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論文

地衣類が放射性セシウムを長期間蓄積する仕組み

土肥 輝美

ライケン, 21(3), p.29 - 36, 2021/09

本稿では、福島第一原子力発電所事故を受けて地衣類を研究対象とした背景、現在までの取り組みから明らかになった研究成果の概要を紹介する。

論文

Radiocaesium accumulation capacity of epiphytic lichens and adjacent barks collected at the perimeter boundary site of the Fukushima Dai-ichi Nuclear Power Station

土肥 輝美; 大村 嘉人*; 吉村 和也; 佐々木 隆之*; 藤原 健壮; 金井塚 清一*; 中間 茂雄; 飯島 和毅

PLOS ONE (Internet), 16(5), p.e0251828_1 - e0251828_16, 2021/05

 被引用回数:1 パーセンタイル:0(Multidisciplinary Sciences)

We investigated the radiocaesium content of nine epiphytic foliose lichens species and the adjacent barks at the boundary of the FDNPS six years after the accident in 2011. The $$^{137}$$Cs-inventory were determined to compare Cs retentions of lichens and barks under the same growth conditions. The $$^{137}$$Cs -inventory of lichens were respectively 7.9- and 3.8-times greater than the adjacent barks. Furthermore, we examined the Cs distribution within these samples using autoradiography (AR) and on the surfaces with an EPMA. AR results showed strong local spotting and heterogeneous distributions of radioactivity in both the lichen and bark samples, although the intensities were lower in the barks. In addition, radioactivity was distributed more towards the inwards of the lichen samples than the peripheries. This suggests that lichen can retain $$^{137}$$Cs that is chemically immobilized in particulates intracellularly, unlike bark.

論文

文献紹介; 量子化学計算を用いた地衣類における放射性セシウムと他のアルカリ金属の保持機構の推定

大村 嘉人*; 土肥 輝美

ライケン, 21(2), p.27 - 28, 2021/04

地衣類研究会誌上にて、最近刊行された地衣類の科学論文を紹介する。「量子化学計算を用いた地衣類における放射性セシウムと他のアルカリ金属の保持機構の推定」Suno, H., Machida, M., Dohi, T. and Ohmura, Y., Quantum chemical calculation studies toward microscopic understanding of retention mechanism of Cs radioisotopes and other alkali metals in lichens. 2021 Scientific Reports 11: 8228.

論文

Quantum chemical calculation studies toward microscopic understanding of retention mechanism of Cs radioisotopes and other alkali metals in lichens

数納 広哉; 町田 昌彦; 土肥 輝美; 大村 嘉人*

Scientific Reports (Internet), 11(1), p.8228_1 - 8228_13, 2021/04

 被引用回数:1 パーセンタイル:63.19(Multidisciplinary Sciences)

地衣類が葉状体に何年にも渡って放射性セシウム(Cs)を保持する理由を議論するために、気相と水溶液中における地衣類代謝物のCs錯体および他のアルカリ金属カチオン錯体の安定性を評価した。日本の福島でCsを保持しているキウメノキゴケおよびウメノキゴケのような地衣類に含まれる共通の代謝物であるシュウ酸,(+)-ウスニン酸,アトラノリン,レカノール酸,プロトセトラル酸に注目した。量子化学計算を行うことにより、中性条件および脱プロトン化条件での代謝物の気相中錯体化エネルギーおよび水溶液中錯体化自由エネルギーを計算した。結果としてすべての分子においてカチオン錯体化は促進され、あらゆる条件下で優先度はLi$$^+>$$Na$$^+>$$K$$^+>$$Rb$$^+>$$Cs$$^+$$であることがわかり、特別なCs選択性はないがすべてのアルカリカチオンと強く結合することがわかった。代謝物同士を比較すると、髄層にあるレカノール酸とプロトセトラル酸は中性条件で高いアルカリカチオン親和性を示すことが見られる一方で、上皮層にある(+)-ウスニン酸とアトラノリンは脱プロトン化条件で、2つの酸素原子に挟まれたアルカリカチオンを含む安定的な六員環を形成することにより、かなり強い親和性を示すことがわかった。これらの結果が示唆するのは、髄層は生理学的pHを含む広いpH領域ですべてのアルカリカチオンを受け止める一方で、上皮層は金属ストレス増大下での金属イオン侵入を効果的に阻止するということである。このような知見は、細胞組織内への金属カチオン移動阻止等の代謝物の生理学的役割を強調し、地衣類における代謝物によるCsを含むアルカリカチオンの長期保持を説明するものである。

報告書

Status of study of long-term assessment of transport of radioactive contaminants in the environment of Fukushima (FY2018) (Translated document)

長尾 郁弥; 新里 忠史; 佐々木 祥人; 伊藤 聡美; 渡辺 貴善; 土肥 輝美; 中西 貴宏; 佐久間 一幸; 萩原 大樹; 舟木 泰智; et al.

JAEA-Research 2020-007, 249 Pages, 2020/10

JAEA-Research-2020-007.pdf:15.83MB

2011年3月11日に発生した太平洋三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の東北地方太平洋沖地震とそれに伴って発生した津波により、東京電力(現東京電力ホールディングス)福島第一原子力発電所の事故が発生し、その結果、環境中へ大量の放射性物質が放出された。この事故により放出された放射性核種は、その大部分が森林に沈着している。これに対し、面積が広大であり大量の除去土壌などが生じる、多面的な森林の機能が損なわれる可能性があるなどの問題があり、生活圏近傍を除き、汚染された森林の具体的な除染計画はない。そのため、未除染の森林から放射性セシウムが流出し、既に除染された生活圏に流入することで空間線量率が上がってしまうのではないか(外部被ばくに関する懸念)、森林から河川に流出した放射性セシウムが農林水産物に取り込まれることで被ばくするのではないか、規制基準値を超えて出荷できないのではないか(内部被ばくに関する懸念)などの懸念があり、避難住民の帰還や産業再開の妨げとなる可能性があった。日本原子力研究開発機構では、環境中に放出された放射性物質、特に放射性セシウムの移動挙動に関する「長期環境動態研究」を2012年11月より実施している。この目的は、自治体の施策立案を科学的側面から補助する、住民の環境安全に関する不安を低減し、帰還や産業再開を促進するといった点にある。本報告書は、原子力機構が福島県で実施した環境動態研究におけるこれまでの研究成果について取りまとめたものである。

論文

Vertical distribution of $$^{90}$$Sr and $$^{137}$$Cs in soils near the Fukushima Daiichi Nuclear Power Station

佐々木 隆之*; 的場 大輔*; 土肥 輝美; 藤原 健壮; 小林 大志*; 飯島 和毅

Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry, 326(1), p.303 - 314, 2020/10

 被引用回数:1 パーセンタイル:39.17(Chemistry, Analytical)

The radioactivity concentrations for $$^{90}$$Sr and $$^{137}$$Cs in soil samples collected near Fukushima Daiichi Nuclear Power Station were investigated. The depth profile of $$^{137}$$Cs from the surface soil to 20 cm showed a typical decreasing tendency, that is, high radioactivity from the surface down to 5 cm due to the strong sorption of specific minerals. After deposition of $$^{90}$$Sr, $$^{90}$$Sr has migrated to deeper soil layers in the past 5 years compared to $$^{137}$$Cs. This tendency was supported by the results of sequential extraction to identify the predominant sorption species, and by the sorption coefficients determined by batch-wise sorption experiments.

論文

福島県内山域における歩行サーベイによる線量率測定とデータ解析

土肥 輝美; 武藤 琴美; 吉村 和也; 金井塚 清一*; 飯島 和毅

KEK Proceedings 2019-2, p.14 - 19, 2019/11

福島第一原子力発電所(FDNPP)の事故により放射性物質が環境中に放出された。現在の空間線量率を支配しているのは$$^{137}$$Csで、その多くは山地森林に沈着し残存しているが、アクセスの困難さもあって空間線量率の実測値のデータは十分とは言えない。山域において$$^{137}$$Csによる汚染の実態を把握することは、林業・林産物・レクリエーション利用の観点において重要である。本研究では、湿性沈着が優勢とされる主要なプルーム軌跡に着目し、同軌跡上における高太石山および十万山において標高や方位が空間線量率の分布に与える影響を調べるため、歩行サーベイを行った。さらに、歩行サーベイで得られた空間線量率の実測値とデータの解析から、沈着メカニズムの評価を試みた。その結果、高太石山では山域の東側で高く、西側で低い傾向が認められるなど空間線量率の方位依存性が明瞭に示された。さらに山麓付近の標高で空間線量率が高くなっていた。このような特徴から、高太石山ではFDNPPからのプルーム通過による沈着が起きている可能性が新たに見出された。十万山では、空間的に一様な線量率の分布がみられ、高太石山のような方位依存性は認められなかった。十万山の空間線量率の標高特性からは、航空機サーベイと大気拡散シミュレーションから推定された湿性沈着と同様の傾向が示されたことから、湿性沈着の影響を受けた可能性が考えられる。よって、今回の地上計測によって、FDNPP近傍の同一プルーム軌跡上の山域であっても、沈着メカニズムが異なる可能性が示された。

論文

新刊紹介: 腐植物質分析ハンドブック第2版; 標準試料を例にして

土肥 輝美

日本原子力学会誌ATOMO$$Sigma$$, 61(11), P. 31, 2019/11

「腐植物質」と聞くと、「構造が複雑でよく分からないもの」「試料の取扱いや分析が難しそう」などの"とっつきにくさ"をイメージされる方が多いのではないか。けれども、環境中の放射性物質の移行挙動や物質循環の理解を進めようと土壌や堆積物に目を向けると、腐植物質は無視できない存在になる。本書の特徴を一言で表すと、「腐植物質の研究室を訪問し、先生や先輩から分析話を聞いてきたような錯覚を覚える本」である。初版は、日本の代表的な土壌とされる褐色森林土と黒ボク土から調整された日本腐植物質学会公認の標準試料(フミン酸・フルボ酸)を用いて、分析を行う人向けに企画されたガイドブックとして出版されたらしい。この第2版では、土壌由来の物とは構造が異なる水圏環境由来のフルボ酸の標準試料の分析データについても可能な限り追加され、腐植物質に関わる研究のより広範な理解・活性化が願われ改訂されている(「まえがき」より)。内容は、腐植物質の抽出・精製、定量法、分光学的分析、元素分析などの分析種別に項目立てられ、分析法の特徴や長所・短所が端的に記されている。特筆すべきは、試料量の目安や詳細な分析条件だけでなく、「留意点」で読み手が最も知りたい"試料調整や分析時の注意点、データが得られにくくなる要因、その対策"など、恐らく研究室で先生や先輩から分析時(失敗時)に"ちょっとしたコツ"として教わるようなことが書かれている点である。さらに全ての項目で標準試料の測定結果例と解説が記されている点も、初めて腐植物質を分析する人にとって心強い。これから腐植物質の研究に取り組んでみよう、という勇気を与えてくれる1冊になるのではないだろうか。

論文

Electron microscopic analysis of radiocaesium-bearing microparticles in lichens collected within 3 km of the Fukushima Dai-ichi Nuclear Power Plant

土肥 輝美; 田籠 久也; 大村 嘉人*; 藤原 健壮; 金井塚 清一*; 飯島 和毅

Environmental Radiochemical Analysis VI, p.58 - 70, 2019/09

福島第一原子力発電所事故由来の放射性セシウム微粒子(CsMP)の物理化学特性を統計的に調べるには、効率的なCsMPの収集と単離が求められる。本研究では、大気中浮遊粒子を捕捉する性質を持つ地衣類と、電子顕微鏡分析を用いた分析法を確立した。地衣類の過酸化水素による分解と、FE-EPMAの自動粒子解析システムを組み合わせることで、その他多くの鉱物等粒子中からCsMPを効率的に検出することができた。また、単離された粒子の元素組成や放射能は、分解処理の影響を受けていないことが示された。更にFE-EPMAによる二次元元素分析結果から、いくつかの粒子において不均一な元素分布(SnやFe, Crなど)が見られた。このように本法は、粒子の特性傾向を統計的に把握するため、多くの粒子分析を行う際に有効と期待される。

報告書

福島における放射性セシウムの環境動態研究の現状(平成30年度版)

長尾 郁弥; 新里 忠史; 佐々木 祥人; 伊藤 聡美; 渡辺 貴善; 土肥 輝美; 中西 貴宏; 佐久間 一幸; 萩原 大樹; 舟木 泰智; et al.

JAEA-Research 2019-002, 235 Pages, 2019/08

JAEA-Research-2019-002.pdf:21.04MB

2011年3月11日に発生した太平洋三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の東北地方太平洋沖地震とそれに伴って発生した津波により、東京電力福島第一原子力発電所の事故が発生し、その結果、環境中へ大量の放射性物質が放出され、その大部分が森林に沈着している。これに対し、面積が広大であり大量の除去土壌等が生じる、多面的な森林の機能が損なわれる可能性があるなどの問題があり、生活圏近傍を除き、汚染された森林の具体的な除染計画はない。そのため、未除染の森林から放射性セシウムが流出し、既に除染された生活圏に流入することに対する懸念があり、避難住民の帰還や産業再開の妨げとなる可能性があった。原子力機構では、環境中に放出された放射性物質、特に放射性セシウムの移動挙動に関する「長期環境動態研究」を2012年11月より実施している。この目的は、自治体の施策立案を科学的側面から補助する、住民の環境安全に関する不安を低減し、帰還や産業再開を促進するといった点にある。本報告書は、原子力機構が福島県で実施した環境動態研究におけるこれまでの研究成果について取りまとめたものである。

論文

Inner structure and inclusions in radiocesium-bearing microparticles emitted in the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant accident

奥村 大河*; 山口 紀子*; 土肥 輝美; 飯島 和毅; 小暮 敏博*

Microscopy, 68(3), p.234 - 242, 2019/06

 被引用回数:5 パーセンタイル:70.99(Microscopy)

2011年に起きた福島第一原子力発電所事故により環境中に放射性Cs含有微粒子(CsMP)が放出された。CsMPは事故時に原子炉内で形成されたため、その内部構造や組成は粒子形成時の炉内環境を反映していると考えられる。そこで本研究では、電子顕微鏡(TEM)を用いてCsMPの内部構造を調べた。その結果、いくつかのCsMPではZnやFe, Csが粒子内に不均一に分布していた。またCsMP内部に含有されたサブミクロンの結晶には2価鉄が含まれていたことから、CsMPがある程度還元的な雰囲気で形成されたことが示唆された。さらにCsMPにホウ素は含まれていないことがわかった。

報告書

環境試料中からの放射性セシウム微粒子の単離; リターへの適用事例

田籠 久也; 土肥 輝美; 石井 康雄; 金井塚 清一*; 藤原 健壮; 飯島 和毅

JAEA-Technology 2019-001, 37 Pages, 2019/03

JAEA-Technology-2019-001.pdf:26.85MB

東京電力ホールディングス福島第一原子力発電所事故由来の放射性セシウム微粒子(CsMP)の空間的分布の把握や、その物理化学特性を統計的に評価するには、環境試料等からの効率的なCsMPの単離が必要となる。本報では、森林生態系のCs循環に影響する可能性のあるリターに着目し、リターからの効率的なCsMPの単離法を開発した。過酸化水素水による有機物分解処理と、電子顕微鏡学的手法を組み合わせることによって、多くの土壌鉱物粒子を含むリター中からCsMPを短時間(1粒子あたり3日)で単離することができた。この単離法は、林床のリターのみならず、生木の樹皮や葉などの植物試料をはじめ、その他の有機物試料への適用も期待される。

論文

Dissolution behaviour of radiocaesium-bearing microparticles released from the Fukushima nuclear plant

奥村 大河*; 山口 紀子*; 土肥 輝美; 飯島 和毅; 小暮 敏博*

Scientific Reports (Internet), 9(1), p.3520_1 - 3520_9, 2019/03

 被引用回数:22 パーセンタイル:90.33(Multidisciplinary Sciences)

福島第一原子力発電所事故により放出された放射性Csの一部は、珪酸塩ガラスを主体とする微粒子(CsMP)に含まれて飛散した。そこで我々は環境中から採取したCsMPの純水及び人工海水での溶解実験を行い、CsMPの溶解挙動や環境中での寿命を推定した。その結果、純水(ただしpHはおよそ5.5)ではCsMPの半径が0.011$$mu$$m/yの速度で減少するのに対し、海水中では0.130$$mu$$m/yであった。海水中での速い溶解速度はpHの違いによるものと考えられる。さらに純水での溶解実験前後のCsMPを電子顕微鏡により分析すると、サイズが小さくなり、形態も変化していた。一方、海水中で溶解されたCsMPの場合は、鉄とマグネシウムに富む板状の二次鉱物が表面を覆っていた。

論文

Loss of radioactivity in radiocesium-bearing microparticles emitted from the Fukushima Dai-ichi Nuclear Power Plant by heating

奥村 大河*; 山口 紀子*; 土肥 輝美; 飯島 和毅; 小暮 敏博*

Scientific Reports (Internet), 8, p.9707_1 - 9707_8, 2018/06

 被引用回数:8 パーセンタイル:47.43(Multidisciplinary Sciences)

主にケイ酸塩ガラスから成る放射性セシウム含有粒子(CsP)は、福島第一原子力発電所事故により放出された放射性セシウムの一形態である。廃棄物含有CsPの焼却時における化学特性影響を確認するため、本研究では加熱によるCsPの挙動を調べた。その結果、600$$^{circ}$$C以上で、昇温するごとにCsPの放射能は減少し、1000$$^{circ}$$Cに達した時にはほぼ放射能が消失したことを確認した。CsPの大きさや球状形態は加熱前後で変化はなかったが、もともと微粒子に含まれていた放射性セシウムのほか、カリウム, 塩素も消失していた。また、CsPを土壌中に混ぜて加熱した場合、CsPから脱離した放射性セシウムは周囲の土壌粒子に吸着されることが分かった。これらの結果から、廃棄物に含まれるCsPの放射能は、加熱昇温により消失する可能性が考えられる。

報告書

福島における放射性セシウムの環境動態研究の現状; 根拠となる科学的知見の明示をより意識した情報発信の一環として

鶴田 忠彦; 新里 忠史; 中西 貴宏; 土肥 輝美; 中間 茂雄; 舟木 泰智; 御園生 敏治; 大山 卓也; 操上 広志; 林 誠二*; et al.

JAEA-Review 2017-018, 86 Pages, 2017/10

JAEA-Review-2017-018.pdf:17.58MB

2011年3月11日の東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故以降、福島環境安全センターでは、福島の環境回復に向けた取組みとして、事故により環境中に放出された放射性物質のうち特に放射性セシウムの分布状況を評価し将来予測を行うとともに、森林から河川水系を経て海洋に至る環境や我々の生活圏での放射性セシウムの移動状況に係る調査研究「環境動態研究」に取り組んでいる。この度、最新の成果をとりまとめるとともに他機関の関連する最新の成果も参照しまとめたことから、研究成果報告書類として報告する。なお、本成果は、外部への情報発信の一つである福島部門ウェブサイトにおけるQAページを、根拠情報となる科学的知見を含め「根拠に基づく情報発信」として更新するにあたり、コンテンツとして活用されるものである。

論文

Fate of radiocesium in freshwater aquatic plants and algae in the vicinity of the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant

佐々木 祥人; 舟木 泰智; 伊利 沙汀; 土肥 輝美; 萩原 大樹

Limnology, 17(2), p.111 - 116, 2016/04

AA2015-0204.pdf:3.47MB

 被引用回数:7 パーセンタイル:39(Limnology)

福島第一原子力発電所周辺の河川(1地点)およびため池(4地点)に生育していた水草(5種)および藻類(3属)への放射性セシウムの移行挙動を調べた。堆積物-植物移行係数[($$^{137}$$Cs Bq/kg-dry weight plant)$$times$$( $$^{137}$$Cs Bq/kg-dry weight sediment)$$^{-1}$$]は、水草では河川に生育していたエビモが5.55と最も高く、ため池から採取したヒルムシロが3.34$$times$$10$$^{-2}$$と最も低く、同属の水草でも違いがあることが示された。糸状藻(${it Spirogyra}$ sp.)およびシアノバクテリアの水-植物移行係数[($$^{137}$$Cs Bq/kg-dry weight plant) $$times$$ ($$^{137}$$Cs Bq/L water)-1]は、それぞれ2.39$$times$$10$$^{3}$$、1.26$$times$$10$$^{3}$$であることが示された。採取水中におけるシアノバクテリア画分のみの$$^{137}$$Cs濃度は、4.87$$times$$10$$^{-1}$$Bq/Lであり、シアノバクテリアが生息していた水中のセシウム濃度と同オーダーであり、シアノバクテリアへの顕著な放射性セシウムの濃集は確認されなかった。

論文

Radiocaesium activity concentrations in parmelioid lichens within a 60 km radius of the Fukushima Dai-ichi Nuclear Power Plant

土肥 輝美; 大村 嘉人*; 柏谷 博之*; 藤原 健壮; 坂本 義昭; 飯島 和毅

Journal of Environmental Radioactivity, 146, p.125 - 133, 2015/08

 被引用回数:13 パーセンタイル:48.04(Environmental Sciences)

東京電力福島第一原子力発電所(FDNPP)事故から約2年後に福島県内で採取した地衣類ウメノキゴケ類の放射性セシウム($$^{134}$$Csと$$^{137}$$Cs)濃度を測定した。これらの地衣類は、FDNPPから60km圏内16地点で採取したもので、9種類44試料である。これらの地衣類試料から、$$^{134}$$Cs濃度で4.6から1000kBq kg$$^{-1}$$, $$^{137}$$Cs濃度で7.6から1740kBq kg$$^{-1}$$が検出された。地衣類試料のうち主要な2種である、${it Flavoparmelia caperata}$${it Parmotrema clavuliferum}$では、地衣類中の$$^{137}$$Cs濃度と採取地点の$$^{137}$$Cs土壌沈着量の関係に強い正相関が示された。したがって、${it Flavoparmelia caperata}$${it Parmotrema clavuliferum}$は、福島県内で放射性セシウム降下物のbiomonitoring種として活用できる可能性が高い地衣類種であると考えられる。

論文

$$^{137}$$Cs concentrations in foliose lichens within Tsukuba-city as a reflection of radioactive fallout from the Fukushima Dai-ichi Nuclear Power Plant accident

大村 嘉人*; 松倉 君予*; 阿部 淳一*; 保坂 健太郎*; 玉置 雅紀*; 土肥 輝美; 柿嶌 眞*; Seaward, M. R. D.*

Journal of Environmental Radioactivity, 141, p.38 - 43, 2015/03

 被引用回数:8 パーセンタイル:31.98(Environmental Sciences)

2013年8月に採取した葉状地衣類10種類の放射性セシウム濃度($$^{137}$$Cs)の範囲は1.7-35kBq/kgであった。2つの優占種、Dirinaria applanataとPhyscia orientalisにおいて、それらの$$^{137}$$Cs濃度と試料採取地点の空間線量率との関係を調べた。P. orientalisの$$^{137}$$Cs濃度は福島原子力発電所事故から約1年後に測定したもので、試料採取地点の空間線量率との間に良好な相関関係がみられた(r$$^{2}$$=0.80)。さらに、事故から2年経過した試料採取地点の空間線量率との間にも相関関係がみられた(r$$^{2}$$=0.65)ことから、時間経過後も継続して大気中の放射性降下物レベルを反映するバイオモニターとしての有用性を示すといえる。対照的に、Dirinaria applanataの場合は、それらの試料採取地点の空間線量率との相関関係はみられなかった。

論文

福島第一原子力発電所事故と地衣類を用いた放射性セシウム調査の概要

土肥 輝美; 大村 嘉人*; 柏谷 博之*; 藤原 健壮; 坂本 義昭; 飯島 和毅

ライケン, 18(1), p.11 - 13, 2014/12

2011年3月に東京電力福島第一原子力発電所事故(以下、「事故」)が発生し、大量の放射性物質が環境中に放出された。放射性降下物のモニタリングにおける地衣類の有用性は世界的に知られているにも関わらず、日本ではその有用性についての認知度が低く、地衣類の専門家も少ないために、本格的な調査はなかなか着手されなかった。筆者らは、福島第一原子力発電所周辺(半径約60km圏内)に生育する地衣類を対象として、事故後の放射性Cs汚染状況を把握するための調査研究を日本原子力研究開発機構と国立科学博物館との共同研究として2012年12月より開始した。本解説では、地衣類の種類や地点など、調査の概要について紹介する。

論文

地層処分事業等の国内動向; 研究施設等廃棄物の埋設処分

土肥 輝美

原子力年鑑2014, p.138 - 139, 2013/10

研究施設等廃棄物の埋設事業の概要、事業への取組状況等について紹介した。

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