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匂坂 明人; 大道 博行
no journal, ,
超短パルス高強度レーザーと物質との相互作用により、高エネルギーのイオンや電子,硬X線,高次高調波,テラヘルツ(THz)波などがほぼ同時に発生することはよく知られている。ただし、それぞれのビームを同時に発生させ利用に供するためには、両者を同時にモニターし、目的に応じた発生の最適化を目指した研究が必要である。複数のビームを用いてポンプ・プローブ等へ応用することが筆者等により提案されている。日本原子力研究開発機構設置のチタンサファイアレーザー(JLITE-X)を用いて、チタンの薄膜ターゲット(厚さ5m)に照射した。レーザーのパルス幅は100fsであり、集光強度は、ビームウエストで
2
10
W/cm
であった。ターゲット裏面方向に発生する陽子をTOF分析器により測定した。また、レーザー反射方向に発生したTHz波を、ボロメーターにより計測した。そして、ASE成分のメインパルスより先に到達する時間幅を調整し、陽子とTHz波発生の依存性を調べた。最適化を行った結果、ASE成分の時間幅を
0.5nsまで短縮することで、陽子とTHz波が同時に発生していることがわかった。
若谷 一平*; 落合 城仁*; 鵜殿 治彦*; 永野 隆敏*; 山田 洋一; 山本 博之; 江坂 文孝
no journal, ,
-FeSi
単結晶基板上に良質なホモエピタキシャル膜を成長させることを目的とし、
-FeSi
基板上の膜成長初期におけるFeとSiの組成ずれや基板表面処理の成膜への影響について検討した。Siのみ及びFeのみを蒸着した基板表面の原子間力顕微鏡(AFM)像の結果から、Siは粒状に凝集して成長しているのに対し、Feは穴が空いているがほぼ表面全体を覆っていることがわかる。さらに供給比Fe:Si=1:3.3及びFe:Si=1:1.2で同時蒸着成長させた場合は、組成がSiリッチ側にずれると粒状に成長し、Feリッチ側にずれると平坦にはなるが穴が目立ち、供給比が表面状態に大きく影響していることが明らかとなった。
豊川 弘之*; 平出 哲也; 友田 陽*; 石橋 寿啓*; 菅谷 聡*; 鈴木 良一*
no journal, ,
材料の脆化などには格子欠陥や転位,不純物元素などの存在などが大きく関与しているが、それらの影響は十分に理解されていない。これらを解明することは、原子力分野などにおける材料開発にとって、信頼できる材料劣化予測モデルを構築するために重要である。物質に1.02MeV以上の高エネルギー光子を照射すると電子・陽電子対が生成する。MeV領域のレーザーコンプトン線を直径数mmにコリメートし、それを用いて物質深部に針状の陽電子分布を形成する。これを用いて物質深部で陽電子消滅法による分析を行い、格子欠陥や陽電子生成断面積の測定とその可視化が可能となる。本手法は大気中や高温高圧,水素曝露下などの環境下において、材料深部が測定できると期待される。そこで本手法の実証実験を行った。産業技術総合研究所において、直径5mmにコリメートした9.1MeVのレーザーコンプトン
線ビームを、鉄筋を挿入したコンクリートブロックへ照射し、透過像と陽電子生成像をCTで測定し、画像として表示することが可能であることがわかった。また、欠陥を大量に導入した金属サンプルを用いて陽電子Sパラメータ測定を行い、格子欠陥の測定を試みた。
小野田 忍; 大島 武; 岩本 直也; 平尾 敏雄; 児島 一聡*; 河野 勝泰*
no journal, ,
耐放射線性の粒子検出器として期待されている炭化珪素(SiC)ダイオードは、質量の軽い荷電粒子(Minimum Ionizing Particles; MIPs)を検出する目的で開発されてきた。これに対して本研究では、MIPから重イオンといった幅の広い質量を持った荷電粒子を検出するために、6H-SiCダイオードを作製し、その電荷収集効率(Charge Collection Efficiency; CCE)を、AVFサイクロトロンにより加速された数百MeVの高エネルギー重イオンを用いて評価した。6H-SiC pnダイオードに対し、56MeVのN(窒素),75MeVのNe(ネオン),150MeVのAr(アルゴン),322MeVのKr(クリプトン)イオンを照射した。印加電圧が高くなるに従い、波高分析スペクトルのピーク位置は高チャンネル側へシフトし、半値幅が小さくなることがわかった。Arの場合、印加電圧が200Vを越え、空乏層の幅がイオンの飛程よりも長くなると、スペクトルのピーク位置がおよそ590チャンネルに収束した。このように、数MeV/uのエネルギーを持つ重イオンの検出にSiCダイオードを利用できることが明らかとなった。
森 道昭; 水田 好雄*; 近藤 公伯; 西内 満美子; 加道 雅孝; 神門 正城; Pirozhkov, A. S.; 小瀧 秀行; 小倉 浩一; 杉山 博則*; et al.
no journal, ,
原子力機構では、大阪大学と共同でレーザー駆動準単色電子ビームの応用に向け、レーザー及びターゲット条件の最適化を進めている。本講演ではこれに関連し、JLITE-Xレーザーで発生したパルス幅40fs・ピーク出力4.1TWのレーザー光を、f/20(f=625mm)の軸外し放物面鏡でアルゴン及びヘリウムgasjet上に集光することで生じる電子ビームを評価しビームサイズがレーザーパワー・プラズマ密度及びガス種に依存することを初めて明らかにした。また最小のビームサイズが得られているガス種・ガス圧・レーザーピーク出力・ガス圧(アルゴン,0.4MPa,4.1TW)の条件において、再現性80%で9.11.0MeVのこれまでのわれわれの研究成果と比較して安定性の高い準単色電子ビームが得られていることも明らかにした。
佐々木 明; 西原 功修*; 砂原 淳*; 西川 亘*; 小池 文博*; 古河 裕之*
no journal, ,
SnやXeを媒質とするEUV-軟X線領域のプラズマ光源は、次世代半導体リソグラフィ技術への応用のために研究開発が進められ、将来の物性研究のための光源としても注目されている。われわれは、原子物理コード(Hullac)によってプラズマ中に存在するイオンのエネルギー準位と、電子衝突や輻射による電離,励起のレート係数を計算し、次に衝突輻射モデルによってイオンのポピュレーションを求めるが、モデルに取り込む原子状態や発光線を系統的に変化させた収束計算を行って、プラズマの放射スペクトルに寄与の大きい過程を漏れなく取り込むようにする。このようにして求めたプラズマの輻射放出・吸収係数を用い、解析的なモデルを用いた効率の評価や、輻射流体シミュレーションによる動作条件の最適化を行う。本報告では、これまでのEUV光源研究において解析を行ってきたレーザー励起プラズマ光源(LPP)に加えて、レーザーアシスト放電励起光源(LA-DPP)のモデリングについても議論する。放電電流,プラズマの形状などに対して、プラズマの温度,密度の時間変化、及びEUV放射強度の振る舞いを、理論モデル及び1次元シミュレーションにより解析する。
朝岡 秀人; 山崎 竜也; 社本 真一; Filimonov, S.*; 末光 眞希*
no journal, ,
サーファクタントを媒介しSi基板上に格子定数が異なるGeが成長する場合、成長モードが0次元のナノドット成長から、2次元の層状成長に変わる。このような成長形態の変化は、サーファクタントが媒介した表面エネルギーと歪みエネルギーとのトレードオフにより決定される。成長過程のその場測定により、表面構造や成長過程のストレスの遷移を観測し、その成長機構を議論する。
川上 泰典; 寺岡 有殿; 吉越 章隆; Harries, J.
no journal, ,
並進運動エネルギーが0.03eV(ガス吸着条件)から2.3eVまでの酸素分子によるNi(111)表面酸化反応過程について、O1s光電子スペクトルの時間発展を観察し、そのプロファイルに並進運動エネルギーによる明瞭な差異を見いだした。酸素分子線照射(2.3eV)と酸素ガス暴露条件(0.03eV)でのO1s放射光光電子スペクトルの時間発展を比較すると、双方で共通して成分ピーク(吸着サイト)が少なくとも3か所あると推測される。各成分ピーク(吸着サイト)の生成率は酸素被覆率に依存している。特に、531.5eV付近の結合エネルギーに対応する成分ピークの生成に運動エネルギーの影響が大きい。このピークは0.03eVで顕著であることから、物理吸着を経由して形成される吸着サイトであることが示唆される。
岡安 悟; 井口 祐介*; 小野 正雄; 西尾 太一郎*; 真下 茂
no journal, ,
100万Gを超える重力場下では個々の原子に働く重力のポテンシャルエネルギーが原子間結合エネルギーに匹敵する大きさとなるため、固体中でも重い原子の沈降現象が生じるため、重力場方向に組成が連続的に変化した材料を容易に合成することができる。われわれはこの技術を利用して新奇物性を示す物質探索を行っており、メガグラビトロニクス(Mega-gravitronics)と呼んでいる。出発組成でBi:Pb=3:7の均一なBi-Pb合金薄版(相,hcp構造,厚さ0.7mm)を130
Cで1MGの環境下に100時間置き超重力場処理を行った。均一だった組成が変化し4層に分離した。EPMAで組成分析を行うと中の2層が傾斜組成を持つことがわかった。この層はPb欠損のあるhcp構造をとっていると考えられる。それぞれの層の超伝導特性を調べると、どの層でも基本はBiPb合金の超伝導特性を示すが、傾斜組成を持つ2層のうち重力場の強い層では、重力場に平行な方向にのみPb相が見える。この層は重力場処理により(211)相が極めて強い配向性を持って結晶成長していることがわかっており、結晶成長の際に沈降現象で結晶構造からはじき出されたPb原子が微細構造を作ったためと考えられる。
千葉 敦也; 齋藤 勇一; 鳴海 一雅; 山田 圭介; 高橋 康之
no journal, ,
MeV領域のエネルギーを持つ重イオンクラスターと物質との衝突反応機構を解明するため、薄膜を透過したクラスター解離イオンの電荷と薄膜入射時のクラスター構成イオンの空間配置との関係を調べている。今回は、炭素膜(1g/cm
)を透過したC
(3MeV/atom)の解離イオンの発散角と電荷の同時測定を行った。解離イオンの電荷の組合せごとに発散角強度分布から膜内での解離前の励起分布や解離イオンの平均電荷及び散乱断面積を求めてC
の入射配向に対する解離イオンの軌道を計算し、発散角と入射配向の相関を得た。実験で得られた解離イオンの電荷と発散角の関係から電荷の入射配向依存性を調べた結果、入射配向が膜面に対して鋭角なほど膜を透過した解離イオンの平均電荷は大きくなる傾向にあることがわかった。
柳澤 英樹*; 井澤 圭亮*; 松浦 秀治*; 大島 武
no journal, ,
200keV程度の低エネルギー電子線照射による炭化ケイ素(SiC)半導体の物性変化をキャリア濃度の観点から調べた。試料はp型のエピタキシャル膜付6H又は4H-SiCを用い、200keV電子線を510
/cm
まで室温にて照射した。キャリア濃度はHall係数測定により決定した。その結果、4H-SiC, 6H-SiCともに電子線照射量の増加とともにキャリア濃度は減少するが、6H-SiCの方が4H-SiCに比べてキャリア濃度の減少が大きいことが明らかとなった。200keVの電子線照射によって、炭素(C)原子のみがはじき出されることを考えると、今回得られた結果は、Al原子に隣接するC原子が変位する割合は6H-SiCの方が4H-SiCに比べ高いことが推測される。
西野 公三*; 蓑原 伸正*; 松浦 秀治*; 大島 武
no journal, ,
低エネルギー電子線照射による「はじき出し損傷」に起因する炭化ケイ素(SiC)のキャリア濃度減少効果に関して考察を行うため、100keV又は200keVの電子線をAl添加p型六方晶(4H)SiCへ照射し、ホール係数測定によりキャリア濃度を調べた。その結果、100keV電子線照射では、キャリア濃度は温度依存性を含めて未照射のものと差異はないが、200keV電子線照射では、照射量の増加とともにキャリア濃度が減少していくことが見いだされた。SiC中の各原子のはじき出しのしきい値エネルギーを見積もったところ、100keVではSiCのシリコン(Si),炭素(C)ともにしきい値エネルギー以下であり変位は発生しないが、200keVではCのみがはじき出されることが明らかとなった。このことから、100keV電子線照射では原子の変位が発生せずキャリア濃度が変化しなかったが、200keV電子線照射ではC原子のはじき出しによりキャリア濃度が減少したと結論できた。
堀田 和利*; 鎌田 透*; 河田 研治*; 江龍 修*; 大島 武
no journal, ,
炭化ケイ素(SiC)基板の表面加工状態がエピタキシャル成長後の結晶表面に及ぼす影響を明らかにするため、加工状態の異なる2インチn型4H-SiC基板を作製し、これらの基板上にp型の4H-SiCエピタキシャル膜を化学気相法(CVD)により成長させた。エピタキシャル膜成長前後の表面状態を原子間力顕微鏡(AFM)と微分干渉顕微鏡を用いて評価したところ、エピタキシャル膜の表面に基板の加工欠陥が原因で発生したと考えられるキャロット等の特有の欠陥が観察されることが明らかとなった。以上の結果より、エピタキシャル成長前の加工状態はエピタキシャル膜成長後も引き継がれ、加工キズ等はエピタキシャル膜の品質に強い影響を与えると結論できた。
齋藤 政志*; 今泉 充*; 大島 武; 伊藤 慶文*
no journal, ,
宇宙用太陽電池の放射線照射試験法の国際標準化に関する研究の一環として、太陽電池へデフォーカス、又はスキャン法を用いて陽子線を照射し、得られる特性劣化の差異を調べた。これまで太陽電池を通過する陽子線エネルギーである10MeVについて明らかにしており、今回は、太陽電池内で陽子線が停止する50keV及び100keVのエネルギーを用い、フルエンスレート(510
1
10
/cm
/s)及びビーム拡大法(デフォーカス又はスキャン)を変化させ太陽電池の特性劣化を評価した。その結果、今回用いたフルエンスレートの範囲ではレートの違いによる特性劣化の差は見られなかった。また、デフォーカスとスキャンといった照射ビーム拡大法の違いによる特性劣化の差異も観測されなかった。これよりスキャン及びデフォーカスのどちらの方法で照射を行っても太陽電池の特性劣化評価の結果には影響はないことがわかった。
今園 孝志; 鈴木 庸氏; 佐野 一雄*; 小池 雅人
no journal, ,
磁気円二色性測定等では内殻電子を偏光軟X線源で励起しているが、偏光を扱うような実験では励起光の偏光状態に関する情報をあらかじめ取得しておくことは極めて有用である。そのためには偏光素子による偏光測定を行う必要があるが、軟X線領域、特に、磁性元素吸収端近傍(0.7
0.9keV)ではSc/Cr等の多層膜型素子やダイヤモンド等の結晶型素子等の既存の偏光素子は適用領域から外れているために偏光評価を行うことはできない。そこで、当該領域で機能する偏光素子の開発や偏光測定を行うために、回転検光子型の偏光解析装置を開発し、立命館大学SRセンターの軟X線ビームライン(BL-11)に設置した。講演では、装置の仕様の詳細,反射率測定等の性能試験の結果について報告する。
阿久津 恵一*; 原 嘉昭*; 中岡 鑑一郎*; 山本 博之
no journal, ,
-FeSi
の形成過程において、周囲にSiが存在することで発光特性が向上することが知られている。われわれは、
-FeSi
よりSiを多く含む
-FeSi
から共析反応によって得られる
-FeSi
とSiの共析混合物において、これまでに報告のないバルク結晶からの1.5
mにおける明瞭な発光を見いだした。そこで、この試料についてPLスペクトルの温度依存性を測定するとともに、発光強度を向上させる
-FeSi
とSiの存在比の最適化を狙い、原材料のFe:Si比を変化させた試料を作製し、PL特性を評価した。Fe:Si=3:7のPLスペクトルでは1.5
m帯からの明瞭な発光の温度依存性を測定することができたが、ピーク波長の温度依存性の解析から、
-FeSi
からの発光だけではないことが示唆された。またFe:Si=2:8のPLスペクトルでは1.5
m帯からの発光は極端に弱くなり、Siからの発光が支配的となることから、より過剰なSiの存在は
-FeSi
からの発光を妨げることがわかった。
Mao, W.; 若谷 一平*; 山田 洋一; 江坂 文孝; 山本 博之; 社本 真一; 山口 憲司; 鵜殿 治彦*
no journal, ,
-FeSi
単結晶表面上にホモエピタキシャル成長などを行うためには清浄でよく定義された単結晶表面を得る必要がある。本研究では850
Cまで加熱した
-FeSi
単結晶表面について低エネルギー電子線回折(LEED),走査型トンネル顕微鏡(STM)を用い、表面構造の変化について検討を行った。LEEDの結果からいずれの面においても加熱により表面再構成が生じていないことが明らかとなったが、STMの観測からは表面欠陥が多数存在することが確認された。さらに表面組成の変化についてX線光電子分光法や二次イオン質量分析法などの結果を併せて議論する。
豊田 祐司; 西 孝樹; 村上 洋; 菜嶋 茂喜*; 細田 誠*
no journal, ,
タンパク質はテラヘルツ(THz)波領域に原子集団の協同的運動に起因する低周波振動を示し、タンパク質の生体機能に役割を果たすと考えられている。水溶液試料では、水からの背景信号が大きく、タンパク質起因の信号を得ることが困難なために、凍結乾燥試料を対象にTHz分光や中性子非弾性散乱により測定されてきた。しかし、タンパク質は水溶液中で機能を果たすために、水溶液を対象にした測定が必要である。そこで、われわれはタンパク質ミオグロビン逆ミセルを調整し、THz分光を行った。逆ミセル溶液では逆ミセル中に水溶液が存在でき、溶媒はTHz波の吸収が小さい油であるため、タンパク質起因の信号が得られることが期待できる。測定はTHz時間領域分光法を用い、ダブルセル測定装置の開発とともにデータの統計的解析を実施することでデータの信頼性を向上させた。講演では逆ミセルを用いることによりTHz領域で得られたタンパク質の吸収スペクトルが得られることを示すとともに解析結果を議論する。
佐藤 真一郎; 宮本 晴基*; 今泉 充*; 島崎 一紀*; 森岡 千晴*; 河野 勝泰*; 大島 武
no journal, ,
われわれはこれまでに1次元光デバイスシミュレータ(PC1D)を用いたInGaP/GaAs/Ge宇宙用三接合太陽電池の陽子線照射による劣化モデリングを行い、広いエネルギー範囲で電気特性の劣化が再現できることを示した。今回は、電子線照射に対しても同様の手法を用いることで電気特性の劣化を再現でき、放射線の種類,エネルギーによらず本手法が適用可能であることを明らかにした。また、このモデリングでは、ベース層キャリア濃度の減少の程度を示すキャリア枯渇係数及び少数キャリア拡散長の減少の程度を示す損傷係数
を放射線照射劣化の指標とするが、これらの放射線劣化パラメータを非イオン化損失(NIEL: Non-Ionizing Energy Loss)を用いてスケーリングすると、系統的な相関性を持つことがわかった。これは、曝露される放射線ごとの各サブセルの劣化度(
と
)を見積もり、それらを用いて電気特性をシミュレートすれば、実宇宙空間における三接合太陽電池の寿命予測が可能であることを示す。
今泉 充*; 大島 武; Harris, R. D.*; Walters, R. J.*
no journal, ,
InGaP/GaAs/Ge構造3接合太陽電池は宇宙用太陽電池として主流になっているが、今回は、火星,木星などの外惑星探査を想定し、3接合太陽電池の低温・低光強度(LILT)環境条件下における放射線劣化特性を検討した。3接合太陽電池に対して1MeV電子線ないし10MeV陽子線を照射し、出力(電流-電圧)特性の劣化を測定した。照射にはAM0模擬太陽光源を備えた真空チャンバ内で太陽電池の温度を約-130Cに保って行い、電流-電圧特性はこのチャンバ内で所望のフルエンスに到達するごとにその場測定を行った。その結果、室温・通常光強度下における劣化特性と比較すると、低温・低光強度下ではセルの劣化率が大きくなった。また、照射試験終了後約10時間室温にて放置し劣化率を測定すると、室温照射における最終的な劣化率とほぼ一致した。したがって、低温で劣化率が大きいのは、熱による放射線損傷の回復効果が抑制されたことによると考えられる。また、室温放置後の回復が電流:Iscのみに現れている(最大電力:Pmaxの回復は電流の回復による)ことから、この回復は劣化後の電流制限セルであるGaAsミドルセルにて顕著に起こっていることが推察される。