Initialising ...
Initialising ...
Initialising ...
Initialising ...
Initialising ...
Initialising ...
Initialising ...
廣内 淳; 渡邊 正敏*; 林 奈穂; 長久保 梓; 高原 省五
JAEA-Research 2024-015, 114 Pages, 2025/03
原子力事故によって汚染された地域では、事故後の初期及び長期にわたって、居住環境での滞在を通じて放射線を被ばくする。同じ事故シナリオであっても、原子力サイトごとに気象条件や周辺環境が違うため被ばく線量が異なり、防護措置の一つである屋内退避をした場合の被ばく低減効果も異なる。事故初期において屋内退避をした場合に想定される被ばく線量、または想定される被ばく低減効果などの情報は、住民や原子力防災計画を策定する国・自治体にとって重要な情報となる。そこで本報告書では、日本における原子力施設を有するサイトで、過去のシビアアクシデント研究で示された3つのシナリオ、原子力規制委員会で定められている放出シナリオ、東京電力福島第一原子力発電所事故を想定したシナリオの5つの事故シナリオに対して、確率論的事故影響評価コードの一つであるOSCAARを用いて被ばく線量及び屋内退避による被ばく低減効果を評価した。被ばく低減効果はサイト間で約20%の違いが見られ、これは風速のサイト間の違いによることを示した。
廣内 淳; 渡邊 正敏*; 林 奈穂; 長久保 梓; 高原 省五
Journal of Radiological Protection, 45(1), p.011506_1 - 011506_11, 2025/03
原子力発電所事故によって汚染された地域に住む公衆は、初期から長期にわたって被ばくする。同じような事故シナリオであっても、放射線量や防護措置の一つである屋内退避の効果は、気象条件や周辺環境に左右される。原子力発電所事故の初期における放射線量と屋内退避の効果は、公衆だけでなく、原子力防災対策を計画する国や地方自治体にとっても重要な情報である。本研究では、レベル3PRAコードの一つであるOSCAARコードを用いて、過去のシビアアクシデント研究で利用された3つのシナリオ、原子力規制委員会が定めたシナリオ、福島第一原子力発電所事故に対応するシナリオの計5つの事故シナリオについて、日本国内の原子力施設を有するサイトにおける放射線量と屋内退避の効果を評価した。屋内退避の効果は、同一サイトにおける事故シナリオ間で最大約50%、同一事故シナリオのサイト間で約20%50%の差があった。事故シナリオ間の放射性核種組成の違いと、サイト間の風速の違いが、主にこのような屋内退避の効果の違いを引き起こした。
廣内 淳; 鯨岡 郁雄; 高原 省五; 高田 モモ*; Schneider, T.*; 甲斐 倫明*
Journal of Radiological Protection, 45(1), p.011508_1 - 011508_14, 2025/03
異なる要因によるリスクを比較できるリスク指標は、国民の理解を深める上で有用である。国際放射線防護委員会(ICRP)は、低線量における放射線被ばくによる健康影響を定量化するために"デトリメント"という概念を開発した。しかし、デトリメントは放射線分野に特有のものであり、他のリスクと単純に比較することはできない。そこで本研究では、公衆衛生分野等で利用されるリスク指標(障害調整生存年数(DALY)、生涯罹患リスク、生涯死亡リスク)に着目し、放射線被ばくによるそれらのリスク指標を33カ国間で計算した。全固形がんの生涯死亡・罹患リスクとDALYは、国によって男性で1.5-2.0倍、女性で1.2-1.5倍の差が見られ、これらの値は発展途上国ほど低いことが示された。さらに、各部位のリスク指標値の大小関係はデトリメントと同様の傾向を示し、これらのリスク指標値はデトリメントの代替指標として利用できる可能性を示した。
鯨岡 郁雄; 野口 芳宏*; 嶋田 和真; 廣内 淳; 高原 省五
Radiation Protection Dosimetry, 200(16-18), p.1561 - 1567, 2024/11
被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Environmental Sciences)国産の放射線誘発がんリスクの推定モデルを実装した計算コードを開発するために、公開されている他国の既存の計算コード(RadRAT (U.S.NIH)、Blue Book Model (U.S.EPA)、Korean-Specific Model(FNC Technology Co, Ltd))と、これらのコードの基本となるBEIR VII(米国科学アカデミーの電離放射線の放射線健康リスクに関する報告書)を調査し、3つのコードとBEIR VIIモデルの計算結果を比較した。各コードとBEIR VIIで計算した全固形がんの生涯寄与リスクのうち、特にKorean-Specific Modelで計算した結果については、他と有意な差が認められた。この原因の一つはいくつかの組織や臓器のリスク移転に関するパラメータがコード間で異なっていることであり、このことは日本版コードの開発において慎重に検討されるべき課題の一つである。
廣内 淳; 鯨岡 郁雄; 高原 省五; 高田 モモ*; Schneider, T.*; 甲斐 倫明*
Journal of Radiological Protection, 44(2), p.021510_1 - 021510_10, 2024/06
被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Environmental Sciences)リスクに基づく放射線防護基準の根拠を検討する際には、統計的なベンチマークデータが必要である。これまでは、英国王立協会のリスク評価研究がベンチマーク統計として用いられてきたものの、1983年のデータであり、最近の医療インフラや生活水準に関するデータが反映されていない。そこで本研究では、ベンチマークデータとしてベースラインがん罹患率と死亡率に着目し、33か国のデータを比較した。ここでは、各国のがん罹患率と死亡率のデータを用いて計算した生涯死亡リスクと生涯罹患リスク、障害調整生存年(DALYs)を算出し、各国でそれらの値を比較した。結果の一つとして、すべての固形がんの生涯死亡・罹患リスクとDALYsは、国によって男性で2-4倍、女性で2-3倍の差が見られた。また、これらの値は発展途上国ほど低いことが示された。本研究では、ベースラインのがん死亡・罹患率に基づく健康リスクを、放射線によるがんリスクと比較する際の基準とすべきであると提案した。
中西 千佳*; 太田 雅和; 廣内 淳; 高原 省五
JAEA-Research 2023-012, 29 Pages, 2024/02
OSCAARプログラムは日本原子力研究開発機構で開発した原子炉事故の確率論的リスク評価プログラムである。OSCAARプログラムに含まれる、土壌表面に沈着した放射性核種の再浮遊による長期被ばくに関するモデルを改良するために、セシウム137の再浮遊係数を計算した。再浮遊係数の計算には、大気-土壌-植生の一次元モデルSOLVEG-Rを用いた。風速は粒子の再浮遊挙動に影響の大きい気象因子であることから、風速一定とした場合の再浮遊係数の年平均値を計算した。高さ1mにおける再浮遊係数の年平均値は、風速6m s未満では変動幅が比較的小さく、風速6m s
以上では風速の上昇に対応して顕著な増加傾向を示した。風速1m s
から7m s
での再浮遊係数の値は10
から10
m
の範囲内であった。
高原 省五; 飯本 武志*; 五十嵐 隆元*; 川端 方子*
保健物理(インターネット), 58(2), p.50 - 58, 2023/08
日本保健物理学会は、日本保健物理学会誌に掲載された福島第一原子力発電所(1F)事故に関連する論文から知見を得るため、ワーキンググループを立ち上げた。本論文は、リスクコミュニケーション、環境測定・モニタリング、放射線量測定・評価、放射線医学、放射性廃棄物の分野に分類されない47編の論文についてレビューを行った結果について述べたものである。レビューされた論文には、著者の立場や発表時期における社会的関心によって、様々な知見や問題点が存在する。これらの知見や問題意識と向き合い、「保健物理学とは何か」、「放射線防護とは何か」を慎重に考えることが、今後の保健物理学会の発展に重要である。
太田 雅和; 高原 省五; 吉村 和也; 長久保 梓; 廣内 淳; 林 奈穂; 阿部 智久; 舟木 泰智; 永井 晴康
Journal of Environmental Radioactivity, 264, p.107198_1 - 107198_15, 2023/08
被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Environmental Sciences)福島第一原子力発電所(FDNPP)事故時に環境中に放出され、陸面に沈着した放射性核種について、大気中に再浮遊したCsの吸引は現在における主要な被ばく経路の一つである。再浮遊では、風による土壌粒子の巻き上げが主なメカニズムとされてきた。一方、FDNPP事故後の研究から、帰宅困難区域(DRZ)などの農村部においては、真菌類による胞子放出が大気中
Cs濃度に影響を及ぼす可能性が示唆されてきた。本研究は、土壌粒子および真菌類胞子としての
Cs再浮遊を計算するモデルを開発し、これをDRZ内に適用することで、これら再浮遊過程の大気中濃度への影響評価を試みた。モデル計算の結果から、土壌粒子の再浮遊は冬から春に観測された大気中
Csの主要因となったものの、夏から秋に観測された高濃度を再現できないことが示された。真菌類からの胞子状
Csの放出を考慮することで、この夏から秋の高濃度事象は概ねモデルで再現された。解析結果から、真菌類胞子への
Csの蓄積と、農村部に特徴づけられる高い胞子放出率が夏から秋の大気中
Csに寄与している可能性が見出された。DRZ内には依然として未除染の森林が存在しているため、この真菌類胞子の大気中
Csへの寄与は今後将来も継続する可能性がある。
佐々木 道也*; 古川 恭治*; 佐藤 大樹; 嶋田 和真; 工藤 伸一*; 高木 俊治*; 高原 省五; 甲斐 倫明*
Journal of Radiation Protection and Research, 48(2), p.90 - 99, 2023/06
本論文では、日本保健物理学会で設立した「放射線被ばくに伴うがんリスク推定コードの開発専門研究会(2020-2021年度)」の活動成果である計算コードについて報告する。当該専門研究会では、放射線被ばくに伴うがんリスク推定研究の促進を目的に、計算に使用したアルゴリズムやパラメータを含めてソースコードを明らかにし、コードの改変や再配布を許可するライセンスのもと公開することとした。計算コードはSUMRAYと名付けられ、2種類のコンピュータ言語(RおよびPython)でコーディングされた。本コードは、モンテカルロ法を用いて積算過剰リスクを95%信頼区間とともに計算できる。計算条件を合わせて、SUMRAYの結果とソースコード非公開の既存コードの結果とを比較したところ、信頼区間の範囲内で合理的に一致することを確認した。オープン・ソース・ソフトウェアであるSUMRAYは、放射線被ばくに伴うがんリスク推定研究の共通基盤として利用されることが期待される。
廣内 淳; 高原 省五; 駒ヶ峯 弘志*
Journal of Radiological Protection, 42(4), p.041503_1 - 041503_12, 2022/12
被引用回数:1 パーセンタイル:16.92(Environmental Sciences)屋内退避は原子力災害時の放射線被ばくに対する対策の一つである。吸入被ばくに対する屋内退避の効果は、屋内と屋外の累積放射能濃度または線量の比として定義される低減係数で表される。屋内濃度は、主に空気交換率,浸透率,屋内での沈着率に依存する。空気交換率は、風速,家屋の床面積で規格化した隙間面積,総建ぺい率などの周辺環境条件に依存する。本研究では、様々な環境条件下で粒子とIに対する低減係数の不確かさの範囲を検討し、低減係数の不確かさに最も影響を与えるパラメータを把握するために感度解析を行った。不確実性解析の結果から、算出された低減係数は環境条件や住宅の気密性によって大きく変動した。粒子とI
の低減係数の不確かさの範囲はそれぞれ最大0.9および0.3であり、新しい家屋ほど小さかった。感度解析の結果、風速は低減係数に最も影響を与えるパラメータであった。また、風速は新しい家屋では低減係数に与える影響が小さかった。
Zheng, X.; 玉置 等史; 高原 省五; 杉山 智之; 丸山 結
Proceedings of Probabilistic Safety Assessment and Management (PSAM16) (Internet), 10 Pages, 2022/09
Uncertainty gives rise to the risk. For nuclear power plants, probabilistic risk assessment (PRA) systematically concludes what people know to estimate the uncertainty in the form of, for example, risk triplet. Capable of developing a definite risk profile for decision-making under uncertainty, dynamic PRA widely applies explicit modeling techniques such as simulation to scenario generation as well as the estimation of likelihood/probability and consequences. When quantifying risk, however, epistemic uncertainties exist in both PRA and dynamic PRA, as a result of the lack of knowledge and model simplification. The paper aims to propose a practical approach for the treatment of uncertainty associated with dynamic PRA. The main idea is to perform the uncertainty analysis by using a two-stage nested Monte Carlo method, and to alleviate the computational burden of the nested Monte Carlo simulation, multi-fidelity models are introduced to the dynamic PRA. Multi-fidelity models include a mechanistic severe accident code MELCOR2.2 and machine learning models. A simplified station blackout (SBO) scenario was chosen as an example to show practicability of the proposed approach. As a result, while successfully calculating the probability of large early release, the analysis is also capable to provide uncertainty information in the form probability distributions. The approach can be expected to clarify questions such as how reliable are results of dynamic PRA.
Boznar, M. Z.*; Charnock, T. W.*; Chouhan, S. L.*; Grsic, Z.*; Halsall, C.*; Heinrich, G.*; Helebrant, J.*; Hettrich, S.*; Kua, P.*; Mancini, F.*; et al.
IAEA-TECDOC-2001, 226 Pages, 2022/06
IAEAは、2012年から2015年にかけて、放射線影響評価のためのモデリングとデータに関する(MODARIA)プログラムを組織した。MODARIAプログラムは、環境放射線量評価の分野において、改善されたデータの取得、モデルの試験、モデルの入力・仮定・出力の比較、モデリングの考え方に関する合意形成、アプローチとパラメータ値の調整、改善された方法の開発、情報交換を行うことで能力を高めることを目的としたものである。本書は、第2ワーキンググループ「汚染された都市環境における被ばくと修復措置の効果」の活動について述べたものである。
Thiessen, K. M.*; Boznar, M. Z.*; Charnock, T. W.*; Chouhan, S. L.*; Federspiel, L.; Grai
, B.*; Grsic, Z.*; Helebrant, J.*; Hettrich, S.*; Hulka, J.*; et al.
Journal of Radiological Protection, 42(2), p.020502_1 - 020502_8, 2022/06
被引用回数:5 パーセンタイル:66.07(Environmental Sciences)The IAEA's model testing programmes (1988-2019) have included a series of Working Groups concerned with modelling radioactive contamination in urban environments. This paper describes the exercises conducted during the MODARIA I (2012-2015) and MODARIA II (2016-2019) programmes. These exercises have included short-range and mid-range atmospheric dispersion exercises based on data from field tests or tracer studies, hypothetical urban dispersion exercises, and an exercise based on data collected after the Fukushima accident. Improvement of model capabilities will lead to improvements in assessing various contamination scenarios (real or hypothetical), and in turn, to improved decision-making and communication with the public following a nuclear or radiological emergency.
高原 省五; Charnock, T. W.*; Silva, K.*; Hwang, W. T.*; Lee, J.*; Yu, C.*; Kamboj, S.*; Yankovich, T.*; Thiessen, K. M.*
Journal of Radiological Protection, 42(2), p.020517_1 - 020517_13, 2022/06
被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Environmental Sciences)5つの最新の線量評価モデルを利用して、福島第一原子力発電所事故により汚染された都市部の住民の線量を評価・比較した。モデル間での評価結果の比較に加え、モデルによる評価結果と実際の測定値との比較も実施した。また、評価方法として、確率論的方法と決定論的方法の双方を採用し、方法の違いによる評価結果の違いについても比較した。確率論的方法による屋内外の作業員の線量分布の予測は、実際の測定値とよく一致した。また、国際放射線防護委員会が提案した概念に基づき、代表的な人の線量を評価するためにモデルを適用したところ、決定論的アプローチで得られた代表的な人の線量は、確率論的アプローチで得られた線量よりも常に高いことが明らかとなった。なお、本研究は、国際原子力機関におけるMODARIA I及びIIを通じて行われたものである。
飯島 正史*; 高原 省五
Health Physics, 121(6), p.587 - 596, 2021/12
被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Environmental Sciences)福島第一原子力発電所事故によって大量の放射性物質が環境中に放出された。この放出に関するソースターム情報は、従来、大気中濃度を主に用いて逆推定されてきたが、放射性プルームを通過時に捉えて測定することは困難であるため、空間的及び時間的に限られた測定結果しか利用することができないという課題があった。そこで、本研究では、十分な測定結果を利用することができる地表面沈着量のみに基づいた新しい逆推定方法の開発を行った。開発した方法での推定結果は、大気中濃度や空間線量率を用いた従来の研究と矛盾のない結果となった。従来の方法による評価結果との違いやソースタームの不確実さを明らかにするためにはモデルや入力データを詳細に検討しさらなる研究が必要である。
嶋田 和真; 飯島 正史*; 渡邊 正敏*; 高原 省五
Proceedings of Asian Symposium on Risk Assessment and Management 2021 (ASRAM 2021) (Internet), 17 Pages, 2021/10
東京電力福島第一原子力発電所事故時にオフサイトで活動した防災業務関係者の被ばく線量を評価した。先行研究のソースタームを用いて大気拡散シミュレーションを行い、防災業務関係者が活動した市町村内の大気中濃度及び地表面濃度を評価して、クラウドシャイン及びグランドシャインからの外部被ばく線量と、プルーム及び再浮遊核種の吸入による内部被ばく線量について、各市町村内での時間的及び空間的な変動幅を評価した。外部被ばく線量の評価結果について個人線量計の実測値と比較したところ、実測値は評価した幅に収まる値となっていた。また、内部被ばく線量も加えて一日当たりの被ばく線量を評価したところ、2011年3月12日から31日までの各一日における潜在的な実効線量は、比較的高線量の地域において数十mSv以上であった。これより、防災業務関係者の被ばく線量をICRPが推奨する参考レベルである20mSv未満に保つためにはマスクなどの内部被ばくに対する防護が講じられることを確認する必要がある。
嶋田 和真; 高原 省五
JAEA-Review 2021-013, 142 Pages, 2021/09
米国では、原子力緊急事態に関する避難計画についてその有効性を確認するために避難時間推計(Evacuation Time Estimation: ETE)が行われ、原子力発電所の設置許可の要件や住民避難の意思決定に活用されている。本稿では、我が国における避難計画の実効性確保を目指したETEの活用に資するため、日本及び米国で実施されたETEの公開資料をレビューし、日本のETEの課題を検討した。日本のETEの公開資料は、2020年2月までの16の実施道府県の公開資料を入手した。米国のETEの公開資料は、2011年から2018年までの58のETEレポートを入手した。さらに、米国原子力規制委員会(U.S. Nuclear Regulatory Commission: NRC)のNUREG/CR-7002に基づいて、米国の原子力施設周辺の緊急時計画区域(Emergency Planning Zone: EPZ)に対するETEの概要を整理した。そして、内閣府(原子力防災担当)のETEのガイダンスに基づいて、予防的避難を準備する区域(Precautionary Action Zone: PAZ)及び緊急時防護措置を準備する区域(Urgent Protective Action Planning Zone: UPZ)に対する日本のETEの概要を整理し、米国のETEと比較した。日米のETEにおける避難準備時間を比較した結果、まず、日本のETEは施設敷地緊急事態(Site Area Emergency: SAE)から全面緊急事態(General Emergency: GE)までの間に住民の避難準備が完了していると仮定しているが、米国のETEにおける避難準備時間の長さの最大値は、鹿児島県のETE公開資料に記載されたSAEからGEまでの間の時間(3.5時間)を多くの米国のサイトで上回っていた。これより、日本のETEの課題として、PAZの住民の避難準備時間について、客観的な調査データに基づき確認することが挙げられる。次に、2011年に発行されたNRC及び米国連邦緊急事態管理庁(Federal Emergency Management Agency: FEMA)のNUREG-0654/FEMA-REP1, Rev.1 Supplement 3に基づいて、緊急事態における日本のETEの活用を検討した結果、日本のETEは、避難範囲の90%の住民が避難を完了する時間と100%の住民が避難を完了する時間のどちらか一方しか示されていない場合が多く、ETEを緊急時の避難の意思決定に使用するためには、米国と同様にETEの入出力を統一する必要性がある。最後に、自主避難がETEに与える影響を比較した結果、米国よりも日本の方が自主避難の影響が大きいことが示唆された。
廣内 淳; 高原 省五; 駒ヶ峯 弘志*; 加藤 伸之*; 松井 康人*; 米田 稔*
Journal of Radiological Protection, 41(3), p.S139 - S149, 2021/09
被引用回数:2 パーセンタイル:22.61(Environmental Sciences)屋内退避は原子力事故時の放射線被ばくに対する防護対策の一つである。屋内退避の効果は低減係数によって表される。本研究では、低減係数を屋内外の積算放射能濃度比または線量比で定義した。屋内濃度は主に空気交換率,浸透率及び室内沈着率によって支配される。浸透率と室内沈着率は表面材質と隙間材質に依存する。Iと粒子のこれらのパラメータについて実験的に調査した。実験は2軒のアパート及び3軒の戸建て住宅に加えて、実験室のチャンバーで実施した。浸透率は、0.3
1
mの粒子で0.3
1、I
で0.15
0.7であり、いずれも空気交換率に依存していた。室内沈着率は、0.3
1
mの粒子で0.007
0.2h
、I
で0.2
1.5h
であり、いずれも床面材質に依存していた。
廣内 淳; 高原 省五; 吉村 和也
Journal of Environmental Radioactivity, 232, p.106572_1 - 106572_6, 2021/06
被引用回数:2 パーセンタイル:8.37(Environmental Sciences)家屋内での外部被ばく線量評価において、家屋内外の放射能分布の情報は有用である。本研究では、対象とした家屋周辺の土壌と家材サンプル(床,内壁,天井,外壁,屋根)を収集した。それらサンプルの放射能をHPGe検出器で測定した。地面に対する床,内壁,天井,外壁,屋根の相対表面濃度はそれぞれ310
7
10
, 6
10
4
10
, 7
10
3
10
, 2
10
1
10
, and 4
10
2
10
であった。相対表面濃度は材質,位置及び表面の向きによって異なった。
神田 玲子*; 本間 俊充*; 高原 省五; 坪倉 正治*; 大迫 政浩*; 川口 勇生*; 加藤 尊秋*
リスク学研究, 30(3), p.133 - 139, 2021/04
東京電力福島第一原子力発電所(1F)事故から約10年が経過し、原子力災害時における防護措置について多くの経験が蓄積されてきた。1F事故後の防護措置では、住民へのパターナリスティックな介入や脆弱な集団の避難による健康リスクの増加などの問題が明らかになった。また、除染等の長期的な管理においても、次世代や県外の住民等のステークホルダー間において、リスク・トレードオフが発生しており複雑で継続的な課題と向き合うことになる。これらの事例は、原子力災害の特徴としてリスクが地理的にも時間的にも広範にわたるため、現実の対応では個々の事例に則した対応が不可欠であることを示している。今後、原子力防災の改善にあたっては、国等による合理的な防災計画に加えて住民等の理解や考え方を防災計画に反映することで、トップダウン的アプローチとボトムアップ的アプローチをバランスよく取り入れていく必要がある。