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宇野 定則; 千葉 敦也; 山田 圭介; 横山 彰人; 薄井 絢; 齋藤 勇一; 石井 保行; 佐藤 隆博; 大久保 猛; 奈良 孝幸; et al.
JAEA-Review 2013-059, JAEA Takasaki Annual Report 2012, P. 179, 2014/03
平成24年度の3台の静電加速器は、ユーザのキャンセルを除きほぼ年間計画に沿って運転された。運転日数はタンデム加速器で171日、イオン注入装置で149日、シングルエンド加速器で168日であり、年間の運転時間は各々2,073時間, 1,847時間, 2,389時間で例年と同水準の運転時間であった。平成21年度から新たに創設され、実施機関として採択された文部科学省補助事業の「先端研究施設共用促進事業」では、11日の利用があった。タンデム加速器では故障による停止はなかったが、イオン注入装置ではイオンの生成不良で1日、シングルエンド加速器ではタンク内のイオン源ガス流量調整バルブの故障により4日停止した。イオン注入装置では、高速クラスターイオン研究開発グループからの要望で水素化ヘリウム(HeH)の分子イオンの生成試験を実施し、ビーム強度は200kVで50nAであった。タンデム加速器では、核融合炉構造材料開発グループからの要望でタングステン(W)イオンの加速試験を行い、15MeV、4価で20nAのビームが得られた。
井上 利彦; 山下 真一郎; 山県 一郎; 吉武 庸光; 皆藤 威二; 関尾 佳弘; 林 長宏
no journal, ,
高Ni鋼は、良好な耐スエリング特性を有していることから燃料被覆管材料として開発されており、代表的な商用鋼の一つであるNimonic PE16('(Ni
(Ti,Al))析出型)は、英国の高速原型炉(PFR)にて約148dpaまでの照射実績を有している。その一方、高Ni鋼は、照射や高温熱時効に伴う延性の低下が課題であり、
'析出物の粗大化や粒界での再析出がその要因の一つとされている。そこで、PE16の課題を克服するため、PE16で利用している
'析出型とは異なる炭窒化物析出型の高Ni鋼(15Cr-35Ni鋼)と、
'よりも安定と考えられる
"(Ni
Nb)を加えた
'/
"析出型の高Ni鋼(15Cr-43Ni鋼)の2鋼種を新たに開発し、各種材料特性評価を進めている。本研究では、系統的な条件での照射試験が可能な原子力機構高崎量子応用研究所イオン照射研究施設(TIARA)にてイオン照射を行い、新規に開発した高Ni鋼の照射下における微細組織安定性(耐スエリング性など)を評価し、相対比較材であるPNC316鋼よりも耐スエリング特性に優れることを確認した。
丹野 敬嗣; 大塚 智史; 山下 真一郎; 矢野 康英; 皆藤 威二; 大久保 成彰; 實川 資朗*; 沢井 友次
no journal, ,
原子力機構では高速炉燃料被覆管の第一候補材料としてと9Cr-ODS(酸化物分散強化型)フェライト鋼の開発を進めている。燃料被覆管は最高700Cで250dpaの照射にさらされるため、分散粒子の高温・重照射下での安定性を評価することが必要である。また、耐食性の観点から11Cr-ODS鋼も並行して開発を進めている。Crの増量により低温側で大きな照射硬化や延性低下が起こる可能性があり、これについても確認する必要がある。そこで比較的短期間で高照射量を達成することができるFeイオンを用いて、250dpaを目標とした照射を開始した。Feイオン照射後にナノインデンターを用いて硬さを調べた結果、9Cr-ODS鋼では、400
C/60dpaの照射で照射硬化が見られた。11Cr-ODS鋼は9Cr-ODS鋼と比較して照射硬化が小さかった。これは11Cr-ODS鋼の非照射材が9Cr-ODS鋼よりも硬いためと考えられる。今後、照射量を増加させて高照射量側のデータ取得を行う。
三浦 健太*; 花泉 修*; 加田 渉*; 小澤 優介*; 稲田 和紀*; 久保田 篤志*; 河嶋 亮広*; 佐藤 隆博; 石井 保行; 江夏 昌志; et al.
no journal, ,
イオンビーム照射技術を用いた光スイッチや発光素子の光機能デバイスの製作を目的として、(1)プロトンビーム描画を利用したマッハツェンダー(MZ)導波路型熱光学スイッチ、(2)SiO部材へのSiとCイオンの注入と1200
C以下でアニール処理を行うことによる可視領域で発光する材料の開発を行った。(1)では、Si基板上に下部クラッドのSiO
層と光伝搬用のPMMA層をそれぞれ5
mと8
mに積層した試料に、1.7MeV, 1
m
のH
ビーム(50pA)を用いて、ドーズ量100nC/mm
で、線幅8
mのY分岐を左右対称に接合した長さ
30mmのMZ型の線を描画した。この後、上部クラッドとして10
mのPMMA層を積層し、導波路とした。これを光スイッチとするため、フォトリソグラフィによりTi薄膜ヒーターとA
電極を試料表面に形成し、波長1.55
mにおけるスイッチ特性を評価した。この結果、スイッチング電力は約43.9mW、ON/OFF比は約9.0dBと測定され、これらは従来型の石英系熱光学スイッチに比べ優位なものであった。(2)では、SiO
部材への150keV-Siの注入量を5
10
/cm
に固定し、75keV-Cの注入量を1, 3, 5, 7
10
/cm
と変えた。照射後、大気中、1000
Cにおいて25分間のアニールを行い、発光の観測を行った結果、可視域の発光が観測できた。更に、Cイオンの照射量によって、発光ピーク波長がシフトすることから、発光色をイオンの注入量で制御可能であることも明らかになった。
鮎瀬 銀也*; 西川 宏之*; 内田 諭*; 佐藤 隆博; 石井 保行; 神谷 富裕
no journal, ,
本研究は、PBW(Proton Beam Writing)を用いて柔軟性と透明性に優れたPETフィルム上に高アスペクト比の誘電体ピラーのアレイ構造を持つ3次元誘電泳動デバイスを製作することを目的とする。初めにピラーのアレイ構造ができる条件を調べるため、PETフィルム上にネガ型の感光性樹脂SU-8を15m厚で成膜し、これにH
ビーム(3.0MeV, 1
m
, 試料電流10pA, 照射量100nC/mm
)で微細加工後にピラーのアレイ構造となるパターン(直径3
mのドットを間隔20
mでアレイに配置)を描画し、その後、照射部の硬化を促進する熱処理と現像を行った。SEM(Secondary Electron Microscope)による観察でピラーのアレイ構造(直径3.0
m, 高さ15
m, アスペクト比5.0, 間隔20
m)を確認できた。次にこの製作条件で、3次元誘電泳動デバイスの製作を行った。一対のギャップ付きの電極とピラーのアレイ構造のための位置決め用のパターンを製作するため、PET膜上に酸化インジウムスズ(ITO)膜が付加されたフィルムにポジ型感光性樹脂を成膜した。その後、マスクを用いたUV露光と現像、及びITOエッチングを行うことで電極と位置決め用のパターンを形成した。この電極付きフィルムにSU-8を成膜し、位置決め用のパターンを基準に電極ギャップにピラーのアレイ構造を製作した。SEMによる観察の結果、ITO電極ギャップ間のピラーのアレイ構造が確認でき、3次元誘電泳動デバイスの作製に成功した。
佐藤 真一郎; 大島 武
no journal, ,
柔軟性を有し、低コストでの作製が可能なアモルファス系薄膜太陽電池は宇宙用フレキシブル太陽電池への応用が考えられており、耐放射線設計に必要な発電特性の劣化挙動を明らかにする必要がある。今回、10keVから10MeVの陽子線を照射したときの劣化挙動および照射後の室温での発電特性の回復について調べたところ、陽子線照射劣化ははじき出し損傷効果に起因しており、アモルファスシリコン太陽電池でよく見られる光照射劣化とは全く異なることが明らかになった。また、照射直後に室温で顕著に短絡電流が回復することがわかったが、これは陽子線照射によって生じた欠陥(ダングリングボンド)が減少していることに起因していると考えられる。
住田 泰史*; 中村 徹哉*; 今泉 充*; 佐藤 真一郎; 大島 武
no journal, ,
宇宙航空研究開発機構では、多接合構造による高い変換効率と薄膜化による軽量性及び耐放射線性を兼ね備えたInGaP/GaAs/InGaAs薄膜3接合太陽電池の開発研究を進めており、その耐放射線性評価実験を高崎量子応用研究所TIARAのイオン加速器を用いて実施した。3MeV陽子線照射後の発電特性劣化を、現在人工衛星用の主流として使用されているInGaP/GaAs/Ge型3接合太陽電池と比較したところ、ほぼ同等の放射線耐性を示すことがわかった。InGaP/GaAs/InGaAs薄膜3接合太陽電池は従来のInGaP/GaAs/Ge型3接合太陽電池より初期の変換効率が約2%高いことを含めて考えると、InGaP/GaAs/InGaAs薄膜3接合太陽電池は新たな宇宙用太陽電池として利用可能であると結論できる。
中村 徹哉*; 今泉 充*; 佐藤 真一郎; 大島 武; 菅谷 武芳*
no journal, ,
量子ドット層の導入によって宇宙用太陽電池の更なる高効率化を目指す研究が近年行われているが、その耐放射線性については明らかにされていない。今回、量子ドット層を導入したGaAs太陽電池に150keV陽子線照射を行い、その結果をリファレンス試料であるp-i-n型GaAs太陽電池の結果と比較することで、量子ドット層の耐放射線性を調べた。光電流・電圧特性および暗電流・電圧特性から光電流の電圧依存性を反映するパラメータを抽出し、その陽子線照射による変化を比較した。その結果、GaAs太陽電池は510
cm
から減少するのに対し、量子ドット太陽電池は2
10
cm
から減少することがわかった。パラメータの減少は主に少数キャリアの再結合寿命が低下し、ドリフト電流の割合が増えていることを意味しており、この結果からは、量子ドット太陽電池のほうが放射線耐性が低いと判断される。
岡田 浩*; 岡田 雄樹*; 関口 寛人*; 若原 昭浩*; 佐藤 真一郎; 大島 武
no journal, ,
窒化ガリウム(GaN)などの窒化物半導体は、広いバンドギャップに加えて機械的、化学的安定性を有していることから、宇宙空間などの苛酷環境下で動作するデバイスへの応用が期待されている。今回は、GaN系発光デバイスの耐放射線性を調べるために、n型層およびp型層に380keV陽子線照射を行い、照射前後での電気抵抗の変化を調べた。n型層では110
cm
照射後でも抵抗値に変化がないのに対し、p型層では1
10
cm
照射後に明らかな抵抗増加が起こり、1
10
cm
照射後には6桁以上の抵抗増加が生じた。これは、p型層の正孔密度が10
cm
程度とn型層の電子密度に比べて1桁以上低いことに起因していると考えられる。このような結果は過去に我々が報告したフォトルミネッセンス強度の変化と良い一致を示しており、両者は同一の照射効果に起因している可能性がある。
上松 敬; 春山 保幸; 花屋 博秋; 山縣 諒平; 清藤 一; 長尾 悠人; 金子 広久; 山口 敏行*; 八木 紀彦*; 高木 雅英*; et al.
no journal, ,
平成24年度は、電子加速器及び線照射施設はほぼ年間計画通り照射運転を実施した。電子加速器の運転時間は910時間であり、平成23年度と比較し長時間照射の利用が減り14%減少した。
線照射施設の運転時間は、第1棟が15,738時間、第2棟が10,537時間、食品棟が7,871時間であった。平成23年度と比較し、第1棟では年度前半に施設供用等の長時間照射の中断による16%減少、第2棟及び食品棟は福島関連の実験の増加による6%増加があった。福島関連の利用回数は、電子加速器で14回、
線照射施設で93回であった。点検整備では、電子加速器のSF
ガス回収装置のコンプレッサーが故障し、空気の混入があったが、運転には支障はなく、そのまま運転を継続した。また、コンベア・照射室扉等の定期点検・整備を実施した。
線照射施設では、コバルト第1棟の水抜き点検を実施した。
Co線源は、毎年、減衰分補充のための新規購入及び長期間使用し減衰した線源の処分を実施しており、平成24年度では、コバルト第1棟に新規購入線源6本を配置し、古くなった
Co 30cm棒状線源15本、
Co球状線源12個及び
Cs線源5個の処分を、日本アイソトープ協会を通して行った。
佐々木 一郎; 山田 圭一*; 渡辺 茂樹; 花岡 宏史*; 須郷 由美; 奥 浩之*; 石岡 典子
no journal, ,
6つのアミノ酸残基よりなる線形ペプチド、MARSGL (H-Met-Ala
-Arg
-Ser
-Gly
-Leu
-OH)は、様々な種類のがん細胞で発現するHER2/neu受容体に親和性が高いことから、画像診断や治療に有効な放射線を放出する放射性のヨウ素や臭素のような放射性ハロゲンでMARSGLが標識できれば、HER2/neuを発現する腫瘍の診断薬・治療薬への応用が期待できる。本発表では、放射性ハロゲンのMARSGL標識を達成するために、芳香環の
位に
I(t
=8.0d)を標識したフェニルアラニンをMARSGLのN端に導入したF(
-
I)MARSGLを設計し、その合成法として見出したスズ-ハロゲン交換反応によるペプチドへの放射性ハロゲンの導入について報告する。
佐藤 隆博; 江夏 昌志; 横山 彰人; 大久保 猛; 石井 保行; 神谷 富裕; 加田 渉*; 山崎 明義*; 香西 直文
no journal, ,
マイクロ粒子励起X線(micro-PIXE)は、生体細胞における微量元素の動態解明に応用されているが、二次元分布のみ測定可能であり、着目する微量元素の細胞内への取り込みの判別が困難である。そこで、本研究では、生体細胞内微量元素の三次元分布を得る粒子励起X線-コンピュータ断層撮影(PIXE-CT)の開発を行っている。今回、100m以下の微小な単細胞生物であるミドリゾウリムシを、Eu溶液中でイースト菌を用いて培養した後風乾し、TIARAのシングルエンド加速器からの3MeVのH
マイクロビームを用い、9
ずつ回転させながら投影像を40回測定した。これらの投影像から、最尤推定-期待値最大化法(ML-EM)で画像再構成を行い、Pは細胞内に一様に分布しているのに対し、Euは細胞内の特定の部位に集積している様子を三次元的に画像化することに成功した。
倉島 俊; 柏木 啓次; 宮脇 信正; 奥村 進; 吉田 健一; 百合 庸介; 湯山 貴裕; 石坂 知久; 石堀 郁夫; 奈良 孝幸; et al.
no journal, ,
TIARAのサイクロトロンでは、材料・バイオ技術等の研究に必要なイオンビーム利用の高度化と効率化のため、ビームの生成・加速・形成・照射に関連した様々な技術開発を行っている。本報告では、サイクロトロンのビーム位相バンチングに関する研究、横方向アクセプタンス・エミッタンス計測装置開発等の現状について述べる。位相バンチングに関する研究では、従来までの複雑な粒子軌道計算コードとは別に、位相バンチングの効果を検証するために電場や磁場分布などを単純化した簡便な計算手法を考案した。この計算結果から、TIARAのサイクロトロンでは加速ハーモニクス2及び3については位相バンチングが生じるものの、加速ハーモニクス1については生じないことが分かり、実際のビーム位相幅の計測実験においてもこれらを確認した。また、横方向アクセプタンス・エミッタンス計測では、入射ビームをステアラーにより偏向することでビームのエミッタンスを拡大することに成功した。さらには、実験によりこのエミッタンスが拡大されたビームを入射して、サイクロトロンのアクセプタンスを明らかにした。これらの結果、エミッタンスとアクセプタンスの整合状態を把握し、ビーム透過率を向上できる見通しを得た。
植木 悠二; 佐伯 誠一; 笠井 昇; 瀬古 典明
no journal, ,
これまでの先行研究において、放射線グラフト重合技術により作製された繊維状グラフト重合体は、高効率なバイオディーゼル燃料(BDF)製造用触媒として機能することを見出した。本研究では、本触媒の最適使用条件の検討、天然油脂を出発原料とするBDF製造に加え、触媒再生処理方法について検討した。その結果、本触媒は、より高い接触温度で、油脂に対して大過剰にアルコールが存在する場合や親油性が高いアルコールを使用する場合において、エステル交換反応がより効率的に進行することを見出した。また、本触媒は天然油脂を出発原料とするBDF製造にも適応可能であり、油脂の種類に係わらずその反応率は4時間で90%以上に達した。さらに、失活した触媒能は、クエン酸,アルカリ水溶液,エタノールの順で処理することにより再生可能であることを見出した。
齋藤 広明*; 溝手 範人*; 植木 悠二; 瀬古 典明
no journal, ,
ゴム材料の表面改質法として放射線グラフト重合法は有効な手法である。しかし、過度な表面改質はゴム本来の物理的特性を失うことにも繋がるため、ゴム材料としての役割に支障をきたす恐れがある。そこで、本研究では、グラフト率とゴム特性との関係を詳細に調査し、「ゴム表面の低摩擦化」と「ゴム特性の維持」との両立の可否について検討した。ゴム基材には、カーボンブラックを配合したアクリロニトリル-ブタジエンゴムシート、モノマーには、親水性モノマーであるメタクリル酸を用いた。その結果、グラフト率2%までであれば、破断強度や永久歪といったゴム特性に影響を及ぼさずにゴム表面を低摩擦化させることが可能であることを見出した。
原田 聡*; 石井 慶造*; 佐藤 隆博; 江夏 昌志; 神谷 富裕; 世良 耕一郎*
no journal, ,
本研究では、悪性腫瘍と初期転移巣の検出及び治療を目的とし、これらの血管内皮に発現する抗体に集積し、CTで検出可能でかつ薬剤放出能を有するマイクロカプセルの開発を行っている。今回、X線照射により薬剤を放出するマイクロカプセルの集積と放出能を確認するため、マウスの左下腿に高転移性の腫瘍を移植し肺転移を起こさせ、白金を含む薬剤を内包したマイクロカプセル1 10
個を尾静脈に注射した。CTによって集積を確認したところ、静脈に注射したカプセルの最大54%が肺の腫瘍に集積していることがわかった。さらに、140keV-X線を10Gy以上照射した後に凍結乾燥した肺組織切片をマイクロPIXE(Particle Induced X-ray Emission)で測定したところ、マイクロカプセルから白金を含む薬剤が放出される様子を画像化することに成功した。
富岡 智*; 長嶺 竹明*; 佐藤 隆博; 江夏 昌志; 神谷 富裕
no journal, ,
C型慢性肝炎は、C型肝炎ウィルスの持続感染により肝臓の炎症と線維化をきたす疾患である。ペグ型インターフェロン(Peg-IFNリ)とリバビリン(RBV)の2剤併用療法による治癒率は4050%程度であり、プロテアーゼ阻害剤(PI)を加えた3剤併用療法では70%以上になることが知られている。一方で、貧血などの副作用も頻発しており、3剤併用療法では重症例もみられるなど、治療効果を左右する要因となっている。本研究では、このようなインターフェロン治療による副作用である貧血の病態解明のために、2剤併用及び3剤併用時の赤血球内微量元素量の変動をマイクロPIXE (particle induced X-ray emission)で分析した。その結果、C型肝炎の未治療者では、健常者と比較して、カルシウム,鉄,銅が増加し、亜鉛は減少が認められた。また、2剤併用療法では、未治療者と比較して、カルシウムは減少し、亜鉛は増加した。さらに、3剤併用療法では、未治療者と比較して、カルシウム、亜鉛共に増加傾向が見られた。以上から、3剤併用療法では2剤併用療法とは異なる赤血球内元素分布変動が認められ、両治療法における貧血の病態が異なる可能性が示唆された。
櫻井 映子*; 櫻井 栄一*; 石井 慶造*; 山内 祥聖*; 小塩 成基*; 江夏 昌志; 佐藤 隆博; 神谷 富裕
no journal, ,
本研究では、有害な化学物質から肺を保護するために重要な働きをしている肺血液関門細胞に対するニコチンの影響を調べるために、培養したマウス肺血液関門細胞に0.02, 0.2, 2Mのニコチンを一定時間作用させ、凍結乾燥の後、大気マイクロPIXE(Particle Induced X-ray Emission)で細胞内微量元素の測定を行った。その結果、ニコチンの作用用量を増加させると肺血液関門細胞内の亜鉛量が減少し、カルシウム量が増加した。酸化的ストレスの除去に亜鉛が使用される一方で、細胞死が引き起こされカルシウムが増加すると考えられる。今後、測定試料数の増加により統計精度を上げ、肺血液関門細胞内の微量元素に対するニコチン量の影響を定量的に評価する。
保科 宏行; 笠井 昇; 植木 悠二; 佐伯 誠一; 柴田 卓弥; 岩撫 暁生; 瀬古 典明
no journal, ,
福島第一原子力発電所の事故により飛散した放射性セシウムを回収するため、セシウムに対して親和性の高いリンモリブデン酸アンモニウムを放射線グラフト重合によりポリエチレン製不織布基材に導入することでセシウム吸着材を作製した。これらを除染材料として広範に適用するためには、効率的に大量の吸着材を作製することが必要となる。そこで、短時間で大量の基材に照射可能な低エネルギー電子加速器を導入し、幅0.3m、長さ20mのポリエチレン製不織布基材に電子線照射した後、容量が30Lの反応槽内でグラフト重合を行った結果、セシウム吸着材の作製に充分なグラフト率を得ることができた。この結果から、低エネルギー加速器を用いて、僅か10分間(50kGy)照射を行い、1時間グラフト重合を行うことで、6mのセシウム吸着材を作製できることが明らかになった。
春山 保幸; 瀧澤 春喜; 細野 雅一; 水橋 清*; 中村 義輝*; 兼谷 聡*; 浅井 孝博*; 川畑 道子*; 今井 浩二*
no journal, ,
TIARA施設の利用状況について報告する。2012年度は大きな外的要因(大地震,電力削減要求等)もなくほぼ計画通りの運営が行えた。研究分野別では1991年から2012年の間に、医療・バイオ応用分野の利用課題件数が増加し、サイクロトロンの利用割合が最も多くなっている。静電加速器では、この約20年間で基盤技術開発の利用割合が大幅に増加した。また、外部利用者数はここ4年間では800人程度で安定している。