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安藤 麻里子; 小嵐 淳; 都築 克紀; 竹内 絵里奈; 西村 周作; 武藤 琴美*; 松永 武*
Journal of Environmental Radioactivity, 238-239, p.106725_1 - 106725_8, 2021/11
被引用回数:3 パーセンタイル:14.57(Environmental Sciences)福島第一原子力発電所事故により周辺の森林域はCsで汚染された。複雑な山地地形におけるCs沈着量の空間分布を明らかにするために、小河川集水域全域において一定間隔で土壌試料を採取した。土壌試料は2013年夏に42地点、2015年春に6地点において、有機物層と鉱物土壌層に分けて採取した。2013年のCs蓄積量は高度と斜面方位に関連した大きな空間変動を示した。有機物層のCs残留率は6%から82%と場所により大きく変動し、有機物層の量及び高度と正の相関を示した。しかし、有機物層のCs残留率が55%以上であった地点においても、2015年には20%以下に低下しており、沈着から4年後までに多くが鉱物土壌層に移行し、粘土鉱物と結合することで移動性が低下していることが明らかになった。本研究ではまた、Cs蓄積量と同じ地点で測定した空間線量率を比較し、正の直線関係を得た。この関係式と前報において同じ集水域で測定した3,797点の空間線量率のデータを用いて、全集水域のCs沈着量を推定した。
武藤 琴美; 安藤 麻里子; 松永 武*; 小嵐 淳
Journal of Environmental Radioactivity, 208-209, p.106040_1 - 106040_10, 2019/11
被引用回数:14 パーセンタイル:46.43(Environmental Sciences)福島第一原子力発電所事故により森林に沈着した放射性Csによる長期的な放射線のリスクを評価するためには、森林の表層土壌における放射性Csの挙動を明らかにすることが重要である。本研究では、事故後4.4年間で5回、福島県内の植生の異なる森林5地点において放射性Csの鉛直分布の調査を行い、モデル計算の結果との比較を行った。また、欧州の森林における文献値と比較を行い、日本の森林における有機物層と表層土壌における放射性Csの移行特性を考察した。調査の結果、有機物層から鉱物土壌へのCs移行は欧州よりも早く、日本の森林ではCsの移動度や生物利用性が急速に抑制されることが示唆された。鉱物土壌中のCs拡散係数は0.042-0.55cmyと推定され、日本と欧州で同程度であった。これらのパラメータを用いた予測計算では事故から10年後ではCsは主に表層鉱物土壌に分布していることが示され、森林に沈着した放射性Csは表層土壌に長期的に保持されることが示唆された。
小嵐 淳; 西村 周作; 安藤 麻里子; 武藤 琴美; 松永 武*
Scientific Reports (Internet), 9, p.7034_1 - 7034_10, 2019/05
被引用回数:32 パーセンタイル:75.87(Multidisciplinary Sciences)本研究では、福島原子力発電所(福島原発)事故によって陸域生態系にもたらされたCsの表層土壌における保持メカニズムを解明することを目的として、異なる陸域生態系における表層土壌中のCsの保持状態を、土壌鉱物及び土壌有機物との相互作用に着目して調べた。その結果、森林や果樹園の土壌では、事故から3.5カ月の時点で多くのCsが土壌鉱物を主体とする土壌フラクションではなく粒子状有機物を主体とする土壌フラクションに存在していること、4年後においてもその存在割合は維持されていることが明らかになった。
小嵐 淳; 西村 周作; 安藤 麻里子; 松永 武*; 佐藤 努*; 長尾 誠也*
Chemosphere, 205, p.147 - 155, 2018/08
被引用回数:21 パーセンタイル:56.27(Environmental Sciences)福島原子力発電所事故の長期的な影響を評価するためには、土壌に沈着した放射性セシウムの挙動の理解が重要であるが、土壌の団粒構造が放射性セシウムの移動性や生物利用性に及ぼす影響は未解明である。本研究では、福島原子力発電所事故の影響を受けた農耕地及び森林の表層土壌を対象に、土壌の団粒化と放射性セシウムの団粒サイズ間における分布や抽出性を調べた。その結果、農耕地土壌では団粒の発達が乏しく、セシウムの多くは粘土サイズの土壌粒子に強く固定されているが、森林土壌では団粒が発達し、大きな団粒に比較的抽出されやすい状態で保持されているセシウムの割合が多いことが明らかになった。
武藤 琴美; 安藤 麻里子; 小嵐 淳; 竹内 絵里奈; 西村 周作; 都築 克紀; 松永 武*
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry, 314(1), p.403 - 411, 2017/10
被引用回数:16 パーセンタイル:81.29(Chemistry, Analytical)福島第一原子力発電所事故により森林に沈着した放射性Csが河川を通して流出することで、下流の市街地や農地への汚染が長期間続くことが懸念されている。本研究では、森林から河川への放射性Cs流出挙動を評価するために、落葉広葉樹林を集水域とする小河川に放射性Csの連続捕集装置を設置し、事故の半年後から4年間調査を行った。河川中の放射性Csを懸濁態と溶存態に分けて採取し、懸濁態は粒径ごとに分画した。また、河川中の懸濁物と土壌について、炭素及び窒素の量と同位体比を分析し比較した。その結果、放射性Csの主要な流出形態は粒径75m以下の懸濁態であり、分解の進んだリターと鉱物土壌を起源としていることが明らかになった。また、リター分解を起源とする溶存態Csの流出量も無視できないことが分かった。リターから土壌への放射性Csの移行が進んでいることから、今後、溶存態による河川流出は数年で減少する一方、懸濁態による河川流出は長期間継続することが示唆された。
小嵐 淳; 安藤 麻里子; 天野 光*; 松永 武
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry, 311(1), p.473 - 481, 2017/01
被引用回数:17 パーセンタイル:82.93(Chemistry, Analytical)核実験由来のCsとCの、2001年における日本の森林土壌中の深さ分布を調査した。その結果、Csの多くは沈着から38年後もなお鉱物土壌層表層に存在していた。一方で、土壌特性の変化するA層とB層の境界層におけるCsの特異的な蓄積を発見した。この蓄積から、Csが年間0.20%の割合で有機物が豊富なA層を経由して下方へ移行したこと、及び層位境界層がCsの移行を妨げるバリアとして働くことを見出した。炭素14はCsと同様の深さ分布を示したことから、両核種が数十年の時間スケールで、同様の物理的経路を経て土壌中を移行したことが示唆された。
小嵐 淳; 安藤 麻里子; 松永 武; 眞田 幸尚
Scientific Reports (Internet), 6, p.38591_1 - 38591_11, 2016/12
被引用回数:48 パーセンタイル:80.58(Multidisciplinary Sciences)森林表面の有機層による放射性セシウムの保持が森林生態系内の放射性セシウムの動態において重要な役割を果たすが、日本の森林生態系において森林タイプが有機層による放射性セシウムの保持能力やそのプロセスに及ぼす影響はよくわかっていない。本研究では、福島原子力発電所事故の影響を受けた福島市内のタイプの異なる森林において、有機層が放射性セシウムをどれだけ、どのように保持しているかを調査した。その結果、落葉広葉樹林と比較して、針葉樹林の有機層によるセシウム保持能力が高く、その保持能力は樹木フェノロジーとリター分解プロセスの違いによって説明できることが示された。
松永 武; 中西 貴宏; 安藤 麻里子; 竹内 絵里奈; 武藤 琴美; 都築 克紀; 西村 周作; 小嵐 淳; 乙坂 重嘉; 佐藤 努*; et al.
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry, 310(2), p.679 - 693, 2016/11
被引用回数:6 パーセンタイル:46.73(Chemistry, Analytical)福島第一原子力発電所事故に由来する放射性Csの森林集水域からの流出挙動とその変動要因を解明するために、渓流水中の懸濁態放射性Csの流出量を2012年から2年間連続して測定した。懸濁態Csの流出は、流域からの懸濁物質の流出と密接な関係があり、降雨量の多い8-9月に増加した。Csは懸濁物質中の粘土鉱物に強く結びついており、流下中に水中に溶存しないことが、鉱物同定及び抽出実験の結果より示唆された。また、単位懸濁物質量あたりのCs濃度は、2012年から徐々に低下していた。これらの結果より、懸濁態Csの流出量は、降雨量に関連した懸濁物質量の変動と、懸濁物質中のCs濃度の経年変化の両方の影響を受けて変化していることが明らかとなった。
武藤 琴美; 安藤 麻里子; 竹内 絵里奈; 西村 周作; 小嵐 淳; 都築 克紀; 中西 貴宏; 松永 武
KEK Proceedings 2015-4, p.252 - 257, 2015/11
福島第一原子力発電所事故により大気中に放出された放射性Csの多くは森林に沈着し、現在も残留している。本研究では森林から河川への放射性Csの流出挙動を評価するために、北茨城市の森林を集水域とする小河川に放射性Csの連続捕集装置を設置し調査を行った。放射性Csは粒径の異なる懸濁態と溶存態Csに分け、それぞれについて流出挙動を評価した。調査期間は2012年12月から2014年11月である。懸濁物はカートリッジフィルターを用いて捕集し、粒径毎に4種類(2000m以上, 500-2000m, 75-500m, 75m以下)に篩別した。溶存態はCs吸着剤を充填したカラムに通水させ捕集した。フィルター及びカラムの交換は約1ヶ月毎に行い、各試料は乾燥させてGe半導体検出器で線測定を行った。調査の結果、流量の増加が懸濁態・溶存態Csの流出量に影響を与えることが明らかになった。粒径別に見ると、懸濁態全体に対する流出量の割合は粒径75m以下のものが最大だったが、流量が特に多い期間に粒径75-2000mの比較的大きな粒子が増加した。流出量全体では懸濁態の割合が多いが、冬期は溶存態の割合が増加する傾向が見られた。
安藤 麻里子; 小嵐 淳; 竹内 絵里奈; 都築 克紀; 西村 周作; 松永 武
Journal of Environmental Radioactivity, 147, p.1 - 7, 2015/09
被引用回数:27 パーセンタイル:60.51(Environmental Sciences)福島第一原子力発電所事故起源の放射性Csにより汚染を受けた山間地の小河川集水域を対象として、空間線量率分布を詳細に測定した。GPS連動型放射性自動計測システムKURAMA-IIを用いた連続測定及びNaIサーベイメーターを用いた一定間隔毎の測定により、山間地での空間線量率と地形との関係を明らかにした。2013年8-9月に測定した空間線量率は、標高の高い東向きの斜面で高く、谷と西向きの斜面で低い値を示した。また、狭い範囲であっても斜面方位の違いにより空間線量率が大きく異なっており、空間線量率分布が地形と密接に関連していることが明らかとなった。山間部における線量の評価や放射能の蓄積量の推定においては、その空間分布を考慮することが重要であることが示された。
松永 武; 都築 克紀; 柳瀬 信之; Kritsananuwat, R.*; 半澤 有希子; 長縄 弘親
Journal of Nuclear Science and Technology, 52(4), p.514 - 529, 2015/04
被引用回数:5 パーセンタイル:37.76(Nuclear Science & Technology)降雨時の溶存希土類元素の河川水中の様態をTRU元素のアナログとして研究した。溶存希土類元素(REE)濃度は、降雨時の河川流量の増減と連動して増減した。このREE濃度の変動は、溶存有機物中の腐植物質の特性である紫外吸光度、蛍光強度の変動と強く関係していた。そして、コロイド態で存在するREEの中の10kから30k Daltonの成分が、降雨時のREE濃度の増加に最も寄与していることが明らかとなった。さらに、溶存REE濃度の増加は、有機物濃度の規格化紫外吸光度(SUVA)と相関が高い。SUVAは溶存腐植物質の芳香族性を代表するので、本研究で見いだされた降雨時のREE濃度の増加現象には、官能基を多く有することを意味する溶存腐植物質の芳香族性が根底にあることが示唆された。
松永 武; 中西 貴宏; 安藤 麻里子; 竹内 絵里奈; 都築 克紀; 西村 周作; 小嵐 淳; 乙坂 重嘉; 佐藤 努*; 長尾 誠也*
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry, 303(2), p.1291 - 1295, 2015/02
被引用回数:3 パーセンタイル:24.46(Chemistry, Analytical)河川中の懸濁物に含まれる放射性核種を研究する目的で、従来にない簡便な受動型の捕集方法を開発し、実証した。これは複数のカートリッジフィルターを備えた大型ホルダーを用いるものである。河川水は河床勾配を利用して、上流からホースによりフィルタホルダーに自然に導く。この方法により、長期にわたる無人捕集が可能になる。従来法に比較して大きな量(数十グラム以上)を捕集することになるので、通例の放射性核種濃度分析に加えて、懸濁物の特性分析も行うことができる長所を持つ。この手法は、懸濁物に含まれる化学物質の研究にも利用できるであろう。
中西 貴宏; 松永 武; 小嵐 淳; 安藤 麻里子
Journal of Environmental Radioactivity, 128, p.9 - 14, 2014/02
被引用回数:93 パーセンタイル:91.62(Environmental Sciences)福島第一原子力発電所事故に伴って森林地表面に沈着したCsは、長期にわたって潜在的移動性の高いCsの主要な起源となる。森林土壌におけるCsの移動性を評価するため、ライシメーター法によって浸透水とともに鉛直移動するCsを調査した。本調査は、広葉樹林土壌において事故後2か月後から2年間実施した。その結果、落葉落枝層のCsの大部分が事故後1年以内に土壌鉱物層へ移動したことが示された。また、Csの移動は表層土壌に阻害され、年間に10cm以深まで浸透するCsは沈着量のわずか0.1%であった。さらに、鉛直分布からは検出不可能なわずかなCsの移動を捉えることができた。現在及び将来に渡って大部分のCsは表層土壌に保持されるが、微量とはいえ無視できない量の生物利用性Csが土壌中に存在することが示された。
松永 武; 都築 克紀; 柳瀬 信之; Kritsananuwat, R.*; 上野 隆; 半澤 有希子; 長縄 弘親
Limnology, 15(1), p.13 - 25, 2014/01
被引用回数:10 パーセンタイル:32.73(Limnology)久慈川水系の山地小河川における重金属の降雨時流出を研究した。河川水中懸濁粒子に関して地殻組成で規格化した重金属元素の富加(enrichment)の傾向は、同水系の末端で採取した大気降下物と類似していた。特に、Ni, Cu, Pb, Sb, and Cdについて高い富加(enrichment)が見いだされた。降雨時の短時間間隔観測の結果、その富加(enrichment)の程度が、流量の増大とともに小さくなることがわかった。河川水中懸濁粒子の特性を考慮すると、この富加(enrichment)の変動は、大気降下物の影響をより強く受けている表層土壌粒子から、この影響の弱い岩石由来の風化物粒子への交替により起きていることが示唆される。以上から、河川流出に関する大気降下物由来並びに岩石由来重金属の相対的重要度を評価するには、河川水中懸濁粒子を構成する材料の時間的な交替と、溶存態の関与を考慮する必要がある。
松永 武; 小嵐 淳; 安藤 麻里子; 長尾 誠也*; 佐藤 努*; 永井 晴康
Science of the Total Environment, 447, p.301 - 314, 2013/03
被引用回数:119 パーセンタイル:93.91(Environmental Sciences)福島事故由来の土壌中放射性セシウムの分布に及ぼす降雨の影響を研究した。福島市の15地点で放射性セシウムの蓄積量・深度分布を、梅雨時期の降雨をはさむ、事故後約4.5か月後と事故後約3か月で比較した結果、ほとんど変動がなかった。これは、事故後の初めての梅雨時期降雨は研究地域の放射性セシウムの分布にほとんど影響しなかったことを意味している。同時に、福島事故由来の土壌中放射性セシウムの高い不動性が示唆される。その理由を土壌の粒径分布,鉱物分析,放射性セシウムの選択抽出分析を加えて論じた。水・酢酸アンモニウムで抽出される交換性の放射性セシウムの比率は最大で10%程度に限られ、上記の不動性を支持している。一方、粘土鉱物含量と不動性との間に直接の相関は認められなかった。また、土壌粒子の細かい成分が多いほど、そして土壌pHが酸性より中性であるほど交換性放射性セシウムの比率が増える特徴が見いだされた。すなわち、粘土鉱物の効果が実際の土壌で不明瞭な結果に関して、粒径やpH等の効果を受ける非特定吸着サイトへ吸着の効果により粘土鉱物への吸着現象が目立たなくなっているためという可能性がある。
小嵐 淳; 守屋 耕一*; 安藤 麻里子; 松永 武; 藤田 博喜; 永岡 美佳
Scientific Reports (Internet), 2, p.1005_1 - 1005_5, 2012/12
被引用回数:41 パーセンタイル:69.78(Multidisciplinary Sciences)福島第一原子力発電所事故に伴って放出された放射性セシウムによる環境及び公衆への影響は、森林表層土壌における放射性セシウムの移動性に大きく依存する。われわれは、福島市内の森林表層土壌において、微生物及び非生物的吸着によって保持されている潜在的に移動性の高い放射性セシウムの量を調査した。土壌有機物や粘土粒子が多く、陽イオン交換容量の大きい土壌において、放射性セシウムの硫酸カリウム溶液による高い抽出率が見いだされた。一方、すべての土壌において微生物バイオマスの存在を確認したが、バイオマスを死滅させた後の抽出率の増加は見られなかった。これより、土壌微生物自体が、放射性セシウムを移動性の高い状態で保持することへの寄与は小さいことが明らかになった。
小嵐 淳; 安藤 麻里子; 松永 武; 佐藤 努*; 長尾 誠也*; 永井 晴康
Science of the Total Environment, 431, p.392 - 401, 2012/08
被引用回数:151 パーセンタイル:95.38(Environmental Sciences)福島第一原子力発電所事故に伴って土壌に沈着したCsが今後どのように環境中を移行していくかを予測するためには、Csの土壌中での移動性に影響を及ぼす要因やプロセスを明らかにすることが必要である。われわれは福島市内の2km四方区画内にある土地利用形態の異なる15地点を対象に、土壌及び地表面植生層のCsの深さ分布を調査した。その結果、地表面土壌層におけるCsの残存率は、土地利用形態にかかわらず、単位粘土サイズ粒子量あたりの有機炭素量と高い負の相関関係があることを見いだした。土壌有機物が微細な土壌粒子を覆うことで、粘土鉱物によるCsの強い吸着を阻害するプロセスが、森林土壌におけるCsのより深部への侵入をもたらしている可能性があることを明らかにした。
松永 武; Tkachenko, Y.*
日本原子力学会誌ATOMO, 53(10), p.684 - 688, 2011/10
チェルノブイリ事故・大気圏内核実験影響の関連研究を参照し、河川における放射性核種の移行の特徴をまとめた。福島原子力発電所の損壊により大気中に放出された放射性核種は、地表面の広域汚染をもたらしている。地表面土壌に沈着した放射性核種の一部は河川系に移行する。河川での放射性核種の移行は長期的である一方、降雨時の短期変化も重要であり、さまざまな時間スケールを伴っている。また、放射性核種ごとの挙動の相違も大きい。ドニエプル川水系におけるチェルノブイリ事故起因のCsでは、地表蓄積量の0.1-0.7%/yが河川で移行し、経年的に大きく低下する。これに対し、Srでは2.9-4.3%/yであり、経年的な低下は小さい。遠方への流下挙動は核種ごとに特徴的である。Cs, Puでは多くが浮遊粒子で運ばれ、河川内滞留と移動を繰り返す。Srは希釈を受けながら、遠方下流まで運ばれる。河川の放射性汚染対策として、放射性核種の摂取にかかわる段階での対策が現実的には最も有効であると考えられている。種々の対策の効果を比較するシステムが開発されており、対策のメリット・デメリットを総合的に評価するために有用と考えられる。
松永 武; Hkanson, L.*
JAEA-Conf 2010-003, 143 Pages, 2010/09
日本原子力研究開発機構環境動態研究グループは2009年11月16日20日に、河川・湖沼・沿岸海洋など複数の水圏が複合した生態系における放射性核種動態モデル化のための計算科学的及び実験的研究に関する会合を開いた。これはそのモデル化に関する手法の合理性についての検討を目的としたものである。この会合には、スウェーデンウプサラ大学のホーカンソン教授の出席を得た。また、六ヶ所村の再処理施設と周辺環境の視察、並びに環境科学技術研究所での講演と意見交換も行われた。この会合では以下のことが確認された。(1)モデル構造はモデルの目的にしっかりと一致させたものでなければならない, (2)目的変数観測値の自然環境下での変動を適切なパラメータで定量的に説明すること。さらに、研究目的に応じて複数の異なった手法が合理的にあり得ることも指摘された。これらの議論は、集水域・河川・湖沼・沿岸海洋から構成され、そしてそれらの大気との相互作用も起こる複合した水系生態系における放射性核種動態モデルの統合研究の中で活用される。本レポートは、この会合で述べられた研究内容と講演を、その際の質疑応答を含めてまとめたものである。
松永 武; 長尾 誠也*
Humic Substances Research, 5/6(1), p.19 - 33, 2009/00
チェルノブイリ事故に由来するプルトニウムについて、事故影響を受けたウクライナの土壌環境並びに水環境における挙動をレビューした。チェルノブイリ由来プルトニウムでは、環境に放出された燃料粒子の溶解がその環境中での移動の最初の過程になっている。溶解の後は表面土壌に固着して、浸透能が少ない挙動を示した。化学相分別による研究に基づくと、土壌環境で見いだされた不動性は土壌有機物へのプルトニウムへの親和性にあると考えられる。不動性の性質は、ドニエプル川における河川水によるその運搬においても見いだされた。湖水中では、腐植物質と推定される溶存有機物が溶存態プルトニウムの安定化に寄与していると考えられる。