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池浦 広美*; 関口 哲弘
Applied Physics Letters, 111(23), p.231605_1 - 231605_4, 2017/12
被引用回数:0 パーセンタイル:0(Physics, Applied)-SCH側鎖をもつトランス-ポリアセチレン(PA)骨格の光酸化ドーピング過程を研究した。本分子系はジグザグ状のグラフェン-ナノリボン末端のヘテロ置換による材料機能化に関連している。硫黄K殻X線吸収端近傍構造(XANES)分光法を用い、S-CH
と大気O
との反応によりPA骨格に結合したS(O)CH
や-SO
など酸化生成物が選択的に生じることを示した。硫黄の酸化状態とXANESピーク位置との相関から、CH
S
-PA
の部分電荷分布を評価した。陽電荷的な硫黄原子は高い電気陰性度の酸素原子をより引き付け、更なる光酸化を促進すると期待できる。SO
側鎖が生成していることから、明らかにPA骨格へのホールドーピングが起こっている。本結果はUV光照射を用いた原子レベルにおけるドーピング制御や空間選択ドーピングといった創製戦略を提供する。
下山 巖; 馬場 祐治; 平尾 法恵*
Applied Surface Science, 405, p.255 - 266, 2017/05
被引用回数:1 パーセンタイル:6.67(Chemistry, Physical)イオンビームによりヘテロ原子ドーピングを行ったグラファイト基板上に蒸着したポリジメチルシラン(PDMS)薄膜の配向構造を調べるため、吸収端近傍X線吸収微細構造(NEXAFS)分光法を用いた。Si 端NEXAFSスペクトルは非照射基板上とN
照射基板上で互いに逆の傾向を示す偏光依存性を示し、Ar
イオン照射基板上では偏光依存性を示さなかった。第一原理計算によるNEXAFSスペクトルの理論的解釈に基づき、PDMSは非照射基板で水平配向、N
照射基板上で垂直配向、Ar+イオン照射基板上でランダム配向をとることがわかった。我々はさらに光電子顕微鏡を用いた分析を行い、同一基板上で照射・非照射領域が分離した表面でPDMS薄膜が
mオーダーで異なる配向を持ちうることを見いだした。これらの結果は集光イオンビームを用いたグラファイトの表面改質が有機薄膜のための新たな微細配向制御法となる可能性を示唆している。
下山 巖; 馬場 祐治
DV-X研究協会会報, 28(1&2), p.62 - 69, 2016/03
触媒として注目されているリンドープグラファイトに対しドーパントの効果を調べるため、吸収端近傍X線吸収微細構造(NEXAFS)分光法によりPサイトの電子構造を調べた。70Cの高温ドーピングで作製した試料のP K端NEXAFSスペクトルにはグラファイト的な偏光依存性が観測され、リンサイトが平面構造をとることを明らかにした。配位数の異なる複数の平面リンサイトのモデルクラスターについてDVX
法による電子構造解析を行い、NEXAFSスペクトルと比較したところ、炭素3配位の平面構造を持つグラファイト構造のPサイトがNEXAFSスペクトルを最もよく再現することがわかった。一方、室温ドーピングと800
Cのアニーリングにより作製した試料では偏光依存性の低下が観測された。5員環を含んだ曲面構造のPサイトをもつモデルクラスターの電子構造計算により、NEXAFSの偏光依存性の低下とスペクトル形状の変化を説明できることがわかった。この結果はイオンドーピング時の温度によりリンサイトの局所構造を制御できることを示している。
下山 巖; 馬場 祐治; 関口 哲弘
DV-X研究協会会報, 27(1&2), p.34 - 44, 2015/03
共役系ホウ素窒化炭素化合物(B
C
N
)は触媒活性などの機能性が注目を集めている。しかし、その原子配置は不明である。我々はNEXAFS分光法のN吸収端でのスペクトルをDVX
法で解析し、原子配置に関する分極ルールを提案した。本発表ではB吸収端でのスペクトルから分極ルールを再検討した結果について報告する。B
C
N
のB及びNのNEXAFSスペクトルは六方晶窒化ホウ素(h-BN)のNEXAFSスペクトルの
ピークよりも低エネルギー側にブロードな成分を示し、偏光依存性解析からそれらの成分は面外遷移に帰属される。グラファイト構造BC
Nについて原子配置の異なる幾つかのモデルクラスターの
準位の電子状態をDVX
法により計算した。BC2NはB, Nどちらの内殻励起においてもh-BNよりも低い励起エネルギー領域に
準位を示した。B, C, N間で大きい分極をもつ原子配置の場合はB吸収端において大きい
ピーク強度を示すが、B, C, N間の分極が小さい原子配置の場合は逆の傾向を示すことから、B吸収端のNEXAFSスペクトルの結果も分極ルールの存在を支持することがわかった。
下山 巖; 箱田 照幸; 島田 明彦; 馬場 祐治
Carbon, 81, p.260 - 271, 2015/01
被引用回数:23 パーセンタイル:60.38(Chemistry, Physical)イオン注入法で作製したPドープグラファイトのドーパントサイトの局所構造と触媒活性との相関関係をX線吸収微細構造(NEXAFS)分光法と電気化学的手法により調べる。室温ドーピングを行った試料と高温でドーピングを行った試料はNEXAFSスペクトルの偏光依存性が異なり、高温ドーピングの試料はグラファイトのような明瞭な偏光依存性を示す。NEXAFSスペクトルを密度汎関数理論計算により解釈し、Pサイトの化学結合状態について考察する。また、酸水溶液を用いた電気化学測定において、偏光依存性の大きい試料は酸素還元反応の触媒活性をほとんど示さなかったが、偏光依存性の小さい試料では触媒活性を示す。このことはドーパントサイトの立体配置が触媒活性に影響することを示唆しており、曲面構造の導入が炭素系触媒設計において重要であるとの指針を与える。
関口 哲弘; 馬場 祐治; 下山 巖; Nath, K. G.
Surface and Interface Analysis, 38(4), p.352 - 356, 2006/04
被引用回数:3 パーセンタイル:7.44(Chemistry, Physical)部分電子収量(PEY)法と光刺激イオン脱離(PSID)法とを組合せた新しいX線吸収端微細構造(NEXAFS)分光法の開発を行った。その開発された検出器を用いてFイオン照射により表面修飾を施したグラファイト最表面における結合配向を調べた。PEY法により測定されたフッ素1s内殻励起準位の角度依存NEXAFSスペクトルには大きな偏光角度依存は認められなかった。それに対し、飛行時間質量分析法によりF
イオンを検出し、その収量を縦軸とするNEXAFSスペクトルを得た。F
イオン収量スペクトルは吸収スペクトルと異なり=C-Fサイトに由来する
*(C-F)励起において強度増強された。またそのピークのみピーク面積が顕著に偏光角度に依存した。イオン脱離と二次電子放出のそれぞれの観測深さを見積もり考察を行った。イオン収量XAFSは表面敏感であり、電子収量XAFSはバルク敏感であると結論した。またH
イオンやF
イオンの収量XAFSスペクトルも表面構造や解離・脱離過程に関して有用な知見を与えることもわかった。
関口 哲弘; 馬場 祐治; 下山 巖; Wu, G.*; 北島 義典*
Surface Science, 593(1-3), p.310 - 317, 2005/11
被引用回数:2 パーセンタイル:11.94(Chemistry, Physical)回転型飛行時間質量分析装置(R-TOF-MS)を用いて、分子固体表面最上層で起こる結合解離と脱離過程における分子配向効果を研究した。凝縮塩化ベンゼンの質量スペクトル,電子収量法,イオン収量法による高分解能NEXAFSスペクトルの偏光角度依存性を報告する。凝集分子ではCl 2s*
共鳴励起でCl
イオン収量が増加する現象に関して顕著な配向効果が観測された。下層による緩和に表面上の分子の結合方向が大きく影響を受けることから、この配向効果には電荷中性化緩和が重要な役割を果たしている。
*
共鳴励起では偏光依存性を全く示さなかった。このことから離れた原子を内殻励起しても「遠い」結合には直接解離が起こらず、おもに2次電子により解離が引き起こされるものと考察する。
池浦 広美*; 関口 哲弘; 馬場 祐治; 今村 元泰*; 松林 信行*; 島田 広道*
Surface Science, 593(1-3), p.303 - 309, 2005/11
被引用回数:5 パーセンタイル:26.6(Chemistry, Physical)われわれが近年開発した脱離イオン種をプローブとする(XAFS)分光法の基礎データ拡充のため、ホルムアミド分子の凝縮系試料の実験を行った。分子内のC, N, O元素におけるXAFS測定が可能でありC-H, N-H結合を区別して最表面の配向構造分析することが可能であることが示された。さまざまなX線励起エネルギー,生成物種,励起偏光角度について測定した飛行時間質量スペクトルから生成物が放出される際の初期運動エネルギーを求め、イオン脱離機構を調べた。運動エネルギーは発生メカニズム(直接解離/間接解離機構)を大きく反映すること、また多成分存在することが示された。
関口 哲弘; 馬場 祐治; 下山 巖; Nath, K. G.*; Uddin, M. N.*
Journal of Physics; Condensed Matter, 17(36), p.5453 - 5466, 2005/09
被引用回数:1 パーセンタイル:6.38(Physics, Condensed Matter)ハロゲン置換,NCO-基置換した有機シリコン化合物について、その凝集試料のSi K吸収端近傍におけるX線吸収スペクトル(NEXAFS)測定とその偏光依存性測定を行い、その電子状態及び分子配向性、特に配向性が発生する機構を明らかにした。凝集表面において分子間の双極子-双極子相互作用により反平行配置を取りやすく、それが系全体の平均配向として現れること、正四面体型分子に近い構造の場合ほど最密充填構造をとり水平配向度が高くなる傾向があるなどのことが明らかとなった。また、スペクトルの蒸着速度依存性測定から動力学的要因によっても分子軸配向が影響を受けることを明らかにした。
馬場 祐治; 関口 哲弘; 下山 巖; Nath, K. G.
Applied Surface Science, 237(1-4), p.176 - 180, 2004/10
被引用回数:7 パーセンタイル:38.14(Chemistry, Physical)炭化ケイ素(SiC)はシリコンに代わる次世代の半導体物質として期待されている。SiC薄膜の製造法の一つに、有機ケイ素化合物を用いた蒸着法が知られており、ミクロンオーダーの厚みを持つSiC薄膜が合成されている。本研究では、ナノメートルオーダーの厚みを持つ極薄SiCの構造を調べるため、テトラメチルシランを放電気体として用いたイオンビーム蒸着法により1原子層以下のSiCをグラファイト上に堆積させ、その電子構造を放射光光電子分光法,X線吸収微細構造法により調べた。その結果、0.1ナノメーターの厚みの蒸着層を850Cまで加熱すると、バルクのSiCと異なった二次元構造を持つSiCが生成することがわかった。この物質のX線吸収微細構造スペクトルの偏光依存性を測定したところ、Si原子周辺に
*軌道的な性質を持つ軌道が存在し、この
*軌道が表面に垂直であることがわかった。このことから、得られたSiC膜は、グラファイトと同様な二次元状の構造をとることが明らかとなった。
下山 巖; 馬場 祐治; 関口 哲弘; Nath, K. G.
表面科学, 25(9), p.555 - 561, 2004/09
六方晶窒化ホウ素(-BN)はグラファイト構造を持つ絶縁体であり、超薄膜絶縁体材料としての興味深いターゲットである。近年幾つかの遷移金属単結晶表面上にエピタキシャル
-BNモノレイヤーが形成されることが報告された。そのうちNi(111)は
-BNとの格子整合性が高いためエピタキシャル薄膜成長に対し有利であるがその薄膜-基板間相互作用については十分明らかになってはいない。そこでわれわれは吸収端近傍X線微細構造(NEXAFS)分光法を用いて
-BN/Ni(111)の電子構造を調べ、薄膜-基板間相互作用を明らかにすることを試みた。ボラジン(B
N
H
)を用いたCVD法によりNi(111)上に
-BN薄膜を形成し、そのB K端でのNEXAFSスペクトルを測定した。得られたスペクトルはバルク
-BNでは観測されない新しい
*ピークを示した。このピークの解釈のためモデルクラスターを用いたDV-X
分子起動計算を行い、新しいピークがおもにNi4p軌道と
-BNの
*軌道との混成により生じたものであることを明らかにした。この結果からわれわれは
-BNモノレイヤーとNi(111)基板は化学吸着的な強い相互作用を持つと結論した。
下山 巖; 馬場 祐治; 関口 哲弘; Nath, K. G.
Journal of Electron Spectroscopy and Related Phenomena, 137-140, p.573 - 578, 2004/07
被引用回数:26 パーセンタイル:72.41(Spectroscopy)六方晶窒化ホウ素(h-BN)はグラファイト構造の2次元的な異方性を持つワイドバンドギャップ化合物であり、超薄膜絶縁体の材料として興味深い対象である。近年そのエピタキシャル薄膜がNi(111)上に形成されることが明らかになった。そこでわれわれは吸収端近傍X線微細構造(NEXAFS)分光法を用いてこのエピタキシャル薄膜の電子構造を調べた。h-BNエピタキシャル薄膜生成にはボラジン(BN
H
)を用いた。真空中で加熱したNi(111)基板にボラジンガスを吹き付けることによって約1
2層のh-BN薄膜を得た。薄膜とバルクの電子構造の違いを調べるため両者のNEXAFSスペクトルを測定した。バルクh-BNはホウ素K吸収端のNEXAFSスペクトルにおいて1s
*遷移に帰属される特徴的な一本の
*ピークを示す。一方h-BN薄膜のスペクトルはバルクのスペクトルに観測された
*ピークの高エネルギー側に新しいピークを示した。NEXAFSスペクトルの偏光依存性解析によりこのピークは
*ピークに帰属された。この結果はh-BNエピタキシャル薄膜の
*バンドがバルクh-BNの
*バンドと明らかに異なることを示しており、基板との相互作用によりh-BNの伝導帯における電子構造の変容が生じたことを示唆している。
藤井 健太郎; 赤松 憲; 横谷 明徳
Journal of Physical Chemistry B, 108(23), p.8031 - 8035, 2004/06
被引用回数:50 パーセンタイル:76.61(Chemistry, Physical)本研究では放射線の標的分子としてDNAを用い、DNA薄膜やAdenine, Guanine, Cytosine, ThymineあるいはUracilといったDNA(RNA)構成塩基薄膜のNEXAFSスペクトルを測定した。これまで幾つかの光吸収スペクトル測定研究が、放射線のトラックエンドで発生する2次電子と同じエネルギー領域の放射光を用いて行われてきた。DNA構成塩基のNEXAFSスペクトルについては、吸収モードが、DNA中での炭素,窒素の周囲の化学的環境に大きく依存し、特徴のある微細構造を吸収スペクトルに与えることが明らかにされた。しかし、DNA及び関連分子の吸収微細構造を与える電子状態を分子軌道法による計算から帰属した例は少ない。そこで本研究では、DNA薄膜及びDNA構成塩基薄膜のNEXAFSスペクトルを測定し、電子状態についての帰属を試みた。さらにピーク強度の入射光偏光依存性から、基板上での核酸塩基分子の自立配向についての知見を得たので、これを報告する。
関口 哲弘; 池浦 広美*; 馬場 祐治
Surface Science, 532-535(1-3), p.1079 - 1084, 2003/06
最近開発された回転型飛行時間質量分析装置(R-TOF-MS)と直線偏光放射光を用いて、分子固体表面最上層で起こる結合解離と脱離過程における分子配向効果を研究した。講演では凝縮ギ酸,ホルムアミド,ベンゼンの質量スペクトル,電子収量法,イオン収量法による高分解能NEXAFSスペクトルの偏光角度依存性を報告する。凝集ホルムアミド分子ではC1s
*
共鳴励起でH
イオン収量が増加する現象に関して顕著な配向効果が観測された。下層からの励起緩和には表面上の分子の結合方向が大きく影響を受けることから、この配向効果には内殻軌道励起による直接解離過程と電荷中性化緩和の両方が起こっていることが重要な役割を果たしていると結論された。また、あるイオン種は偏光依存性を全く示さなかった。例えば、HCOND
においてC1s励起によるD
イオン収量がそうであった。このことから内殻電子励起しても励起された原子から「遠い」結合には必ずしも直接的な解離は起こらず、解離が起こるとすれば2次電子により引き起こされるものと結論した。
馬場 祐治
Trends in Vacuum Science & Technology, Vol.5, p.45 - 74, 2002/10
100eVから3keVの軟X線を固体に照射したときに表面で起こる化学反応に関し、分解イオンの脱離反応を中心に解説した。主として取り扱った系は、内殻電子励起による吸着系,凝縮系,固体分子からの正イオンの脱離である。内殻軌道から価電子帯の非占有軌道への共鳴励起に対応するエネルギーのX線を照射すると、特定の元素周辺や、特定の化学結合を選択的に切断して特定の分解イオンを表面から脱離させることができる。このような選択性は、第三周期元素の1s軌道から4p軌道への共鳴励起において特に顕著に現れる。共鳴励起後の脱励起は主としてオージェ遷移によって起こることから、内殻イオン化閾値付近のX線エネルギーにおいてオージェ電子スペクトルも測定した。一連の研究で観測された高選択的なイオン脱離反応の機構に関し、電子及び脱離イオン強度のX線エネルギー依存性とオージェ電子スペクトルの結果に基づいて詳細に議論した。
馬場 祐治; 下山 巖; 関口 哲弘
表面科学, 23(7), p.417 - 422, 2002/07
固体炭素は二種類の局所構造、すなわちダイヤモンド構造と二次元グラファイト構造をとるのに対し、炭化ケイ素はsp3結合でできたダイヤモンド構造のみをとることが知られている。グラファイト状の構造をした二次元SixC層が存在し得るかどうかを明らかにするため、グラファイト単結晶(HOPG)にSiイオンを注入して作成したSixC膜の局所構造をX線吸収端微細構造法(NEXAFS)により調べた。Si
イオンを注入した試料のSi K-吸収端のNEXAFSスペクトルに現れる共鳴吸収ピークは、他のどんなシリコン化合物の場合より低いエネルギーに観測された。また、このピーク強度の偏光依存性から、励起先の非占有軌道が
*軌道的性質を持つこと、またその軌道の方向がグラファイト面に垂直に近いことがわかった。このことから、Si
イオン注入によって生成したSi-C結合はグラファイト面にほぼ平行であり、SixC層はsp2結合でできたグラファイト状の二次元構造をしていることが明らかとなった。
下山 巖
放射光, 15(1), p.12 - 19, 2002/01
窒化炭素はダイヤモンドを越える超硬物質となる可能性が指摘されており、その合成が盛んに試みられているが、合成された材料の原子レベルでの構造はまだ不明な点が多い。われわれのグループでは放射光の偏光特性を用いて窒化炭素薄膜の原子レベルの局所構造を調べ、薄膜中にC≡N三重結合をもつシアン構造、C=Nに重結合をもつピリジン構造,グラファイトのCがNで置換されたグラファイト構造の3つが存在することを明らかにした。本論文では窒化炭素薄膜の局所構造解析に用いた吸収端近傍X線吸収微細構造(NEXAFS)の手法と結果を詳しく解説するとともに、X線光電子分光法(XPS)との比較からその有用性について論じた。
下山 巖; Wu, G.; 関口 哲弘; 馬場 祐治
Journal of Electron Spectroscopy and Related Phenomena, 114-116, p.841 - 848, 2001/03
被引用回数:46 パーセンタイル:86.2(Spectroscopy)窒化炭素(CN)化合物は近年新しい材料として注目を集め、六方晶, 立方晶など固体でのさまざまな構造が提案されている。しかしこれまで合成されたCN
化合物の構造はまだ十分明らかにはなっていない。この新物質の構造を調べるためわれわれは炭素の最も基本的な構造の一つであるグラファイトに低エネルギーの窒素イオンを打ち込み、その構造を吸収端近傍X線微細構造(NEXAFS)法を用いて調べた。NEXAFSの大きな特徴は偏光依存性測定を行える点にある。偏向磁石から放射されたシンクロトロン放射光は直線偏光を持つため、吸収係数が電場ベクトルEと分子軌道方向との角度に依存する。よって偏光依存性測定を行うことにより系の配向に関する情報を得ることができる。われわれは3keVの低エネルギー窒素イオンを1.7
10
ion/cm
のフルエンスでグラファイトに打ち込み、軟X線のさまざまな入射角におけるN 1s NEXAFSをin situで測定した。その結果、3つの
*共鳴構造と1つの
*共鳴構造を得た。
*と
*共鳴構造の強度は軟X線の入射角に依存し、
*共鳴構造は斜入射において大きく
*共鳴構造は直入射において大きくなるという結果を得た。この結果はグラファイトのC 1s NEXAFSの傾向と似ており、合成されたCN
薄膜がグラファイト構造に似た層状構造をとることを示唆している。そこで我々は各々の共鳴構造の帰属を行うため各ピーク強度の入射角依存性を解析し、CN
薄膜が少なくとも3種類の微細構造をもつこと、さらにそのうちの一つが窒素置換されたグラファイト構造をとることを明らかにした。
関口 広美*; 関口 哲弘
Surface Science, 433-435, p.549 - 553, 1999/00
被引用回数:26 パーセンタイル:77.21(Chemistry, Physical)SiC材料に関連した系であるSi(100)21基板上の単分子吸着ギ酸(HCOO)の構造(結合角)を炭素KVV-オージェ電子収量法によるX線吸収端微細構造(NEXAFS)測定により調べた。NEXAFSスペクトルの各ピーク強度は顕著な偏光角依存性を示した。観測された4本の共鳴ピークは吸着フォルメート(HCOO)の分子面外遷移(
)と3本の分子面内遷移(
)と帰属された。双極子遷移の選択則からCHO分子面は表面垂直(
100
方向)に対し21
2°傾いていると結論された。電子線回折実験によると気相HCOOSiH
分子のO=C-O-Siの二面体角は21°であり、吸着種のCHO面の傾き角とよく一致している。ギ酸メチル(HCOOCH
)では相当するねじれ構造はなく、この違いはSi-O
結合にイオン性寄与があることに起因すると示唆された。
関口 広美*; 関口 哲弘
Atomic Collision Research in Japan, No.24, p.116 - 117, 1998/11
SiCやSiOの薄膜合成に関連して、Si上の簡単な有機物分子の吸着構造や相互作用を調べる研究が数多く行われている。本研究は放射光の直線偏光を利用し、Si(100)2x1基板上の単分子吸着ギ酸の構造(結合角)を光吸収スペクトル(即ち、X線吸収端微細構造(NEXAFS))の偏光依存性を測定することにより調べた。NEXAFSに観測された4本の共鳴ピークは吸着ホルメート基(HCOO)の分子面外遷移(
)と3本の分子面内遷移(
)とに帰属された。双極子遷移の選択則からHCOO分子面は表面垂直(
100
方向)に対し21
2°傾いていると結論された。電子線回折実験による気相HCOOSiH
分子の構造及び電子状態に関する情報を用い、吸着種のHCOO面の傾き角の起源を考察した。