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深谷 有喜; 河裾 厚男*; 一宮 彪彦*; 兵頭 俊夫*
Journal of Physics D; Applied Physics, 52(1), p.013002_1 - 013002_19, 2019/01
被引用回数:16 パーセンタイル:18.96(Physics, Applied)最近、物質の表面構造を調べることを目的に、全反射高速陽電子回折(TRHEPD)法を開発した。TRHEPD法は反射高速電子回折(RHEED)の陽電子版である。入射する視射角に依存して、陽電子は物質表面で全反射もしくは、表面下数層に徐々に侵入する特徴がある。したがって、深いバルクからの影響なしに、最表面およびその直下の構造についての情報を得ることができる。本レビュー論文では、TRHEPDの特徴と固体表面および2次元物質の構造決定に適用した例について報告する。
深谷 有喜; 前川 雅樹; 河裾 厚男; 望月 出海*; 和田 健*; 設楽 哲夫*; 一宮 彪彦*; 兵頭 俊夫*
Applied Physics Express, 7(5), p.056601_1 - 056601_4, 2014/05
被引用回数:19 パーセンタイル:60.76(Physics, Applied)本研究では、全反射条件下におけるSi(111)-再構成表面からの反射高速陽電子回折(RHEPD)パターンが、結晶内部のバルク原子からの寄与を含まないことを報告する。このことは、バルク原子を含む通常の試料の測定においても、最表面原子の情報のみを反映した回折パターンを観測可能であることを意味する。
兵頭 俊夫*; 深谷 有喜; 前川 雅樹; 望月 出海*; 和田 健*; 設楽 哲夫*; 一宮 彪彦*; 河裾 厚男
Journal of Physics; Conference Series, 505(1), p.012001_1 - 012001_5, 2014/04
被引用回数:9 パーセンタイル:93.50(Physics, Applied)反射高速陽電子回折(RHEPD)は1992年に提唱され、1998年に初めて実証された。それ以来、RHEPDは表面科学の分野へ多くの寄与を果たしている。最近、原子力機構のRHEPD装置を高エネルギー加速器研究機構低速陽電子実験施設に移設し、輝度増強した高強度陽電子ビームラインへの接続を行った。この陽電子ビームの高強度化により、鮮明なRHEPDパターンが得られるようになった。Si(111)-表面をテスト試料として用い、RHEPDパターンの観測を行った。陽電子のエネルギーは10kVに設定した。このエネルギーでは、全反射の臨界角は2となる。全反射条件下の視射角1.3で観測したRHEPDパターンは、計算結果と非常によく一致することが分かった。全反射したRHEPDパターンは、本質的に付着原子と表面第一層の原子だけで決定できることも分かった。この手法により、最表面から内部へ向かった表面近傍の構造解析が可能である。我々はこの手法を全反射陽電子回折法と呼ぶ。
深谷 有喜; 松田 巌*; 橋本 美絵*; 久保 敬祐*; 平原 徹*; 山崎 詩郎*; Choi, W. H.*; Yeom, H. W.*; 長谷川 修司*; 河裾 厚男; et al.
Surface Science, 606(11-12), p.919 - 923, 2012/06
被引用回数:6 パーセンタイル:27.29(Chemistry, Physical)反射高速陽電子回折と光電子分光を用いて、Si(111)--Au表面上へのAg原子吸着により発現するSi(111)-超構造(Si(111)--(Au,Ag)表面)の原子配置を調べた。光電子分光による測定から、Si(111)--(Au,Ag)表面は、AuとAg原子の組成比の異なった他のSi(111)-超構造のものと似た電子状態を形成していることがわかった。反射高速陽電子回折のロッキング曲線と回折パターンの解析から、AuとAgの原子配置もまた、他のSi(111)-超構造のものに近いことがわかった。これらの結果は、二次元電子化合物に特有の特徴と一致する。
深谷 有喜; 松田 巌*; 河裾 厚男; 一宮 彪彦*
JAEA-Review 2010-065, JAEA Takasaki Annual Report 2009, P. 150, 2011/01
Si(111)--Ag表面は、典型的な二次元金属として精力的に研究されている。Si(111)--Ag表面上に微量の貴金属原子(Cu, Ag, Au)やアルカリ金属原子(Na, K, Cs)を吸着させると、急激な表面電気伝導度の上昇とともに、超構造が発現する。これまでの研究から、貴金属原子を吸着させた超構造の場合、単位格子内の3個の吸着原子は、下地のSiトライマーを囲むように、大きなAg三角形の中心に位置することがわかった。しかし、アルカリ金属原子を吸着させた場合の超構造の研究はほとんど行われておらず、その原子配置は不明である。本研究では、反射高速陽電子回折を用いて、Cs原子を吸着させた超構造の原子配置を調べた。測定したロッキング曲線には、全反射領域において、Cs原子が吸着したことによるディップ構造が観測された。動力学的回折理論に基づく強度解析から、Cs原子が下地のAg層から3.04Aの高さに吸着していることがわかった。この値は、貴金属原子の場合に比べて約2.5A高い。これは、Cs原子の原子半径が貴金属原子に比べ約2倍大きいことが影響していると考えられる。また、Cs原子の吸着サイトは、貴金属原子の場合とは異なり、Ag原子の直上に位置していると考えられる。
深谷 有喜; 河裾 厚男; 一宮 彪彦*
JAEA-Review 2010-065, JAEA Takasaki Annual Report 2009, P. 151, 2011/01
K/Si(111)-B表面は、モット絶縁体表面の典型例として精力的に研究されている。最近この表面が、270Kで-構造相転移を起こすことが報告された。これまでに、K/Si(111)-B表面の電子状態に関しては、光電子分光等を用いて詳細に調べられている。しかし、その原子配置は実験的に決定されていない。本研究では、反射高速陽電子回折を用いて、K/Si(111)-B表面における最表面K原子の吸着位置を決定した。測定したロッキング曲線には、全反射領域において、K原子の吸着により発現したディップ構造が観測された。動力学的回折理論に基づく強度計算との比較から、K原子はSi第一層から1.99Aの高さに位置していることがわかった。これまでの第一原理計算の結果と比較すると、この高さはK原子がサイトに吸着した場合に対応している。また、理論計算ではサイトへの吸着が、表面エネルギー的に最も安定であることが示されている。したがって、最表面のK原子の吸着サイトがサイトであることを実験的に初めて決定することができた。
深谷 有喜; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
Journal of Physics; Conference Series, 225, p.012009_1 - 012009_5, 2010/06
被引用回数:1 パーセンタイル:49.81(Physics, Applied)表面プラズモンは固体表面における電子の集団励起であり、そのエネルギーは体積プラズモンエネルギーにを乗じたものになる。通常、表面プラズモンの励起過程は、低速の電子ビームを用いて行われる。最近、反射高速電子回折を用いて、表面から反射した高速電子をエネルギー分析することにより、表面プラズモン励起の研究が行われ始めた。本研究では、反射高速陽電子回折を用い、Al(111)-11表面における陽電子エネルギー損失スペクトルを測定し、全反射した陽電子による表面プラズモン励起過程を調べた。陽電子エネルギー損失スペクトルには、Al(111)の表面プラズモン励起に伴う多重の損失ピークが観測された。エネルギー損失スペクトルの形状は、陽電子と電子とでは大きく異なっており、ポアソン分布を用いた解析から、全反射した陽電子による表面プラズモンの平均励起回数は2.8回であることがわかった。この値は、電子のものに比べると約2倍大きい。陽電子は、全反射を起こすことにより、表面との相互作用距離が長くなり、結果として表面プラズモンをより多く励起したと考えられる。
深谷 有喜; 橋本 美絵; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
Journal of Physics; Conference Series, 225, p.012008_1 - 012008_8, 2010/06
被引用回数:1 パーセンタイル:49.81(Physics, Applied)近年、原子サイズのワイヤーやシートなどの低次元構造の物性に注目が集まっている。例えば、理想的な一次元金属鎖は、パイエルス転移により、低温で金属絶縁体転移を起こす。現在では、結晶表面上への異種原子の吸着により、バルクでは見られないさまざまな一次元・二次元の超構造の作製が可能になってきている。反射高速陽電子回折は、表面敏感な表面構造解析手法である。陽電子ビームが結晶表面に対して低い視射角で入射すると、全反射を起こす。全反射条件下において、結晶への陽電子の浸入深さは約0.2nm以下となる。したがって、全反射回折時における反射強度は、最表面構造に非常に敏感なものとなる。われわれは、結晶表面上の超構造を調べるために反射高速陽電子回折装置を開発してきた。これまでに、反射高速陽電子回折装置を用いて、結晶表面上の超構造の詳細な原子配置とその相転移について調べてきた。本研究では、反射高速陽電子回折を用いることによって明らかにした、Si(111)--Ag表面とSi(111)-41-In表面における構造と相転移について報告する。
深谷 有喜; 河裾 厚男; 一宮 彪彦*
e-Journal of Surface Science and Nanotechnology (Internet), 8, p.190 - 193, 2010/04
高速陽電子ビームによる結晶最表面での表面プラズモンの励起過程を調べるために、Si(111)-77, Al(111)-11, Bi(001)-11表面からの全反射陽電子のエネルギー損失スペクトルを測定した。全反射条件下における陽電子エネルギー損失スペクトルには、表面プラズモンの多重励起に伴う多数の損失ピークが観測された。ポアソン分布を用いたエネルギー損失スペクトルの解析から、全反射陽電子による表面プラズモンの平均励起回数は2.4-2.8回であることがわかった。さらに、ほぼ同一の実験条件で、電子によるエネルギー損失スペクトルも測定した。解析の結果、電子による表面プラズモンの平均励起回数は1.4-1.8回であることがわかった。陽電子は、全反射の効果により、電子と比較して約2倍の数の表面プラズモンを励起できることがわかった。また、Si(111)-77, Al(111)-11, Bi(001)-11表面の一連の測定から、表面プラズモンの励起過程に関して、元素依存性はほとんどないことが確かめられた。
深谷 有喜; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
JAEA-Review 2009-041, JAEA Takasaki Annual Report 2008, P. 145, 2009/12
最近、高速の電子ビームを結晶表面に低視射角で入射させた時に生ずる表面プラズモン励起の研究が行われ始めた。しかし、陽電子による表面プラズモン励起過程はほとんどわかっていない。陽電子は、結晶表面に対して浅い角度で入射すると全反射を起こす。したがって、陽電子による表面プラズモン励起過程は電子とは異なると予想される。本研究では、理想的な自由電子系であるアルミニウム単結晶表面からの全反射した陽電子のエネルギー損失スペクトルを測定した。測定したスペクトルには、約12eV間隔で現れる5つの明瞭な損失ピークが観測された。アルミニウムの表面プラズモンエネルギーは11.3eVであるので、これら一連の損失ピークは表面プラズモンの多重励起に対応する。エネルギーを損失していない弾性散乱ピークは小さく、3回表面プラズモンを励起した損失ピークが最も強いことがわかった。解析の結果、アルミニウム表面における表面プラズモンの平均励起回数は2.8回であることがわかった。全反射した陽電子は結晶の最表面近傍を飛行することにより、結晶の電子による遮蔽効果を受けにくい。したがって、結晶表面と相互作用する距離が伸びることにより、表面プラズモンの励起回数が増大したと考えられる。
深谷 有喜; 松田 巌*; 橋本 美絵; 成田 尚司*; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
e-Journal of Surface Science and Nanotechnology (Internet), 7, p.432 - 435, 2009/04
Si(111)--Ag表面上に、微量のAgやAuなどの貴金属原子を吸着させると、電気伝導度の上昇を伴って、超構造が形成される。-Agと-(Ag,Au)超構造の原子配置は、これまでにさまざまな研究手法を用いて調べられており、これらの超構造はほとんど同一であると考えられる。最近、Si(111)-52-Au表面上へのAg原子の吸着によっても、超構造(-(Au,Ag))が発現することが見いだされた。この新しい超構造の原子配置は、現在のところ全く不明である。そこで本研究では、反射高速陽電子回折(RHEPD)を用いて、この新しい超構造の解明を行った。-(Au,Ag)超構造からのRHEPDパターンの強度分布とロッキング曲線の形状は、-(Ag,Au)超構造からのものに似ていることがわかった。これらの観測結果は、新しい-(Au,Ag)超構造が他の超構造に近い原子配置をとっていることを示唆している。詳細な原子配置を決定するために、動力学的回折理論に基づく強度計算を行い、他の超構造との比較から、今回の新たな-(Au,Ag)超構造を議論する。
橋本 美絵; 深谷 有喜; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
e-Journal of Surface Science and Nanotechnology (Internet), 7, p.436 - 440, 2009/04
Si(111)-41-In表面超構造は擬1次元物質として知られており、120K以下で82構造へ相転移し、金属-絶縁体転移を起こす。しかし、82構造の原子配置や相転移のメカニズムについては、未だ解明されていない。本研究では、最表面に敏感な反射高速陽電子回折(RHEPD)を用いて、相転移前後のIn/Si(111)表面からのロッキング曲線を測定し、動力学的回折理論に基づく強度計算との比較から、In原子鎖の原子変位について報告する。41構造のRHEPDロッキング曲線の結果から、X線回折実験で決定されたジグザグチェーン構造であることを確認した。また、低温相においては理論的に提案されている2つの82構造モデルを参考にして、RHEPDロッキング曲線のフィッティングを行い、最終的にヘキサゴン構造に近いモデルを得た。さらに、決定した原子位置を用いて走査トンネル顕微鏡(STM)像を第一原理的に計算したところ観察結果を再現できることがわかり、バンド構造計算からこの構造では約60meVのエネルギーギャップが現れた。以上の結果から、120Kで見られる金属-絶縁体転移は、In原子がジグザグチェーン構造からヘキサゴン構造へ原子変位することに起因していることを明らかにした。
深谷 有喜; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
Physical Review B, 79(19), p.193310_1 - 193310_4, 2009/00
被引用回数:11 パーセンタイル:44.29(Materials Science, Multidisciplinary)結晶表面での陽電子ビームの全反射回折時における非弾性散乱過程を調べるために、反射高速陽電子回折を用いてSi(111)-77表面からの絶対反射率,鏡面反射スポットのプロファイル,エネルギー損失スペクトルを測定した。陽電子の絶対反射率は、電子のものに比べると1桁以上大きく、全反射回折時においても100%以下であることがわかった。さらに陽電子回折における鏡面反射スポットは、入射ビームに比べて広がっていることを見いだした。エネルギー損失スペクトルの測定から、電子に比べると、全反射した陽電子は表面プラズモンを多数励起することがわかった。絶対反射率の減少と鏡面反射スポットの広がりは、陽電子による表面プラズモンの多重励起の効果によって説明できることがわかった。
深谷 有喜; 橋本 美絵; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
JAEA-Review 2008-055, JAEA Takasaki Annual Report 2007, P. 154, 2008/11
荷電粒子が結晶に入射すると、さまざまなエネルギー損失過程が起こる。電子ビームの微小角入射の場合、表面プラズモンが主要なエネルギー損失過程であることが知られている。電子ビームによる表面プラズモンの励起過程は、実験,理論の両面から詳細に調べられている。一方、陽電子によるエネルギー損失過程の研究は、電子ビームを用いた研究に比べると非常に限られている。陽電子では、電荷の符号が正値であるため、微小角入射の場合、全反射を起こす。そのため全反射条件下では、陽電子によるエネルギー損失過程は、電子のものとは異なると考えられる。本研究では、エネルギー分析器を反射高速陽電子回折装置に組み込み、Si(111)-77表面からの全反射回折強度のエネルギー損失スペクトルを測定した。測定したスペクトルにおいて、明瞭な5つの損失ピークとゼロロスピークを観測することができた。観測した損失ピークはそれぞれ約10eV間隔で現れており、シリコンの表面プラズモン励起に対応している。スペクトルの解析から、全反射条件での表面プラズモンの平均励起回数は、2.6回であることがわかった。これは、電子ビームの場合に比べると大きい値であり、全反射回折陽電子ビームが結晶表面で表面プラズモンを多数励起することを意味する。
河裾 厚男; 深谷 有喜; 橋本 美絵; 一宮 彪彦; 成田 尚司*; 松田 巌*
Materials Science Forum, 607, p.94 - 98, 2008/11
現在、われわれは反射高速陽電子回折による表面物性研究を行っている。反射高速陽電子回折の優位性は表面第一層での陽電子全反射の発現にある。報告では、幾つかの未知の表面構造と相転移について、最新の研究結果を報告する。
深谷 有喜; 橋本 美絵; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
Applied Surface Science, 254(23), p.7827 - 7830, 2008/09
被引用回数:3 パーセンタイル:16.35(Chemistry, Physical)Pb/Ge(111)表面は、典型的な2次元金属系として、実験・理論の両面から精力的に研究されている。この表面は、220K付近で33から構造へ相転移することが知られているが、その相転移のメカニズムと原子配置は未解決のままである。本研究では、反射高速陽電子回折(RHEPD)を用いて、Pb/Ge(111)表面の相転移と原子配置について調べた。33と相からロッキング曲線を測定したところ、曲線のプロファイルに顕著な違いが見られなかった。動力学的回折理論に基づく強度解析から、33と相ともに、単位格子内の一つのPb原子の垂直位置が他の2つのPb原子より高い、通称1U2D構造を形成していることがわかった。相転移の詳細を調べるために、全反射条件下におけるRHEPD強度の温度依存性も測定した。220K以上の強度変化は、通常のデバイ・ワーラー因子の効果によって説明できる。しかし220K以下では、温度が減少するとともに強度が増大する特異な変化が見られた。これは、相転移に伴ってPb原子の熱振動状態が変化したことを意味している。これらの結果から、この相転移は表面フォノンのソフト化を伴った秩序・無秩序相転移であると考えられる。
橋本 美絵; 深谷 有喜; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
Applied Surface Science, 254(23), p.7733 - 7736, 2008/09
被引用回数:3 パーセンタイル:16.35(Chemistry, Physical)Inを吸着させたSi(111)の表面は擬一次元構造を形成する。この表面構造は130K以下でパイエルス型の金属-絶縁体転移を起こすことが知られている。これに伴い表面周期性も41から82周期に変化する。しかしながら、82構造の原子位置がまだ未知であるため、相転移のメカニズムについては解明されていない。本研究では、反射高速陽電子回折を用いてSi(111)-82-In表面の擬一次元構造と相転移について研究を行った。ロッキング曲線を詳細に解析した結果、ヘキサゴンモデルを仮定することで実験結果がよく再現できることがわかった。一方Si(111)-41-In表面のロッキング曲線は、表面エックス線回折で決定されたジグザグチェーン構造により説明できる。以上より、In/Si(111)表面の金属-絶縁体転移に伴って、Inの原子配列がジグザグチェーン構造からヘキサゴン構造に変化することが明らかになった。また、最適化されたヘキサゴン構造をもとにして第一原理計算から、STM像とバンド分散関係を求め実験結果と比較した結果についても報告する。
深谷 有喜; 橋本 美絵; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
Surface Science, 602(14), p.2448 - 2452, 2008/07
被引用回数:19 パーセンタイル:60.52(Chemistry, Physical)本研究では、反射高速陽電子回折(RHEPD)と第一原理計算を用いて、擬一次元金属鎖を形成し、低温において金属絶縁体転移を起こすIn/Si(111)表面の原子配置とバンド構造を調べた。動力学的回折理論に基づくロッキング曲線の解析から、130Kにおける41構造から82構造への相転移に伴って、In原子鎖がジグザグチェーン構造からヘキサゴン構造へ原子変位を起こすことを明らかにした。さらに、最適化したヘキサゴン構造を用いてバンド構造を計算したところ、この構造では60meVのバンドギャップが開くことがわかった。すなわち、ヘキサゴン構造は半導体的な表面であることがわかった。これは、最近の理論計算で予測されたように、低温ではヘキサゴン構造がエネルギー的に安定であることを示している。
深谷 有喜; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
Surface Science, 601(22), p.5187 - 5191, 2007/11
被引用回数:12 パーセンタイル:48.80(Chemistry, Physical)典型的な2次元金属薄膜であるSi(111)--Ag表面上に、微量の貴金属原子やアルカリ金属原子を吸着させると、超構造を形成する。これらの超構造は、-Ag表面に比べて、電気伝導度の急激な増大を示すことが知られている。このように、顕著な物性的変化を示すにもかかわらず、それらの原子配置は未解決のままである。われわれはこれまで、Agを吸着させた-Ag構造を調べてきたが、本研究では、超構造シリーズを系統的に調べるために他の貴金属原子(Au)吸着誘起による構造を調べた。反射高速陽電子回折法を用いて、Si(111)--(Ag,Au)表面からの回折パターンを測定した。得られたパターンは、-Ag表面からのものに非常に似た強度分布をしていることがわかった。このことから、貴金属原子吸着誘起表面は、同一の原子配置をしていると考えられる。詳細な原子配置を決定するために、ロッキング曲線の測定も行った。現在、動力学的回折理論に基づいた強度解析を行い、3次元的な原子配置の決定を行っている。
橋本 美絵; 深谷 有喜; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
Surface Science, 601(22), p.5192 - 5194, 2007/11
被引用回数:6 パーセンタイル:30.62(Chemistry, Physical)Si(111)41-In表面超構造は、さまざまな表面解析方法で研究が行われ、擬1次元金属鎖であることが確認されている。また、このSi(111)41-In表面を室温から冷却すると、120K程度で8'2'構造へと相転移することが知られている。この相転移については、低温相の持つ2超周期及び低温で見られる金属バンドピークが高束縛エネルギー側へシフトしていることから、Peierls型の金属-絶縁体転移、すなわちCDW転移が示唆された。しかし、実験手法によって結論も異なるため、低温における8'2'構造への相転移のメカニズムについてはまだ解明されてないこともあり、興味深い表面である。これまで原子構造や電子状態については注目されてきたが、有限温度による熱的揺らぎについてはあまり考慮されていない。本研究では、反射高速陽電子回折を用いてロッキング曲線を測定し、動力学的回折理論に基づく強度解析から、低温と室温におけるIn/Si(111)表面構造について調べた。