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伊藤 健吾*; 川上 貴大*; 加藤 千図*; 福谷 哲*; 松村 達郎; 藤井 俊行*
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry, 333(10), p.5183 - 5189, 2024/10
被引用回数:0高レベル廃液からのウラン、プルトニウム、マイナーアクチノイド及び希土類元素の分離プロセスで使用される複数の抽出剤を用いて、硝酸溶液からのSe(VI)の溶媒抽出挙動を調べた。すべての抽出剤が分配比1であったことから、プロセス中においてSeは残留水溶液中に残存することが明らかとなった。一方、希硝酸( 2M HNO)、有機相としてオクタノール、濃硝酸(8M HNO)中において、抽出剤o-フェニレンジアミンではSeの分配比は1以上であった。濃硝酸(8M HNO)で逆抽出したところ、Seの新しい単一分離プロセスと回収の可能性が示唆された。
岩瀬 彰宏*; 福田 健吾*; 斎藤 勇一*; 岡本 芳浩; 千星 聡*; 雨倉 宏*; 松井 利之*
Journal of Applied Physics, 132(16), p.163902_1 - 163902_10, 2022/10
被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Physics, Applied)アモルファスSiO試料に380keVのFeイオンを室温で注入した。注入後、一部の試料に16MeVのAuイオンを照射した。SQUID磁束計を用いて磁気特性を調べ、透過型電子顕微鏡とX線吸収分光法(EXAFSとXANES)を用いてFe注入SiO試料のモルフォロジーを調べたところ、Feナノ粒子のサイズが大きくなっていることがわかった。Feナノ粒子の大きさは、Feの注入量の増加とともに大きくなった。Feナノ粒子の一部はFe酸化物からなり、Fe注入量の増加に伴い、Fe原子の価数や構造が金属-Feに近くなった。Feを注入したSiO試料では、室温での磁性が観測された。少量のFeを注入した試料の磁化-磁場曲線はLangevinの式で再現され、Feナノ粒子が超常磁性的な振る舞いをすることが示唆された。また、Feを多量に注入した場合、磁化-磁場曲線は強磁性状態を示している。このような磁気特性の結果は、X線吸収の結果と一致する。その後の16MeVのAu照射により、Feナノ粒子は破砕され、その結果、磁化は減少した。
加治 大哉*; 森本 幸司*; 若林 泰生*; 武山 美麗*; 山木 さやか*; 田中 謙伍*; 羽場 宏光*; Huang, M.*; 村上 昌史*; 金谷 淳平*; et al.
JPS Conference Proceedings (Internet), 6, p.030107_1 - 030107_4, 2015/06
非対称核融合反応に対する新型ガス充填型反跳イオン分離装置GARIS-IIの性能を、Neビームを用いて調べた。分析電磁石にヘリウムと水素の混合ガスを充填すると、焦点面シリコン検出器で検出されるバックグラウンドとなる散乱粒子の数が極めて少なくなり、かつ非対称核融合反応生成物の輸送効率が増大した。また、新たに標的同定システムを導入し、ビームエネルギーや標的を換えることなく効率的に励起関数測定が行えるようになった。
中嶋 薫*; 永野 賢悟*; 鈴木 基史*; 鳴海 一雅; 齋藤 勇一; 平田 浩一*; 木村 健二*
Applied Physics Letters, 104(11), p.114103_1 - 114103_4, 2014/03
被引用回数:6 パーセンタイル:25.97(Physics, Applied)In the secondary ion mass spectrometry (SIMS), use of cluster ions has an advantage of having a high sensitivity of intact large molecular ions over monatomic ions. This paper presents further yield enhancement of the intact biomolecular ions with measuring the secondary ions emitted from a self-supporting thin film in the forward direction, which is the same direction as primary beams. Phenylalanine amino-acid films deposited on self-supporting thin SiN films were bombarded with 5-MeV C ions. Secondary ions emitted in the forward and backward directions were measured under the bombardments of the SiN and phenylalanine sides, respectively. The yield of intact phenylalanine molecular ions emitted in the forward direction is about one order of magnitude larger than the backward direction, while fragment ions of phenylalanine molecules are suppressed. This suggests a large potential of transmission cluster-ion SIMS for the analysis of biological materials.
古林 徹*; 原田 康雄*; 松藤 成弘*; 長谷川 智之*; 遠藤 章; 森林 健悟; 赤羽 恵一*; 上原 周三*; 今堀 良夫*; 加藤 洋*; et al.
JAEA-Review 2006-002, 101 Pages, 2006/02
本報告書は、医学用の原子分子・原子核データに興味を持っている分野の専門家の方々を対象にしたアンケート調査結果を、おもに放射線に関係した物理工学の専門家の視点から分析しまとめたものである。以下の3点の重要性を確認した。(1)医学を支えている物理工学,化学薬学などの基礎データと、医学の直接的な関連データに大きく分類すると、基礎データより関連データがより重要な医学分野では、生体に関連するデータの整備を、その使い勝手の良さも含めて行う必要がある。(2)基礎データは、データの質,量,精度など、現状でも多くの医療現場の要求にほぼ十分に対応できていた。ただし、情報化社会の状況でのデータの利用ついては、医学分野に特化した特殊ファイルと、それを生体の関連データに反映させる理論や計算コード等の利用システムの整備など、総合的に体制を整備していく時期にある。(3)利用分野の発展には、基礎データの完成度を高めておくことは不可欠なことから、限りある資源や人材を効率的に活用するという現実を直視しながら、基礎データの整備拡充を、今後とも地道に計画的に継続性を持って進めていく必要がある。
都筑 和泰; 木村 晴行; 川島 寿人; 佐藤 正泰; 神谷 健作; 篠原 孝司; 小川 宏明; 星野 克道; Bakhtiari, M.; 河西 敏; et al.
Nuclear Fusion, 43(10), p.1288 - 1293, 2003/10
被引用回数:39 パーセンタイル:73.59(Physics, Fluids & Plasmas)JFT-2Mでは、原型炉のブランケット構造材料の候補である低放射化フェライト鋼とプラズマとの適合性を調べる実験を進めてきている。昨年度にはフェライト鋼内壁を真空容器内に全面的に設置する作業を行い、今年度より実験を開始している。プラズマ生成,制御は問題なく行われ、金属不純物の放出も検出限界以下であった。改善閉じ込め(Hモード)も実現され、そのしきいパワーもこれまでと同等であった。プラズマ安定性に関してもこれまでの所悪影響は観測されておらず、規格化が3を超える放電との共存性も示された。高速イオンのリップル損失に関しても顕著な低減が実証された。以上のように、フェライト鋼の悪影響は小さく、有望な結果を得ている。JFT-2Mでは、その他にも先進的、基礎的な研究を行っている。先進的粒子供給手法であるコンパクトトロイド(CT)入射実験においては、再現性よくプラズマ中へ入射が行われ、CT入射に伴う密度の急上昇が初めて明確に観測された。
二宮 博正; 狐崎 晶雄; 清水 正亜; 栗山 正明; JT-60チーム; 木村 晴行; 川島 寿人; 都筑 和泰; 佐藤 正泰; 伊世井 宣明; et al.
Fusion Science and Technology, 42(1), p.7 - 31, 2002/07
被引用回数:13 パーセンタイル:24.24(Nuclear Science & Technology)先進定常トカマク運転に必要な高い総合性能を維持する科学的基盤を確立するため、JT-60Uは改善閉じ込めモードの運転制御シナリオの最適化を進め、各種のプラズマ性能を向上してきた。この結果、定常トカマク炉に向けた顕著な成果を得た。これらの成果の詳細を報告する。JFT-2Mでは、高性能プラズマの開発と核融合炉で採用が予定されている構造材料開発のための先進的研究と基礎的な研究を進めている。真空容器外側に設置したフェライト鋼により、トロイダル磁場リップルが減少することが示された。真空容器内の20%の領域にフェライト鋼を設置しても、プラズマ性能への影響は見られなかった。TRIAM-1Mの結果についても報告する。
永野 賢悟*; 中嶋 薫*; 鈴木 基史*; 木村 健二*; 鳴海 一雅; 齋藤 勇一
no journal, ,
近年、医学や生命科学の分野での利用が進んでいる二次イオン質量分析法(SIMS)による生体分子の分析において、多種類のフラグメントイオンが大量に発生すること(フラグメンテーション)が、分子の同定を困難にしている。これまでの研究から、クラスターイオンを一次イオンに用いればフラグメンテーションが避けられ、無傷の分子イオンの収量向上に有効であることがわかっている。本研究では、SIMSにおける無傷の分子イオンのさらなる収量向上を目的として、生体試料の基板に薄膜を使用して、フラグメンテーションが少ないことが期待できるクラスターイオンを背面から照射することで前方の分子イオン収量の向上に関わる有効性を調べた。窒化ケイ素薄膜に生体分子(フェニルアラニン)を蒸着した試料に、薄膜側あるいは生体分子側から5MeVのCイオンを照射し、それぞれ前方あるいは後方に放出された二次イオンの質量分析を行った。得られた質量スペクトルを比較した結果、薄膜側から照射して前方に放出された二次イオンはフラグメンテーションが少なく、この手法が無傷の分子イオンの収量向上に有効であることが確かめられた。
中嶋 薫*; 永野 賢悟*; 鈴木 基史*; 鳴海 一雅; 齋藤 勇一; 平田 浩一*; 木村 健二*
no journal, ,
Secondary-ion mass spectrometry has been much improved in sensitivity to large molecular ions with large clusters as primary ions, such as C ions, Ar cluster ions, water cluster ions and so on in the last two decades. In this study, further enhancement of sensitivity to the intact organic molecular ions is demonstrated with measuring secondary ions emitted in the forward direction by transmission of swift cluster ions through a film target. Thin phenylalanine films (20-100 nm thick) deposited on self-supporting SiN membranes (20 or 50 nm thick) were bombarded with 5-MeV C ions. Mass distributions of positive secondary ions emitted in the forward direction were measured using a time-of-flight technique under the bombardment of the SiN side, as well as those in the backward direction under the bombardment of the phenylalanine side. Measurements with primary 6-MeV Cu ions were also carried out for comparison. The yield of intact phenylalanine molecular ions emitted in the forward direction is significantly enhanced compared to that in the backward direction, while yields of small fragment ions are suppressed. The behaviors of the enhancement and suppression both for 5-MeV C ions and for 6-MeV Cu ions will be discussed in terms of density distribution of energy deposited to the surface of the phenylalanine side.
中嶋 薫*; 丸毛 智矢*; 永野 賢悟*; 木村 健二*; 鳴海 一雅; 齋藤 勇一
no journal, ,
高分子/生体分子の二次イオン質量分析においては目的の分子を壊さずに効率よくイオン化して放出させることが重要になる。我々はアミノ酸試料(フェニルアラニン)の基板に自立薄膜(非晶質SiN)を使用して、MeV Cイオンを基板(SiN)側から照射することで前方(下流)に放出される分子イオン収量の向上及び分子イオンの断片化(フラグメンテーション)抑制に関わる有効性を調べている。これまでに二次イオン出射面での一次イオンからのエネルギー付与密度がCイオンによるものよりも、Cが解離して炭素原子間距離が広がることによりエネルギー付与密度が適度に小さくなった方が無傷の分子イオン収量が向上し、かつ断片化がより抑制されることを明らかにした。今回は、試料の上流に設置した別のSiN薄膜でCイオンを分解させて得た、60個の炭素原子(イオン)を同時に試料に照射したときの二次イオンの質量分析を行った。すなわち、炭素原子間距離が極端に大きい場合を検討した。その結果、フェニルアラニンの分子イオン収量は0であり、また、フェニルアラニン分子に特徴的な高分子量フラグメントイオンは収量が相対的に小さくなった。この結果は、高い分子イオン収量と断片化の抑制を両立させるためには、クラスター照射によってもたらされる適度なエネルギー付与密度が重要であることを示唆している。
中嶋 薫*; 永野 賢悟*; 鈴木 基史*; 鳴海 一雅; 齋藤 勇一; 平田 浩一*; 木村 健二*
no journal, ,
高分子/生体分子の二次イオン質量分析(SIMS)において高感度の測定を行うためには、目的の分子を壊さずに効率よくイオン化して放出させることが重要である。そこで分子イオンの収量が多い透過SIMSに、分子の断片化抑制効果が高いクラスターイオンを一次イオンとして用いる方式の有効性について調べた。非晶質SiN自立薄膜にアミノ酸(フェニルアラニン)薄膜を真空蒸着した試料に、SiN側から5MeV Cイオンを照射し、透過したイオンによって試料より前方に放出される二次イオンを質量分析し、フェニルアラニン側から照射して後方に二次イオンが放出される場合と比べた。その結果、分子イオンの収量向上及び分子イオンの断片化抑制の効果が高いことが認められた。これは、フェニルアラニン薄膜表面において60個の炭素イオン/原子が十分に近接している状態(後方放出の場合)か適度に離れている状態(前方放出の場合)かで、入射イオンによるエネルギー付与密度が異なっていることを考慮すると定性的に説明できる。これによりMeV領域の高速Cイオンを用いて二次イオンを前方に放出させる透過SIMSが高分子/生体分子の分析に対して有望な手法であることを示した。
伊藤 孝; 髭本 亘; 伏屋 健吾*; 松田 達磨*; 青木 勇二*
no journal, ,
イジング反強磁性体SmPtSiは反強磁性相(第I相)において幾何学的フラストレーションに起因する部分無秩序状態を示すと考えられている。第I相において観測された電子比熱係数が350mJ/(Kmol)と大きいことから、部分無秩序副格子に起因する重い電子状態の可能性が議論されている。我々はこの第I相における秩序・無秩序磁気モーメントの共存を微視的な観点から検証するためにSR測定を行い、秩序した磁気モーメントの存在を示すミュオンスピン自発回転信号と共に、顕著なスピン格子緩和を観測した。第I相におけるスピン格子緩和率は典型的なSm化合物反強磁性体における値よりも1桁程大きく、顕著な磁気揺らぎの存在が示唆される。
下端 健吾*; 荒井 貴大*; 伊藤 大雄*; 平沢 泉*; 宮崎 康典; 竹内 正行
no journal, ,
わが国では原子力の利用にあたって、燃料サイクル政策を進めており、使用済核燃料の再処理プロセスが導入されている。このプロセスの導入により、ウラン資源の有効利用や放射性廃棄物の削減が可能となる。現状では硝酸溶液を使用したPUREX法が採用されているが、燃料溶解等の過程で生じる不溶解性残渣が配管内に沈積・付着し、配管閉塞を引き起こす点がプラントの安全運転における課題となっている。不溶解性残渣の主成分であるモリブデン酸ジルコニウム2水和物(ZMH)が付着した際の対応として、高圧水による物理的洗浄や酸・アルカリによる化学的洗浄が考えられるが、これらは汚染水の増加や配管の腐食を引き起こす。このことから、晶析的な見地に基づいたZMH析出・付着抑止が求められる。本研究では、ZMHに同伴した析出が知られているテルル(Te)に対し、Zr-Teの二成分系の析出物を調査した。その結果、Zr-Te系は高温になるほど溶解度が下がる傾向にあり、ZMHと共通した析出挙動が示された。また、析出物のZrとTeの比は1:1であった。構造解析に用いられるXRDスペクトルは析出物の焼成前後で大きく変化し、焼成後はZrTe3O8と一致するスペクトルが得られた。今後は焼成による影響を調べ、Zr-Mo-Teの三成分における析出物について詳しく調べていく予定である。
下端 健吾*; 伊藤 大雄*; 平沢 泉*; 宮崎 康典; 竹内 正行
no journal, ,
わが国では原子力の利用にあたって燃料サイクル政策を進めており、使用済核燃料の再処理によって、ウラン資源の有効活用を目指している。しかし、燃料溶解工程等で生じる不溶解性残渣の機器への付着・沈積が、伝熱効率の低下および配管閉塞の原因になることから、安全上の課題が残されている。中でも、核分裂生成物であるジルコニウム(Zr)とモリブデン(Mo)の反応で生成するモリブデン酸ジルコニウム2水和物(ZMH)は不溶解性残渣の主成分であり、プラントの長期安定運転には、再処理機器や配管等へのZMHの析出・付着を防がなくてはならない。現在、ZMHを除去するには二次廃棄物が生じるため、それらを低減させる方策が求められている。本研究で、ZMHの壁面析出を防ぐには、MoO結晶の添加が効果的であることを明らかにした。最も抑制効果が見られたのは半水和物であり、特に針状結晶の場合で顕著であった。これは、表面で溶けだしたMoが溶液中のZrと反応してZMHを形成し、溶液中のZrを消費することで、壁面への付着が抑制されていると考えられる。今後は、再処理プロセスを模擬した溶液でMoO結晶の効果的な添加方法を検討する。
本田 充紀; 下山 巖; 岡本 芳浩; 杣 龍之介*; 福田 健吾*; 越智 雅明*; 松井 利之*; 斎藤 勇一*; 岩瀬 彰宏*
no journal, ,
The iron rhodium alloy is an intermetallic compound indicating the crystal structure of cesium chloride type at room temperature. Recently, we investigated the controlling of magnetism caused by disorder in the crystal structure of the intermetallic compound by ion irradiating. Therefore, we try to evaluate the crystal structural change in the bulk sample using EXAFS analysis. It is understood that difference in structural change appears by a different ion exposure dose. However, the analysis in the same sample was not performed until now by the problem of X-ray beam size. Therefore, in this study, the improvement of X-ray brightness at the bending magnet source was tried using a polycapillary X-ray lens(lens). As a result, we have succeeded to obtain the focusing beam of micro-size, and X-ray density improved to approximately 20 times. To confirm the effect of lens, Fe K-edge XAFS measurement were conducted in the non ion irradiation of the Fe-Rh alloy with and without lens. In case of without lens, respectable XAFS spectrum was not provided, but with lens, demonstrated the large improvement was confirmed. To know the irradiation dependence, Fe K edge XAFS measurements in the different ion exposure dose were conducted. As exposure doses increased, a difference was confirmed in vibration structure. We confirmed that FCC structure have changed to BCC structure caused by ion irradiation in the same sample.
永野 賢悟*; 中嶋 薫*; 鈴木 基史*; 木村 健二*; 鳴海 一雅; 齋藤 勇一
no journal, ,
高分子や生体試料を高感度に分析できるという理由から、クラスターイオンやMeV重イオンを用いた2次イオン質量分析法(SIMS)が医学や生命科学の分野で近年注目されている。高分子・生体試料の質量分析に応用するには、試料を構成する高分子がイオン化する際のフラグメンテーションを極力抑えることが非常に重要である。なぜならフラグメテーションのために、質量スペクトルの解析が非常に複雑になるからである。そこで本研究では、2次イオンのフラグメンテーションの抑制を目的として、SiN薄膜上にフェニルアラニンを蒸着し、試料の背面から6MeVのCuと5MeVのCイオンを照射することによって前方に放出される2次イオンの質量分析を行い、フラグメンテーション抑制効果及び分子イオン収率向上に関する有効性を調べた。その結果、Cuイオンと比べ、Cイオンの場合はフラグメンテーションを抑えることに有効であり、さらにフェニルアラニン分子イオンの収率が約8倍に増えることがわかった。
永野 賢悟*; 中嶋 薫*; 鈴木 基史*; 木村 健二*; 鳴海 一雅; 齋藤 勇一
no journal, ,
近年、医学や生命科学の分野での利用が進んでいる二次イオン質量分析法(SIMS)による生体分子の分析において、多種類のフラグメントイオンが大量に発生すること(フラグメンテーション)が、分子の同定を困難にしている。これまでの研究から、クラスターイオンを一次イオンに用いればフラグメンテーションが避けられ、無傷の分子イオン収量の向上に有効であることが分かっている。その一方で、炭素薄膜上に生体分子を塗布し、炭素薄膜側から一次イオンを照射した時に前方に放出される二次イオンと、生体分子側から一次イオンを照射した時に後方に放出される二次イオンとでは、前者で収量が高いことが報告されている。そこで本研究では、これらの手法を組み合わせ、無傷の分子イオン収量のさらなる向上を目的とした。窒化ケイ素薄膜上に生体分子のフェニルアラニンを蒸着した試料に、薄膜側及び生体分子側から5MeVのCを照射し、前方及び後方に放出された二次イオンの質量分析を行った。得られた質量スペクトルを比較した結果、薄膜側から照射して前方に放出された二次イオンの方がフラグメンテーションが少なく、無傷の分子イオン収量の向上に有効であることが確かめられた。
古林 徹*; 原田 康雄*; 松藤 成弘*; 長谷川 智之*; 遠藤 章; 森林 健悟; 赤羽 恵一*; 上原 周三*; 今堀 良夫*; 加藤 洋*; et al.
no journal, ,
医学物理分野において、原子分子及び原子核衝突過程に関係したデータは利用頻度が高く、またそのデータの種類も多岐に渡る。本発表では、日本原子力研究所シグマ研究委員会の医学用原子分子・原子核データグループによって、平成17年に実施されたアンケート調査に基づき、医学物理分野でのこれらのデータ利用の観点からニーズの現状を分析し得られた以下の結果を報告する。(1)医学物理利用分野では、汎用的な原子・原子核のデータのみならず、特に生命科学・生体に関連する分子データの整備を、現在の情報通信技術を活用した利便性の高い形態で行う必要がある。(2)従来の基礎データ(原子分子・原子核データ)も医学物理分野に特化した特殊ファイルやそれを生体の関連データに反映させる理論や計算コード等の利用システムの充実など、利用目的にマッチしたデータ形式や利用形態に整備しなおす時期にある。(3)広く医学利用を含めて、環境科学,産業や宇宙科学・天文など利用分野の発展には基礎データの完成度を高めておくことは不可欠であり、その整備拡充を今後とも計画的に継続性を持って進めていく必要がある。