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原子力安全・防災研究所 安全研究センター リスク評価・防災研究グループ
JAEA-Testing 2025-004, 75 Pages, 2025/10
原子力施設で緊急事態が発生した場合には、施設周辺の公衆への放射線被ばくを低減するため、避難や屋内退避などの防護措置が実施される。これらの防護措置の必要性を判断する際には、刻々と変化する施設内外の状況及びそれに伴って得られる各種の情報を適切に反映し、放射性核種の大気への放出源情報(ソースターム)の推定から周辺環境への放射線影響までを迅速かつ一貫して評価する必要がある。日本原子力研究開発機構では、原子力緊急事態に実際に対応する段階において、防護措置に関する判断を行う意思決定者を支援するため、迅速かつ一貫した評価を可能とするための専門家支援ツールEXTREMEを開発した。同ツールは、事故進展並びに環境中移行及び被ばく線量評価のための簡易モデルを実装し、また、ユーザーが容易に操作できるようにPCベースのグラフィカル・ユーザー・インターフェイス(GUI)で利用することができる。本報告書では、開発・整備した支援ツールの使用方法について、GUIの構成と計算の流れを中心にして記述する。本支援ツールを利用することにより、原子力緊急事態において防護措置の判断や決定を行う意思決定者をより効果的に支援できることが期待される。
池之上 翼; 谷 享*; 川村 英之; 佐藤 雄飛*
Environmental Science & Technology, 7 Pages, 2025/09
被引用回数:02023年以降、福島第一原子力発電所(1F)事故由来のトリチウムを含むALPS処理水が海洋放出されている。福島沿岸で採取された海産物のモニタリングの結果はトリチウム濃度の増加はごくわずかであることが示した。しかし、このモニタリングには、データ公開の遅れやサンプル数の制限といった制約がある。したがって、海産物に高濃度のトリチウムが蓄積する可能性を正確に評価するためには、予測による推定が必要である。本研究では、数値シミュレーションを用いて福島沿岸におけるヒラメ中トリチウム濃度を推定した。この推定では、トリチウム水(HTO)の海洋拡散モデルと海洋生物へのトリチウム移行モデルを組み合わせた。ヒラメへのトリチウムの蓄積は、生物中に長期間留まるトリチウムの化学形態である有機結合型トリチウム(OBT)として評価された。まず、海洋拡散モデルの再現性を福島沿岸の実測データを用いて検証し、計算結果と実測データとがよく一致することを確認した。次に、1Fからのトリチウム放出量を仮想的に最大と設定した場合のヒラメ中OBT濃度を推定した。その結果、1Fから100km以内の距離の場所であっても、OBTの最大濃度は環境水中のトリチウムの自然レベルと同程度であることが示された。また、本研究で推定されたヒラメ中OBT濃度の最大値に基づくと、ヒラメの摂取による内部被ばく量は無視できるレベルであった。
松谷 悠佑; 嵯峨 涼*; Wang, Y.*; 佐藤 達彦
Medical Physics, 52(10), p.e70040_1 - e70040_14, 2025/09
放射線誘発微小核(micronuclei, MN)は染色体断片であり、近年、比較的早期に検出可能な染色体異常の定量的指標として使用されている。近年、MN形成を評価する技術は注目を集めているものの、MNの意義とそれに伴う細胞応答は未だ解明されていない。本研究では、被ばく後の細胞生存率を予測可能なintegrated microdosimetric-kinetic(IMK)モデルを拡張し、MN頻度を推定する生物物理学的モデルを提示し、MN形成に伴う細胞応答を理論的に検討した。本モデルは、修復不全による致死損傷からのMN形成確率を導入することで、線エネルギー付与や線量率に依存したMN形成頻度の予測に成功した。また、同モデルを使用した解析により、同一照射条件下では、細胞生存率とMN頻度に対する生物学的効果比は同等であることが確認された。本成果は、MNが放射線治療と放射線防護の双方において、被ばく後早期における治療効果と組織学的損傷を定量的に評価するために有用であることを示唆している。
井口 啓; 吉田 将冬; 平野 宏志*; 和田 政臣*; 森 敬仁*; 北村 哲浩
Journal of Robotics and Mechatronics, 37(4), p.973 - 983, 2025/08
核燃料製造施設におけるグローブボックスや内装設備の解体は、通常手作業で行われている。ロボットアーム等を用いた遠隔解体技術の導入により、解体作業における作業効率の向上と被ばくリスクの低減が期待される。油圧カッターはグローブボックスの鉄骨構造を切断するための効率的なツールの一つと考えられているが、ロボットアームに取り付けた油圧カッターで対象物を遠隔切断する場合、その反力によりロボットアームや周辺の構造物を損傷する可能性がある。そのため、本研究では油圧カッターによる切断時の反力を吸収する「緩衝機構」を設計、製作し、機能確認のための鋼材切断試験を実施した。さらに「緩衝機構」を搭載したロボットアームと作業環境を3Dビューワに投影し、遠隔解体作業を支援する視覚支援システムを開発し、今回の切断試験でその機能確認を行った。その結果、「緩衝機構」が油圧カッターによる切断時の急激な動きを吸収し、ロボットアームの損傷を防いだことから「緩衝機構」が意図したとおりに機能することが確認できた。また、3Dビューワはロボットアームのオペレータに死角のないクリアな視界を提供し、視覚支援システムが油圧カッター等の解体ツールを使用した遠隔解体に有効であることを確認した。
佐藤 達彦
Radioisotopes, 74(2), p.183 - 188, 2025/07
モンテカルロ放射線挙動解析コードは、その計算精度が極めて高いため、様々な放射線治療に対する線量評価に活用されている。核医学治療分野においても、SPECT/CTやPET/CT画像をモンテカルロコードの入力ファイルに自動変換して実行し、得られた線量分布を解析するシステムの開発が世界各地で進められている。本稿では、そのシステム開発の現状について紹介するとともに、現在、我々が開発を進めているRT-PHITS (RadioTherapy package based on PHITS)の核医学関連機能について解説する。
福島廃炉安全工学研究所 楢葉遠隔技術開発センター
JAEA-Review 2025-017, 43 Pages, 2025/06
楢葉遠隔技術開発センターは、東京電力ホールディングス株式会社が実施する福島第一原子力発電所の廃炉作業に資するため、遠隔操作機器・装置による廃炉作業の実証試験・要素試験が実施できる施設・設備を有している。2023年度は88件の施設利用を支援し、福島第一原子力発電所廃炉作業等に貢献した。また、福島第一原子力発電所の廃炉・除染に携わる事業者、災害対応分野においてロボット技術等を必要としている事業者との技術マッチングの機会として開催された廃炉・災害対応ロボット関連技術展示実演会に出展し、地域活性化・福島県の産業復興に協力した。さらに、第8回廃炉創造ロボコン等の支援を通じて、長期にわたる福島第一原子力発電所の廃炉関連業務を担う次世代の人材育成に貢献した。2020年度から開始した楢葉町教育委員会が実施している「ならはっ子こども教室」等への協力として、楢葉町小学生を対象とした遠隔ロボット操作及びVRの体験会並びに楢葉町中学生を対象としたキャリアスクールを実施し、地域教育活動に貢献した。また、2023年度に採択された「廃炉・汚染水・処理水対策事業費補助金(原子炉建屋内の環境改善のための技術の開発(被ばく低減のための環境・線源分布のデジタル化技術の高機能化開発))」に関する補助事業の開発業務を計画通りに進めた。本報告書は、2023年度における楢葉遠隔技術開発センターの施設・設備の整備・利用状況及びそれに係る取組み、緊急時対応遠隔操作資機材の整備・訓練等の活動状況等について取りまとめたものである。
廣内 淳; 高原 省五; 渡邊 正敏*
Journal of Radiological Protection, 45(2), p.021506_1 - 021506_13, 2025/05
被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Environmental Sciences)屋内退避は原子力発電所事故時の放射線被ばくを緩和するための重要な防護措置である。吸入被ばくを低減する屋内退避の効果は一般的に屋内外の積算線量の比である低減係数を用いて評価される。屋内での線量は主に自然換気率、浸透率、室内での沈着率に依存する。加えて、自然換気率は風速に依存する。今までの研究では、低減係数は一定値として扱われるか、風速一定の条件で計算された。しかしながら、実際には風速は変動する。本研究では風速の時間変化による低減係数への影響を調査し、これら変動を考慮するための簡易的な補正方法を開発した。結果として、風速の時間変化はファクター2程度の低減係数の違いを生じさせることを示した。さらに簡易補正方法を用いることで、補正した低減係数は、実際の風速変動を利用して計算した低減係数と平均で10%以内で一致した。さらに計算コストは20倍以上削減できることを示した。
遠藤 章
ESI-News, 43(2), p.37 - 41, 2025/04
国際放射線単位・測定委員会(ICRU)は、2020年に外部被ばくに係るモニタリング量(実用量)を改定するICRU Report 95を発表した。本稿では、ICRU、国際放射線防護委員会(ICRP)、日本の専門家等による議論の発展を概観し、ICRUが実用量を見直すに至った背景と経緯、さらには今後の対応や課題を解説する。これにより、新たな実用量に対する線量測定に携わる実務者の理解を深め、将来の円滑な導入に寄与する。
森下 祐樹; Peschet, L.; 山田 勉*; 中曽根 孝政*; 菅野 麻里奈*; 佐々木 美雪; 眞田 幸尚; 鳥居 建男*
Radiation Measurements, 183, p.107414_1 - 107414_6, 2025/04
被引用回数:1 パーセンタイル:0.00(Nuclear Science & Technology)原子力施設の廃止措置では、作業員がアルファ線を放出する核種に被ばくするのを防ぐために、配管の汚染を検査することが重要である。ガンマ線と中性子を使用する従来の方法では検出下限値が高いため、少量のアルファ核種の検出には不十分であった。この問題を解決するために、配管内で直接核種を測定するためのコンパクトな検出器を開発した。この検出器は、アルファ粒子用のZnS(Ag)シンチレータとベータ粒子(ガンマ線)用のプラスチックシンチレータで構成され、小型の光電子増倍管に接続された。このシステムは、パルス形状弁別(PSD)によってアルファ線とベータ線を区別する高い精度を実証した。モンテカルロシミュレーションと実験測定により検出器の有効性が確認され、ベータ線とガンマ線に対する感度は無視できるほど小さく、かつ、アルファ粒子に対する検出効率は51.3%であった。この検出器は、福島第一原子力発電所の廃炉作業現場など、ベータ線とガンマ線のバックグラウンドが高い環境におけるアルファ線汚染の直接測定に効果的である。
富岡 大; 河内山 真美; 小曽根 健嗣; 仲田 久和; 坂井 章浩
JAEA-Technology 2024-023, 38 Pages, 2025/03
日本原子力研究開発機構は、我が国の研究施設等から発生する低レベル放射性廃棄物の浅地中埋設事業の実施主体である。これらの放射性廃棄物の放射能濃度に関する情報は、埋設事業の許可申請及びその適合性審査に向けた廃棄物埋設施設の設計や安全評価に不可欠である。このため、埋設事業センターでは、埋設対象廃棄物のうち試験研究用原子炉から発生する解体廃棄物について、放射化計算に基づく解体廃棄物の放射能評価手順の改良を進めている。今回、多群中性子スペクトルを用いてより精度の高い放射化計算が可能なORIGENコード(SCALE6.2.4に付属)の適用性を検討するため、これまで使用実績が多いORIGEN-Sコード(SCALE6.0に付属)との比較検証を行った。この検証では、炉心周辺の原子炉構造材の放射能分析データを取りまとめている立教大学研究炉の解体廃棄物を対象として両コードにより放射化計算を行った。その結果、ORIGENコードとORIGEN-Sコードの計算時間の差異はほとんどないこと、放射能濃度の評価値として前者は後者の0.81.0倍の範囲となり、放射化学分析による放射能濃度と概ね0.5
3.0倍の範囲でよく一致した結果から、ORIGENコードの適用性を確認した。さらに、原子炉構造材に含まれる微量元素の放射化を想定してORIGENコード及びORIGEN-Sコードによる放射化計算を行い、比較を行った。また、浅地中処分における被ばく線量評価上重要な170核種のうち大きな差が見られたものに対してその原因を核種毎に調べた。
福島マップ事業対応部門横断グループ
JAEA-Technology 2024-017, 208 Pages, 2025/03
東京電力(株)福島第一原子力発電所(福島第一原発)事故による放射性物質の分布状況を平成23年6月より調査してきた。本報告書は、令和5年度の調査において得られた結果をまとめたものである。空間線量率については、走行サーベイ、平坦地上でのサーベイメータによる定点サーベイ、歩行サーベイ及び無人ヘリコプターサーベイを実施し、測定結果から空間線量率分布マップを作成するとともにその経時変化を分析した。放射性セシウムの土壌沈着量に関しては、in-situ測定及び土壌中深度分布調査をそれぞれ実施した。さらに、これまで蓄積した測定結果を基に空間線量率及び沈着量の実効半減期を評価した。モニタリングの重要度を相対的に評価するスコアマップを作成するとともに、スコアの年次変化について分析した。海水中のトリチウム濃度の評価結果を原子力規制庁へ報告する体制を構築・運用し、ALPS処理水の海洋への放出前後のトリチウム濃度の変動について解析評価した。令和5年度までに総合モニタリング計画に基づき実施された海域モニタリングの測定結果を集約するとともに、過去からの変動などに関して解析評価を行った。階層ベイズ統計手法を用いて、令和5年度調査での走行サーベイや歩行サーベイ等の調査により取得した空間線量率分布データを統合し、空間線量率統合マップを作成した。避難指示解除区域への帰還後に想定される複数の代表的な生活行動パターンを設定し、積算の被ばく線量を算出するとともに当該地方自治体・住民に向けた説明資料を作成した。これらの他、令和5年度測定結果のWebサイトでの公開、総合モニタリング計画に基づく放射線モニタリング及び環境試料分析測定データのCSV化を実施した。
原子力科学研究所 放射線管理部; 青森研究開発センター 保安管理課
JAEA-Review 2024-056, 113 Pages, 2025/03
本報告書は、日本原子力研究開発機構の原子力科学研究部門原子力科学研究所、播磨放射光RIラボラトリー及び核燃料・バックエンド研究開発部門青森研究開発センターにおける放射線管理に関係する2023年度の活動をまとめたものである。これらの研究開発拠点で実施した放射線管理業務として、環境モニタリング、原子力施設及び放射線業務従事者の放射線管理、個人線量管理、放射線管理用機器の維持管理等について記載するとともに、放射線管理に関連する技術開発及び研究の概要を記載した。これらの研究開発拠点において、施設の運転・利用に伴って、保安規定等に定められた線量限度を超えて被ばくした放射線業務従事者はいなかった。また、各施設から放出された気体及び液体廃棄物の量とその濃度は保安規定等に定められた放出の基準値及び放出管理目標値を下回っており、これらに起因する周辺監視区域外における実効線量も保安規定等に定められた線量限度以下であった。放射線管理の実務及び放射線計測技術に関する技術開発・研究活動を継続実施した。
廣内 淳; 渡邊 正敏*; 林 奈穂; 長久保 梓; 高原 省五
JAEA-Research 2024-015, 114 Pages, 2025/03
原子力事故によって汚染された地域では、事故後の初期及び長期にわたって、居住環境での滞在を通じて放射線を被ばくする。同じ事故シナリオであっても、原子力サイトごとに気象条件や周辺環境が違うため被ばく線量が異なり、防護措置の一つである屋内退避をした場合の被ばく低減効果も異なる。事故初期において屋内退避をした場合に想定される被ばく線量、または想定される被ばく低減効果などの情報は、住民や原子力防災計画を策定する国・自治体にとって重要な情報となる。そこで本報告書では、日本における原子力施設を有するサイトで、過去のシビアアクシデント研究で示された3つのシナリオ、原子力規制委員会で定められている放出シナリオ、東京電力福島第一原子力発電所事故を想定したシナリオの5つの事故シナリオに対して、確率論的事故影響評価コードの一つであるOSCAARを用いて被ばく線量及び屋内退避による被ばく低減効果を評価した。被ばく低減効果はサイト間で約20%の違いが見られ、これは風速のサイト間の違いによることを示した。
廣内 淳; 渡邊 正敏*; 林 奈穂; 長久保 梓; 高原 省五
Journal of Radiological Protection, 45(1), p.011506_1 - 011506_11, 2025/03
被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Environmental Sciences)原子力発電所事故によって汚染された地域に住む公衆は、初期から長期にわたって被ばくする。同じような事故シナリオであっても、放射線量や防護措置の一つである屋内退避の効果は、気象条件や周辺環境に左右される。原子力発電所事故の初期における放射線量と屋内退避の効果は、公衆だけでなく、原子力防災対策を計画する国や地方自治体にとっても重要な情報である。本研究では、レベル3PRAコードの一つであるOSCAARコードを用いて、過去のシビアアクシデント研究で利用された3つのシナリオ、原子力規制委員会が定めたシナリオ、福島第一原子力発電所事故に対応するシナリオの計5つの事故シナリオについて、日本国内の原子力施設を有するサイトにおける放射線量と屋内退避の効果を評価した。屋内退避の効果は、同一サイトにおける事故シナリオ間で最大約50%、同一事故シナリオのサイト間で約20%50%の差があった。事故シナリオ間の放射性核種組成の違いと、サイト間の風速の違いが、主にこのような屋内退避の効果の違いを引き起こした。
廣内 淳; 鯨岡 郁雄; 高原 省五; 高田 モモ*; Schneider, T.*; 甲斐 倫明*
Journal of Radiological Protection, 45(1), p.011508_1 - 011508_14, 2025/03
被引用回数:1 パーセンタイル:0.00(Environmental Sciences)異なる要因によるリスクを比較できるリスク指標は、国民の理解を深める上で有用である。国際放射線防護委員会(ICRP)は、低線量における放射線被ばくによる健康影響を定量化するために"デトリメント"という概念を開発した。しかし、デトリメントは放射線分野に特有のものであり、他のリスクと単純に比較することはできない。そこで本研究では、公衆衛生分野等で利用されるリスク指標(障害調整生存年数(DALY)、生涯罹患リスク、生涯死亡リスク)に着目し、放射線被ばくによるそれらのリスク指標を33カ国間で計算した。全固形がんの生涯死亡・罹患リスクとDALYは、国によって男性で1.5-2.0倍、女性で1.2-1.5倍の差が見られ、これらの値は発展途上国ほど低いことが示された。さらに、各部位のリスク指標値の大小関係はデトリメントと同様の傾向を示し、これらのリスク指標値はデトリメントの代替指標として利用できる可能性を示した。
森下 祐樹; 宮村 浩子; 佐藤 優樹; 松原 潤*; Sumali, B.*; 満倉 靖恵*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A, p.170368_1 - 170368_16, 2025/03
被引用回数:1 パーセンタイル:0.00(Instruments & Instrumentation)原子炉施設の廃止措置には、アルファ線放出核種(Pu、Am、Cmなど)やベータ線放出核種(Cs、
Sr-
Yなど)を含むさまざまな放射性核種が存在するため、作業員に重大な内部被ばくリスクをもたらすという課題がある。従来の測定法では、複数の測定器が必要であり、特に高ガンマ線環境では時間がかかる。これらの問題に対処するため、我々は、アルファ粒子とベータ粒子の同時検出を可能にする、シリコン光電子増倍管とスチルベンシンチレータ検出器を統合した遠隔アルファ・ベータ識別測定システムを開発した。本研究では、さらに機械学習技術、特にサポートベクターマシン(SVM)を組み込んで自動識別を行い、ユーザー定義の閾値の必要性をなくし、一貫した操作条件を確保した。このシステムは既知の放射線源でテストされ、アルファ粒子とベータ粒子に対して96%以上の分類精度を示した。また、移動中の測定でも効果的に汚染源が特定され、リアルタイム分析が可能であることが確認された。この革新的なアプローチは、放射線の安全性と原子力廃止措置作業の効率性を高め、人の立ち入りが制限されている環境では特に有益である。
吉田 将冬; 井口 啓; 平野 宏志*; 北村 哲浩
Nuclear Engineering and Design, 431, p.113691_1 - 113691_16, 2025/01
被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Nuclear Science & Technology)プルトニウム燃料第二開発室は現在廃止措置段階にあり、2010年からグローブボックスの解体作業が行われている。従来のグローブボックス解体作業では、放射性核種を封じ込めるためグローブボックスをビニル製のテントで囲い、その中でエアラインスーツを着用した作業者が火花の生じる切断工具を用いて手作業で解体している。この従来の解体工法は長年使用されている実績があり、適宜改良・改善され体系化されている。しかし、作業員の負担が大きく、実作業時間を短くしなければならないこと、作業場が放射性物質で汚染されているため、万が一事故が発生した際の放射性物質吸引による内部被ばくのリスクが高いことなどいくつもの欠点が存在する。このような従来法の欠点を解消するため、現在小型油圧切断機及び遠隔操作技術を用いた新たなグローブボックス解体工法の開発を進めている。具体的には、遠隔解体装置を導入することでエアラインスーツ作業を減らし、解体作業の安全性を高めることそして、すべての機器を再利用することで廃棄物の発生を抑えることを目的としている。さらに、これらの目的の達成のためテント内で解体された資材をグローブ作業で処理するためのグローブ作業エリアを設計・検討試験を行っている。
山下 琢磨*; 林 哲平*; 光安 優典*; 小野 健太*; 岩見 聡音*; 木野 康志*; 関根 勉*; 岡 壽崇; 高橋 温*; 清水 良央*; et al.
International Journal of Radiation Biology, 8 Pages, 2025/00
被引用回数:1 パーセンタイル:0.00(Biology)東京電力・福島第一原子力発電所事故による野生ニホンザルに対する低線量率で慢性的な被ばくによる放射線生物影響を調べている。放射線生物影響をきちんと理解するには、個々の個体の被ばくを推定する必要があり、我々は歯のヒドロキシアパタイト中に生成する炭酸ラジカルを指標に被ばく線量を推定している。本研究では、電子スピン共鳴(ESR)測定して得たESRスペクトルから炭酸ラジカル成分を抽出する分離プログラムを開発し、その実用性を評価した結果を報告する。
真辺 健太郎; 室田 修平; 高橋 史明
Journal of Nuclear Science and Technology, 10 Pages, 2025/00
被引用回数:0ICRP 2007年勧告に準拠した最新の線量評価手法に基づく内部被ばく線量評価コード(IDCC)を開発した。本コードは、作業者の内部被ばくに対し、短寿命核種を含む全ての放射性核種について核崩壊データ、体内動態モデル、比吸収割合(SAF)等の線量評価用モデル・データを用いて実効線量係数を算出可能であるほか、ホールボディカウンタ等の個人モニタリングの結果からの摂取量推定に最尤推定法を適用している。開発したコードの妥当性は、ICRPが公開する線量係数データベースや複数の文献事例との比較により確認された。今後、公衆被ばくに対する評価機能も整備する予定であり、放射線防護に関する規制基準値の改定や、新基準に基づく実務的な線量評価ツールとしての活用が期待される。
佐藤 優樹; 峯本 浩二郎*; 根本 誠*; 松浦 康孝*; 林 圭佐*
Proceedings of International Conference on Nuclear Decommissioning; Addressing the Past and Ensuring the Future 2023 (Internet), 4 Pages, 2025/00
福島第一原子力発電所の廃炉現場において、放射性物質分布を可視化する技術の開発は、作業員の被ばく低減及び詳細な作業計画を策定するために重要である。著者はこれまでに、SLAMデバイス、コンプトンカメラ(ガンマ線イメージャーの一種)、およびサーベイメーターを組み合わせた統合放射線イメージングシステム(iRIS)を開発し、FDNPS内部の作業環境の3次元マップを生成することに成功した。このマップは放射性ホットスポットの位置と空間線量率の分布を可視化するものである。さらに著者は、生成された3次元マップを基に放射線情報を入力データとして使用し、仮想現実(VR)で1Fサイト内の放射線環境を体験できるシステムを開発している。このVRシステムは、市販のポータブルVRヘッドマウントディスプレイを使用でき、仮想空間内に放射源の位置を表示するだけでなく、作業時間に応じた被ばく線量を算出する機能も備えている。このVRシステムは経験の浅い作業員の教育や作業計画の立案に利用できる可能性があり、本会議で発表するものである。