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論文

Research progress at the Slow Positron Facility in the Institute of Materials Structure Science, KEK

兵頭 俊夫*; 和田 健*; 望月 出海*; 木村 正雄*; 峠 暢一*; 設楽 哲夫*; 深谷 有喜; 前川 雅樹*; 河裾 厚男*; 飯田 進平*; et al.

Journal of Physics; Conference Series, 791(1), p.012003_1 - 012003_8, 2017/02

 被引用回数:3 パーセンタイル:70.79(Physics, Multidisciplinary)

本論文では、高エネルギー加速器研究機構(KEK)物質構造科学研究所(IMSS)低速陽電子実験施設(SPF)で得られた最近の成果を報告する。全反射高速陽電子回折(TRHEPD)実験では、ルチル型TiO$$_{2}$$(110)($$1times2$$)表面、Cu(111)およびCo(0001)基板上のグラフェン、Al(111)基板上のゲルマネンの構造を明らかにした。ポジトロニウム負イオン(Ps$$^{-}$$)ステーションでは、Ps$$^{-}$$の共鳴状態の観測に成功した。ポジトロニウム飛行時間測定(Ps-TOF)ステーションでは、ポジトロニウムの生成効率の増大とポジトロニウム生成・放出過程におけるエネルギー損失を観測した。陽電子ビームラインにパルスストレッチングセクションが導入され、陽電子ビームのパルス幅が1.2$$mu$$sから20msまで可変になった。

論文

全反射高速陽電子回折(TRHEPD)法によるルチル型TiO$$_{2}$$(110)(1$$times$$2)表面の構造決定

望月 出海*; 有賀 寛子*; 深谷 有喜; 和田 健*; 前川 雅樹*; 河裾 厚男*; 設楽 哲夫*; 朝倉 清高*; 兵頭 俊夫*

表面科学, 37(9), p.451 - 456, 2016/09

本論文では、30年間構造が確定しなかった、触媒の担体として知られるルチル型の二酸化チタン表面の構造解析について報告する。全反射高速陽電子回折(TRHEPD)を用いて、陽電子の回折スポット強度の視射角依存性の測定および、動力学的回折理論に基づく強度解析を行った。その結果、最近Wangらが理論的に提唱した構造モデルを用いると実験結果をよく説明できることがわかった。

論文

Structure determination of the rutile-TiO$$_{2}$$(110)-(1$$times$$2) surface using total-reflection high-energy positron diffraction (TRHEPD)

望月 出海*; 有賀 寛子*; 深谷 有喜; 和田 健*; 前川 雅樹; 河裾 厚男; 設楽 哲夫*; 朝倉 清高*; 兵頭 俊夫*

Physical Chemistry Chemical Physics, 18(10), p.7085 - 7092, 2016/03

 被引用回数:25 パーセンタイル:69.51(Chemistry, Physical)

本研究では、全反射高速陽電子回折(TRHEPD)法を用いて、30年来議論が続くルチル型の二酸化チタン表面の原子配置を決定した。陽電子の反射強度の入射角依存性を測定し、様々な構造モデルを仮定した計算結果との比較を行った。構造解析の結果、OnishiとIwasawaが提唱した構造モデルに最表面の酸素原子の非対称性を取り入れることにより、実験結果をよく説明できることがわかった。

論文

Brightness enhancement of a linac-based intense positron beam for total-reflection high-energy positron diffraction (TRHEPD)

前川 雅樹; 和田 健*; 深谷 有喜; 河裾 厚男; 望月 出海*; 設楽 哲夫*; 兵頭 俊夫*

European Physical Journal D, 68(6), p.165_1 - 165_6, 2014/06

 被引用回数:19 パーセンタイル:66.80(Optics)

The brightness of a linac-based intense positron beam was enhanced for reflection high-energy positron diffraction (RHEPD) measurements. It gave more than 60 times intensified diffraction pattern from a Si(111)-7$$times$$7 reconstructed surface compared to a previous result with a $$^{22}$$Na-based positron beam. An improved signal-to-noise ratio in the obtained pattern due to the intensified beam allowed to observe clear fractional-order spots in the higher Laue-zones, those had not been observed previously.

論文

Total reflection high-energy positron diffraction; An Ideal diffraction technique for surface structure analysis

深谷 有喜; 前川 雅樹; 河裾 厚男; 望月 出海*; 和田 健*; 設楽 哲夫*; 一宮 彪彦*; 兵頭 俊夫*

Applied Physics Express, 7(5), p.056601_1 - 056601_4, 2014/05

 被引用回数:20 パーセンタイル:60.44(Physics, Applied)

本研究では、全反射条件下におけるSi(111)-$$7times7$$再構成表面からの反射高速陽電子回折(RHEPD)パターンが、結晶内部のバルク原子からの寄与を含まないことを報告する。このことは、バルク原子を含む通常の試料の測定においても、最表面原子の情報のみを反映した回折パターンを観測可能であることを意味する。

論文

Total reflection high-energy positron diffraction (TRHEPD)

兵頭 俊夫*; 深谷 有喜; 前川 雅樹; 望月 出海*; 和田 健*; 設楽 哲夫*; 一宮 彪彦*; 河裾 厚男

Journal of Physics; Conference Series, 505(1), p.012001_1 - 012001_5, 2014/04

 被引用回数:10 パーセンタイル:93.79(Physics, Applied)

反射高速陽電子回折(RHEPD)は1992年に提唱され、1998年に初めて実証された。それ以来、RHEPDは表面科学の分野へ多くの寄与を果たしている。最近、原子力機構のRHEPD装置を高エネルギー加速器研究機構低速陽電子実験施設に移設し、輝度増強した高強度陽電子ビームラインへの接続を行った。この陽電子ビームの高強度化により、鮮明なRHEPDパターンが得られるようになった。Si(111)-$$7times7$$表面をテスト試料として用い、RHEPDパターンの観測を行った。陽電子のエネルギーは10kVに設定した。このエネルギーでは、全反射の臨界角は2$$^{circ}$$となる。全反射条件下の視射角1.3$$^{circ}$$で観測したRHEPDパターンは、計算結果と非常によく一致することが分かった。全反射したRHEPDパターンは、本質的に付着原子と表面第一層の原子だけで決定できることも分かった。この手法により、最表面から内部へ向かった表面近傍の構造解析が可能である。我々はこの手法を全反射陽電子回折法と呼ぶ。

論文

Increase in the beam intensity of the linac-based slow positron beam and its application at the Slow Positron Facility, KEK

和田 健*; 兵頭 俊夫*; 柳下 明*; 池田 光男*; 大澤 哲*; 設楽 哲夫*; 満汐 孝治*; 立花 隆行*; 長嶋 泰之*; 深谷 有喜; et al.

European Physical Journal D, 66(2), p.37 - 40, 2012/02

 被引用回数:41 パーセンタイル:85.04(Optics)

本論文では、高エネルギー加速器研究機構(KEK)低速陽電子実験施設の最近の進展について報告する。はじめに、低速陽電子ビームを生成するためのコンバータ・モデレータアッセンブリの改良を行った。具体的には、コンバータ・モデレータのフレームをタンタルで作製し、モデレータ内部ではタングステン薄膜を井桁状に2セット組み、2段に配置した。この改良により、低速陽電子のビーム強度が以前のものに比べて一桁増大するに至った。この高強度陽電子ビームを用いて、二つの新たな研究が進展した。一つは、ポジトロニウム負イオンの光脱離実験を行い、レーザーによるポジトロニウムの中性化に成功した。二つ目は、反射高速陽電子回折(RHEPD)装置を開発し、これまでの線源法に比べて5-10倍の反射強度を得ることに成功した。今後、両実験のさらなる発展が見込まれる。

論文

Recent progress in the energy recovery linac project in Japan

坂中 章悟*; 明本 光生*; 青戸 智浩*; 荒川 大*; 浅岡 聖二*; 榎本 収志*; 福田 茂樹*; 古川 和朗*; 古屋 貴章*; 芳賀 開一*; et al.

Proceedings of 1st International Particle Accelerator Conference (IPAC '10) (Internet), p.2338 - 2340, 2010/05

日本においてERL型放射光源を共同研究チームで提案している。電子銃,超伝導加速空洞などの要素技術開発を進めている。また、ERL技術の実証のためのコンパクトERLの建設も進めている。これら日本におけるERL技術開発の現状について報告する。

口頭

Introduction to the slow positron facility at KEK

和田 健*; 望月 出海*; 兵頭 俊夫*; 設楽 哲夫*; 大澤 哲*; 池田 光男*; 満汐 孝治*; 寺部 宏基*; 飯田 進平*; 長嶋 泰之*; et al.

no journal, , 

高エネルギー加速器研究機構(KEK)物質構造科学研究所(IMSS)低速陽電子実験施設(SPF)では、専用LINAC(55MeV)を用い、高強度のパルス低速陽電子ビームを供している。陽電子はTaコンバーターに打ち込まれた高エネルギー電子の制動放射による対生成により発生する。Taコンバーターから放出された陽電子はW薄膜内で熱化し、それらの一部が負の仕事関数により薄膜表面から再放出される。得られた単色陽電子は35keVまでの任意のエネルギーに加速され、低速陽電子ビームとして実験ステーションに磁場輸送される。現在、ポジトロニウム負イオン(Ps$$^{-}$$)の光脱離、ポジトロニウム飛行時間(Ps-TOF)、反射高速陽電子回折(RHEPD)の3つの実験ステーションが稼働中である。Ps$$^{-}$$実験ステーションでは、静電加速されたPs$$^{-}$$の光脱離によりエネルギー可変のPsビームを発生させる。Ps-TOF実験では、Ps放出を通して表面状態に関する情報を与える。RHEPDは反射高速電子回折(RHEED)の陽電子版である。電子の場合とは対照的に、陽電子の結晶ポテンシャルが正であるため、視射角がある臨界角より小さいとき、陽電子は物質表面で全反射する。陽電子ビームを高輝度化するために、100nm厚のW薄膜を持つ透過型のリモデレーターを導入した。その結果、Si(111)-$$7times7$$超構造からの鮮明な分数次スポットの観測に成功した。

口頭

全反射高速陽電子回折(TRHEPD)法によるTiO$$_{2}$$(110)表面構造解析

望月 出海*; 有賀 寛子*; 深谷 有喜; 和田 健*; 兵頭 俊夫*; 設楽 哲夫*; 朝倉 清高*; 前川 雅樹; 河裾 厚男

no journal, , 

ルチル型TiO$$_{2}$$(110)単結晶表面は、金属酸化物の触媒反応過程を調べるうえでの標準物質として知られ、最も広く研究されている表面の一つである。最安定面である(1$$times$$1)表面を超高真空下でアニールすると(1$$times$$2)周期構造が現れる。走査型トンネル顕微鏡、低速電子線回折、表面X線回折実験、第一原理計算などを用いた研究から多数の構造モデルが提案されているものの、その表面原子配置は未だに決定していない。そこで本研究は、最表面の構造解析に特化した全反射高速陽電子回折(TRHEPD)法を用いて、TiO$$_{2}$$(110)-(1$$times$$2)表面の構造決定を試みた。これまで提案されている様々な構造モデルを用いてロッキング曲線を計算したところ、Ti$$_{2}$$O$$_{3}$$モデルのみが実験結果を再現でき、R因子も最小値(1.5%)となった。したがって、この構造解析の結果は、大西らが提唱したTi$$_{2}$$O$$_{3}$$モデルを支持できる。

口頭

全反射高速陽電子回折(TRHEPD)による表面構造解析

兵頭 俊夫*; 深谷 有喜; 望月 出海*; 前川 雅樹; 和田 健*; 設楽 哲夫*; 一宮 彪彦*; 河裾 厚男

no journal, , 

反射高速陽電子回折(RHEPD)は、反射高速電子線回折(RHEED)の陽電子版である。RHEPDは、通常の実験の視射角の範囲で全反射するという、RHEEDにはない際立った特徴をもっている。そのために、バルクの結晶の構造解析にX線回折が果たしている役割を表面構造解析について担うようになる可能性をもっている。これまで、原子力機構の世界唯一の装置で研究が行われ、いくつかの表面構造の決定に重要な役割を果たしてきた。最近、原子力機構の装置を$$^{22}$$Naビームから切り離し、KEK低速陽電子実験施設の専用リニアックで生成した高輝度・高強度陽電子ビームに接続した。その結果、ビームの質が向上し、例えばSi(111)-$$7times7$$再構成表面の多くの分数次スポットが見えるようになった。我々は、このように大幅に質が向上した今、RHEPDを全反射高速陽電子回折(Total Reflection High-Energy Positron Diffraction: TRHEPD)と呼ぶことにした。TRHEPDは、全反射条件で最表面のみの原子配置の情報を得て、次に次第に視射角を増加させながら測定することにより、上から順に表面に隠された部分の原子配置の詳細を知ることができるユニークな手法である。ここでは、TRHEPDの基本的特徴、および、Pt/Ge(001)表面、銀(111)表面上のシリセンの構造、TiO$$_{2}$$(110)-$$1times2$$のTRHEPDによる構造決定の結果を紹介する。

口頭

全反射高速陽電子回折(TRHEPD)法によるTiO$$_{2}$$(110)-(1$$times$$2)表面の構造解析

望月 出海*; 有賀 寛子*; 深谷 有喜; 和田 健*; 兵頭 俊夫*; 設楽 哲夫*; 朝倉 清高*; 前川 雅樹; 河裾 厚男

no journal, , 

ルチル型TiO$$_{2}$$(110)単結晶表面は、金属酸化物の触媒反応過程を調べる際の標準物質として扱われ、最も広く研究されている。また原子スケールで均一平坦な表面を容易に得られるため、触媒活性を持つナノ粒子の担体として用いられ、触媒反応を、表面科学的手法を駆使して原子・分子レベルから規定して解明する研究が進められている。一方で、その最安定面である(1$$times$$1)表面を超高真空下でアニールすると(1$$times$$2)周期構造が現れる。その表面原子配置については、走査型トンネル顕微鏡、低速電子線回折、表面X線回折実験、第一原理計算などから多数の構造モデルが提案されており、20年来の研究にも拘らず、未だ決着していない。そこで本研究は、最表面の構造解析に特化した全反射高速陽電子回折(TRHEPD)法を用いて、TiO$$_{2}$$(110)-(1$$times$$2)表面の構造決定を試みた。これまで提案されている構造モデル(Missing-Row(MR), Added-Row(AR), Ti$$_{2}$$O, Ti$$_{2}$$O$$_{3}$$)に対して計算したロッキング曲線と、実験から取得したロッキング曲線を比較した。MR, AR, Ti$$_{2}$$Oモデルは実験結果を再現できず、Ti$$_{2}$$O$$_{3}$$モデルのみ結果を上手く再現でき、R因子も最小値となった。構造解析の結果は、大西らが提唱したTi$$_{2}$$O$$_{3}$$モデルを支持する。

口頭

TRHEPD rocking curve analyses of Pt/Ge(001) and TiO$$_{2}$$(110) surfaces

望月 出海*; 有賀 寛子*; 深谷 有喜; 和田 健*; 朝倉 清高*; 前川 雅樹; 河裾 厚男; 設楽 哲夫*; 兵頭 俊夫*

no journal, , 

最近、高エネルギー加速器研究機構低速陽電子実験施設において、電子線形加速器ベースの高強度陽電子ビームを用いた新たな全反射高速陽電子回折(TRHEPD)装置を開発した。本研究では、この装置を用い、Ge(001)表面上に形成したPt原子吸着誘起ナノワイヤーの原子配置を調べた。動力学的回折理論に基づく回折強度解析から、理論的に提唱されていた構造モデルのうちの一つがナノワイヤーの基底構造であることを確かめた。我々は同様にして、ルチル型TiO$$_{2}$$(110)表面の原子配置も調べた。この表面の構造は、1100K以上の加熱により、($$1times1$$)から($$1times2$$)構造へその周期性が変化することが知られている。走査型トンネル顕微鏡、低速電子回折、表面X線回折、第一原理計算などを用い、様々な構造モデルが提唱されているが、現状では統一的な見解には至っていない。この問題を解決するために、我々はTRHEPDロッキング曲線を測定し、最表面の原子配置を決定した。

口頭

Surface sensitivity of total reflection high-energy positron diffraction

兵頭 俊夫*; 深谷 有喜; 望月 出海*; 前川 雅樹; 和田 健*; 設楽 哲夫*; 一宮 彪彦*; 河裾 厚男

no journal, , 

反射高速陽電子回折(RHEPD)は、反射高速電子線回折(RHEED)の陽電子版である。RHEPD法は、1992年に提唱され、1998年に初めて実証された。結晶中の陽電子のポテンシャルエネルギーは、電子の場合とは逆のプラスである。したがって、ある臨界角より小さい視射角で結晶表面に入射した陽電子は全反射を起こす。この特徴により、RHEPD法は結晶表面の最上層に極めて敏感な手法となる。最近、加速器ベースの輝度増強した高強度陽電子ビームの発生に成功し、鮮明なRHEPDパターンの観測にも成功した。このRHEPD法の高度化に伴い、この手法を全反射高速陽電子回折(TRHEPD)法と改めて命名することにした。本研究では、全反射の臨界角より小さい視射角で得られたSi(111)-$$7times7$$DAS表面からのTRHEPDパターンが、表面に露出した原子だけから決定されることを示す。

口頭

A Total reflection high-energy positron diffraction station at the KEK-SPF

和田 健*; 前川 雅樹; 深谷 有喜; 望月 出海*; 兵頭 俊夫*; 設楽 哲夫*; 河裾 厚男

no journal, , 

高エネルギー加速器研究機構低速陽電子実験施設では、電子線形加速器を用いて発生させた高強度の陽電子ビームが、全反射高速陽電子回折(TRHEPD)研究に供されている。専用電子線形加速器を用いて発生させた電子ビームは、タンタルコンバーターに打ち込まれ、制動放射により陽電子・電子対生成を生ずる。その後、タングステン薄膜に打ち込まれた陽電子は、熱化されたのち、負の仕事関数によりその一部が放出される。陽電子ビームは15keVのエネルギーで接地されたビームライン中を磁場輸送され、TRHEPDステーションまで導かれる。本研究では、輝度増強ユニットを用い、非磁場領域に解放された陽電子ビームの小径かつ高い平行性を実現した。この高強度陽電子ビームを用いることにより、これまでの$$^{22}$$Naベースのものに比べ、約60倍の反射強度を得ることに成功した。これにより、これまでのビームでは不可能であった、高次ラウエゾーンの分数次スポットを明瞭に観測できた。現在、本施設のユーザーによって、いくつかの顕著な成果が得られ始めている。

口頭

Recent development of the slow positron facility at institute of materials structure science, KEK

和田 健*; 兵頭 俊夫*; 柳下 明*; 池田 光男*; 大澤 哲*; 設楽 哲夫*; 満汐 孝治*; 鈴木 亮平*; 立花 隆行*; 長嶋 泰之*; et al.

no journal, , 

KEK低速陽電子実験施設の最近の進展について報告する。はじめに、低速陽電子ビームを生成するためのモデレーター・コンバーターの交換を行った。コンバーターとモデレーターのフレームをタンタルで作製した。モデレーターは、25$$mu$$m厚のタングステン薄膜を井桁状に2セット組み、2段に配置した。モデレーター・コンバーター交換前後の低速陽電子ビームの強度を比較したところ、毎秒7$$times$$10$$^{7}$$個に増大した。続いて、陽電子ビームを用いた物性研究として、以下の2つの実験が進展した。ポジトロニウム負イオンの実験に関しては、アルカリ金属を蒸着したタングステン表面から、ポジトロニウム負イオンが高い効率で生成することがわかった。さらに、短パルス陽電子ビームとレーザーを用いて、ポジトロニウム負イオンの光脱離実験を行い、エネルギーが揃ったポジトロニウムを取り出すことに成功した。また、KEK低速陽電子実験施設のビームラインに反射高速陽電子回折(RHEPD)実験装置を設置し、RHEPD実験を開始した。Si(111)-7$$times$$7表面超構造の陽電子回折パターンの観察に成功し、ばらつきが非常に小さいロッキング曲線の測定にも成功した。現状で、5-10倍の反射強度を得ている。今後は、さらなるビーム強度の増大及び実際の表面超構造物性の研究に展開させる。

口頭

Atomic configuration of Ge(001)-($$4times2$$)-Pt and rutile-TiO$$_{2}$$(110)-($$1times2$$) surfaces determined by TRHEPD rocking curve analysis

望月 出海*; 有賀 寛子*; 深谷 有喜; 和田 健*; 朝倉 清高*; 前川 雅樹; 河裾 厚男; 設楽 哲夫*; 兵頭 俊夫*

no journal, , 

最近、高エネルギー加速器研究機構低速陽電子実験施設において、電子線形加速器ベースの全反射高速陽電子回折(TRHEPD)装置を開発した。本研究では、Ge(001)表面上に形成したPt原子吸着誘起ナノワイヤーとルチル型TiO$$_{2}$$(110)表面の原子配置の結果について報告する。これまで、Ge(001)-($$4times2$$)-Pt表面の原子配置として、いくつかの異なった構造モデルが報告されていた。我々は、動力学的回折理論に基づくロッキング曲線解析から、理論計算により得られていた構造モデルのうちの一つがナノワイヤーの基底構造であることを確かめた。ルチル型TiO$$_{2}$$(110)表面は、1100K以上で加熱することにより、($$1times1$$)から($$1times2$$)構造へ表面の周期性が変化することが知られているが、後者の原子配置はまだ明らかになっていない。現状では、走査型トンネル顕微鏡, 低速電子回折, 表面X線回折, 第一原理計算などを用い様々な構造モデルが提唱されているものの、統一的な見解には至っていない。この問題を解決するために、我々はTRHEPDロッキング曲線を測定し、結晶表面の原子配置を決定した。

口頭

低速陽電子ビームパルスストレッチングセクション建設

和田 健*; 前川 雅樹; 望月 出海*; 設楽 哲夫*; 兵頭 俊夫*

no journal, , 

高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所の低速陽電子実験施設では、リニアックベースの大強度低速陽電子パルスビームを共同利用に供してきた。しかし一般的な陽電子消滅測定に用いる場合、現行のパルス時間構造では一パルスあたりの陽電子数が多いため、パイルアップの問題により効率の良い測定ができなかった。そこでパルス幅を4桁広げるためのストレッチセクションの建設を行っている。本施設でのパルスストレッチは、ペニングトラップ型を基本にしている。本施設の特徴である試料の接地電池接続を確保するためには、ビームエネルギーを5keV以上に保ったまま行う必要があり、蓄積電極の電圧を全体的に昇圧できる構造にすることでこれを実現している。現在までに蓄積部の電極をビームラインダクトに挿入する作業は完了しており、高周波電源の構築を進めている。

口頭

Recent results with total-reflection high-energy positron diffraction (TRHEPD)

兵頭 俊夫*; 深谷 有喜; 望月 出海*; 和田 健*; 前川 雅樹; 設楽 哲夫*; 一宮 彪彦*; 河裾 厚男

no journal, , 

全反射高速陽電子回折(TRHEPD)は、反射高速電子線回折(RHEED)の陽電子版である。現在、高エネルギー加速器研究機構(KEK)の低速陽電子実験施設では、高強度陽電子ビームを用いたTRHEPDステーションが稼働中である。TRHEPD(以前は、反射高速陽電子回折(RHEPD)と呼ばれていた)は、1992年に提案され、1998年に実証された。TRHEPDのもっとも際立った特徴は2つある。一つ目は、ある臨界角以下の視射角で結晶表面に入射した陽電子は全反射を起こし、その回折パターンは最表面だけの情報を含むことである。2つ目は、臨界角を少し超えると、その回折パターンは表面直下の情報を含むことである。いずれの場合も、回折パターンがバルク原子からの寄与を含まないことは特筆すべきことである。本講演では、シリコン表面を例に、TRHEPD法が最表面とその直下の構造に敏感なことを紹介する。

口頭

Atomic configuration of Au-induced nanowire on Ge(001) surface determined by total-reflection high-energy positron diffraction (TRHEPD)

望月 出海*; 深谷 有喜; 和田 健*; 前川 雅樹; 河裾 厚男; 設楽 哲夫*; 兵頭 俊夫*

no journal, , 

全反射高速陽電子回折(TRHEPD)は、結晶表面の原子配置を決定するうえで理想的な手法である。最近我々は、高エネルギー加速器研究機構(KEK)低速陽電子実験施設において、電子線形加速器ベースの高強度陽電子ビームを用いた新たなTRHEPD装置を開発した。本研究では、TRHEPD法を用いて、ゲルマニウム表面上に形成した金ナノワイヤーの原子配置を決定した。これまでに様々な手法を用いていくつかの構造モデルが提唱されていた。TRHEPDを用いた構造解析の結果、これまでに提唱されたいずれの構造モデルも実験結果を説明できないことがわかった。本報告では、ゲルマニウム表面上に形成した金ナノワイヤーの新たな構造モデルを提唱する。

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