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岡村 正愛*; 長谷 純宏; 古澤 佳也*; 田中 淳
Euphytica, 202(3), p.333 - 343, 2015/04
被引用回数:16 パーセンタイル:61.93(Agronomy)イオンビーム照射によってキクの花色変異体を得る際の材料組織選択の影響について調査した。品種YoMysteryの花弁及び葉を使用し、照射組織由来の体細胞クローンの草丈及び花色変異を調査した。商業利用に十分な草丈を維持するために、アルゴンイオンでは3Gyが適切な線量と考えられた。3反復試験による計7,258個体の解析から、(1)花弁由来クローン(2.91%)は葉由来クローン(2.01%)よりも変異率が高かったこと、(2)組織の種類の影響はイオンビーム照射によって増進し、花弁由来クローンでは6.47%、葉由来クローンでは3.89%であったこと、(3)カロテノイド色素系の変異はイオン照射によって顕著に上昇し、培養変異では黄色のみが得られたのに対して、イオン照射した花弁及び葉の両者において、茶, 赤, 黄の変異が得られたことが示された。これらの結果は、材料組織の選択とイオンビーム照射の組み合わせによって実用的な花色変異を意図的に得ることが可能であることを示唆する。
岡村 正愛*; 中山 真義*; 梅基 直行*; Cano, E. A.*; 長谷 純宏; 西崎 雄三*; 佐々木 伸大*; 小関 良宏*
Euphytica, 191(1), p.45 - 56, 2013/05
被引用回数:28 パーセンタイル:77.13(Agronomy)液胞内アントシアニン凝集(AVI)によって特殊なdusky花色を発色するカーネーション系統がわずかではあるが知られている。特殊花色は非アシル化アントシアニンを含むAVIの存在と強く相関のある単一劣勢因子によって支配されることが遺伝様式から示唆されている。われわれは、カーネーションの特殊花色を多様化するため、交配育種によって新奇なメタリック花色を発色する青色系カーネーションを作出した。さらに、この系統にイオンビームを照射することにより、赤,赤紫及びクリムゾン系のメタリック花色系統を作出した。すべてのメタリック花色系統はアントシアニンマリル基転移酵素の転写産物を持たなかった。また、dusky花色のカーネーションと比べて、強く凝集したAVIと透明の液胞を持つ向軸側の表皮細胞を有していた。これらの結果から、(1)AVIを生成する因子はアントシアニンマリル基転移酵素の不活化によること、(2)向軸側表皮細胞のAVIがメタリック調花色を発色すること、(3)イオンビームがアントシアニン構造とAVIの凝集程度を変化することにより、メタリック花色の拡大に有用であることを示した。
岡村 正愛*; 長谷 純宏; 大西 昇*; 鳴海 一成; 田中 淳
JAEA-Review 2011-043, JAEA Takasaki Annual Report 2010, P. 105, 2012/01
In this report, we describe results of the stability examination of the mutated characteristics and the trial to develop superior breeding lines for the commercial production of petunia new varieties. Flower color mutants obtained in M2 generation from the original blue color petunia BBss11 include magenta, purple, purple vein, light pink, white and burgundy. We collected more than a hundred M3 seeds from each of the M2 plants and examined their segregation. Of the 12 mutant lines tested, six lines clearly showed the stability in flower color, flower shape and plant morphology. Three M3 lines from white-colored M2 plants showed good stability in flower color, flower size and growth habit. They are expected to be superior parents for new varieties of petunia.
長谷 純宏; 岡村 正愛*; 竹下 大学*; 鳴海 一成; 田中 淳
Plant Biotechnology, 27(1), p.99 - 103, 2010/03
被引用回数:28 パーセンタイル:59.63(Biotechnology & Applied Microbiology)We examined the effect of pretreatment on the frequency of flower-color mutants induced by ion beams. We found that petunia seedlings treated with 3% sucrose from 8 days after sowing accumulated significant amount of pigments within 4 days compared to non-treated control seedlings. The petunia seedlings treated with sucrose were exposed to 320-MeV carbon ions. The sucrose treatment did not affect the survival rate and seed fertility of the M1 plants. In the M lines obtained by self-pollination of individual M1 plants, chlorophyll mutants were obtained in both treated and non-treated groups with a similar frequency. Flower-color mutants that included magenta, purple, light pink and white were obtained from the original violet color. The frequency of flower-color mutants was significantly higher in the sucrose-treated group than in the non-treated group. These results suggest that sucrose pretreatment specifically increases the frequency of flower-color mutation following ion beam irradiation.
長谷 純宏; 岡村 正愛*; 竹下 大学*; 鳴海 一成; 田中 淳
JAEA-Review 2009-041, JAEA Takasaki Annual Report 2008, P. 66, 2009/12
We examined the effect of stress treatment on the frequency of flower-color mutants induced by ion beams. We found that petunia seedlings treated with 3% sucrose from 8 days after sowing accumulated significant amount of pigments within 4 days compared to non-treated control seedlings. The petunia seedlings treated with sucrose were exposed to 320-MeV carbon ions. The sucrose treatment did not affect the survival rate and seed fertility of the M1 plants. In the M2 lines obtained by self-pollination of individual M1 plants, chlorophyll mutants were obtained in both treated and non-treated groups with a similar frequency. Flower-color mutants such as magenta, purple and light pink were obtained from the original color of purplish blue. The frequency of flower-color mutants was significantly higher in sucrose-treated group than in non-treated group. These results suggest that the sucrose pretreatment specifically increases the frequency of flower-color mutation following ion beam irradiation.
岡村 正愛*; 竹下 大学*; 長谷 純宏; 鳴海 一成; 田中 淳
JAEA-Review 2009-041, JAEA Takasaki Annual Report 2008, P. 69, 2009/12
Cultivars of (petunias) have been bred since early 1830s and are now available as a popular bedding plants that have enormous market worldwide. This paper reports the production of new type flower color variations in petunia obtained by ion beam irradiation at JAEA-TIARA. Very vigorous variety of petunia cv. "Kirin Hana-Saka Rose" that has a bright rose flower was used as a plant material. Buds placed in perti-dishes containing Murashige and Skoog medium were irradiated with 320 MeV carbon ions of 10 Gy. Regenerated plants were grown in a green house to examine flower color. As a result, the individual of the pink color and the cherry color appeared respectively at the frequency of 1%. In addition, the individual that has minutely striped white and the individual with the petal of a spotted pattern appeared.
岡村 正愛*; 清水 明*; 大西 昇*; 長谷 純宏; 吉原 亮平; 鳴海 一成
JAEA-Review 2008-055, JAEA Takasaki Annual Report 2007, P. 62, 2008/11
本課題では、有用形質転換体へイオンビームを応用するシステムを開発することにより、さまざまな花色や形の品種をシリーズ化する手法を確立し、イオンビーム高度利用技術の開発に資することを目的とする。照射材料としては、分裂酵母由来の2本鎖RNA特異的RNA分解酵素()を導入することでキク発育阻害ウイロイド及びトマト黄化壊疽ウイルスに耐性を獲得した形質転換キクを用いた。これまでに炭素イオンビームの照射試験を実施し、順化,温室での栽培後、花色と花姿について調査した。照射によって得られた計832の個体について開花試験を行い、薄桃,濃桃,サーモン,白色,黄色などの花色変化を誘導できることを明らかにした。これらの結果から、この方法は、個々の遺伝子導入による従来法に比べて、低コストで高い品質の鑑賞植物の開発に有効であると考えられた。
岡村 正愛*; 清水 明*; 渡辺 さとみ*; 長谷 純宏; 鳴海 一成; 田中 淳
JAEA-Review 2007-060, JAEA Takasaki Annual Report 2006, P. 82, 2008/03
本課題では、有用形質転換体へイオンビームを応用するシステムを開発することにより、さまざまな花色や形の品種をシリーズ化する手法を確立し、イオンビーム高度利用技術の開発に資することを目的とする。照射材料としては、分裂酵母由来の2本鎖RNA特異的RNA分解酵素()を導入することでキク発育阻害ウイロイド及びトマト黄化壊疽ウイルスに耐性を獲得した形質転換キクを用いた。これまでに炭素イオンビームの照射試験を実施し、順化,温室での栽培後、花色と花姿について調査した。3Gyから10Gyの炭素イオンビーム照射試験区では開花試験を行い、薄桃,濃桃,サーモンなどの花色変化を誘導できることを明らかにした。これらの結果から、この方法は、個々の遺伝子導入による従来法に比べて、低コストで高い品質の鑑賞植物の開発に有効であると考えられた。
岡村 正愛*; 百瀬 眞幸*; 渡辺 さとみ*; 清水 明*; 長谷 純宏; 横田 裕一郎; 田中 淳
JAEA-Review 2006-042, JAEA Takasaki Annual Report 2005, P. 82, 2007/02
イオンビーム育種により育成された優良品種「ビームチェリー」では、さまざまな色や形の変異体が誘導された。これらの中から安定した形質を示した変異体について、DNA量と遺伝子変化を調査した。別の花色変異個体のDNA量は親品種と同じか0.5%未満減であるのに対し、「ビームチェリー」シリーズでは+1%であり、別品種シリーズとかなり異なることがわかった。葡萄性ペチュニア系統の種子への炭素イオンビーム照射からは、さまざまな花色変異個体が得られた。イオンビームの最適線量は30から40Gyであった。これらの変異体は、親品種の耐雨性及び耐暑性を保持しており、イオンビーム育種はストレス耐性を持った各種花色品種シリーズの育成に有効であると考えられた。
岡村 正愛*; 田中 淳; 百瀬 眞幸*; 梅本 直行*; Silva, J.*; 戸栗 敏博*
Floriculture, Ornamental and Plant Biotechnology; Advances and Topical Issues, Vol.1, p.619 - 628, 2006/00
初のバイオ・材料専用施設であるイオン照射研究施設(TIARA)が原子力機構(旧日本原子力研究所)に設置されたのに伴い、世界に先駆けて植物へのイオンビーム照射による突然変異誘発の特徴解析が進められた。その結果、モデル材料であるシロイヌナズナに炭素イオンビームを照射した場合、誘発突然変異率は線などに比べて平均17倍誘発率が高く、誘発される変異は逆位や転座などの大きな構造変化が生じやすいという特徴を見いだした。また、キクやカーネーションなどへの照射では、
線などでは得られなかったような新しい花色や花型の変異が高頻度で誘発され、イオンビームは誘発する変異スペクトルも広いことがわかった。特に、キリンビール植物開発研究所の岡村らは、「ビタル」の葉片培養系に炭素イオンビームを照射したのち、その再分化したカーネーションの花色を調査した。対照実験として、変異原として最もよく用いられるエチルメタンスルフォン酸(EMS)や
線などが用いられた。チェリー色から異なった単一色への変異では、EMSや
線では、薄桃, 桃や赤色への変異を誘発するのに対して、炭素イオンではサーモンや黄, クリームなど、さまざまの花色変異が誘発された。一方、花形については、
線で花弁が剣弁から丸弁状になったものがわずかに得られたが、多くは炭素イオンで丸弁やナデシコ形花弁などの変異が誘発された。またその変異も、例えば、剣弁, やや剣弁, やや丸弁, 丸弁、などと連続した変異が得られた。さらに、非常に珍しい「バラ咲き」様の花形などの作出にも成功し、文字通り、色とりどり、形とりどりのカーネーション品種が育成された。その他、トランスポゾンによる花の育種に関する研究事例も紹介する。
岡村 正愛*; 安野 紀子*; 大塚 雅子*; 田中 淳; 鹿園 直哉; 長谷 純宏
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 206, p.574 - 578, 2003/05
被引用回数:93 パーセンタイル:97.62(Instruments & Instrumentation)近年、イオンビームの突然変異率が線等に比べて高いことが植物でも報告されているが、変異のスペクトルについては不明である。本研究ではイオン照射と組織培養を組み合わせる方法を使って、花色及び花弁の形態変異を誘発する効率について調査した。カーネーション(品種ビタル,チェリーピンク,フリル花弁)から採取した葉にカーボンイオンもしくはX線を照射し、シュートが再生されるまで培地上で培養した。カーボンイオン照射では、705個体の再生植物体から16個体の変異体が得られた。これらの変異体は非常にバラエティーに富んでおり、ピンク,濃ピンク,淡ピンク,サーモン,レッドの花色に加え、複色やストライプの花色,丸弁やダイアンサスタイプの花弁を持つ個体が得られた。それに対して
線では、556個体の再生植物体から7個体の変異体が得られたが、それらはピンク,濃ピンク,淡ピンクの3種類だけであった。これらの結果は、イオンビームがX線に比べて花色及び花弁の形態変異において広い変異スペクトルを有すること、ならびに、イオン照射と組織培養を組み合わせた方法によって短期間で実用品種を育成できることを示している。
長谷 純宏; 岡村 正愛*; 竹下 大学*; 鳴海 一成; 田中 淳
no journal, ,
放射線によって生成される変異の方向性を制御することは、変異誘発の効率化の点で極めて有効である。遺伝子発現の程度によって遺伝子の変異率に差が生じるならば、花色遺伝子の発現を高める前処理とイオンビーム照射を組合せることにより、花色変異体を効率的に獲得できる可能性がある。本研究では、ペチュニアを材料として、照射前処理による花色変異体の獲得効率への影響を調査した。その結果、幼苗に高濃度の蔗糖を与える前処理によって、イオンビーム照射による花色変異体の獲得頻度が有意に向上することが示された。一方、葉緑素変異体の獲得頻度には蔗糖処理は影響しなかった。花色変異体の獲得頻度が向上したメカニズムにはまだ不明な点が多く残されているが、材料組織の状態によって特定の形質の変異頻度が有意に高まることは、変異の方向性をある程度制御できる可能性を示すと考えられる。
岡村 正愛*; 長谷 純宏; 梅基 直行*; 中山 真義*; 谷川 奈津*; 鳴海 一成; 田中 淳
no journal, ,
特定の形質を狙ってその形質が変化した個体を多く得ることができれば、画期的な技術となる。春先に白いはずの花に赤い色素がさすことがよくある。これは光合成が増す一方で寒さも残り代謝産物が色素合成にまわるためと推定した。そこで糖処理により色素が誘導され状態でイオンビームを照射すれば、色素遺伝子が発現した状態でイオンビームが細胞に当てることができ色素遺伝子の変異が多く得られると洞察した。ペチュニア幼苗にショ糖溶液を与え茎や芽に色素を誘導した後に炭素イオンビームを照射した。この種子を播種し、葉緑素変異体及び花色変異体が分離したM2系統の頻度を調査した。独立した3回の試験のいずれでも、葉緑素変異の頻度は蔗糖処理に有無によらず同じであったのに対して、花色の変異は蔗糖処理区の頻度が無処理句に比較して2倍以上高く、照射前の蔗糖処理によって花色変異体の獲得頻度が有意に向上することが示された。以上の試験により、突然変異の方向性をある程度制御できることが示唆された。
岡村 正愛*; 大西 昇*; 長谷 純宏; 鳴海 一成; 佐々木 伸大*
no journal, ,
イオンビームでは極少数の遺伝子が変異すると考えられるため、ゲノム全体でみたダメージが少なく、段階的照射によって目的形質に近づけていくことが期待できる。本研究では、ゲノム情報の解明により2倍体のカーネーションの片方の色素凝集関連遺伝子が欠損していると推定される系統を選抜し、それへのイオンビーム照射による、色素凝集個体の育成を試みた。選抜した系統に炭素イオンビームを照射し、3200系統の照射由来再生個体を得た。色素凝集の確認できたもの8系統について、再度炭素イオンビームを照射し、イオンビーム照射由来の2920系統を開花検定し、花弁の輝きの増した個体を選抜した。以上の試験により、材料とする植物のゲノム情報の解明により2倍体のカーネーションの片方の色素凝集関連遺伝子が欠損していると推定される系統を選抜できること、実際にイオンビーム照射により、色素凝集個体が得られること、さらに、育成した色素凝集個体への2段階目のイオンビーム照射で、花弁の明度を増し、輝きを増すことが可能であることを明らかにした。
岡村 正愛*; 中山 真義*; 長谷 純宏
no journal, ,
ほとんどのカーネーションの花弁細胞はリンゴ酸でアシル化されたアントシアニンを含有するが、メタリック調の輝きを持つ一部の特殊花色系統では、アシル化されていないアントシアニンを含有することが知られている。通常、細胞の液胞内全体に分布するアントシアニンが、特殊花色系統では、液胞内で凝集体を形成することによってメタリック調の花色を示すと考えられている。われわれは、アントシアニンをアシル化する酵素遺伝子を指標として、多数の通常花色系統からアシル化能をヘテロで欠損した系統を複数見いだし、それらを交配することによって青紫色のメタリック色調の特殊花色系統の作出に成功した。さらに青紫メタリック系統へのイオンビーム照射によって色調のバリエーション拡大を試み、赤紫メタリック系統,銅赤メタリック系統並びに赤メタリック系統を獲得することに成功した。これらの変異系統が含有するアントシアニンを分析した結果、色素量,糖修飾及び凝集性に変化が見られ、これらが色調の違いを生み出した原因であると考えられた。
岡村 正愛*; 百瀬 眞幸*; 渡辺 さとみ*; 田中 淳; 長谷 純宏
no journal, ,
イオンビームによる突然変異を利用し、病害抵抗性に優れる,花持ちが良い,茎質が改善されるなど新しい形質を付与したカーネーション品種シリーズを育成している。新品種「ビームチェリー」は、新品種である「ビタル」の耐病性,花持ち,生産性を受け継ぎ、さらに暑い時期に茎が柔らかくなる点が改良され、花が丸弁化したものである。また、イオン照射により得られた花色のバリエーションである、赤,濃桃,桃,白桃バイカラー,白桃ストライプ,黄,丸弁,ナデシコ弁などについてDNA量や遺伝子の変化を調査した結果、黄色では、トランスポゾンdTdic1の葉や花での挙動が新品種と異なり、DNA量も約4%低下していたため、大規模な染色体変化が起きていると考えられた。これらの研究を通じて、イオンビーム育種が短期間に花色・花形などをシリーズ化するのに有効であること、また、ストレス耐性を付与・強化するのに有効であることが示された。
岡村 正愛*; 渡辺 さとみ*; 清水 明*; 渡邊 真希*; 長谷 純宏; 横田 裕一郎; 鳴海 一成; 田中 淳
no journal, ,
本課題では、複合抵抗性などの有用形質転換体へイオンビームを応用するシステムを開発することにより、各色・形の品種を各々分子育種技術で育成するのに比べ、極めて低コストで複合抵抗性品種をシリーズ化する手法を確立し、イオンビーム高度利用技術の開発に資する。キクの栽培は、栄養繁殖した挿し穂を用いて行われているため、栄養繁殖の集団でRNA病原体(ウイルス,ウイロイド)が蔓延しやすいが、これらに対する効果的な農薬は知られていない。材料としたRNA病原体複合抵抗性キクは植物体内での病原体濃度を低下させて病害による被害を軽減することができる。これまでに220MeV炭素イオンビーム,320MeV炭素イオンビームの照射試験を実施した。3Gyから10Gyの220MeV炭素イオンビーム照射試験区では開花試験を行い、薄桃,濃桃,サーモンなどの花色変化を誘導できることを明らかにした。
岡村 正愛*; 梅基 直行*; 長谷 純宏; 吉原 亮平; 鳴海 一成
no journal, ,
本課題では、有用形質転換体へイオンビームを応用するシステムを開発することにより、さまざまな花色や形の品種をシリーズ化する手法を確立し、イオンビーム高度利用技術の開発に資することを目的とする。照射材料としては、分裂酵母由来の2本鎖RNA特異的RNA分解酵素()を導入することでキク発育阻害ウイロイド及びトマト黄化壊疽ウイルスに耐性を獲得した形質転換キクを用いた。これまでに炭素イオンビームの照射試験を実施し、順化,温室での栽培後、花色と花姿について調査した。照射によって得られた計832の個体について開花試験を行い、薄桃,濃桃,サーモン,白色,黄色などの花色変化を誘導できることを明らかにした。以上の結果から、いったん有用な形質転換植物体を得れば、イオンビーム育種の利用により2-3年という短期間で、多数の色変わりシリーズを得られることが実証された。
岡村 正愛*; 古澤 佳也*; 長谷 純宏
no journal, ,
突然変異により特定の形質を狙ってその形質が変化した変異個体を多く得ることができれば、画期的な技術となる。本試験ではX線やイオンビームを照射する時の植物の生理状態が、誘導される突然変異にどのような変化をもたらすか検討した。キク品種リネカー(桃花色)の管状花を、蔗糖濃度を3%に高めた再分化培地にて25Cで4日間培養した後、低温処理として4
C暗黒下で3日間培養した。その後、線量1kRのエックス線を照射し、再生した植物体の開花検定を行った。低温処理とX線照射の組合せで得た2500個体からは白色変異体が12個体を得られた。対照試験としてX線照射のみで得た1900個体からは、白色変異株が2個体のみ得られた。また、キク培養体に色素を誘導した材料へのイオンビーム照射も試みた。その結果、色素誘導後に炭素イオンビームを照射した場合、色素誘導をせずに照射した対照区の1.8倍の花色変異出現頻度となった。以上の試験により、材料の遺伝子発現・生理状態を変化させることで、突然変異の出現頻度等に影響をあたえることができると示唆された。
岡村 正愛*; 中山 真義*; 長谷 純宏; 西崎 雄三*; 佐々木 伸大*
no journal, ,
カーネーションは、通常はリンゴ酸でアシル化された4種のアントシアニンを持ち、それぞれに対応した赤色,桃色,暗赤色及び紫色を基本花色として発色するが、メタリックな輝きを持つ特殊花色系統も存在する。これらの系統におけるアントシアニンはアシル化されておらず、液胞内で凝集体を形成していることが、特殊花色の発色の直接的な原因と考えられている。われわれはリンゴ酸のアシル化は劣性形質であることを明らかにするとともに、リンゴ酸転移酵素遺伝子を指標にすることで、通常花色系統の中でリンゴ酸によるアシル化能を欠損したゲノムをヘテロで持つ系統を複数見いだした。それらの交配によって青紫色のメタリック色調の特殊花色を持つ系統を作出し、その中で最も青みが強い個体を選抜した。さらにこの系統の色調のバリエーションを拡大するために、カーネーションにおける花色変異体の作成の実績のあるイオンビームを利用した。その結果、赤紫メタリック色系統,銅赤メタリック色系統,赤メタリック色系統が得られた。これらの系統を詳しく調査した結果、アントシアニンの種類と凝集性の違いが、特殊花色における色調の違いの原因と考えられた。