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論文

Hydroxyl group/fluorine disorder in deuterated magnesium hydroxyfluoride and behaviors of hydrogen bonds under high pressure

He, X.*; 鍵 裕之*; 小松 一生*; 飯塚 理子*; 岡島 元*; 服部 高典; 佐野 亜沙美; 町田 真一*; 阿部 淳*; 後藤 弘匡*; et al.

Journal of Molecular Structure, 1310, p.138271_1 - 138271_8, 2024/08

重水素化ヒドロキシフルオロマグネシウム[理想組成はMg(OD)F]のO-D$$cdotcdotcdot$$F水素結合の高圧応答を中性子粉末回折とラマン分光法を用いて調べた。常温でのリートベルト解析の結果、化学組成はMg(OD)$$_{0.920(12)}$$F$$_{1.080(12)}$$であり、結晶構造中で水酸基/フッ素(OD/F)が無秩序化して、2つの水素結合配置が生じていることが分かった。構造解析の結果、水素結合配置は9.8GPaまで維持され、圧力による水素結合の強化は見られなかった。常圧でのラマンスペクトルでは、2613, 2694, 2718cm$$^{-1}$$に3つの水酸基伸縮バンドが観測された。O-D伸縮モードの周波数が高いことから、ヒドロキシル基は弱い水素結合相互作用、あるいは水素結合を持たないことが示唆された。20.2GPaまでは、2694cm$$^{-1}$$を中心とするモードは圧力によってブルーシフトを示し、水素結合は圧縮されても強化されないことが明らかになった。これは、中性子回折の結果と一致した。水素結合の存否と、常圧および高圧での水酸基のブルーシフトの原因について議論した。

論文

Hydrogen bond symmetrisation in D$$_2$$O ice observed by neutron diffraction

小松 一生*; 服部 高典; Klotz, S.*; 町田 真一*; 山下 恵史朗*; 伊藤 颯*; 小林 大輝*; 入舩 徹男*; 新名 亨*; 佐野 亜沙美; et al.

Nature Communications (Internet), 15, p.5100_1 - 5100_7, 2024/06

水素結合の対称化とは、水素原子が水素結合の中心に位置する現象である。理論的研究により、氷VIIの水素結合は、圧力が増加するにつれて、水素の分布を変化させながら、いくつかの中間状態を経て、最終的に対称化すると予測されている。これまで、多くの実験的研究が行われてきたにもかかわらず、その水素の位置や転移圧力は一貫していない。われわれは、100GPa以上の圧力で中性子回折実験を行い、氷中の水素分布を決定し、隣接酸素間での分布が80GPa付近で2つから1つになり水素結合が対称化することを世界で初めて観測した。

論文

Securing reversibility of U$$^{V}$$O$$_{2}$$$$^{+}$$/U$$^{VI}$$O$$_{2}$$$$^{2+}$$redox equilibrium in [emim]Tf$$_{2}$$N-based liquid electrolytes towards uranium redox-flow battery

鷹尾 康一朗*; 大内 和希; 小松 篤史; 北辻 章浩; 渡邉 雅之

European Journal of Inorganic Chemistry, 27(14), p.e202300787_1 - e202300787_7, 2024/05

U$$^{rm V}$$O$$_{2}$$$$^{+}$$/U$$^{rm VI}$$O$$_{2}$$$$^{2+}$$の1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチル)スルホニルアミド([emim]Tf$$_{2}$$N)イオン液体中での電気化学的挙動を研究し、劣化ウランをレドックスフロー電池の電極活物質として利用するために、U$$^{rm V}$$O$$_{2}$$$$^{+}$$/U$$^{rm VI}$$O$$_{2}$$$$^{2+}$$の酸化還元可逆性を達成するために何が必要かを明らかにした。結果として、Cl$$^{-}$$存在下の[emim]Tf$$_{2}$$N中において、グラッシーカーボンを作用電極として用いU$$^{rm V}$$O$$_{2}$$$$^{+}$$/U$$^{rm VI}$$O$$_{2}$$$$^{2+}$$の酸化還元反応の可逆性を得ることに成功した。また、溶質の拡散性を向上させるために、補助分子溶媒であるN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)で希釈した。Cl$$^{-}$$を含む50:50v/vの[emim]Tf$$_{2}$$N-DMF液体電解質中で[U$$^{rm VI}$$O$$_{2}$$Cl$$^{4}$$]$$^{2-}$$ + e$$^{-}$$ = [U$$^{rm V}$$O$$_{2}$$Cl$$^{4}$$]$$^{3-}$$の可逆的酸化還元反応を示すことに成功した。

論文

Slightly hydrogen-ordered state of ice IV evidenced by ${it in situ}$ neutron diffraction

小林 大輝*; 小松 一生*; 伊藤 颯*; 町田 真一*; 服部 高典; 鍵 裕之*

Journal of Physical Chemistry Letters (Internet), 14(47), p.10664 - 10669, 2023/11

 被引用回数:1 パーセンタイル:44.88(Chemistry, Physical)

氷IVは、水分子が配向乱れを示す氷の準安定高圧相である。配向秩序は他の氷相ではよく観測されるが、氷IVでは報告されていない。われわれは、DClを添加したD$$_{2}$$O氷IVのその場粉末中性子回折実験を行い、氷IVにおける水素秩序を調べた。その結果、単位胞体体積の温度微分dV/dTが約120Kで急激に変化することを発見し、またリートベルト解析により低温でわずかに水素が秩序化することを明らかにした。D1サイトの占有率は0.5から外れており、そのずれは試料をより高い圧力で冷却すると増加し、2.38GPa, 58Kで0.282(5)に達した。この結果は、氷IVに対応する低対称の水素秩序状態の存在を証明するものである。しかしながら、高圧下での徐冷によって、完全に水素が秩序化した氷IV相を実験的に生成することは難しいようである。

論文

The Hydrogen-bond network in sodium chloride tridecahydrate; Analogy with ice VI

山下 恵史朗*; 中山 和也*; 小松 一生*; 大原 高志; 宗像 孝司*; 服部 高典; 佐野 亜沙美; 鍵 裕之*

Acta Crystallographica Section B; Structural Science, Crystal Engineering and Materials (Internet), 79(5), p.414 - 426, 2023/10

 被引用回数:0 パーセンタイル:0.02(Chemistry, Multidisciplinary)

最近発見された塩化ナトリウムの超水和物(NaCl$$cdot$$ 13H(D)$$_{2}$$O)の構造を1.7GPa, 298Kでのその場単結晶中性子回折によって決定した。この物質は大きな水素結合ネットワークを持ち、いくつかの水分子は分岐水素結合や5配位水分子のような歪んだ結合の特徴を持つ。水素結合ネットワークは、ネットワークトポロジーと水素結合の無秩序性という点で、氷VIと類似している。擬似対称性によって接続されたネットワークの構成要素を区別しなければ、このハイドレートの全体的なネットワーク構造は、氷VIのネットワーク構造に対応する小さな構造単位に分解することで表現できる。この水素結合ネットワークは、既知の塩水和物とは対照的に、水分子の配向の乱れを含んでいる。ここでは、イオン種を含む水素結合ネットワークに関するさらなる洞察のための例を示す。

論文

Hydrogen occupation and hydrogen-induced volume expansion in Fe$$_{0.9}$$Ni$$_{0.1}$$D$$_x$$ at high $$P-T$$ conditions

市東 力*; 鍵 裕之*; 柿澤 翔*; 青木 勝敏*; 小松 一生*; 飯塚 理子*; 阿部 淳*; 齋藤 寛之*; 佐野 亜沙美; 服部 高典

American Mineralogist, 108(4), p.659 - 666, 2023/04

 被引用回数:1 パーセンタイル:54.63(Geochemistry & Geophysics)

Fe$$_{0.9}$$Ni$$_{0.1}$$H$$_x$$(D$$_x$$)の12GPa, 1000Kまでの高温高圧下における相関係と結晶構造をその場X線及び中性子回折測定により明らかにした。今回実験した温度圧力下において、Fe$$_{0.9}$$Ni$$_{0.1}$$H$$_x$$(D$$_x$$)ではFeH$$_x$$(D$$_x$$)とは異なり、重水素原子は面心立方構造(fcc)中の四面体サイトを占有しないことが明らかになった。単位重水素あたりの水素誘起膨張体積$$v_mathrm{D}$$は、fcc相で2.45(4) $AA$^3$$、hcp相で3.31(6) $AA$^3$$であり、FeD$$_x$$におけるそれぞれの値より著しく大きいことが明らかになった。また、$$v_mathrm{D}$$は温度の上昇に伴いわずかに増加した。この結果は、鉄に10%ニッケルを添加するだけで、金属中の水素の挙動が劇的に変化することを示唆している。$$v_mathrm{D}$$が圧力に関係なく一定であると仮定すると、地球内核の最大水素含有量は海洋の水素量の1-2倍であると推定される。

論文

Magnetic and structure transition of Mn$$_{3-x}$$Fe$$_x$$O$$_4$$ solid solutions under high-pressure and high-temperature conditions

山中 高光*; 平尾 直久*; 中本 有紀*; 三河内 岳*; 服部 高典; 小松 一生*; Mao, H.-K.*

Physics and Chemistry of Minerals, 49(10), p.41_1 - 41_14, 2022/10

 被引用回数:0 パーセンタイル:0.02(Materials Science, Multidisciplinary)

Mn$$_{3-x}$$Fe$$_x$$O$$_4$$固溶体の磁性と結晶構造を高温高圧下で中性子回折と放射光メスバウアー分光によって調べた。Mn$$_2$$FeO$$_4$$スピネルのフェリ磁性-常磁性転移は100$$^circ$$C、正方晶-立方晶転移は180$$^circ$$Cで起こり、これら2つの転移は直接関連していないことが分かった。構造相転移の転移温度は圧力とともに減少する。メスバウアー分光と中性子回折から、四面体サイトでのFe$$^{2+}$$の占有率が圧力とともに増加することがわかり、Mn$$_2$$FeO$$_4$$相は逆スピネルに近づくことが示唆された。磁気構造解析により、MnFe$$_2$$O$$_4$$とMn$$_2$$FeO$$_4$$の常磁性とフェリ磁性の構造を明らかにした。これらのスピネルはそれぞれ18.4GPaと14.0GPaで斜方高圧相に変化し、Mn含有量の増加とともに転移圧力が低下することがわかった。

論文

Atomic distribution and local structure in ice VII from in situ neutron diffraction

山下 恵史朗*; 小松 一生*; Klotz, S.*; Fabelo, O.*; Fern$'a$ndez-D$'i$az, M. T.*; 阿部 淳*; 町田 真一*; 服部 高典; 入舩 徹男*; 新名 亨*; et al.

Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 119(40), p.e2208717119_1 - e2208717119_6, 2022/10

 被引用回数:2 パーセンタイル:19.02(Multidisciplinary Sciences)

氷の多形体は、圧力や温度により驚くほど多様な構造を示す。水素結合の乱れは、その構造多様性の重要な要因であるだけでなく、その物性をも支配している。しかし、観測可能な逆格子空間が限られていることや、高圧下で測定されたデータの不確かさにより、高圧下において氷多形体の乱れた構造を明らかにすることは困難であった。今回、単結晶および粉末中性子回折の両方を用いて、2.2GPa, 298Kにおいて主要な高圧氷である氷VIIの乱れた構造を初めて明らかにした。最大エントロピー法を用いることにより3次元的な原子分布を導くことに成功し、水素がこれまで言われていた離散的なサイトではなく、リング状に分布をしていることを発見した。また、274Kでの全散乱実験により、氷VIIの水素秩序相である氷VIIIとは、同じ分子構造を持つにもかかわらず、その分子間構造が異なることを明らかにした。今回の単結晶と粉末回折の相補的な構造解析によって、氷VIIのユニークな無秩序構造が明確に示された。今回の発見は、圧力によって大きく変化するプロトンダイナミクスと関連しており、圧力下における氷VIIの異常な物性の構造的な起源を理解することに役立つと考えられる。

論文

Improvement of nano-polycrystalline diamond anvil cells with Zr-based bulk metallic glass cylinder for higher pressures; Application to Laue-TOF diffractometer

山下 恵史朗*; 小松 一生*; 大原 高志; 宗像 孝司*; 入舩 徹男*; 新名 亨*; 杉山 和正*; 川又 透*; 鍵 裕之*

High Pressure Research, 42(1), p.121 - 135, 2022/03

 被引用回数:3 パーセンタイル:54.42(Physics, Multidisciplinary)

We improved diamond anvil cells with a tubular frame made of Zr-based bulk metallic glass and nano-polycrystalline diamond anvils for single-crystal neutron diffraction. The thicker tubular frame was confirmed through experimentation as stably generating 4.5 GPa. Its feasibility for neutron diffraction was assessed at the Laue-TOF diffractometer at the BL18 (SENJU) beamline in the MLF J-PARC using time-resolved two-dimensional detectors covering wide solid angles. In addition to ambient-pressure measurements of NH$$_{4}$$Cl, diffraction patterns of a high-pressure phase of ice were also collected in-situ. The obtained intensities are of refinable quality sufficient for structure analysis.

論文

Electrochemical studies of uranium (IV) in an ionic liquid-DMF mixture to build a redox flow battery using uranium as an electrode active material

大内 和希; 小松 篤史; 鷹尾 康一朗*; 北辻 章浩; 渡邉 雅之

Chemistry Letters, 50(6), p.1169 - 1172, 2021/06

 被引用回数:2 パーセンタイル:13.70(Chemistry, Multidisciplinary)

ウランを電極活物質として用いるレドックスフロー電池を構築するためにイオン液体-DMF混合溶媒中での塩化ウラン(IV)の電気化学挙動を調べた。結果としてレドックスフロー電池のアノード反応として利用可能である準可逆なU$$^{III}$$/U$$^{IV}$$対を見出した。

論文

Observation of dihydrogen bonds in high-pressure phases of ammonia borane by X-ray and neutron diffraction measurements

中野 智志*; 佐野 亜沙美; 服部 高典; 町田 真一*; 小松 一生*; 藤久 裕司*; 山脇 浩*; 後藤 義人*; 亀卦川 卓美*

Inorganic Chemistry, 60(5), p.3065 - 3073, 2021/03

 被引用回数:10 パーセンタイル:75.81(Chemistry, Inorganic & Nuclear)

アンモニアボランのX線および中性子回折実験を常圧及び高圧下で行った。常圧下で二水素結合中のH-H距離は、ファンデルワールス半径の2倍(2.4${AA}$)よりも短い。約1.2GPaでの常圧相から第一高圧相への相転移で、半分の水素は原子間距離が延び、二水素結合が壊れた。さらに加圧すると、すべての原子間距離は2.4${AA}$よりも短くなり、二水素結合が再び形成された。さらに、約11GPaで、空間群$$P2_1$$(Z=2)を持つ第二高圧相(HP2)へ転移した。この時、分子軸はより傾き、二水素結合の種類は6から11へと増えた。第3の相転移の直前(18.9GPa)で、最短の二水素結合は1.65${AA}$になった。本研究は、高圧下の構造相転移によりアンモニアボラン中の二水素結合が破壊、再形成するのを実験的に初めて観測したものである。

論文

Origin of magnetovolume effect in a cobaltite

Miao, P.*; Tan, Z.*; Lee, S. H.*; 石川 喜久*; 鳥居 周輝*; 米村 雅雄*; 幸田 章宏*; 小松 一生*; 町田 真一*; 佐野 亜沙美; et al.

Physical Review B, 103(9), p.094302_1 - 094302_18, 2021/03

 被引用回数:2 パーセンタイル:16.40(Materials Science, Multidisciplinary)

層状ペロブスカイトPrBaCo$$_{2}$$O$$_{5.5}$$は、熱膨張のない複合材料を作るために必要な負の熱膨張(NTE)を示す。NTEは、自発的な磁気秩序と密接に関連していることがわかっていた(磁気体積効果: MVE)。今回、われわれは、PrBaCo$$_{2}$$O$$_{5.5}$$の連続的な磁気体積効果が、本質的には不連続であり、大きな体積を持つ反強磁性絶縁体(AFILV)から、小さな体積をもつ強磁性卑絶縁体(FLISV)への磁気電気的相転移に起因することを明らかにした。また、磁気電気効果(ME)は、温度,キャリアドーピング,静水圧,磁場などの複数の外部刺激に対して高い感度を示した。これは、これまでよく知られている対称性の破れを伴う巨大磁気抵抗やマルチフェロイック効果などのMEとは対照的であり、輝コバルト鉱のMEは同一の結晶構造で起こる。われわれの発見は、MEとNTEを実現するための新しい方法を示しており、それは新しい技術に応用されるかもしれない。

論文

Morphological reproductive characteristics of testes and fertilization capacity of cryopreserved sperm after the Fukushima accident in raccoon (${it Procyon lotor}$)

小松 一樹*; 岩崎 亜美*; 村田 康輔*; 山城 秀昭*; Goh, V. S. T.*; 中山 亮*; 藤嶋 洋平*; 小野 拓実*; 木野 康志*; 清水 良央*; et al.

Reproduction in Domestic Animals, 56(3), p.484 - 497, 2021/03

 被引用回数:9 パーセンタイル:85.28(Agriculture, Dairy & Animal Science)

福島第一原子力発電所事故後、野生アライグマは長期的な低線量率被ばくを受けた。捕獲したオスの野生アライグマの精巣の形態的特徴と、凍結保存精子の体外受精能力を調べたところ、長期的・低線量率被ばくはアライグマの生殖特性および機能に悪影響を及ぼしていないことがわかった。

論文

Experimental evidence for the existence of a second partially-ordered phase of ice VI

山根 崚*; 小松 一生*; 郷地 順*; 上床 美也*; 町田 真一*; 服部 高典; 伊藤 颯*; 鍵 裕之*

Nature Communications (Internet), 12, p.1129_1 - 1129_6, 2021/02

 被引用回数:29 パーセンタイル:84.76(Multidisciplinary Sciences)

氷は、非常に多彩な構造多形を示す。これまで報告されていない新しい相に関して実験・理論両面から研究がなされている。水素の秩序-無秩序相に関して、現在知られているような一つの無秩序相に一つの秩序相があるのか、いくつかの秩序相がありえるのかが議論の的になっている。今回の研究で、氷VI相の第2の水素秩序相となる新しい相(氷XIX)を発見した。これは、無秩序相から、いくつかの異なる水素秩序相ができることを示している。このような多重性は他のすべての水素無秩序相にも起こりえるもので、氷の構造探査に新しい視点を与えるものである。このことによって、これまで謎だった問題:水素秩序相の中心対称性の存在や、(反)強誘電性誘起が明らかになる可能性がある。また究極的には、氷の高温高圧相図を完全に解明することにつながる。

論文

Neutron diffraction study of hydrogen site occupancy in Fe$$_{0.95}$$Si$$_{0.05}$$ at 14.7 GPa and 800 K

森 悠一郎*; 鍵 裕之*; 柿澤 翔*; 小松 一生*; 市東 力*; 飯塚 理子*; 青木 勝敏*; 服部 高典; 佐野 亜沙美; 舟越 賢一*; et al.

Journal of Mineralogical and Petrological Sciences, 116(6), p.309 - 313, 2021/00

 被引用回数:0 パーセンタイル:0.02(Mineralogy)

地球のコアは、対応する圧力温度条件下で純鉄よりも密度が10%低いため、いくつかの軽元素を含んでいると考えられている。水素はその有力候補であるため、これまで主にFe-H系の相平衡関係や物性が調べられてきた。この研究では、14.7GPaおよび800Kでのhcp-Fe$$_{0.95}$$Si$$_{0.05}$$水素化物の重水素のサイト占有率を調べるために、その場中性子回折実験によりFe-Si-Hシステムを具体的に調べた。リートベルト解析の結果、hcp-Fe$$_{0.95}$$Si$$_{0.05}$$水素化物はhcp格子の格子間八面体サイトにのみ重水素(D)が0.24(2)占有することが判明した。Feに2.6wt%Siを添加する(つまりFe$$_{0.95}$$Si$$_{0.05}$$)ことによるDのサイト占有率への影響は、Fe-D系の先行研究で得られた結果と比較して無視できる程度であった(Machida et al., 2019)。

論文

Slow compression of crystalline ice at low temperature

Bauer, R.*; Tse, J. S.*; 小松 一生*; 町田 真一*; 服部 高典

Nature, 585(7825), p.E9 - E10, 2020/09

 被引用回数:4 パーセンタイル:87.23(Multidisciplinary Sciences)

氷Ihの100Kでの圧力誘起構造変化を中性子その場観察により調べた。熱力学的安定相への転移を促進するために、長時間をかけてゆっくり加圧した。その結果は、最近Tulk, et.al., Nature 2019らにより報告された、同じ条件での振る舞い(結晶から結晶への逐次晶相転移)とは異なり、1.0GPaで部分的に高密度アモルファス相(HDA)へ、さらに約1.5GPaで氷VII相へと転移することが分かった。また後者の圧力は、これまでのどの報告より低かった。その間の圧力では、結晶氷Ihまたは氷VIIはHDAと共存し、また形成された氷VIIは減圧しても0.1GPaまで安定であった。非常にゆっくりとした加圧はHDA相の中の結晶相の結晶性に大きな影響を与えることがわかる。これまでのすべての研究結果を踏まえ、圧力誘起非晶質化は以下のように説明できる。相転移開始は、氷格子のせん断不安定性によって引き起こされる。同温度圧力で熱力学的に安定相(水素秩序化氷VIII)の代わりに無秩序化した氷VIIが現れるのは、水素無秩序化単一ネットワークから水素秩序化相互貫入結晶ネットワークへの構造変化は、低温下では熱エネルギーが小さいために難しく、そのため水素無秩序化ネットワークがそのまま残される。今回の結果は、低温下で加圧された氷がとる構造は、相転移カイネティクスにコントロールされており、温度に依存することを示す。

論文

Anomalous hydrogen dynamics of the ice VII-VIII transition revealed by high-pressure neutron diffraction

小松 一生*; Klotz, S.*; 町田 真一*; 佐野 亜沙美; 服部 高典; 鍵 裕之*

Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 117(12), p.6356 - 6361, 2020/03

 被引用回数:16 パーセンタイル:56.22(Multidisciplinary Sciences)

多くの多形が知られる氷も、2GPa以上ではその数が少なくなり、約60GPaでは氷VIIとVIIIのみとなる。両相は、共通の酸素骨格を持ち、水素の秩序状態が異なっている。今回約15GPaまでの低温高圧中性子回折実験により、VII-VIII転移における水素の秩序化の速度が圧力により減少し、10GPaでは分オーダーになることがわかった。さらに加圧すると、驚くべきことにその速度は再び早くなった。このような異常な振る舞いは、これまで言われていた「加圧による水分子の回転運動の鈍化と同時に起こる水素の併進運動の活性化」により説明できる。今回観測されたこの水素ダイナミックスのクロスオーバーは、これまでラマン散乱, X線回折,プロトン伝導により報告されてきた10-15GPaにおける氷VII相の異常の起源であると思われる。

論文

Developments of nano-polycrystalline diamond anvil cells for neutron diffraction experiments

小松 一生*; Klotz, S.*; 中野 智志*; 町田 真一*; 服部 高典; 佐野 亜沙美; 山下 恵史朗*; 入舩 徹男*

High Pressure Research, 40(1), p.184 - 193, 2020/02

 被引用回数:13 パーセンタイル:71.01(Physics, Multidisciplinary)

ナノ多結晶アンビルを用いた中性子回折実験のための新しい高圧セルを紹介する。このセルのデザインやオフライン圧力発生テスト,ガス圧媒体の装填方法が書かれている。その性能は、氷II相の約82GPaまでの中性子回折パターンによって図示されている。またこのセルを用いた常圧におけるFe$$_{3}$$O$$_{4}$$の単結晶中性子回折実験のテストを紹介し、現在の限界と将来の開発を示す。

論文

Ice I$$_{rm c}$$ without stacking disorder by evacuating hydrogen from hydrogen hydrate

小松 一生*; 町田 真一*; 則武 史哉*; 服部 高典; 佐野 亜沙美; 山根 崚*; 山下 恵史朗*; 鍵 裕之*

Nature Communications (Internet), 11, p.464_1 - 464_5, 2020/02

 被引用回数:45 パーセンタイル:86.61(Multidisciplinary Sciences)

水は、0$$^{circ}$$Cで六方晶積層をもった通常の氷I$$_{rm h}$$に凍結する。一方、ある条件では、立方晶積層を持った氷I$$_{rm c}$$になるが、積層欠陥のない氷Icはごく最近まで作れなかった。今回、我々は、氷I$$_{rm c}$$と同じフレームワークを持った水素ハイドレートの高圧相C$$_{2}$$から水素を脱ガスすることによって積層欠陥のない氷I$$_{rm c}$$を作る方法を発見した。これまで同様の方法で作られたネオンハイドレートからの氷XVIや水素ハイドレートからの氷VXIIの生成と異なり、今回の氷I$$_{rm c}$$は、C$$_{2}$$ハイドレートから中間非晶質相やナノ結晶相をへて形成された。得られた氷I$$_{rm c}$$は、積層欠陥がないために、これまで得られているものに比べ高い熱安定性を示し、氷I$$_{rm h}$$に相転移する250Kまで安定に存在する。積層欠陥のない氷I$$_{rm c}$$の発見は、I$$_{rm h}$$のカウンターパートとして、氷の物性に与える積層欠陥の影響を調べるうえで役立つことが期待される。

論文

Crystal structure and magnetism of MnO under pressure

Klotz, S.*; 小松 一生*; Polian, A.*; 町田 真一*; 佐野 亜沙美; Iti$'e$, J.-P.*; 服部 高典

Physical Review B, 101(6), p.064105_1 - 064105_6, 2020/02

 被引用回数:4 パーセンタイル:25.35(Materials Science, Multidisciplinary)

マンガン酸化物(MnO)は、反強磁性モット絶縁体の典型物質である。今回、我々は、高圧下においてネール温度$$T_{N}$$を挟んだ温度域で磁気秩序と格子歪の相互作用を、X線および中性子回折により調べた。その結果、体積歪は圧力に対して鈍感であること、$$T_{N}$$$$T_{N}/dP$$=+4.5(5)K/GPaで上昇すること、格子歪$$alpha$$$$dalpha/dP$$=+0.018$$^{circ}$$/GPaで増大することがわかった。これらの結果は、$$J_{1}$$, $$J_{2}$$相互作用定数の原子間距離への影響を調べることや、また第一原理計算による理論予測と比較を可能にする。反強磁性相互作用に起因する散漫散乱は、$${approx}$$1.2$$T_{N}$$まで観測され、長距離秩序は、室温では42GPaで現れる。

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