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報告書

福島第一原子力発電所2号機原子炉格納容器貫通部X-6内の堆積物の分析

米山 海; 二田 郁子; 田中 康之; 小高 典康; 菊池 里玖; 坂野 琢真; 古瀬 貴広; 佐藤 宗一; 三本木 満; 田中 康介

JAEA-Technology 2025-008, 44 Pages, 2025/12

JAEA-Technology-2025-008.pdf:4.3MB

東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所(1F)の廃炉に向け、原子炉建屋格納容器内部の調査が行われている。燃料デブリの取出しや建屋解体の作業を安全に進めるためには、汚染状況を把握し、作業の計画や作業者の被ばくを管理する必要がある。本件は、2号機原子炉格納容器貫通部X-6(X-6ペネ)内の堆積物について、含まれる元素、放射性核種濃度、核種組成を把握することを目的に分析を実施した。本分析の対象試料は、スミヤろ紙に付着したX-6ペネ内部の堆積物である。堆積物に含まれる$$gamma$$核種の把握、また、元素や元素の共存の様子を把握するため、非破壊分析として$$gamma$$線スペクトル分析、蛍光X線(XRF)分析、走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線(SEM-EDX)分析を実施した。さらに、堆積物に含まれる放射性核種やその組成を詳細に明らかにするために、堆積物を硝酸及びフッ化水素酸で溶解し、溶解液中の$$gamma$$核種、Sr-90及び$$alpha$$核種の放射能分析を実施した。得られた結果を、2020年にX-6ペネ内の異なる場所で採取された堆積物の分析結果と比較した。非破壊での$$gamma$$線スペクトル分析では、Co-60、Sb-125、Cs-134、Cs-137、Eu-154、Eu-155及びAm-241が検出された。XRF分析では、格納容器内の構造物由来と考えられるFeが主要な元素として検出され、そのほか燃料や燃料被覆管に由来すると考えられる微量のU及びZrが検出された。SEMEDX分析の結果では、堆積物の主要な元素としてOとFeが検出されたことに加え、Uを含む粒子が観察され、UとともにFe、Si、Cr、Ni、Zrが検出された。これらの結果は2020年採取試料と同様の傾向であった。放射能分析では、非破壊測定で検出された$$gamma$$核種(Co-60、Sb-125、Cs-134、Cs-137、Eu-154、Eu-155)に加えて、Sr-90、Pu-238、Pu-239+240、Am-241、Cm-244、U-235、U-238の定量値を得た。これらの結果をもとに、1F事故に由来する汚染の主要な$$gamma$$線放出核種であるCs-137を基準とした放射能比を算出した。さらに、U-238に対する放射能比についても算出し、ORIGENによる2号機の燃料組成の計算値と比較した。

報告書

JAEA原災法対象施設における四足歩行ロボットの走行機能確認

渡辺 夏帆; 西山 裕; 今橋 正樹; 田口 祐司; 飯塚 由伸; 大内 卓哉; 井上 修一; 小澤 太教; 根本 隆弘; 菅谷 孝; et al.

JAEA-Testing 2025-001, 56 Pages, 2025/11

JAEA-Testing-2025-001.pdf:2.61MB

日本原子力研究開発機構(JAEA)福島廃炉安全工学研究所安全管理部遠隔機材運用課(旧:楢葉遠隔技術開発センター(Naraha Center for Remote Control Technology Development (NARREC))遠隔機材整備運用課)(以下「運用課」という。)所管の原子力緊急事態支援組織は、JAEA各拠点の防災業務計画に定められた遠隔機材を発災時に備え管理している。当該防災業務計画の対象は、原子力科学研究所のJRR-3 (Japan Research Reactor-3)、核燃料サイクル工学研究所の再処理施設、大洗原子力工学研究所の材料試験炉JMTR (Japan Materials Testing Reactor)、高温工学試験研究炉HTTR (High Temperature Engineering Test Reactor)及び高速実験炉常陽、高速増殖原型炉もんじゅ及び新型転換炉原型炉ふげんの7施設である。運用課は、令和3年度に当該7施設の想定発災事象・現場及び走行ルートの調査を行った。その結果、特定の現場において、現有のクローラタイプの走行ロボットの使用よりも操作要員の被ばくを低減できると判断し、令和4年度に四足歩行ロボットSpotを調達した。そして令和5年度に、当該各走行ルートにおいて、映像確認、階段走行等、Spotの機能が問題なく実行できるか、確認を行った。本報告書は、現地において令和5年度に確認試験を実施した6施設(JRR-3、JMTR、HTTR、常陽、もんじゅ及びふげん)について、その走行機能確認の結果を示したものである。

報告書

原子力緊急事態への対応における専門家支援ツールEXTREMEユーザーマニュアル

原子力安全・防災研究所 安全研究センター リスク評価・防災研究グループ

JAEA-Testing 2025-004, 75 Pages, 2025/10

JAEA-Testing-2025-004.pdf:3.13MB

原子力施設で緊急事態が発生した場合には、施設周辺の公衆への放射線被ばくを低減するため、避難や屋内退避などの防護措置が実施される。これらの防護措置の必要性を判断する際には、刻々と変化する施設内外の状況及びそれに伴って得られる各種の情報を適切に反映し、放射性核種の大気への放出源情報(ソースターム)の推定から周辺環境への放射線影響までを迅速かつ一貫して評価する必要がある。日本原子力研究開発機構では、原子力緊急事態に実際に対応する段階において、防護措置に関する判断を行う意思決定者を支援するため、迅速かつ一貫した評価を可能とするための専門家支援ツールEXTREMEを開発した。同ツールは、事故進展並びに環境中移行及び被ばく線量評価のための簡易モデルを実装し、また、ユーザーが容易に操作できるようにPCベースのグラフィカル・ユーザー・インターフェイス(GUI)で利用することができる。本報告書では、開発・整備した支援ツールの使用方法について、GUIの構成と計算の流れを中心にして記述する。本支援ツールを利用することにより、原子力緊急事態において防護措置の判断や決定を行う意思決定者をより効果的に支援できることが期待される。

報告書

福島原子力発電所事故由来の難固定核種の新規ハイブリッド固化への挑戦と合理的な処分概念の構築・安全評価(委託研究); 令和5年度英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業

廃炉環境国際共同研究センター; 東京科学大学*

JAEA-Review 2025-016, 143 Pages, 2025/10

JAEA-Review-2025-016.pdf:10.71MB

日本原子力研究開発機構(JAEA)廃炉環境国際共同研究センター(CLADS)では、令和5年度英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業(以下、「本事業」という。)を実施している。本事業は、東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所(以下、「1F」という。)の廃炉等をはじめとした原子力分野の課題解決に貢献するため、国内外の英知を結集し、様々な分野の知見や経験を従前の機関や分野の壁を越えて緊密に融合・連携させた基礎的・基盤的研究及び人材育成を推進することを目的としている。平成30年度の新規採択課題から実施主体を文部科学省からJAEAに移行することで、JAEAとアカデミアとの連携を強化し、廃炉に資する中長期的な研究開発・人材育成をより安定的かつ継続的に実施する体制を構築した。本研究は、令和3年度に採択された研究課題のうち、「福島原子力発電所事故由来の難固定核種の新規ハイブリッド固化への挑戦と合理的な処分概念の構築・安全評価」の令和3年度から令和5年度分の研究成果について取りまとめたものである。本研究は、1F事故で発生した多様な廃棄物を対象とし、固定化が難しく長期被ばく線量を支配するヨウ素(I)、$$alpha$$核種のマイナーアクチノイド(MA)に注目し、これらのセラミクス1次固化体を、さらに特性評価モデルに実績を有するSUSやジルカロイといったマトリクス材料中に熱間等方圧加圧法(HIP)等で固定化した"ハイブリッド固化体"とすることを提案する。核種閉じ込めの多重化、長期評価モデルの信頼性の向上により実効性・実用性のある廃棄体とし、処分概念を具体化する。潜在的有害度及び核種移行の観点から処分後の被ばく線量評価を行い、安全かつ合理的な廃棄体化法、処分方法の構築を目的としている。最終年度の令和5年度は、廃棄物合成から処分検討までの全サブテーマを結節させ、ハイブリッド固化体概念の有効性を提示した。多様な廃棄物としてALPS、AREVA沈殿系廃棄物、AgI、廃銀吸着剤、セリア吸着剤、ヨウ素アパタイト等と多様な金属や酸化物マトリクスとの適合性を、本研究で提案した迅速焼結可能なSPS法で探査後にHIP法での廃棄体化挙動を調べる方法により調査し、多くの廃棄物にとりステンレス鋼(SUS)をマトリクスとしたハイブリッド固化体が優位であることを明らかにした。さらに、核種移行計算をベースとした廃棄物処分概念検討を実施し、1F廃炉研究において、初めて廃棄物合成から安全評価までを結節させることに成功した。

報告書

原子力緊急事態への対応における専門家支援ツールEXTREME

原子力安全・防災研究所 安全研究センター リスク評価・防災研究グループ

JAEA-Data/Code 2025-010, 110 Pages, 2025/10

JAEA-Data-Code-2025-010.pdf:4.07MB

原子力施設で緊急事態が発生した場合には、施設周辺の公衆への放射線被ばくを低減するため、避難や屋内退避などの防護措置が実施される。これらの防護措置の必要性を判断する際には、刻々と変化する施設内外の状況及びそれに伴って得られる各種の情報を適切に反映し、放射性物質の大気への放出源情報(ソースターム)から周辺環境への放射線影響までを迅速かつ一貫して評価する必要がある。しかし、施設内外の状況や各種情報は膨大な量であり、かつ、判断の根拠として利用可能なものとして提供するためにはそれらの情報を適宜、適切に処理しなければならず、炉内情報や被ばく評価に関する専門知識とそれらを処理するための事前の準備が不可欠である。本研究では、上記のような背景の下、原子力緊急事態の防護措置の判断において、膨大な情報を迅速に処理し判断の根拠となる情報を提供することを目的として、原子力緊急事態への対応における専門家支援ツールEXTREME(EXpert support Tool for Responding to a nuclear EMErgency)を開発した。このツールは、炉内情報をもとに簡易ソースタームを評価する機能と、その結果に基づいて施設周辺での被ばく線量を評価する機能を有しており、また、緊急時においてもユーザーが容易に操作できるようにPCベースのグラフィカル・ユーザー・インターフェース(GUI)も実装している。本報告書では、これらの機能において用いられている解析モデルと入出力データファイル並びに試計算結果について記載した。

論文

炭酸ラジカルをプローブとした新規線量計の開発

横塚 恵莉*; 清藤 一*; 岡 壽崇; 熊谷 友多; 長澤 尚胤*

Isotope News, (801), p.46 - 48, 2025/10

放射線によって歯のエナメル質に生成する長寿命の炭酸ラジカルを電子スピン共鳴(ESR)測定することで被ばく線量評価を行うESR線量評価法は、Gyオーダーの線量を検出できるだけでなく、従来のアラニン線量計と比べて高感度なため1Gy未満の線量も評価できる。そこで、本研究では、炭酸ラジカルをプローブとした広線量域測定可能な線量計を開発するため、新規線量計基材として歯の再生材料である炭酸アパタイトを合成した。吸収線量に対する炭酸アパタイトの炭酸ラジカルの強度は線量の増加に対して線形性を示したことから、新規線量計の素子材料として使用できることがわかった。

論文

放射能汚染の定量的3次元可視化に挑む統合型放射線イメージングシステムの開発

佐藤 優樹

倉田奨励金研究報告書(インターネット), 54, 3 Pages, 2025/10

福島第一原子力発電所の廃止措置において、作業員の被ばくを減らし、効果的な除染を行うためには、放射能汚染の正確な位置特定が重要である。本研究ではコンプトンカメラで取得した放射線源のイメージに逆推定技術を適用し、複数の放射線源の3次元的な位置と放射能レベルを特定する手法を提案した。複数の既知の放射線源のイメージを準備し、係数を乗じて足し合わせて未知の放射線源のイメージを再現することで、未知の放射能を推定するものである。

論文

Negligible tritium accumulation in Japanese flounder from treated water released from Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant; A Numerical simulation study

池之上 翼; 谷 享*; 川村 英之; 佐藤 雄飛*

Environmental Science & Technology, 7 Pages, 2025/09

 被引用回数:0 パーセンタイル:0.00

2023年以降、福島第一原子力発電所(1F)事故由来のトリチウムを含むALPS処理水が海洋放出されている。福島沿岸で採取された海産物のモニタリングの結果はトリチウム濃度の増加はごくわずかであることが示した。しかし、このモニタリングには、データ公開の遅れやサンプル数の制限といった制約がある。したがって、海産物に高濃度のトリチウムが蓄積する可能性を正確に評価するためには、予測による推定が必要である。本研究では、数値シミュレーションを用いて福島沿岸におけるヒラメ中トリチウム濃度を推定した。この推定では、トリチウム水(HTO)の海洋拡散モデルと海洋生物へのトリチウム移行モデルを組み合わせた。ヒラメへのトリチウムの蓄積は、生物中に長期間留まるトリチウムの化学形態である有機結合型トリチウム(OBT)として評価された。まず、海洋拡散モデルの再現性を福島沿岸の実測データを用いて検証し、計算結果と実測データとがよく一致することを確認した。次に、1Fからのトリチウム放出量を仮想的に最大と設定した場合のヒラメ中OBT濃度を推定した。その結果、1Fから100km以内の距離の場所であっても、OBTの最大濃度は環境水中のトリチウムの自然レベルと同程度であることが示された。また、本研究で推定されたヒラメ中OBT濃度の最大値に基づくと、ヒラメの摂取による内部被ばく量は無視できるレベルであった。

論文

Equivalent relative biological effectiveness for cell survival and micronuclei formation; Insights from a biophysical approach

松谷 悠佑; 嵯峨 涼*; Wang, Y.*; 佐藤 達彦

Medical Physics, 52(10), p.e70040_1 - e70040_14, 2025/09

放射線誘発微小核(micronuclei, MN)は染色体断片であり、近年、比較的早期に検出可能な染色体異常の定量的指標として使用されている。近年、MN形成を評価する技術は注目を集めているものの、MNの意義とそれに伴う細胞応答は未だ解明されていない。本研究では、被ばく後の細胞生存率を予測可能なintegrated microdosimetric-kinetic(IMK)モデルを拡張し、MN頻度を推定する生物物理学的モデルを提示し、MN形成に伴う細胞応答を理論的に検討した。本モデルは、修復不全による致死損傷からのMN形成確率を導入することで、線エネルギー付与や線量率に依存したMN形成頻度の予測に成功した。また、同モデルを使用した解析により、同一照射条件下では、細胞生存率とMN頻度に対する生物学的効果比は同等であることが確認された。本成果は、MNが放射線治療と放射線防護の双方において、被ばく後早期における治療効果と組織学的損傷を定量的に評価するために有用であることを示唆している。

論文

Remote size reduction by hydraulic cutter with buffer device attached to robotic arm using visual support system

井口 啓; 吉田 将冬; 平野 宏志*; 和田 政臣*; 森 敬仁*; 北村 哲浩

Journal of Robotics and Mechatronics, 37(4), p.973 - 983, 2025/08

核燃料製造施設におけるグローブボックスや内装設備の解体は、通常手作業で行われている。ロボットアーム等を用いた遠隔解体技術の導入により、解体作業における作業効率の向上と被ばくリスクの低減が期待される。油圧カッターはグローブボックスの鉄骨構造を切断するための効率的なツールの一つと考えられているが、ロボットアームに取り付けた油圧カッターで対象物を遠隔切断する場合、その反力によりロボットアームや周辺の構造物を損傷する可能性がある。そのため、本研究では油圧カッターによる切断時の反力を吸収する「緩衝機構」を設計、製作し、機能確認のための鋼材切断試験を実施した。さらに「緩衝機構」を搭載したロボットアームと作業環境を3Dビューワに投影し、遠隔解体作業を支援する視覚支援システムを開発し、今回の切断試験でその機能確認を行った。その結果、「緩衝機構」が油圧カッターによる切断時の急激な動きを吸収し、ロボットアームの損傷を防いだことから「緩衝機構」が意図したとおりに機能することが確認できた。また、3Dビューワはロボットアームのオペレータに死角のないクリアな視界を提供し、視覚支援システムが油圧カッター等の解体ツールを使用した遠隔解体に有効であることを確認した。

論文

核医学治療における内部被ばく線量計算法の最近の動向; モンテカルロ法

佐藤 達彦

Radioisotopes, 74(2), p.183 - 188, 2025/07

モンテカルロ放射線挙動解析コードは、その計算精度が極めて高いため、様々な放射線治療に対する線量評価に活用されている。核医学治療分野においても、SPECT/CTやPET/CT画像をモンテカルロコードの入力ファイルに自動変換して実行し、得られた線量分布を解析するシステムの開発が世界各地で進められている。本稿では、そのシステム開発の現状について紹介するとともに、現在、我々が開発を進めているRT-PHITS (RadioTherapy package based on PHITS)の核医学関連機能について解説する。

報告書

2023年度楢葉遠隔技術開発センター年報

福島廃炉安全工学研究所 楢葉遠隔技術開発センター

JAEA-Review 2025-017, 43 Pages, 2025/06

JAEA-Review-2025-017.pdf:2.73MB

楢葉遠隔技術開発センターは、東京電力ホールディングス株式会社が実施する福島第一原子力発電所の廃炉作業に資するため、遠隔操作機器・装置による廃炉作業の実証試験・要素試験が実施できる施設・設備を有している。2023年度は88件の施設利用を支援し、福島第一原子力発電所廃炉作業等に貢献した。また、福島第一原子力発電所の廃炉・除染に携わる事業者、災害対応分野においてロボット技術等を必要としている事業者との技術マッチングの機会として開催された廃炉・災害対応ロボット関連技術展示実演会に出展し、地域活性化・福島県の産業復興に協力した。さらに、第8回廃炉創造ロボコン等の支援を通じて、長期にわたる福島第一原子力発電所の廃炉関連業務を担う次世代の人材育成に貢献した。2020年度から開始した楢葉町教育委員会が実施している「ならはっ子こども教室」等への協力として、楢葉町小学生を対象とした遠隔ロボット操作及びVRの体験会並びに楢葉町中学生を対象としたキャリアスクールを実施し、地域教育活動に貢献した。また、2023年度に採択された「廃炉・汚染水・処理水対策事業費補助金(原子炉建屋内の環境改善のための技術の開発(被ばく低減のための環境・線源分布のデジタル化技術の高機能化開発))」に関する補助事業の開発業務を計画通りに進めた。本報告書は、2023年度における楢葉遠隔技術開発センターの施設・設備の整備・利用状況及びそれに係る取組み、緊急時対応遠隔操作資機材の整備・訓練等の活動状況等について取りまとめたものである。

論文

Evaluating the effect of temporal variations in wind speed on sheltering effectiveness and developing a simplified correction method to account for these variations

廣内 淳; 高原 省五; 渡邊 正敏*

Journal of Radiological Protection, 45(2), p.021506_1 - 021506_13, 2025/05

 被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Environmental Sciences)

屋内退避は原子力発電所事故時の放射線被ばくを緩和するための重要な防護措置である。吸入被ばくを低減する屋内退避の効果は一般的に屋内外の積算線量の比である低減係数を用いて評価される。屋内での線量は主に自然換気率、浸透率、室内での沈着率に依存する。加えて、自然換気率は風速に依存する。今までの研究では、低減係数は一定値として扱われるか、風速一定の条件で計算された。しかしながら、実際には風速は変動する。本研究では風速の時間変化による低減係数への影響を調査し、これら変動を考慮するための簡易的な補正方法を開発した。結果として、風速の時間変化はファクター2程度の低減係数の違いを生じさせることを示した。さらに簡易補正方法を用いることで、補正した低減係数は、実際の風速変動を利用して計算した低減係数と平均で10%以内で一致した。さらに計算コストは20倍以上削減できることを示した。

論文

ICRU Report 95で提案された外部被ばくモニタリングの実用量について

遠藤 章

ESI-News, 43(2), p.37 - 41, 2025/04

国際放射線単位・測定委員会(ICRU)は、2020年に外部被ばくに係るモニタリング量(実用量)を改定するICRU Report 95を発表した。本稿では、ICRU、国際放射線防護委員会(ICRP)、日本の専門家等による議論の発展を概観し、ICRUが実用量を見直すに至った背景と経緯、さらには今後の対応や課題を解説する。これにより、新たな実用量に対する線量測定に携わる実務者の理解を深め、将来の円滑な導入に寄与する。

論文

Development of a compact detector for measurement of alpha contamination in piping

森下 祐樹; Peschet, L.; 山田 勉*; 中曽根 孝政*; 菅野 麻里奈*; 佐々木 美雪; 眞田 幸尚; 鳥居 建男*

Radiation Measurements, 183, p.107414_1 - 107414_6, 2025/04

 被引用回数:1 パーセンタイル:78.42(Nuclear Science & Technology)

原子力施設の廃止措置では、作業員がアルファ線を放出する核種に被ばくするのを防ぐために、配管の汚染を検査することが重要である。ガンマ線と中性子を使用する従来の方法では検出下限値が高いため、少量のアルファ核種の検出には不十分であった。この問題を解決するために、配管内で直接$$alpha$$核種を測定するためのコンパクトな検出器を開発した。この検出器は、アルファ粒子用のZnS(Ag)シンチレータとベータ粒子(ガンマ線)用のプラスチックシンチレータで構成され、小型の光電子増倍管に接続された。このシステムは、パルス形状弁別(PSD)によってアルファ線とベータ線を区別する高い精度を実証した。モンテカルロシミュレーションと実験測定により検出器の有効性が確認され、ベータ線とガンマ線に対する感度は無視できるほど小さく、かつ、アルファ粒子に対する検出効率は51.3%であった。この検出器は、福島第一原子力発電所の廃炉作業現場など、ベータ線とガンマ線のバックグラウンドが高い環境におけるアルファ線汚染の直接測定に効果的である。

報告書

試験研究用原子炉から発生する解体廃棄物に対するSCALE6.2.4付属のORIGENを用いた放射能評価手法の検討

富岡 大; 河内山 真美; 小曽根 健嗣; 仲田 久和; 坂井 章浩

JAEA-Technology 2024-023, 38 Pages, 2025/03

JAEA-Technology-2024-023.pdf:1.54MB

日本原子力研究開発機構は、我が国の研究施設等から発生する低レベル放射性廃棄物の浅地中埋設事業の実施主体である。これらの放射性廃棄物の放射能濃度に関する情報は、埋設事業の許可申請及びその適合性審査に向けた廃棄物埋設施設の設計や安全評価に不可欠である。このため、埋設事業センターでは、埋設対象廃棄物のうち試験研究用原子炉から発生する解体廃棄物について、放射化計算に基づく解体廃棄物の放射能評価手順の改良を進めている。今回、多群中性子スペクトルを用いてより精度の高い放射化計算が可能なORIGENコード(SCALE6.2.4に付属)の適用性を検討するため、これまで使用実績が多いORIGEN-Sコード(SCALE6.0に付属)との比較検証を行った。この検証では、炉心周辺の原子炉構造材の放射能分析データを取りまとめている立教大学研究炉の解体廃棄物を対象として両コードにより放射化計算を行った。その結果、ORIGENコードとORIGEN-Sコードの計算時間の差異はほとんどないこと、放射能濃度の評価値として前者は後者の0.8$$sim$$1.0倍の範囲となり、放射化学分析による放射能濃度と概ね0.5$$sim$$3.0倍の範囲でよく一致した結果から、ORIGENコードの適用性を確認した。さらに、原子炉構造材に含まれる微量元素の放射化を想定してORIGENコード及びORIGEN-Sコードによる放射化計算を行い、比較を行った。また、浅地中処分における被ばく線量評価上重要な170核種のうち大きな差が見られたものに対してその原因を核種毎に調べた。

報告書

令和5年度東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故に伴う放射性物質の分布データの集約(受託研究)

福島マップ事業対応部門横断グループ

JAEA-Technology 2024-017, 208 Pages, 2025/03

JAEA-Technology-2024-017.pdf:27.32MB

東京電力(株)福島第一原子力発電所(福島第一原発)事故による放射性物質の分布状況を平成23年6月より調査してきた。本報告書は、令和5年度の調査において得られた結果をまとめたものである。空間線量率については、走行サーベイ、平坦地上でのサーベイメータによる定点サーベイ、歩行サーベイ及び無人ヘリコプターサーベイを実施し、測定結果から空間線量率分布マップを作成するとともにその経時変化を分析した。放射性セシウムの土壌沈着量に関しては、in-situ測定及び土壌中深度分布調査をそれぞれ実施した。さらに、これまで蓄積した測定結果を基に空間線量率及び沈着量の実効半減期を評価した。モニタリングの重要度を相対的に評価するスコアマップを作成するとともに、スコアの年次変化について分析した。海水中のトリチウム濃度の評価結果を原子力規制庁へ報告する体制を構築・運用し、ALPS処理水の海洋への放出前後のトリチウム濃度の変動について解析評価した。令和5年度までに総合モニタリング計画に基づき実施された海域モニタリングの測定結果を集約するとともに、過去からの変動などに関して解析評価を行った。階層ベイズ統計手法を用いて、令和5年度調査での走行サーベイや歩行サーベイ等の調査により取得した空間線量率分布データを統合し、空間線量率統合マップを作成した。避難指示解除区域への帰還後に想定される複数の代表的な生活行動パターンを設定し、積算の被ばく線量を算出するとともに当該地方自治体・住民に向けた説明資料を作成した。これらの他、令和5年度測定結果のWebサイトでの公開、総合モニタリング計画に基づく放射線モニタリング及び環境試料分析測定データのCSV化を実施した。

報告書

原子力科学研究所等の放射線管理(2023年度)

原子力科学研究所 放射線管理部; 青森研究開発センター 保安管理課

JAEA-Review 2024-056, 113 Pages, 2025/03

JAEA-Review-2024-056.pdf:3.1MB

本報告書は、日本原子力研究開発機構の原子力科学研究部門原子力科学研究所、播磨放射光RIラボラトリー及び核燃料・バックエンド研究開発部門青森研究開発センターにおける放射線管理に関係する2023年度の活動をまとめたものである。これらの研究開発拠点で実施した放射線管理業務として、環境モニタリング、原子力施設及び放射線業務従事者の放射線管理、個人線量管理、放射線管理用機器の維持管理等について記載するとともに、放射線管理に関連する技術開発及び研究の概要を記載した。これらの研究開発拠点において、施設の運転・利用に伴って、保安規定等に定められた線量限度を超えて被ばくした放射線業務従事者はいなかった。また、各施設から放出された気体及び液体廃棄物の量とその濃度は保安規定等に定められた放出の基準値及び放出管理目標値を下回っており、これらに起因する周辺監視区域外における実効線量も保安規定等に定められた線量限度以下であった。放射線管理の実務及び放射線計測技術に関する技術開発・研究活動を継続実施した。

報告書

各事故シナリオにおける原子力サイトごとの被ばく線量と屋内退避時の被ばく低減係数の評価(受託研究)

廣内 淳; 渡邊 正敏*; 林 奈穂; 長久保 梓; 高原 省五

JAEA-Research 2024-015, 114 Pages, 2025/03

JAEA-Research-2024-015.pdf:10.03MB

原子力事故によって汚染された地域では、事故後の初期及び長期にわたって、居住環境での滞在を通じて放射線を被ばくする。同じ事故シナリオであっても、原子力サイトごとに気象条件や周辺環境が違うため被ばく線量が異なり、防護措置の一つである屋内退避をした場合の被ばく低減効果も異なる。事故初期において屋内退避をした場合に想定される被ばく線量、または想定される被ばく低減効果などの情報は、住民や原子力防災計画を策定する国・自治体にとって重要な情報となる。そこで本報告書では、日本における原子力施設を有するサイトで、過去のシビアアクシデント研究で示された3つのシナリオ、原子力規制委員会で定められている放出シナリオ、東京電力福島第一原子力発電所事故を想定したシナリオの5つの事故シナリオに対して、確率論的事故影響評価コードの一つであるOSCAARを用いて被ばく線量及び屋内退避による被ばく低減効果を評価した。被ばく低減効果はサイト間で約20%の違いが見られ、これは風速のサイト間の違いによることを示した。

論文

Effects of different accident scenarios and sites on the reduction factor used for expressing sheltering effectiveness

廣内 淳; 渡邊 正敏*; 林 奈穂; 長久保 梓; 高原 省五

Journal of Radiological Protection, 45(1), p.011506_1 - 011506_11, 2025/03

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原子力発電所事故によって汚染された地域に住む公衆は、初期から長期にわたって被ばくする。同じような事故シナリオであっても、放射線量や防護措置の一つである屋内退避の効果は、気象条件や周辺環境に左右される。原子力発電所事故の初期における放射線量と屋内退避の効果は、公衆だけでなく、原子力防災対策を計画する国や地方自治体にとっても重要な情報である。本研究では、レベル3PRAコードの一つであるOSCAARコードを用いて、過去のシビアアクシデント研究で利用された3つのシナリオ、原子力規制委員会が定めたシナリオ、福島第一原子力発電所事故に対応するシナリオの計5つの事故シナリオについて、日本国内の原子力施設を有するサイトにおける放射線量と屋内退避の効果を評価した。屋内退避の効果は、同一サイトにおける事故シナリオ間で最大約50%、同一事故シナリオのサイト間で約20%$$sim$$50%の差があった。事故シナリオ間の放射性核種組成の違いと、サイト間の風速の違いが、主にこのような屋内退避の効果の違いを引き起こした。

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