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崔 炳賢; 西田 明美; 川田 学; 塩見 忠彦; Li, Y.
JAEA-Research 2024-001, 206 Pages, 2024/03
原子力発電施設における建物・構築物の地震応答解析においては、我が国では、従来より質点系モデルが用いられてきたが、近年の解析技術の発展により、立体的な建物を3次元的にモデル化し、建物の3次元挙動、建物材料の非線形性、建物及び地盤間の非線形性等を考慮した有限要素法による地震応答解析が実施されるようになってきた。3次元モデルによる有限要素解析(3次元FEM)は、複雑で高度な技術が用いられる一方、汎用性があるために広く利用され、原子力分野以外では構造物のモデル化、材料物性の非線形特性の信頼性を確保するためのガイドラインの策定や技術認定などがなされるようになってきた。原子力分野においては、IAEAにより平成19年(2007年)新潟県中越沖地震における質点系モデル、3次元FEMモデルによる観測記録の再現解析がKARISMAベンチマークプロジェクトとして実施され、複数の解析者の解析結果が報告された。その報告によると、解析者により解析結果にばらつきが大きいということが判明され、解析手法の標準化による解析結果の信頼性の確保が急務となっている。また、原子力発電施設の強非線形領域の現実的な挙動の評価が必要となる建物・構築物・機器のフラジリティ評価においても詳細な3次元挙動把握の必要性が指摘されている。こうした背景を踏まえ、原子炉建屋を対象とした地震応答解析に用いられる3次元FEMモデルの作成及び解析にあたって必要となる一般的・基本的な手法や考え方を取りまとめて標準的解析要領を整備した。これにより原子炉建屋の3次元FEMモデルによる地震応答解析手法の信頼性向上につながることが期待される。本標準的解析要領は、本文、解説、及び解析事例で構成されており、原子炉建屋3次元FEMモデルを用いた地震応答解析の実施手順、推奨事項、留意事項、技術的根拠等が含まれている。また、本標準的解析要領は、最新知見を反映し、適宜改訂する。
遠藤 章
JAEA-Research 2024-002, 90 Pages, 2024/05
本報告書は、光子、中性子、電子、陽電子、陽子、ミューオン、パイ中間子及びヘリウムイオンによる外部被ばくについて、エリアモニタリングに用いられる3つの量である周辺線量当量(10)、最大線量当量
及び周辺線量
と実効線量との関係を包括的に分析した結果を示す。分析のための計算は、PHITS (Particle and Heavy Ion Transport code System)とICRU球を用いて行った。その結果、ICRP Publication 116で対象としている幅広いエネルギー範囲における外部被ばくに対して、
(10)と
は実効線量の評価に大きな差を生じる場合がある一方、
はエリアモニタリングに許容される範囲で実効線量を保守的に評価できることが分かった。すなわち、実効線量を評価するために、
(10)と
には限界があり、より適切な量として
の使用が推奨される。この結論は、多様な被ばく状況における実効線量の評価に
を導入したICRU Report 95の提案を支持するものである。周辺線量
の利用は、医療や学術研究における放射線利用や航空機搭乗時の被ばく等の様々な種類の放射線により被ばくする状況で特に重要であり、放射線防護の対象の拡大に伴う放射線モニタリングの新たなニーズに応えることができる。
望月 陽人; 佐藤 稔紀; 和田 純一*
JAEA-Research 2024-003, 86 Pages, 2024/06
高レベル放射性廃棄物の地層処分において、現状の処分システムで想定されている緩衝材中の上限温度(100C)の緩和に資するための調査研究が国内外で進められている。本研究では、北海道・幌延町の珪質泥岩(稚内層)を事例として、高温条件下における岩盤物性の変化を理解するために、一部100
Cを超える複数の温度条件下での一軸圧縮試験を実施した。同岩石の一軸圧縮強さは加熱温度とともに上昇した。100
C以上で加熱した供試体の一軸圧縮強さは、試験前にデシケータ乾燥した供試体と同程度であった。また、走査型電子顕微鏡による鉱物観察では、先行研究において他の岩石で認められたような空隙構造や鉱物の変質は認められなかった。以上のことから、本研究において確認された加熱温度にともなう珪質泥岩の強度の増加は、加熱にともなう試料の乾燥に由来するものと考えられた。
島田 太郎; 島田 亜佐子; 三輪 一爾*; 鍋倉 修英*; 佐々木 利久*; 高井 静霞; 武田 聖司
JAEA-Research 2024-004, 115 Pages, 2024/06
原子力施設の廃止措置の終了確認について、平成29年に原子力規制委員会の検討チーム会合で提示された「サイト解放の流れ」をベースに、敷地土壌を対象に確認方法を検討し、手順として整理した。はじめに福島第一原子力発電所事故によって放出されフォールアウトとして地表に沈着した放射性核種をバックグラウンド放射能として除外し、敷地内の施設起源の放射能濃度分布を地球統計学的手法クリギングを用いて評価する。そのうえで、地表の浸透能を超えた降雨によって発生する地表流によって土砂が下流へ移動する現象を考慮して、評価した初期の放射能濃度分布が将来変化することを反映した被ばく線量評価方法について、一連の評価手順を示し、線量基準と想定した0.01mSv/yとの比較方法を提案した。さらに、地下の放射能濃度分布評価についても、地下水の影響を受けた場合の評価手順の一例を示した。
青木 和弘; 今井 宏太朗; 瀬下 和芳; 木村 恵; 桐田 史生; 中西 龍二
JAEA-Research 2024-005, 177 Pages, 2024/10
塩ノ平断層は福島・茨城県境付近に位置し、2011年4月11日に発生した福島県浜通りの地震(Mw6.7)によって出現した。一方、その南方延長上の車断層ではこの地震による地表変状は認められなかった。上載層が存在しない場合や断層との切断関係を検討できる鉱物脈・岩脈が見つからない場合の断層の活動性評価について、破砕帯の性状に着目した新たな手法の開発を目的に塩ノ平断層(塩ノ平地点、別当地点)と車断層(水上北地点)の3箇所で地質調査、試錐調査、化学分析、水理・力学試験を実施し、評価すべき物性データの抽出・分析を行った。回転せん断式低速高速摩擦試験機を用い、断層ガウジのすべり速度Vと摩擦係数
との関係を調べた。塩ノ平地点と別当地点の試料では
が
にほとんど依存しない低速域、
が
の増加とともに増加する中速域、
がすべりとともに劇的に低下する高速域に区分された。一方、水上北地点の試料では速度に対する依存性は認められなかった。地下の割れ目に高圧注水を行うことで断層の三次元変位(
m
mm)を測定するSIMFIP法による断層スリップ試験を実施した。塩ノ平地点では断層すべりはクーロン破壊としてモデル化でき、すべり速度に対して摩擦の依存性を示した。一方、水上北地点では断層すべりはクーロン破壊で表現できず、複数の亀裂やすべり面を利用した複雑な応答が確認された。水圧モニタリング孔での水圧応答から、断層部を挟む領域の水理特性をGRFモデル(Barker、1988)により評価し、透水係数、比貯留量、流れ次元などを明らかにした。透水係数および比貯留量は塩ノ平が水上北よりも大きく、流れ次元は塩ノ平が概ね三次元流であり、水上北が二次元フラクショナル流となった。塩ノ平地点と水上北地点のコア試料からせん断面の姿勢やせん断センスなどの断層スリップデータを取得し、多重逆解法による応力解析を行った。破砕帯を形成した運動と応力履歴を分析した結果、塩ノ平地点において5つ、水上北地点において2つの活動ステージが復元された。本研究では断層ガウジの摩擦特性、断層破壊モードや破砕部の水理特性、断層の活動ステージなどで、塩ノ平地点と水上北地点で顕著な違いが確認された。当該断層内での調査地点を増やすだけでなく、他地域の断層への適用を通じて断層活動性評価手法としての信頼性向上を計る必要がある。
曽山 和彦; 林田 洋寿*; 丸山 龍治; 山崎 大; 後藤 惟樹*; 小林 勇輝*; 荒川 翔平*; 山本 有悟*; 須場 健太*; 山村 和也*
JAEA-Research 2024-006, 15 Pages, 2024/10
磁性体中の磁場イメージングを目的として、Wolter I型光学系に多層膜スーパーミラーを適用した中性子磁気顕微鏡の光学設計を行った。拡大率12.5倍の拡大結像光学系について、軌跡シミュレーションコードを用いて、偏極中性子の磁性体試料によるdepolarizationの解析、レプリカ法で作製されるWolterミラーの形状精度が顕微鏡の空間分解能へ与える影響の検討を行った。その結果、マイクロメートルオーダーの空間分解能を得るために必要な形状精度に関する知見を得た。
吉田 一雄; 桧山 美奈*; 玉置 等史
JAEA-Research 2024-007, 24 Pages, 2024/08
再処理施設の過酷事故の一つである高レベル放射性廃液貯槽の冷却機能喪失による蒸発乾固事故では、沸騰により廃液貯槽から発生する硝酸-水混合蒸気とともにルテニウム(Ru)の揮発性の化学種(RuO)が放出される。このためリスク評価の観点からは、Ruの定量的な放出量の評価が重要な課題である。RuO
の発生現象には、廃液の溶媒である硝酸の放射線分解で発生する亜硝酸が沸騰段階でのRuO
の発生を抑制することが実験的に示されている。この現象を解析的に取り扱うには、廃液の当該事故時の硝酸及び亜硝酸を含めた窒素化合物の化学変化の解析が必要となる。廃液貯槽沸騰模擬コード:SHAWEDでは、硝酸-水-FP硝酸塩系での気液平衡の仮定に基づき廃液の温度上昇、硝酸及び水の蒸発量、気泡破裂に伴う飛沫生成量を計算する。現状の解析では、廃液中の亜硝酸濃度等の変化を模擬できない。より現象に即した模擬を可能にするため当該事故時の施設内の化学的な挙動を解析するSCHERNをSHAWEDと結合させ、放射線分解による亜硝酸の生成も考慮した廃液貯槽内の熱流動挙動解析及び化学挙動解析を同時に可能とするよう改良した。本報では、両計算コードを結合した計算の流れ、両者間でのデータの授受を概説し模擬結果の一例を示す。
近藤 悟; 飛田 吉春*; 守田 幸路*; 神山 健司; 山野 秀将; 鈴木 徹*; 田上 浩孝; 曽我部 丞司; 石田 真也
JAEA-Research 2024-008, 235 Pages, 2024/10
日本原子力研究開発機構が開発したSIMMER-III及びSIMMER-IVは、2次元/3次元、多速度場、多成分流体力学モデルを空間・時間依存の核動特性モデルと結合した計算コードであり、液体金属高速炉の炉心崩壊事故の解析に広く利用されている。従来コードに対して次のような高度化したモデルが採用されている。すなわち、安定かつ頑健な流体力学アルゴリズム、最大8までの多速度場モデル、構造材及び多相流幾何形状の取扱いの改善、熱及び質量移行過程の包括的取扱い、高精度の状態方程式、高精度かつ高効率の中性子束計算モデル、崩壊熱モデルなどである。本報告書ではSIMMER-III及びSIMMER-IVのモデル及び解法の詳細を記述する。別途詳細が報告されている個別モデルについてはその概要をまとめる。なお、コードの検証及び妥当性確認についてはすでに報告済みである。
Brear, D. J.*; 近藤 悟; 曽我部 丞司; 飛田 吉春*; 神山 健司
JAEA-Research 2024-009, 134 Pages, 2024/10
SIMMER-III/SIMMER-IVは液体金属高速炉の炉心崩壊事故(CDA)の解析に使用する計算コードである。CDAの事象進展は炉心物質間の熱伝達係数(HTC)により大きく影響される。溶融・固化、蒸発・凝縮といった質量移行現象も熱伝達により支配される。複雑な多相・多成分系においては、一つの流体成分と他の流体又は構造材表面との間での多数の異なるHTCを計算する必要がある。また、多相流の流動様式や構造材の配位に従って異なる伝熱モードを考慮する必要もある。結果として、各計算セルごとに数十のHTCが計算される。本報告書には、SIMMER-III/SIMMER-IVのHTCモデルの役割、選定したHTC相関式とその技術的背景、流動様式の取扱いとHTCの内挿方法、検証及び妥当性確認の成果概要を記載する。
飛田 吉春*; 近藤 悟; 守田 幸路*
JAEA-Research 2024-010, 77 Pages, 2024/10
高速炉の炉心崩壊事故解析コードSIMMER-III及びSIMMER-IVの多相流動・境界面積モデルを開発した。複雑な多成分・多相流のトポロジーを体系的に模擬するため、プール流及びチャンネル流に対する流動様式をモデル化するとともに、流動様式の間の円滑な遷移を可能とした。コードの適用性と柔軟性を拡大するために境界面積対流モデルを導入することにより、各流体の境界面積の輸送と履歴を追跡し、それにより過渡現象をより適切に記述できるようになった。流体粒子の分裂・合体、液滴・気泡の生成等の結果生じる境界面積の時間変化は、境界面積対流方程式のソース項としてモデル化した。SIMMER-III及びSIMMER-IVの多成分系においては成分間の全ての可能な接触モードを考慮し、成分間の熱及び質量移行、運動量交換関数の計算に必要な流体-流体間、流体-構造材間の2成分間接触面積を計算する。本研究で開発した境界面積モデルは高速炉安全解析コードとしては世界初のものであり、コード検証(V&V)プログラムを通じて幅広くテストを行った結果、従来のコードにおける簡易モデルに伴う問題点の多くを解決できることが示された。
飛田 吉春*; 近藤 悟; 鈴木 徹*
JAEA-Research 2024-011, 39 Pages, 2024/10
日本原子力研究開発機構が開発したSIMMER-III及びSIMMER-IVは、2次元及び3次元の多速度場・多成分流体力学モデルを空間・時間依存の核動特性モデルと結合した計算コードであり、液体金属高速炉の炉心崩壊事故の解析に広く利用されている。多速度場の流動解析においては、流体速度場間及び流体・構造壁間の抵抗や摩擦をモデル化した運動量交換関数(MXFと呼ぶ)が必要となり、これにより溶融炉心物質間の相対運動や運動に伴う反応度効果が精度良く模擬される。SIMMER-III及びSIMMER-IVでは最大8の速度場を使用でき、各速度場は他の速度場及び構造材壁と運動量を交換する。多成分・多速度場流体における運動量交換に関する理論的・実験的知見は限られているため、MXFの定式化は定常二相流に関する工学的相関式に基づいて行った。また、プール流及びチャンネル流における多相流流動様式のモデル化においては、適切な内挿手順を採用することにより流動様式の遷移におけるMXFの連続性を維持した。MXFモデルは、多相流境界面積モデルと合わせて、コード検証(V&V)プログラムを通じて幅広くテストを行った結果、従来のコードにおける2速度場の制約や簡易モデルに伴う問題点の多くを解決できることが示された。
相原 純; 植田 祥平; 本田 真樹*; 笠原 清司; 岡本 孝司*
JAEA-Research 2024-012, 98 Pages, 2025/02
Pu燃焼高温ガス炉とは、再処理Puの量を安全に減らすための高温ガス炉である。Pu燃焼高温ガス炉では、PuO-イットリア安定化ジルコニア(PuO
-YSZ)の微小球にZrC層を被覆し、更にSiC-TRISO被覆を施した核拡散抵抗性の高い被覆燃料粒子(CFP)を用いる計画である。ZrC層の役割は酸素ゲッターである。平成26-29年に行われたPu燃焼高温ガス炉研究プロジェクトでは、Puの模擬物質としてCeを用いて模擬CFPが製造され、更に、この模擬CFPがHTTR燃料と同様に黒鉛母材で焼き固められ模擬燃料コンパクトが製造された。本報告では、模擬燃料コンパクト製造までの各段階におけるCeO
-YSZ核及びZrC層の微細構造観察の結果を報告する。
丹羽 正和; 島田 耕史; 末岡 茂; 石原 隆仙; 箱岩 寛晶; 浅森 浩一; 村上 理; 福田 将眞; 小北 康弘; 鏡味 沙耶; et al.
JAEA-Research 2024-013, 65 Pages, 2024/11
本報告書では、高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する研究開発のうち、深地層の科学的研究の一環として実施している地質環境の長期安定性に関する研究について、第4期中長期目標期間(令和4年度令和10年度)における令和5年度に実施した研究開発に係る成果を取りまとめたものである。第4期中長期目標期間における研究の実施にあたっては、地層処分事業における概要・精密調査や国の安全規制に対し研究成果を適時反映できるよう、(1)調査技術の開発・体系化、(2)長期予測・影響評価モデルの開発、(3)年代測定技術の開発の三つの枠組みで研究開発を進めている。本報告書では、それぞれの研究分野に係る科学的・技術的背景を解説するとともに、主な研究成果等について取りまとめた。
永井 崇之; 岡本 芳浩; 柴田 大輔*; 小島 一男*; 長谷川 毅彦*; 佐藤 誠一*; 深谷 茜音*; 畠山 清司*
JAEA-Research 2024-014, 54 Pages, 2025/02
軟X線領域におけるXAFS測定は、X線の透過率が低くなるため、測定試料の表層を対象とした化学状態の評価に適している。本研究では、模擬廃棄物ガラスの凝固した表層とガラス内部の差異を確認することを目的に、ガラス構成元素であるホウ素(B)、酸素(O)、ナトリウム(Na)及びケイ素(Si)のK吸収端と、廃棄物成分のセリウム(Ce)のL吸収端のXANESスペクトルを測定した。その結果、BのK吸収端XANESスペクトルから、凝固したガラス表層でのB-Oの4配位sp
構造(BO
)の割合がガラス内部の切断面と比べて高く、凝固表層の耐水性が向上することが期待される。一方、OのK吸収端XANESスペクトルから、凝固したガラス表層のO存在量がガラス内部の切断面より低く、凝固表層にアルカリ金属元素が集中する可能性が予想された。しかしながら、凝固表層と切断面のNaのK吸収端スペクトルに差は認められず、SiのK吸収端XANESスペクトルも凝固表層とガラス内部で違いはなかった。また、CeのL
吸収端XANESスペクトルから、凝固したガラス表層のCe原子価がガラス内部と比較して酸化していることを確認した。
廣内 淳; 渡邊 正敏*; 林 奈穂; 長久保 梓; 高原 省五
JAEA-Research 2024-015, 114 Pages, 2025/03
原子力事故によって汚染された地域では、事故後の初期及び長期にわたって、居住環境での滞在を通じて放射線を被ばくする。同じ事故シナリオであっても、原子力サイトごとに気象条件や周辺環境が違うため被ばく線量が異なり、防護措置の一つである屋内退避をした場合の被ばく低減効果も異なる。事故初期において屋内退避をした場合に想定される被ばく線量、または想定される被ばく低減効果などの情報は、住民や原子力防災計画を策定する国・自治体にとって重要な情報となる。そこで本報告書では、日本における原子力施設を有するサイトで、過去のシビアアクシデント研究で示された3つのシナリオ、原子力規制委員会で定められている放出シナリオ、東京電力福島第一原子力発電所事故を想定したシナリオの5つの事故シナリオに対して、確率論的事故影響評価コードの一つであるOSCAARを用いて被ばく線量及び屋内退避による被ばく低減効果を評価した。被ばく低減効果はサイト間で約20%の違いが見られ、これは風速のサイト間の違いによることを示した。
吉富 寛; 二川 和郎
JAEA-Research 2024-016, 26 Pages, 2025/02
原子力施設周辺の環境モニタリングにおいては、熱ルミネセンス線量計や蛍光ガラス線量計といった受動形線量計を用いた積算線量計測も行われている。受動形線量計の一種である光刺激ルミネセンス(OSL)線量計は、個人線量モニタリング用途として広く利用され、信頼性の高い測定が行われているものの、環境モニタリング用線量計としては活用されていない。OSL線量計を環境モニタリングに転用できれば、リーダや線量計といった既存の資源を活用することで、安価で信頼性の高い積算線量計測が実施できる可能性がある。酸化アルミニウム(-Al
O
:C)を用いたOSL線量計の環境モニタリングへの適用に際しての課題としては、(1)OSL線量計の信号量から空気吸収線量を評価するための線量評価アルゴリズムが整備されていないこと、(2)環境モニタリング用積算線量計測装置が有すべき性能が規定されているJISZ4346:2017への適合性が評価されていないこと、が挙げられる。そこで、本研究では、モンテカルロ計算により線量評価アルゴリズムを開発するとともに、開発した線量評価アルゴリズムを用いてJISZ4346:2017に基づく試験を実施し、適合性を評価した。その結果、OSL線量計測装置はJISZ4346:2017で規定される性能を有することが確認できた。有効測定範囲は0.1mGy
1Gy、定格エネルギー範囲は30keV
1.25MeV、定格入射角度範囲は0
60
、定格温度範囲は-20
C
40
C、定格湿度範囲は10%
90%である。これらはJISZ4346:2017で規定される最小定格範囲を満たしており、開発したOSL線量計を用いた線量評価システムを用いた線量計測装置は、環境モニタリングに必要な性能を十分に有していることを確認することができた。
坂本 雅洋; 奥村 啓介; 神野 郁夫; 松村 太伊知; 寺島 顕一; Riyana E. S.; 溝上 暢人*; 溝上 伸也*
JAEA-Research 2024-017, 14 Pages, 2025/03
東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所では、2号機から燃料デブリの試験的取り出しを行い、回収物を構外輸送し茨城地区で分析することが計画されている。取り出された燃料デブリの分析結果は、将来的な燃料デブリ管理の各工程(取り出し、収納、移送、保管等)の検討にフィードバックされ、必要な技術開発に活用することが期待されている。試験的取り出しでサンプリングされる燃料デブリは数グラム程度が予定されており、その後、段階的に取り出し規模を拡大させていくことになる。試験的取り出しにおいては、構外輸送に係る関係法令に則って事前に合理的な輸送容器を検討することが必要になる。本報では物質組成や性状が不明瞭な燃料デブリ回収物の安全評価に資するため、少量燃料デブリの構外輸送に向けたA型輸送容器の適用性評価を行った。
根本 義之
JAEA-Research 2024-018, 16 Pages, 2025/03
本研究は、従来のジルコニウム合金製の燃料被覆管の外表面にクロム(Cr)をコーティングし、耐酸化性を向上させたコーティング被覆管の事故時挙動解析に資するために、Crの高温水蒸気中での酸化挙動の水蒸気流量依存性及び温度依存性に関して検討したものである。コーティング被覆管は事故耐性燃料(Accident Tolerant Fuel: ATF)被覆管の一つとして開発が進められているが、重大事故時のコーティング被覆管の挙動解析を高精度で行えるよう計算コード等を整備しておくことは、安全性評価等の観点で重要であり、そのためにはCrの事故条件で想定される温度範囲や流量条件の高温水蒸気中での酸化速度式が必要である。本研究では、熱天秤を用いた高温水蒸気中での酸化試験の結果に基づき、考えられる事故条件を包括する温度範囲、水蒸気流量条件でのCrの酸化速度式を提案した。この結果は、今後の重大事故解析コードSAMPSON等での解析に用いることが可能であり、それによりコーティング被覆管の開発に貢献することが出来ると考えられる。
方野 量太; 阿部 拓海; Cibert, H.*
JAEA-Research 2024-019, 22 Pages, 2025/05
マイナーアクチノイドの核変換を目的とする加速器駆動システム(ADS)は未臨界状態で運転される。ADSの未臨界度管理においては、燃焼反応度の予測が重要であるが、予測精度の検証のためには、特に第一サイクル運転時では燃焼反応度を精度良く測定する必要がある。本検討では、燃焼反応度測定手法としてCurrent-To-Flux(CTF)法に着目し、連続エネルギーモンテカルロ計算コードSERPENT2を用いて固定源燃焼計算を実施し、炉内に配置する核分裂計数管を模したタリーを用いることで、CTF法によるADS通常運転時の燃焼反応度測定のシミュレーションを実施した。シミュレーション結果から測定手法起因の燃焼反応度測定不確かさの推定を行い、燃焼期間に依らず燃焼反応度に対して10%程度のバイアスが生じ、その検出器位置依存性が体系外側で小さいことを明らかにした。