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池之上 翼; 中西 貴宏; 嶋寺 光*; 川村 英之; 近藤 明*
E3S Web of Conferences (Internet), 530, p.02005_1 - 02005_10, 2024/05
福島第一原子力発電所の事故は海底堆積物の放射能汚染を引き起こした。河川からのCsの供給は海底堆積物中のCsの長期的な挙動において重要なプロセスである可能性がある。本研究では、海洋拡散モデルと陸域および河川におけるCsの挙動予測モデルを組み合わせて、海底堆積物中のCsの10年間の挙動予測シミュレーションを実施した。原子力発電所の北側の海域では、海底堆積物中のCs濃度が事故初期には低く河川からのCsの供給量が多いため、河川からのCsの供給が沿岸における海底堆積物中のCs濃度に大きな影響を与えることがシミュレーション結果から示唆された。原子力発電所近傍及びその南側の海域では、事故初期における海水からの吸着が大きいため、沿岸における海底堆積物中のCs濃度の時間変化に与える河川からのCsの供給の影響は比較的小さいことがシミュレーション結果から示唆された。全体として、これらの結果は河川からのCsの供給が10年間の時間スケールで海底堆積物中のCs濃度の時空間分布に影響を与えており、その影響は原子力発電所の北側の海域で特に大きいことを示していた。
Battulga, B.; 安藤 麻里子; 中西 貴宏; 小嵐 淳
Science of the Total Environment, 849, p.157758_1 - 157758_11, 2022/11
被引用回数:4 パーセンタイル:37.30(Environmental Sciences)本研究では、マイクロプラスチックの表面に形成されるバイオフィルム(有機付着物)の特性を明らかにするための第一ステップとして、バイオフィルムを分離回収する手法を開発した。茨城県内の河川において、大きさ,色,組成の異なる様々なマイクロプラスチック試料を採取した。それらの試料に超音波処理を行った後、シリンジを用いた方法により有機付着物を溶液として分離回収した。バイオフィルム由来の有機物から放射性セシウムが検出され、マイクロプラスチックが河川生態系における放射性核種の輸送媒体としての役割を果たすことが示唆された。また、有機物の安定炭素・窒素同位体の分析にも成功した。本手法は、マイクロプラスチックの状態や環境中における物質循環への寄与を解明するために有効である。
佐藤 駿介*; 名内 泰志*; 早川 岳人*; 木村 康彦; 鹿島 陽夫*; 二上 和広*; 須山 賢也
Journal of Nuclear Science and Technology, 60(6), p.615 - 623, 2022/06
被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Nuclear Science & Technology)使用済燃料中のCs放射能を非破壊で評価する新しい方法を提案し、燃焼度クレジット導入における物理的測定について実験的に実証した。Cs放射能は、Cs放射能がよく知られている参照燃料を用いずに、線測定と数値検出器応答シミュレーションを用いて定量された。燃料サンプルは、商業用加圧水型炉(PWR)で53GWd/tまで照射された先行使用集合体(LUA)から取得した。試料から放出された線は、ホットセルに取り付けたコリメータを通して、ゲルマニウム酸ビスマス(BGO)シンチレーション検出器を用いて測定された。検出器による線の検出効率は、測定ジオメトリを考慮して粒子輸送計算コードPHITSを用いて計算した。試料に対する検出器応答のより正確なシミュレーションのために、試料中のCs, Cs, Euの相対放射能を高純度ゲルマニウム(HPGe)検出器で測定した。検出器の絶対効率は、別のジオメトリの標準ガンマ線源を測定することにより校正された。測定された計数率と検出効率を用いて、燃料試料中のCs放射能を定量した。定量されたCs放射能は、MVP-BURN燃焼計算コードで推定されたCs放射能とよく一致した。
深谷 裕司; 植田 祥平; 山本 智彦; 近澤 佳隆; Yan, X.
Nuclear Technology, 208(2), p.335 - 346, 2022/02
被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Nuclear Science & Technology)原子力廃棄物に関して総量管理の観点から有害度が制限された場合、許容できる原子力発電所の発電容量が制限されることになる。総量管理を達成する代替案として分離・変換による有害度低減を提案する。具体的には、Sr-Csを核変換することにより、逆に発電容量を増加することができる。同時に、加速器駆動核変換システム(ADS)による処分シナリオで300年必要とされる冷却期間を50年に低減することが可能である。最後に、このシナリオでは、Li(d,xn)反応中性子源を用いた重陽子加速器による核変換により、エネルギーバランス及びコストの面でも成立することが分かった。
島田 亜佐子; 塚原 剛彦*; 野村 雅夫*; Kim, M. S.*; 島田 太郎; 武田 聖司; 山口 徹治
Journal of Nuclear Science and Technology, 58(11), p.1184 - 1194, 2021/11
被引用回数:6 パーセンタイル:63.12(Nuclear Science & Technology)土壌中の主要元素や質量分析における妨害元素を含む多元素混合溶液を用いて土壌中のCsを分離精製するためのCalix[4]arene-bis(t-octylbenzo-crown-6)(BOBCalixC6)の1-オクタノール溶液による溶媒抽出法を最適化した。一部のKやMo, Sn, SbがCsと共に有機相に抽出されたが、0.5M硝酸により逆抽出された。一方、抽出されたCsは0.5M硝酸ではほとんど逆抽出されないため、分離が改善された。抽出されたCsの回収は温度を323Kまで上げ、有機相を3倍量の1-ドデカノールで希釈することで達成された。開発した手法を40gの土壌を溶解した硝酸溶液に対して適用し、分離精製・濃縮後の溶液中には土壌の主要元素が合計で10g/ml、妨害元素はng/ml以下しか含まれないことを確認した。さらに、この手法を用いて福島第一原子力発電所(FDNPS)周辺で採取された土壌中のCsを分離し、Cs/Cs同位体比を表面電離型質量分析計(TIMS)とトリプル四重極質量分析計(ICP-QQQ)により分析した。TIMSにより1桁ほど高い精度が得られたが、アバンダンス感度はICP-QQQの方が高かった。FDNPSの北西側の試料に対してわずかに高いCs/Cs同位体比が観測されたが、それ以外の地点では誤差の範囲で同じ同位体比が得られた。この結果は報告されているCs/Csの放射能比の分布と一致しており、Cs/Cs同位体比が放射性セシウムの起源を特定できる可能性を示している。
中野 政尚; 細見 健二; 西村 周作; 松原 菜摘; 大倉 毅史; 倉持 彰彦; 川崎 将亜; 竹内 絵里奈; 藤井 裕*; 神野 職*; et al.
保健物理(インターネット), 55(2), p.102 - 109, 2020/06
2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所事故以降、茨城県の環境放射線モニタリング結果の一部に上昇が観測された。技術的観点からモニタリングデータの変動等について意見交換する場として、「福島第一原発事故による環境影響検討会」を設置し、4つの原子力事業所からモニタリングデータを収集し、変動傾向, Cs/Cs放射能比等を検討した。本報告では線量率と、降下じん, 表土, カレイ・ヒラメ, 海底土中Csの検討結果について紹介する。また、検討会における課題解決についても紹介する。
吉村 和也; 渡辺 貴善; 操上 広志
Journal of Environmental Radioactivity, 217, p.106213_1 - 106213_6, 2020/06
被引用回数:5 パーセンタイル:21.10(Environmental Sciences)To obtain the important information and parameter for the measurement of Cs activity per unit area on paved ground, this study evaluated their vertical and horizontal distributions. This study showed that Cs was retained in extremely surface layer with mass depth less than 0.5 cm. This study also demonstrated the horizontal variations of Cs activity and the relation of the variation with grid size.
浅井 志保*; 大畑 昌輝*; 半澤 有希子; 堀田 拓摩; 蓬田 匠; 北辻 章浩
Analytical Chemistry, 92(4), p.3276 - 3284, 2020/02
被引用回数:6 パーセンタイル:24.24(Chemistry, Analytical)福島第一原子力発電所の汚染水処理に使用されたCs吸着材を安全に処分するために、長寿命核種であるCsの放射能を把握する必要がある。Csは、誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)で測定するが、通常、液体試料のみに対応しているため、廃Cs吸着材の場合、Csの溶離操作が不可欠となる。しかし、Csから放出される強い放射線が取り扱いを困難にする。そこで本研究では、固体試料の直接測定が可能なレーザーアブレーションICP-MSを用いてCs/Csを測定し、Csの線測定結果と合わせて、Cs吸着材中のCsを簡便かつ精確に定量する方法を開発した。方法の妥当性を確認するため、放射性セシウムを含む汚染水に市販のCs吸着材を浸漬させて模擬試料を調製し測定したところ、水試料の分析値と一致した。
三上 智; 石川 大輔*; 松田 秀夫*; 星出 好史*; 奥田 直敏*; 坂本 隆一*; 斎藤 公明
Journal of Environmental Radioactivity, 210, p.105938_1 - 105938_7, 2019/12
被引用回数:3 パーセンタイル:11.10(Environmental Sciences)2011年12月から2015年8月の間に、67チームが参加したin situスペクトロメトリ(土壌沈着量評価)の相互比較を福島第一原子力発電所からの放射性物質に汚染された3つのサイトで計5回実施した。放射性セシウム(Cs and Cs)の土壌沈着量 とKの土壌中濃度の各チームによる評価値は、最良でそれぞれ変動係数で5-6%と4-5%以内で一致した。また、Cs/Cs比は変動係数で1-2%以内で一致した。これらの比較結果はこれまでのマップ事業における沈着量測定精度を保証するものである。また、放射性セシウムがほぼ均一に分布しているある一つのサイトにおいて2つの相互比較方法を実施した。1つは全く同じ地点上で各チームが交替で測定を行うシーケンシャル法、もう一つは半径3m程度以内の狭い範囲に全ての検出器を配置し同時に測定を行う同時測定法である。この両法の相互比較結果を比較したところ、参加チームによる評価値の一致の程度は両法で同程度であった。このような知見を踏まえ、2つの相互比較法の標準手法を提案した。スペクトロメトリの信頼性確認のために効果的に活用されることを期待する。
栗原 モモ*; 保高 徹生*; 青野 辰雄*; 芦川 信雄*; 海老名 裕之*; 飯島 健*; 石丸 圭*; 金井 羅門*; 苅部 甚一*; 近内 弥恵*; et al.
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry, 322(2), p.477 - 485, 2019/11
被引用回数:4 パーセンタイル:37.41(Chemistry, Analytical)福島県の淡水に含まれる低レベル溶存態放射性セシウム濃度の測定に関する繰り返し精度と再現精度を評価した。21の実験施設が5つの異なる前濃縮法(プルシアンブルー含浸フィルターカートリッジ,リンモリブデン酸アンモニウム共沈,蒸発,固相抽出ディスク、およびイオン交換樹脂カラム)によって10L試料3検体を前濃縮し、放射性セシウム濃度を測定した。全Cs濃度測定結果のzスコアは2以内で、手法間の誤差は小さいことが示された。一方で、各実験施設内の相対標準偏差に比べて、施設間の相対標準偏差は大きかった。
眞田 幸尚; 堅田 元喜*; 兼保 直樹*; 中西 千佳*; 卜部 嘉*; 西澤 幸康*
Science of the Total Environment, 618, p.881 - 890, 2018/03
被引用回数:23 パーセンタイル:60.49(Environmental Sciences)福島第一原子力発電所事故による放射性物質の環境中への放出の再現はエアロゾルの沈着に関する詳細な情報を提供する。本論文では、複雑な山地の地形における、事故の間に放出される放射性セシウムの高度の特徴を分析した。分析には、有人ヘリを用いた航空機モニタリングのデータ及びWSPEEDI-IIによる再現結果を利用した。放出源から遠い場所におけるWSPEEDI-IIの結果は、航空機モニタリングの結果とよく整合したが、近い場所での再現性は悪かった。これらの事実から、エアロゾルの沈着過程に関する模式図を構築した。
日高 昭秀; 横山 裕也
Proceedings of Symposium on Water Chemistry and Corrosion in Nuclear Power Plants in Asia 2017 (AWC 2017) (USB Flash Drive), p.29 - 42, 2017/09
福島第一原子力発電所事故後期に東海村で測定された空気中のCsの性状が3月30日にガス状から粒子状に変わったことに関し、BC制御材を用いたPhebus FPT3実験やWSPEEDIコードによるソースターム逆算の結果を参照して、CsOHがBC起源のHBOと反応して生成するCsBOが再蒸発したことが原因であること、また、CsBOは環境中に放出後、逆反応を起こし、HBOが水に溶けたことがBの測定を難しくしているとの仮説を提案した。本仮説に基づく計算は、3月20日以降の炉心冷却注水量の最適化に伴う温度上昇時の環境中への放出量増大と合わせ、放出挙動を的確に再現できたが、推論の実証が重要である。今後は、様々な測定データを詳細に分析し、Bの存在を確認することが重要と考える。
日高 昭秀; 横山 裕也
Journal of Nuclear Science and Technology, 54(8), p.819 - 829, 2017/08
被引用回数:13 パーセンタイル:75.48(Nuclear Science & Technology)福島第一原子力発電所事故の評価では、炉内事象と環境モニタリング測定との結びつきの議論が重要であるが、事故から6年近く経過した現在でも、両者の事象を統合的に扱った研究は必ずしも進んでいない。WSPEEDIコードと環境モニタリングデータから逆算で詳細化されたI/Cs比に基づき、福島事故後期における原子炉建家等の地下汚染水からの気液分配に基づくI放出量を再評価するとともに、これまで検討が行われなかったCs放出挙動に関して化学形や放出機構等について検討した。原子炉建屋等の地下汚染水からのI放出量に関する再評価では、全ソースタームに対する地下汚染水からのI放出の寄与分は約10%となった。また、3/213/23及び3/303/31のI放出量に対するCs放出量の超過は、炉心冷却水がわずかに不足したことに伴う炉心温度の再上昇により、制御材を起源として生成するCsBOの放出でほぼ説明できる見通しを得た。
日高 昭秀; 横山 裕也
Journal of Nuclear Science and Technology, 54(8), P. i, 2017/08
被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Nuclear Science & Technology)以前に発表した論文(Examination of I and Cs releases during late phase of Fukushima Daiichi NPP accident by using I/Cs ratio of source terms evaluated reversely by WSPEEDI code with environmental monitoring data [Journal of Nuclear Science and Technology, vol.54(8), pp.819-829 (2017)])における図6の縦軸の訂正である。
茅野 政道; 寺田 宏明; 永井 晴康; 堅田 元喜; 三上 智; 鳥居 建男; 斎藤 公明; 西澤 幸康
Scientific Reports (Internet), 6, p.31376_1 - 31376_14, 2016/08
被引用回数:59 パーセンタイル:98.50(Multidisciplinary Sciences)This paper investigates the reactor units of Fukushima Daiichi Nuclear Power Station which generated large amounts of atmospheric releases during the period from 12 to 21 March 2011. The Cs/Cs ratio measured in the environment can be used to determine which reactor unit contaminated specific areas. Meanwhile, atmospheric dispersion model simulation can predict the area contaminated by each dominant release. Thus, by comparing both results, the reactor units which contributed to dominant atmospheric releases was determined. The major source reactor units from the afternoon of 12 March to the morning of 15 March corresponded to those assumed in our previous source term estimation studies. A new possibility found in this study was that the major source reactor from the evening to the night on 15 March was Units 2 and 3 and the source on 20 March temporally changed from Unit 3 to Unit 2.
永井 晴康; 寺田 宏明; 茅野 政道; 堅田 元喜; 三上 智; 斎藤 公明
Proceedings of 16th International Topical Meeting on Nuclear Reactor Thermal Hydraulics (NURETH-16) (USB Flash Drive), p.4044 - 4052, 2015/08
原子力機構は、福島第一原子力発電所事故による放射性物質の大気放出量を、環境モニタリングと大気拡散モデルによる大気中核種濃度または空間線量率の比較解析により推定した。この放出量推定を改良するために、より精緻な推定手法の開発と過酷事故解析及び観測データの新たな情報の利用を検討している。その第一段階として、福島原発1から3号機内インベントリと地表沈着測定におけるCs/Cs放射能比情報を利用した。大気拡散シミュレーションの放出率設定において、Cs/Cs放射能比の時間変化を考慮することで、地表沈着測定におけるCs/Cs放射能比空間分布を説明できることを示した。この結果は、どの原子炉からどのタイミングで放出があったかを推定するために有効であり、福島原発事故の過酷事故解析にも有用な情報となることが期待される。
國分 陽子; 安田 健一郎; 間柄 正明; 宮本 ユタカ; 桜井 聡; 臼田 重和; 山崎 秀夫*; 三田村 宗樹*; 吉川 周作*
Journal of Geosciences, Osaka City University, 50, p.7 - 13, 2007/03
原爆由来のPuの分布を明らかにするために、長崎原爆中心地から約10km以内の範囲で採取した土壌中のPu濃度,Cs濃度及びPu/Pu比を測定した。原爆中心地より北,南及び西の地域では、Pu濃度及びCs濃度はほぼ一定であり、またPu/Pu比はグローバルフォールアウトと同程度だった。一方、東側の地域では距離に従ってPu濃度は減少したのに対し、Cs濃度はほぼ一定であった。またPu/Pu比は東側の地域でも、特に西山地区で、グローバルフォールアウトより低い値が得られ、長崎原爆由来のPuが局所的に蓄積していることがわかった。
寺田 宏明; 茅野 政道
Journal of Nuclear Science and Technology, 42(7), p.651 - 660, 2005/07
被引用回数:18 パーセンタイル:74.36(Nuclear Science & Technology)本研究の第1報(Terada 2004)では、世界版緊急時環境線量情報予測システム「WSPEEDI」の改良版が大気力学モデルMM5とラグランジュ型粒子拡散モデルGEARN-newとのモデル結合により開発され、チェルノブイル原子力事故への適用計算によって大気中Cs濃度の予測性能について数値モデル(MM5/GEARN-new)の妥当性が示された。第2報である本論文では、このMM5/GEARN-newの予測性能評価をチェルノブイル原子力事故時のヨーロッパ域における降水量及び地表Cs沈着量の測定値を用いて行った。計算結果が測定値と比較された結果、MM5/GEARN-newは氷相過程を考慮した雲物理スキームにより高精度な降水量が予測された場合、ヨーロッパスケールでの沈着量分布を良い精度で予測することができた。さらに、ネスティング機能を用いてチェルノブイル周辺域についての高解像度計算が行われた。この結果、MM5/GEARN-newは従来の計算モデルでは計算できなかったチェルノブイル周辺での詳細なCs沈着量分布を現実的に予測することができた。
寺田 宏明; 古野 朗子; 茅野 政道
Journal of Nuclear Science and Technology, 41(5), p.632 - 640, 2004/05
被引用回数:22 パーセンタイル:78.73(Nuclear Science & Technology)国外の原子力事故によって放出された放射能の国内の公衆への影響を予測するために、世界版緊急時環境線量情報予測システム「WSPEEDI」が開発されてきた。WSPEEDIは、3次元風速場診断モデル「WSYNOP」と粒子拡散モデル「GEARN」によって構成されている。この従来版WSPEEDIの短所は以下の通りである。(1)多様なスケールを持つ複数の領域についての同時計算が不可能である。(2)大気境界層の取り扱いが単純であり、混合層の時・空間変化が考慮されていない。(3)降水の3次元構造が湿性沈着過程に考慮されていない。これらの問題を改善するため、複数領域の詳細な気象場を同時に予測して粒子拡散モデル「GEARN-new」に提供することが可能な大気力学モデル「MM5」が導入された。この改良版WSPEEDIを検証するため、1986年にチェルノブイリ原子力発電所で発生した事故への適用計算が行われた。地表Cs濃度の計算結果と測定値を比較したところ、ヨーロッパ域での放射能の拡散が精度よく再現されたことが示され、改良版WSPEEDIの妥当性が確認された。
坂本 隆一; 斎藤 公明
Radiation Protection Dosimetry, 106(2), p.165 - 175, 2003/11
被引用回数:6 パーセンタイル:41.28(Environmental Sciences)自動車による移動サーベイで得られた放射線レベルを道路周辺地上値に換算するための換算係数を計算シミュレーションによって定量的に評価した。計算では、Cs核種で汚染された実環境のように、いくつかの道路幅と道路周辺環境が仮定された。計算された換算係数は、20%の精度で、測定されたものと一致することを示した。