kBPであった。
國分 陽子; 安田 健一郎; 間柄 正明; 宮本 ユタカ; 桜井 聡; 臼田 重和; 山崎 秀夫*; 吉川 周作*; 長岡 信治*; 三田村 宗樹*; et al.
Journal of Environmental Radioactivity, 99(1), p.211 - 217, 2008/01
被引用回数:19 パーセンタイル:40.36(Environmental Sciences)長崎西山貯水池堆積物中のPu/Pu比及びPu, Cs濃度の深度分布を調べ、Pu/Pu比からプルトニウムの起源を推定し、長崎原爆爆発直後に堆積したプルトニウム及びCsを含む堆積物を特定した。またその堆積物の下層から長崎原爆に起因するフォールアウトの蓄積の証拠となる微粒炭も検出した。本報告は長崎原爆直後から現在に至るまで西山貯水池堆積物に蓄積した長崎原爆由来のプルトニウム及びCsの全容を核実験由来の成分と区別して初めて明らかにしたものであり、今後のプルトニウムの長期環境挙動解析の指標となる。
國分 陽子; 安田 健一郎; 間柄 正明; 宮本 ユタカ; 桜井 聡; 臼田 重和; 村上 晶子*; 井上 淳*; 吉川 周作*; 山崎 秀夫*; et al.
no journal, ,
長崎原爆投下後60年以上が経過し、陸上の原爆の痕跡は風化・消失してきているが、貯水池などの閉鎖小水域の泥質堆積物は、水域に入り込んだものを閉じこめながら堆積しているため、黒い雨を保存している可能性を持つ。われわれはこれまで3m前後の堆積物コアを貯水池から2本採取し、微粒炭分析,放射能測定及びPu同位体比測定等を行い、黒い雨を含む層を特定することを試みてきた。しかし、両コアとも最深部でCsが検出され、採取したコアが1945年の層準、つまり黒い雨を含む層準まで到達していない可能性があった。そのため本研究は前回より長い約6.2mのコアを採取し、Pu及び微粒炭の分析から黒い雨の層準を特定することを試みた。Pu濃度は、深度350cm付近から増加し、440cm付近で最も高く、約450cm以深ではほとんど検出されなかった。またPu/Pu比は0.0280.041であり、これは堆積するPuが原爆由来であることを示す。一方、火災・植物燃焼の痕跡である微粒炭は、深度442cmでピークを示した。この分布は、Pu濃度の分布と一致し、深度440cm付近の層準が、原爆の黒い雨を含むと考えられる。
國分 陽子; 安田 健一郎; 間柄 正明; 宮本 ユタカ; 桜井 聡; 臼田 重和; 吉川 周作*; 山崎 秀夫*; 長岡 信治*
no journal, ,
長崎原爆により放出されたプルトニウムは、環境中に放出された最も古いPuの一つであり、その動態に関する情報は、Puの長期環境挙動に対する知見を与えると考えられる。長崎西山貯水池は過去約100年間の堆積物を蓄積しており、その柱状堆積物の分析から貯水池へ入り込んだPuの挙動を時系列に沿ってとらえることができる。本研究では、堆積物中のPu/Pu比及びPu濃度分布を調べ、堆積物に記録された過去60年のPuの起源と挙動を明らかにすることを目的とした。深度440cm付近でPu濃度は極大値を示し、その層のPu/Pu比が0.028とその後の核実験由来のPuより非常に小さいことから、この層に蓄積するPuは長崎原爆爆発直後貯水池に流入した原爆由来のPuであると考えられる。また、深度370cm付近で見られたPu/Pu比の上昇は、1963年頃核実験により大量に環境中に放出されたPuの混入に起因したものと考えられる。それ以浅では濃度及び比はほぼ一定であった。これは周辺土壌に沈着した原爆と核実験に由来するPuが定常的に貯水池流入しているが、原爆由来のPuが支配的であることを示している。
國分 陽子; 安田 健一郎; 間柄 正明; 宮本 ユタカ; 桜井 聡; 臼田 重和; 吉川 周作*; 山崎 秀夫*; 長岡 信治*
no journal, ,
本研究では、西山地区中心部にある西山貯水池周辺土壌及び貯水池堆積物中のプルトニウム同位体比(Pu/Pu比)を測定し、これを指標として西山地区に堆積するプルトニウムの起源及び移動過程について考察したので報告する。堆積物中のPu/Pu比は0.0280.066であり、深度440cm付近の堆積物中のプルトニウムは、長崎に投下された原爆起源であることが特定でき、それよりも上層では、これにその後の核実験により放出されたプルトニウムの混入が認められた。また、堆積物表層のPu/Pu比は土壌の値と一致し、周辺土壌が貯水池に流れ込んでいることを示した。
國分 陽子; 安田 健一郎; 間柄 正明; 宮本 ユタカ; 桜井 聡; 臼田 重和; 山崎 秀夫*; 吉川 周作*; 長岡 信治*
no journal, ,
長崎原爆から放出されたプルトニウムの分布を明らかにするために、土壌や堆積物に蓄積するプルトニウムの分析を行ってきた。本発表では爆心地から東約3kmにある西山貯水池から堆積物を採取し、過去60年間に貯水池に蓄積した原爆由来プルトニウムの経時変化について報告する。また、前回爆心地周辺では爆心地東側に原爆由来のプルトニウムが蓄積していることを報告したが、調査範囲よりさらに東に分布している可能性も見いだされた。本発表では、さらに東の地域(長崎県東部,熊本県など)も調査したのでその結果も報告する。貯水池堆積物中のプルトニウム及びCsの深度分布より、原爆爆発直後に蓄積した原爆由来のプルトニウム及びCsを特定した。また、現在でもそれらが核実験由来のものとともに蓄積しつづけていることが明らかにした。また土壌の分析により、長崎県東部の島原半島や熊本市,阿蘇市で、核実験由来のフォールアウトの値より低いPu/Pu比が検出された。原爆由来のプルトニウムは爆心地から東2kmから約100kmまでの地域に蓄積していることがわかった。
山崎 秀夫*; 別所 啓右*; 西田 浩典*; 吉川 周作*; 村上 晶子*; 辻本 彰*; 藤木 利之*; 國分 陽子; 間柄 正明; 長岡 信治*
no journal, ,
長崎市は古くから造船業を主体にした重工業の発達した街であったが、長崎原爆によって壊滅的に破壊された。その結果、重金属元素などの多種の環境汚染物質が周辺環境に飛散し、それは現在でも長崎原爆の痕跡として環境中に残存している。本研究では、長崎原爆で飛散した汚染物質のシンクである長崎湾底質に注目し、そこに記録された長崎原爆の痕跡を探索するとともに、その長期環境影響を時系列に従って評価することを試みた。長崎湾中央部から採取した堆積物コア(約90cm)中の放射性核種及び重金属元素を測定した。Cs濃度の深度分布は、深度50cm付近でピークを示し、深度約60cm以深ではほとんど検出限界以下であった。したがって、深度60cm以浅の堆積物に1945年以降の汚染物質を保存していると考えられる。Cu, Zn等の重金属濃度は、約90cm以浅より増加し始め、第2次世界大戦以前から汚染が始まったことがわかる。発表では、他の元素の結果も含め、長崎原爆の痕跡及びその長期環境影響について報告する。
國分 陽子; 間柄 正明; 臼田 重和; 篠原 伸夫; 山崎 秀夫*; 吉川 周作*; 村上 晶子*; 辻本 彰*; 長岡 信治*
no journal, ,
長崎湾には、長崎原爆で長崎市内に放出された放射性物質及び重金属元素などさまざまな環境汚染物質が流れ込んでいる。本研究では長崎湾内で採取された堆積物コア中のプルトニウムを分析し、長崎原爆の痕跡を探索した。また同コアには、その後の核実験により放出されたプルトニウムも蓄積しており、それらの時系列に沿った蓄積を評価した。長崎湾中央部から採取した堆積物中のプルトニウム濃度及びPu/Pu比を測定した。Pu濃度の最も高い深度50cm付近では、Pu/Pu比も最も高かった。また、陸上で観察される核実験フォールアウトの値より高かった。これは、マーシャル諸島等で行われた海洋中での核実験のプルトニウムの影響を受けていると思われる。発表では、長崎湾におけるプルトニウムの分析結果とともに、長崎原爆により放出されたプルトニウムの痕跡についても報告する。
山崎 秀夫*; 革島 麻美*; 國分 陽子; 長岡 信治*; 辻本 彰*; 村上 晶子*; 吉川 周作*
no journal, ,
長崎市は古くから造船業などの重工業が盛んで、市街地の環境汚染が進んでいた。また、原爆の被爆によって、原爆起源の放射性核種だけでなく、大量の環境汚染物質が市街地から飛散した。これら汚染物質は長崎市の周辺土壌や水圏底質中に今でも蓄積、残存していると考えられる。本研究では、長崎湾及び被爆の際に「黒い雨」が降った西山貯水池から採取した底質コア試料中の放射性核種と重金属元素を時系列分析して、長崎地方の重金属汚染の歴史的変遷を環境化学的に評価した。また、現在も環境中に残る長崎原爆の痕跡を検索した。西山貯水池及び長崎湾のいずれの底質コアにも重金属汚染が認められた。また、西山貯水池では長崎原爆の痕跡層及び核実験フォールアウト起源のプルトニウム等を検出した。
國分 陽子; 間柄 正明; 桜井 聡; 臼田 重和*; 木村 貴海; 山崎 秀夫*; 吉川 周作*; 長岡 信治*
no journal, ,
長崎原爆により放出されたプルトニウムは世界中で最も古く人為的に放出されたものの一つであり、その放出起源が明らかなため、その挙動の解明はそれらの長期環境動態に関する知見を与える。本研究では、放出源の情報をもつプルトニウム同位体比,Pu/Pu比を用いて原爆由来成分と核実験由来成分を区別し、堆積物や土壌に含まれる原爆由来プルトニウムの分布を明らかにした。黒い雨が降ったとされる長崎市西山貯水池から採取した堆積物中のPu/Pu比,Pu濃度及びCs濃度の深度分布から、原爆由来のプルトニウム及びCsは原爆直後急激に蓄積し、現在でも貯水池に流れ込むプルトニウムの大部分は原爆由来であることが判明した。また、土壌の分析から、核実験由来のプルトニウムより低いPu/Pu比が、島原半島、さらに熊本県阿蘇山付近でも検出された。したがって、長崎原爆由来のプルトニウムが爆心地より東2kmから約100kmまでの範囲に蓄積していることが明らかになった。
奥野 充*; 長岡 信治*; 國分 陽子; 中村 俊夫*; 小林 哲夫*
no journal, ,
中部九州、阿蘇カルデラと由布・鶴見火山の間に位置する九重火山は、20座以上の溶岩ドームや火砕丘からなる。本講演では、九重火山中央部の火砕流堆積物のC年代を報告し、熱ルミネッセンス年代と合わせてこの地域の噴火史を議論する。飯田、白丹、室火砕流堆積物に含まれた炭化木片は、35万年BPの年代値を示した。これは熱ルミネッセンス年代とほぼ対応する。これらの結果から飯田火砕流の噴火後、比較的コンスタントに溶岩ドームが形成され、山麓に火砕流が流下したと考えられる。同一の火山からの噴出物は、岩石記載的特徴が酷似するため、それぞれを識別することが容易ではなく、地質層序についても、直接岩体同士の累重関係が見られる露頭はほとんどない。しかし、本研究のように山頂部の溶岩ドームで得られた熱ルミネッセンス年代に加え、山麓部の火砕流で得られたC年代を合わせることで、両者の対応関係に制約を与えることができ、噴火推移をより明確に復元できる有効な手段であると考えられる。
奥野 充*; 長岡 信治*; 國分 陽子; 中村 俊夫*; 小林 哲夫*
no journal, ,
中部九州の九重火山群は、溶岩ドームと小型の成層火山からなる。今回、日本原子力研究開発機構の施設供用制度を利用して、同火山群南麓に分布する火砕流堆積物について、JAEA-AMS-TONOで放射性炭素年代を測定した。飯田火砕流堆積物は、過去20万年間で最大の軽石噴火の産物で、約54kBPであった。その上位の白丹火砕流堆積物と室火砕流堆積物はblock-and-ash flow型で、前者が48kBPと41kBP、後者が3234kBPであった。これらの結果は、星生山や久住山などの溶岩ドームの熱ルミネッセンス年代とほぼ一致している。この結果、約54kBPの飯田火砕流の噴出以後、山頂部で溶岩ドームとblock-and-ash flow型火砕流が形成されたことが具体的に明らかになった。