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論文

Development of a new detector system to evaluate position and activity of plutonium particles in nasal cavities

森下 祐樹; 山本 誠一*; 百瀬 琢麿; 金子 純一*; 根本 典雄

Radiation Protection Dosimetry, 178(4), p.414 - 421, 2018/03

 被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Environmental Sciences)

二酸化プルトニウム(PuO$$_{2}$$)は高速炉に用いるMOX燃料の製造に用いられる。PuO$$_{2}$$を包蔵するグローブボックスに欠陥、例えばグローブやビニールバッグの破損があった場合、プルトニウム(Pu)の空気汚染が生じる可能性がある。もし作業者がPuO$$_{2}$$粒子を吸引した場合肺に沈着し、肺癌を引き起こす可能性がある。鼻スミヤやnose blowがPuO$$_{2}$$の摂取の確認に用いられるが、鼻腔内のPuの定量的な放射能は評価できなかった。また、鼻腔内の直接測定が可能な$$alpha$$線検出器も存在しなかった。そこで我々は作業者の正確な内部被ばく評価のため、鼻腔内の直接測定が可能な鼻モニタの開発を行った。2$$times$$2の角柱ライトガイドを用いて1つの検出器ブロックを構成し、ZnS(Ag)シンチレータを表面に貼りつけ、光検出器には8$$times$$8のSilicon photomultiplierを用いた。開発した鼻モニタの評価のため、実際のPuO$$_{2}$$粒子を鼻モニタで測定した。鼻モニタの5.5MeV$$alpha$$線に対する平均の検出効率(4$$pi$$方向)は左鼻が11.43%で右鼻が11.58%であった。$$gamma$$線と$$beta$$線の影響は無視できる程度であった。Puの放射能を鼻モニタと$$alpha$$線用放射能測定装置で評価した結果、差異は4.0%以内であった。以上の評価結果より、開発した鼻モニタは作業者の内部被ばくの正確な評価に有用であると考える。

論文

Flexible alpha camera for detecting plutonium contamination

森下 祐樹; 山本 誠一*; 井崎 賢二; 金子 純一*; 根本 典雄

Radiation Measurements, 103, p.33 - 38, 2017/08

 被引用回数:15 パーセンタイル:79.81(Nuclear Science & Technology)

核燃料施設では、プルトニウム(Pu)やウランが扱われる。ZnS(Ag)シンチレーション検出器で測定できない狭い場所がPuの汚染源となることがある。例えば、グローブボックスの窓と架台の間の隙間やフランジ、ポートカバーの隙間などである。そこで我々は現場の狭い場所の汚染源の特定が可能なフレキシブルアルファカメラと呼ばれるイメージング検出器の開発をした。検出器の厚みはZnS(Ag)シンチレーション検出器の1/5で、その効率は5.5MeVアルファ線に対し42.7%(4pi)であった。検出下限放射能は0.014Bqであった。4種のPuO$$_{2}$$のサンプルをフレキシブルアルファカメラで測定し、PuO$$_{2}$$粒子を自動で同定することができた。フレキシブルアルファカメラを用いることで、Pu汚染源を早期に検知することができ、汚染拡大の防止につながる。

論文

Positron annihilation lifetime of irradiated polyimide

平出 哲也; 岡 壽崇; 森下 憲雄*; 出崎 亮; 島田 明彦

Materials Science Forum, 733, p.151 - 154, 2013/00

 被引用回数:8 パーセンタイル:94.43(Materials Science, Multidisciplinary)

カプトンで代表されるポリイミドは、極めて耐放射線性が高く、宇宙や放射線施設などの高放射線場で使用されている材料である。陽電子消滅寿命測定は材料分野で広く使われている手法であり、高分子材料の特性において重要な自由体積評価などに、電子と陽電子の三重項結合状態であるオルソーポジトロニウムの寿命が利用されてきた。しかし、カプトン中ではポジトロニウムが形成されないため、この手法が利用されてこなかった。今回われわれは、自由陽電子からの消滅寿命も、高分子の自由体積のような、空隙サイズに依存して変化することを温度依存性から示し、さらに照射効果が明確に観測できることを示すことで、これらの材料にも陽電子消滅寿命測定を利用可能であることを初めて示した。

論文

Capacitance transient study of a bistable deep level in e$$^{-}$$-Irradiated n-type 4H-SiC

Beyer, F. C.*; Hemmingsson, C. G.*; Pedersen, H.*; Henry, A.*; 磯谷 順一*; 森下 憲雄*; 大島 武; Janz$'e$n, E.*

Journal of Physics D; Applied Physics, 45(45), p.455301_1 - 455301_7, 2012/11

 被引用回数:19 パーセンタイル:60.14(Physics, Applied)

A bistable center, named FB center, in electron irradiated 4H-SiC was observed using capacitance transient techniques. In configuration called "$$A$$", the deep level known as EH5 ($$E$$$$_{a}$$ = $$E$$$$_{C}$$ - 1.07 eV) is detected in the deep level transient spectroscopy spectrum, whereas for configuration called "$$B$$", no obvious deep level is observed in the accessible part of the band gap. Isochronal annealing revealed that the transition temperatures to be from $$A$$ to $$B$$ is more than 730K, and for the opposite process from $$B$$ to $$A$$ is about 710 K. The energy needed to conduct the transformations were determined to be $$E$$$$_{A}$$($$A$$ to $$B$$) = (2.1 $$pm$$ 0.1) eV and $$E$$$$_{A}$$($$B$$ to $$A$$) = (2.3 $$pm$$ 0.1) eV, respectively. Since the bistable FB centre is already present after low-energy electron irradiation (200 keV), it is likely related to carbon.

論文

Electrically Detected Magnetic Resonance (EDMR) studies of SiC-SiO$$_{2}$$ interfaces

梅田 享英*; 小杉 良治*; 福田 憲司*; 森下 憲雄*; 大島 武; 江嵜 加奈*; 磯谷 順一*

Materials Science Forum, 717-720, p.427 - 432, 2012/05

 被引用回数:7 パーセンタイル:94.70(Materials Science, Multidisciplinary)

炭化ケイ素(SiC)半導体を用いた金属-酸化膜(SiO$$_{2}$$)-半導体(MOS)界面に存在する欠陥等を電気的検出磁気共鳴(EDMR)法を用いて調べた。SiC-SiO$$_{2}$$界面は、従来のシリコン(Si)-SiO$$_{2}$$界面と異なり炭素(C)等の不純物の存在が考えられるが、50Kでの低温測定を行うことでCダングリングボンドに起因するP$$_{H1}$$と呼ばれる欠陥センターやCダングリングボンドが水素や窒素(N)によって終端されたP$$_{H0}$$センターが観測された。また、MOSデバイスの特性向上を目的にN処理を行った試料では界面付近にNドナーに起因するNhセンターが観測された。このことは、界面にNドナーが導入されることにより界面付近のキャリア(電子)濃度上昇し、その結果、チャンネルの伝導度が高くなることで高品質なMOSデバイスが作製されることを示唆する結果といえる。

論文

Behavior of nitrogen atoms in SiC-SiO$$_{2}$$ interfaces studied by electrically detected magnetic resonance

梅田 享英*; 江嵜 加奈*; 小杉 良治*; 福田 憲司*; 大島 武; 森下 憲雄*; 磯谷 順一*

Applied Physics Letters, 99(14), p.142105_1 - 142105_3, 2011/10

 被引用回数:50 パーセンタイル:85.31(Physics, Applied)

By electrically detected magnetic resonance spectroscopy under low-temperature, the microscopic behavior of nitrogen atoms in the SiC-SiO$$_{2}$$ interface regions of n-channel 4H-Silicon Carbide (SiC) Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistors (MOSFETs) was investigated. As a result, it was found that shallow interface states were eliminated by nitrogen atoms located near the interface. Also, nitrogen atoms showed diffusion into the channel region of the MOSFETs, and acted as shallow donors. These two behaviors enable nitrogen atoms to enhance the channel mobility of electrons in SiC MOSFETs.

論文

Annealing behavior of the EB-centers and M-center in low-energy electron irradiated $$n$$-type 4H-SiC

Beyer, F. C.*; Hemmingsson, C.*; Pedersen, H.*; Henry, A.*; Janz$'e$n, E.*; 磯谷 順一*; 森下 憲雄*; 大島 武

Journal of Applied Physics, 109(10), p.103703_1 - 103703_6, 2011/05

 被引用回数:18 パーセンタイル:58.70(Physics, Applied)

耐放射線性半導体として期待される炭化ケイ素(SiC)の照射欠陥に関する知見を得るため、$$n$$型六方晶(4H)SiCへ200keVの電子線を5$$times$$10$$^{16}$$/cm$$^{2}$$照射した。DLTS(Deep Level Transient Spectroscopy)測定の結果、Mセンターと呼ばれる欠陥が観測された。試料を熱処理することでMセンターの振舞いを調べたところ、Mセンターが消滅する過程で、新たにEBセンターと呼ばれる欠陥が発生することが判明した。EBセンターの増加の振る舞いがMセンターの減少と一致することから、EBセンターはMセンターが熱処理により構造を変化させて新たな欠陥構造になったと結論できた。さらに熱処理温度を上昇させると、700$$^{circ}$$CでEBセンターも消滅することも判明した。使用した電子線のエネルギーがSiC中のシリコン(Si)のはじき出しのしきい値エネルギー以下であることから、今回観察されたMセンター,EBセンターともに炭素(C)が関連する欠陥中心であることが示唆された。

論文

ESR study on radiation-induced radicals in carboxymethyl cellulose aqueous solution

佐伯 誠一; 長澤 尚胤; 廣木 章博; 森下 憲雄; 玉田 正男; 工藤 久明*; 勝村 庸介*

Radiation Physics and Chemistry, 80(2), p.149 - 152, 2011/02

 被引用回数:20 パーセンタイル:80.53(Chemistry, Physical)

多糖類誘導体であるカルボキシメチルセルロース(CMC)は、高濃度水溶液条件下における放射線照射によりゲル化することが知られている。従来、多糖類及びその誘導体は放射線分解型であり、放射線架橋反応は分解反応とは異なる反応機構をたどると考えられる。そこで、本研究ではCMC水溶液の放射線架橋反応機構を明らかとするため、高分子水溶液の放射線架橋反応の起因となるOHラジカルとの反応に焦点を当て、生成するCMCラジカルについてESR法により検討した。まず、過酸化水素の光分解をOHラジカル生成源としてCMCラジカルの生成及びESR測定を行い、スペクトル観測に成功した。超微細結合定数等のスペクトル解析により、同スペクトルはカルボキシメチル基炭素上ラジカルと同定された。次に、亜酸化窒素飽和下にあるCMC水溶液への電子線照射を行い、照射6分後においてESR測定を行ったところ、前述と同様のスペクトルが観測され、長寿命のカルボキシメチル基炭素上ラジカルの生成を見いだした。また、窒素飽和・酸素飽和下における測定においては、スペクトル強度が半減又は0となり、これらの長寿命ラジカルはOHラジカルとの反応により生成すると見いだされた。

論文

Radiation-induced graft polymerization of functional monomer into poly(ether ether ketone) film and structure-property analysis of the grafted membrane

長谷川 伸; 高橋 周一*; 岩瀬 裕希*; 小泉 智; 森下 憲雄; 佐藤 賢*; 成田 正*; 大沼 正人*; 前川 康成

Polymer, 52(1), p.98 - 106, 2011/01

 被引用回数:48 パーセンタイル:81.13(Polymer Science)

高温耐久性,機械的強度に優れた芳香族炭化水素系高分子膜であるポリエーテルエーテルケトン(PEEK)膜を用いた燃料電池用電解質膜の調製と、調製された電解質膜の構造解析の検討を行った。市販されている結晶化度11%及び32%のPEEK膜へスチレンスルホン酸誘導体であるスチレンスルホン酸エチルエステル(ETSS)のグラフト重合は、結晶化度に依存し、32%ではほとんど進行しなかったのに対し、結晶化度11%においてグラフト重合は徐々に進行しグラフト率50%以上に達した。合成した電解質膜の機械強度は、100MPaであり、基材膜の強度の88%を維持した。また、グラフト重合反応機構について、電子スピン共鳴スペクトルの解析により、照射によって生じるラジカルはフェノキシラジカルであり、このラジカルを起点にグラフト重合が進行していることを見いだした。小角中性子散乱(SANS),小角X線散乱測定(SAXS)解析により、グラフト型電解質膜は、イオンチャンネル間距離13nmと、1.8nmのイオンチャンネルのミクロ構造を持つものであり、ナフィオンのイオンチャンネル(5nm)とは異なることが明らかとなった。

論文

EPR and ${it ab initio}$ calculation study on the EI4 center in 4$$H$$- and 6$$H$$-SiC

Carlsson, P.*; Son, N. T.*; Gali, A.*; 磯谷 順一*; 森下 憲雄; 大島 武; Magnusson, B.*; Janz$'e$n, E.*

Physical Review B, 82(23), p.235203_1 - 235203_11, 2010/12

 被引用回数:12 パーセンタイル:47.72(Materials Science, Multidisciplinary)

六方晶(4$$H$$及び6$$H$$)炭化ケイ素(SiC)中のEI4欠陥中心に関して電子常磁性共鳴(EPR)による評価を行った。高純度半絶縁性のSiCに電子線照射を行い、その後700$$sim$$750$$^{circ}$$Cの熱処理を行うことでEI4欠陥中心が増加することが判明した。$$^{29}$$Si及び$$^{13}$$Cの超微細相互作用を調べ、熱処理によるEPRシグナルの変化量及び異なる炭素空孔型欠陥を考慮した${it ab initio}$ supercell計算の結果、このEI4センターが中性の炭素空孔とシリコンサイトに炭素が入ったアンチサイトと炭素空孔の複合欠陥((V$$_{C}$$-C$$_{Si}$$V$$_{C}$$)$$^{0}$$)であることが同定できた。

論文

Fluorine-vacancy defects in fluorine-implanted silicon studied by electron paramagnetic resonance

梅田 享英*; 磯谷 順一*; 大島 武; 小野田 忍; 森下 憲雄; 小此木 堅祐*; 白竹 茂*

Applied Physics Letters, 97(4), p.041911_1 - 041911_3, 2010/07

 被引用回数:5 パーセンタイル:23.07(Physics, Applied)

In this study, fluorine-vacancy defects (F$$_{n}$$V$$_{m}$$) in silicon (Si) were investigated by electron paramagnetic resonance, EPR. The F$$_{n}$$V$$_{m}$$ vacancies in Si were created using fluorine ion implantation at room temperature and subsequent annealing up to 700 $$^{circ}$$C. As a result, the most primitive center was FV$$_{2}$$ (the F0 center) in the case of initial stage of F implantation. With increasing the implanted F ions or annealing to the sample, other F$$_{n}$$V$$_{m}$$ defects with more accumulation of F atoms appeared. Then, the F$$_{1}$$ center (F$$_{n}$$V$$_{5}$$) was observed as the most stable center. The next one was the F$$_{2}$$ center (F$$_{n}$$V$$_{2}$$). F$$_{n}$$V$$_{3}$$ defects were not found in this study. F$$_{n}$$V$$_{4}$$ defects were probably detected as the F$$_{3}$$ center.

論文

Spin conversion of positronium in NiO/Al$$_{2}$$O$$_{3}$$ catalysts observed by coincidence Doppler broadening technique

Zhang, H. J.*; Chen, Z. Q.*; Wang, S. J.*; 河裾 厚男; 森下 憲雄

Physical Review B, 82(3), p.035439_1 - 035439_8, 2010/07

 被引用回数:30 パーセンタイル:72.23(Materials Science, Multidisciplinary)

高純度のNiO/Al$$_{2}$$O$$_{3}$$触媒中の微細構造とポア内表面の状態を解明する目的で、陽電子消滅法を用いた研究を行った。陽電子消滅寿命スペクトル中には、オルソポジトロニウムに関係する二つの長寿命成分が観測された。これらは直径1nm程度のマイクロボイドと巨大ポアに由来するものである。NiO濃度が増加すると巨大ポアに由来する強度と陽電子寿命はともに減少した。一方で、陽電子消滅ドップラー拡がりスペクトルにおいて観測されるパラポジトロニウムの成分はNiO濃度とともに増加することがわかった。この結果は、生成されたポジトロニウムがオルソ・パラ変換を起こしていることを示している。電子スピン共鳴測定の結果は、このスピン交換反応がNiOの常磁性電子に起因することを示唆している。

論文

ESR study on carboxymethyl chitosan radicals in an aqueous solution

佐伯 誠一; 長澤 尚胤; 廣木 章博; 森下 憲雄; 玉田 正男; 室屋 裕佐*; 工藤 久明*; 勝村 庸介*

Radiation Physics and Chemistry, 79(3), p.276 - 278, 2010/03

 被引用回数:12 パーセンタイル:61.37(Chemistry, Physical)

水溶性の多糖類誘導体であるカルボキシメチルキトサン(CMCTS)は10%以上の濃厚水溶液で放射線照射により橋かけ反応を起こしゲルが形成される。しかし、放射線橋かけ反応機構の詳細については明らかではなく、放射線照射後に生成する多糖ラジカルの同定も詳細にはなされていない。そこで、水の放射線分解生成物であるOHラジカルとの反応により生成したCMCTSラジカルを高速流通法を用いた電子スピン共鳴(ESR)測定法により同定した。その結果、水溶液中におけるCMCTSラジカルを直接観測でき、生成する多糖ラジカルは、CMCTSのカルボキシメチル基の第2級炭素上にラジカルであると同定した。

論文

ESR study of free radicals in mango

菊地 正博; Hussain, M. S.*; 森下 憲雄; 鵜飼 光子*; 小林 泰彦; 下山 雄平*

Spectrochimica Acta, Part A, 75(1), p.310 - 313, 2010/01

照射された生鮮マンゴーに誘起されたラジカルに関して電子スピン共鳴(ESR)分光法による研究が行われた。生鮮状態のマンゴーは$$gamma$$線で照射され、凍結乾燥後に粉末に磨砕された。粉末のESRスペクトルは、g=2.004の強いメインピークと、そのメインピークを中心とする1対のピークが検出された。メインピークは、果肉と果皮の両方の検体で検出された。このピーク高は照射後の保存中に徐々に減少した。一方、サイドピークは照射9日後でさえ、はっきりした線量応答関係を示した。したがって、サイドピークは生鮮マンゴーの照射を見分ける有用な手法を提供する。

論文

The Carbon vacancy related EI4 defect in 4H SiC

Son, N. T.*; Carlsson, P.*; 磯谷 順一*; 森下 憲雄; 大島 武; Magnusson, B.*; Janz$'e$n, E.*

Materials Science Forum, 645-648, p.399 - 402, 2010/00

耐放射線性半導体として期待される炭化ケイ素(SiC)の照射欠陥を電子常磁性共鳴(EPR)を用いて調べた。試料には半絶縁性の六方晶(4H)SiCを用い、2MeV電子線を室温にて照射した。照射後750$$^{circ}$$Cまでの熱処理を行うことで、今回対象とするEI4と呼ばれる照射欠陥の濃度を増加させた。$$^{29}$$Si及び$$^{13}$$Cの超微細相互作用を調べることでEI4の構造同定を試みた。EI4がC$$_{1h}$$対称性を有することと、熱処理による挙動も併せて解釈することで、EI4が二つの炭素空孔と炭素アンチサイトが複合化し、中性を示す欠陥(V$$_{C}$$V$$_{C}$$C$$_{Si}$$$$^{0}$$)であることを見いだした。EI4の生成メカニズムに関しては、熱拡散したシリコン空孔に炭素が入り込むことで、炭素空孔と炭素アンチサイトペアを生成し、それが別の炭素空孔と複合化することで解釈できる。

論文

Metastable defects in low-energy electron irradiated n-type 4H-SiC

Beyer, F. C.*; Hemmingsson, C.*; Pedersen, H.*; Henry, A.*; 磯谷 順一*; 森下 憲雄; 大島 武; Janz$'e$n, E.*

Materials Science Forum, 645-648, p.435 - 438, 2010/00

炭化ケイ素(SiC)半導体へ電子線を照射することで発生する欠陥に関して、DLTS(Deep Level Transient Spectroscopy)を用いて調べた。n型六方晶(4H)SiCに200keV電子線を照射したところ、Z1/2, EH6/7, EH1及びEH3と呼ばれる欠陥が観測された。さらに、照射した試料へ650Kまでの熱処理をしたところ、EH1及びEH3が消失すると同時に、新たに、EBセンターと名付けられた欠陥群が発生することが観察された。200keV電子線がSiC中の炭素のみをはじき出すことを考慮すると、今回観察された欠陥は、すべて炭素起因であると言える。

論文

ESR method for detecting irradiated fresh mangoes

菊地 正博; Hussain, M. S.*; 森下 憲雄; 坂下 哲哉; 舟山 知夫; 鵜飼 光子*; 下山 雄平*; 小林 泰彦

JAEA-Review 2009-041, JAEA Takasaki Annual Report 2008, P. 86, 2009/12

熱帯果実の輸入の際には病害虫防除のため検疫処理が必要であり、世界的には放射線照射が用いられつつある。照射が用いられた場合、その表示が必要で、表示の信頼性を担保するために検知法が必要となる。照射された生マンゴーかどうかを判別するため、ESRを用いたラジカル検出を行った。凍結乾燥後にESRメインピークが観察されたが、そのシグナル強度は熟度や保存期間に影響された。われわれは、サイドピークの有無が検疫処理の線量で照射された生マンゴーを検知する指標となることを見いだした。ESR法は複雑な前処理なしに測定できるので、より広範な食品に対しての照射処理の検知法としてこの方法は利用できる。

論文

Radiation-induced graft polymerization of styrene into a poly(ether ether ketone) film for preparation of polymer electrolyte membranes

長谷川 伸; 佐藤 賢*; 成田 正*; 鈴木 康之; 高橋 周一; 森下 憲雄; 前川 康成

Journal of Membrane Science, 345(1-2), p.74 - 80, 2009/12

 被引用回数:35 パーセンタイル:72.20(Engineering, Chemical)

高温での機械特性に優れた芳香族炭化水素高分子である結晶性ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)膜へのスチレンの放射線グラフト重合において、示差走査熱量測定法(DSC),熱重量分析(TGA),X-線回折(XRD),電子スピン共鳴(ESR)を用いてその固相反応機構と膜構造を詳細に調べた。熱分析によりスチレンのグラフト重合が、PEEKの非晶質領域で進行していることがわかった。このことは、ポリスチレングラフト鎖が、基材であるPEEK膜と類似の炭化水素構造を持つため、PEEK膜の非晶相と相容性を有しているためであると考えられる。グラフトPEEK膜は、後スルホン化することで0.01S/cmの電気伝導度と、100%以上の高い含水率を示し、PEEK基材電解質膜に転換可能であることがわかった。

論文

照射された生マンゴーに誘起されたラジカルのESR測定

菊地 正博; Hussain, M. S.*; 森下 憲雄; 鵜飼 光子*; 下山 雄平*; 小林 泰彦

Radioisotopes, 58(12), p.789 - 797, 2009/12

本論文では、電子スピン共鳴(ESR)法を用いて、放射線照射により生マンゴー果肉と果皮に誘起されたラジカルを凍結乾燥後に検出できたので報告する。フィリピン産の生マンゴーを$$gamma$$線照射し、その凍結乾燥粉末をESR装置で測定した。水分含量の高いマンゴー果肉・果皮の検体を用いて${it g}$=2.004を中心とする鋭い1本線のメインピークと一対のサイドピークが検出された。果肉・果皮で測定されたメインピーク高は照射後数日で減衰して安定しないため、検知法として利用できなかった。一方、一対のサイドピークは照射当日から9日後まで線量依存性が変化しなかったことから、生マンゴーの検知法として利用可能であると考えられた。本サイドピークを利用することで、これまで乾燥食品に限定して用いられてきたESR法が、生マンゴーをはじめとする熱帯果実や生鮮野菜など多くの生鮮食品へ適用できる可能性がある。

論文

Identification of the gallium vacancy-oxygen pair defect in GaN

Son, N. T.*; Hemmingsson, C. G.*; Paskova, T.*; Evans, K. R.*; 碓井 彰*; 森下 憲雄; 大島 武; 磯谷 順一*; Monemar, B.*; Janz$'e$n, E.*

Physical Review B, 80(15), p.153202_1 - 153202_4, 2009/10

 被引用回数:40 パーセンタイル:79.38(Materials Science, Multidisciplinary)

耐放射線性半導体デバイスとして応用が期待される窒化ガリウム(GaN)中に、電子線照射により発生する欠陥を電子スピン共鳴(ESR)により調べた。2MeV電子線を1$$times$$10$$^{19}$$/cm$$^{2}$$照射することで欠陥を導入したGaNに対し、77KでESR測定を行ったところ、D1からD4までの4種類の欠陥に起因するESRシグナルが観測された。このうちD2について、$$^{14}$$Nの超微細相互作用を詳細に調べたところ、Nサイトを置換した酸素とGa空孔のペア複合欠陥であり、その電荷状態がマイナスであることが判明した。

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