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新井 栄揮; 米澤 悌*; 岡崎 伸生*; 松本 富美子*; 柴崎 千枝; 清水 瑠美; 山田 貢*; 安達 基泰; 玉田 太郎; 河本 正秀*; et al.
Acta Crystallographica Section D, 71(3), p.541 - 554, 2015/03
被引用回数:8 パーセンタイル:52.61(Biochemical Research Methods)蛋白質を利用した希少・有害金属捕集材料の研究開発の一環として、中度好塩菌Chromohalobacter sp.560由来・高酸性-Lactamase(HaBLA)のX線結晶構造を解明するとともに、X線異常分散測定により、HaBLA分子上のCs
, Sr
結合部位の抽出を試みた。PFのNW3AにてHaBLAのX線結晶構造を解明した後、Cs吸収端(
=2.175
)近傍のX線を利用できるSAGA-LSのBL7やPFのBL17A、及び、Sr吸収端(
=0.770
)近傍のX線を利用できるSPring-8のBL38B1やPFのBL5Aなどを使用して、HaBLA分子に結合したCs
及びSr
を同定した。その結果、HaBLA分子上に少なくとも1ヶ所のCs
結合部位、3ヶ所のSr
結合部位を発見した。特に、今回発見したCs
結合部位は、Na
がCs
の9倍量存在する条件下(Na
/Cs
= 90mM/10mM)でもCs
を選択的に結合できることが明らかになった。このCs
選択的結合部位は、Trp側鎖のベンゼン環によるカチオン-
相互作用、および、主鎖の2つの酸素原子によってCs
を結合していた。本研究で得たCs
結合部位の立体構造情報は、原発事故によって放出された放射性Cs
を捕集する蛋白質材料の設計(人工的Cs
結合部位の設計)の土台として利用できる。
新井 栄揮; 米澤 悌*; 石橋 松二郎*; 松本 富美子*; 安達 基泰; 玉田 太郎; 徳永 廣子*; Blaber, M.; 徳永 正雄*; 黒木 良太
Acta Crystallographica Section D, 70(3), p.811 - 820, 2014/03
被引用回数:13 パーセンタイル:63.53(Biochemical Research Methods)中度好塩菌 sp.593のペリプラズム蛋白質Alkaline phosphatase(HaAP)は、他の好塩性Alkaline phosphataseと異なり、幅広い塩濃度域(1
4M NaCl)において機能発現が可能である。そこで本研究では、HaAPの構造学的特徴と好塩性の関係を理解するために、HaAPのX線結晶解析を行った。分解能2.1
, 空間群
2
, 格子定数
=52.7
,
=147.0
,
=58.3
,
=90
,
=105.2
,
=90
, R
8.4%の回折データを取得して、生物学的構造単位であるHaAP二量体の立体構造を解明することに成功した。また、HaAPの立体構造を、PDB中で最も配列相同性が高い低度好塩菌
sp.由来VAP(identity 70.0%)の立体構造と比較した。その結果、ASA
0
の酸性アミノ酸(D, E)の数は、VAP(57個)よりもHaAP(72個)が多いことが明らかになった。また、VAPとHaAPを構成する疎水性アミノ酸(V, L, I, P, F, M, W)に着目すると、二量体界面に位置する疎水性アミノ酸の数はほぼ同じ(39個と40個)であったが、分子内部(ASAが0
)の疎水性アミノ酸はそれぞれ24個と37個であった。このようなHaAPにおける分子表面の高い酸性アミノ酸含量や分子内部の高い疎水性アミノ酸含量は、中度好塩菌のペリプラズム特有の幅広い塩濃度環境下(0.5M
飽和塩濃度)における高い可溶性と機能発現の両立に寄与していると考えられる。
山田 貢*; 玉田 太郎; 竹田 一旗*; 松本 富美子*; 大野 拓*; 小杉 正幸*; 高場 圭章*; 正山 祥生*; 木村 成伸*; 黒木 良太; et al.
Journal of Molecular Biology, 425(22), p.4295 - 4306, 2013/11
被引用回数:24 パーセンタイル:53.10(Biochemistry & Molecular Biology)NADHシトクロム還元酵素(b5R)はNADHドメインとFADドメインの2つのドメインからなるフラボタンパク質で、NADHから二個の電子を受け取り、二分子のシトクロム
(Cb5)に一電子ずつ伝達する反応を触媒する。今回、ブタ肝臓由来b5Rの還元型および酸化型の両状態における結晶構造解析に成功した。嫌気環境下で作製した結晶を用いて1.68
分解能で解析した二電子還元型b5Rの構造は、酸化型と比較して2つのドメインの相対配置がわずかに変化しており、その結果、FADの溶媒露出面積が増大し、FADのイソアロキサジン環のN5原子と、FADからのプロトン放出に関わっていると考えられているThr66の側鎖の水酸基間に水素結合が形成していた。一方、イソアロキサジン環の平面性は、還元型においても酸化型と変わらず保持されており、NAD
のニコチンアミド環とスタッキングしていた。また、0.78
分解能で解析した酸化型b5Rの構造から、Thr66を介したFADとHis49間の水素結合ネットワークが水素原子の位置情報と共に明らかになった。これらの構造的特徴は、b5Rの触媒サイクルにおいて、電子の逆流を防ぎ、Cb5のような電子受容体への電子移動を促進するものであった。さらに、クライオトラップ法により還元型結晶の大気暴露時間を制御し作製した結晶を用いた解析により、還元型から酸化型への再酸化反応は二段階を経ることが示唆された。
新井 栄揮; 米澤 悌; 岡崎 伸生; 松本 富美子; 玉田 太郎; 徳永 廣子*; 石橋 松二郎*; Blaber, M.; 徳永 正雄*; 黒木 良太
Protein Science, 21(4), p.498 - 510, 2012/04
被引用回数:15 パーセンタイル:34.92(Biochemistry & Molecular Biology)さまざまな生物種で保存されているヌクレオシドニリン酸キナーゼ(NDK)は、4量体もしくは6量体構造を形成することが知られる。一方、中度好塩菌 sp. 593由来NDK(HaNDK)はNDKとしては例外的に2量体を形成し、E134A変異導入により4量体へ変換される。本研究では、ゲルろ過光散乱及びX線結晶解析により、中度好塩菌
sp. 593由来NDKにおけるE134A変異導入による多量体変換の機構を解明した。また、E134A変異型HaNDKの結晶中には、グラム陰性菌由来MxNDKに類似した4量体構造と大腸菌由来EcNDKに類似した4量体構造が交互に現れることを明らかにした。一般に蛋白質は会合することで熱安定性や基質親和性を増大することから、少ない変異導入による多量体構造の変化は、NDKがさまざまな環境に適合するために有効に寄与している可能性がある。
木村 恒久*; 木村 史子*; 松本 賢司*; 目時 直人
Neutron Diffraction, p.179 - 202, 2012/03
構造解析その他に利用可能な3次元磁気配向結晶の育成技術と中性子散乱実験の結果について、現状を解説する。
藤原 悟; Plazanet, M.*; 松本 富美子; 小田 俊郎*
European Biophysics Journal, 40(5), p.661 - 671, 2011/05
被引用回数:11 パーセンタイル:31.53(Biophysics)The quasielastic neutron scattering (QENS) experiments were carried out to characterize the internal dynamics of the protein, actin in the polymerized form (F-actin) and the monomeric form (G-actin). To investigate the effects of hydration, the measurements were done on the powder samples containing only the first layer of hydration water, and those containing more layers of water. The QENS spectra obtained indicated that the internal motions of both F-actin and G-actin have distributions of motions with distinct correlation times and amplitudes. Increasing hydration changes relative populations of these distinct motions. The effects of hydration were shown to be different between F-actin and G-actin. The elastic incoherent neutron scattering measurements provided the concerted results. The observed effects were interpreted in terms of the differences in the dynamical heterogeneity of G-actin and F-actin.
松本 富美子; 弟子丸 俊吾*; 小田 俊郎*; 藤原 悟
Analytical Biochemistry, 399(2), p.299 - 301, 2010/04
被引用回数:2 パーセンタイル:58.45(Biochemical Research Methods)天然の筋肉の細いフィラメント及び大腸菌に発現させた組換えトロポニン構成成分から筋肉の細いフィラメントを再構成する技術を開発した。この技術により、pH6.2において20%グルセロール及び0.3M KCl存在下で、再構成されたトロポニン複合体が天然の細いフィラメント中に交換導入される。90%以上の内在トロポニン複合体が組換えトロポニン複合体に交換される。この技術により調製された再構成細いフィラメントの構造及びCa感受性が保持されることが、X線繊維回折測定、並びに、細いフィラメントにより活性化されるミオシンサブフラグメント1のATP分解活性の測定により確認された。
木村 史子*; 木村 恒久*; 松本 賢司*; 目時 直人
Crystal Growth & Design, 10(1), p.48 - 51, 2009/12
被引用回数:14 パーセンタイル:75.71(Chemistry, Multidisciplinary)L-アラニン擬単結晶を三次元磁場配向により作成し、紫外線硬化性樹脂によって固めた。直径約8mm,高さ10mmの円筒形試料を中性子回折によって測定した。極点図は(120),(040)、及び(002)面でシャープなピークを示し、三次元配向を実証することができた。また、測定された積分強度は強度計算結果と良い一致を示した。本研究は大きな結晶が利用できない物質について、三次元磁場配向擬単結晶を育成することによって中性子回折による結晶構造解析が実現できる可能性について明らかにした。
松本 富美子; 前田 佳代*; 茶竹 俊行*; 前田 雄一郎*; 藤原 悟
Biochemical and Biophysical Research Communications, 382(1), p.205 - 209, 2009/04
被引用回数:15 パーセンタイル:36.64(Biochemistry & Molecular Biology)心筋症発症に関連する筋収縮調節蛋白質トロポニンT(TnT)の2種類の変異体(E244D, K247R)の変異部位は、Tn-コア領域のコイルドコイル領域に存在する。この領域の変異がTnの調節機構に及ぼす影響を明らかにするために、TnTのこの部位でのさまざまな変異体を含む筋原繊維のカルシウム依存性ATP分解活性を測定した。その結果、疾病関連変異体E244Dは、カルシウム感受性を変化させずに最大ATP分解活性を増大させることを確認するとともに、変異体K247Rも同様の効果を持つことを初めて明らかにした。さらにさまざまな変異体(E244D, E244M, E244A, E244K, K247R, K247E, and K247A)は、カルシウム感受性の変化はないが、最大ATP分解活性についてさまざまな影響を与えることが明らかとなった。これらの変異体を含むTnコアの分子動力学計算の結果、変異部位付近の水素結合ネットワークがTnの機能発現に重要であることが示唆された。
藤原 悟; Plazanet, M.*; 松本 富美子; 小田 俊郎*
Biophysical Journal, 94(12), p.4880 - 4889, 2008/06
被引用回数:9 パーセンタイル:20.78(Biophysics)アクチンは、ほぼすべての真核細胞内に存在し、細胞運動や輸送等にかかわる実に多様な機能を持つ。アクチン単量体(G-アクチン)は重合して繊維状重合体(F-アクチン)を形成するが、多様なアクチンの機能は、種々の蛋白質との相互作用を可能とするF-アクチンの柔らかさのゆえである。F-アクチンの柔らかさの起源を明らかにするための第一段階として、われわれはピコ領域におけるアクチンの運動特性の測定を、中性子非干渉性弾性散乱(EINS)法を用いて行った。G-アクチン及びF-アクチンの水和粉末試料についてEINS測定を行い、アクチン分子内の原子の平均自乗変位の温度依存性を調べた。その結果、平均自乗変位には150K付近及び245K付近に2つの転移が観測されること、その振舞がG-アクチンとF-アクチンで異なること、そしてG-アクチンの方がF-アクチンより"柔らかい"ことが示された。さらに、アクチンは、G-アクチンとF-アクチンで同様の柔らかさを持つ領域と、G-アクチンにおいてより柔らかくなる領域という動的不均一性を持っていることが示唆された。
藤原 悟; 松本 富美子
Journal of Molecular Biology, 367(1), p.16 - 24, 2007/03
被引用回数:6 パーセンタイル:9.93(Biochemistry & Molecular Biology)筋収縮制御は、骨格筋・心筋においては筋肉の細いフィラメント中のトロポニン(Tn)-トロポミオシン(Tm)系により行われている。筋収縮制御の分子機構の解明にはTnを構成するサブユニット(TnC, TnI, TnT)の細いフィラメント中における構造(変化)を知ることが重要である。われわれは、重水素化TnC(dTnC)を用いて、細いフィラメント中でのTnCの構造を中性子繊維回折法を用いて調べた。dTnCを含む再構成した細いフィラメント及びnativeな細いフィラメントのそれぞれについてCaを含む/含まない状態の配向試料を調製し、その中性子繊維回折測定を行った。測定は日本原子力研究開発機構所有の中性子小角散乱装置SANS-Jを用いて行った。得られた回折像から抽出した子午線上のTn由来の反射の振幅に対して、それぞれの蛋白質の細いフィラメント繊維軸への1次元の投影構造モデルを用いた解析を行った結果、TnCはCa
のない状態において、その長軸が繊維軸と垂直に近い配向をとるが、Ca
結合により繊維軸方向に傾くとともに配向及び位置の乱れが増大することを明らかにした。さらにこのようなTnCの変化はTn複合体全体の構造変化に対応していることが示された。
松本 富美子*; 牧野 浩司*; 前田 佳代*; Patzelt, H.*; 前田 雄一郎*; 藤原 悟
Journal of Molecular Biology, 342(4), p.1209 - 1221, 2004/09
被引用回数:19 パーセンタイル:29.09(Biochemistry & Molecular Biology)筋収縮は、筋肉の主要な成分である太いフィラメントと細いフィラメントが互いに滑ることにより起こるが、そのCa濃度による制御には、骨格筋・心筋においては細いフィラメント中の蛋白質トロポニンC,トロポニンI,トロポニンT,トロポミオシンが関与している。筋収縮制御機構の解明にはこれらの蛋白質のフィラメント内での構造を知ることが重要である。われわれは、その第一段階として、細いフィラメント中でのトロポニンCの構造を選択的重水素化及びコントラスト変調法と組合せた中性子散乱法により調べた。重水素化トロポニンCを調製し、単離精製した細いフィラメントに挿入することにより重水素化トロポニンCを含むフィラメントを調製し、溶媒の散乱長密度を重水素化されていない成分と一致させることにより重水素化成分のみが見える条件下で中性子散乱実験を行った。得られた散乱曲線は重水素化トロポニンCのみからの散乱曲線となる。Ca
の有無において中性子散乱曲線を測定し、モンテカルロ法を用いたモデル計算による解析の結果、トロポニンCの慣性半径はCa
の結合により、23
から24
に増大すること、さらにトロポニンCの細いフィラメント軸中心からの距離が53
から49
に減少することが明らかとなった。
藤原 悟; 松本 富美子*; 米澤 康滋*
Journal of Molecular Biology, 331(1), p.21 - 28, 2003/08
被引用回数:46 パーセンタイル:59.02(Biochemistry & Molecular Biology)種々の蛋白質が、その溶液条件によってアミロイド繊維として知られる繊維状構造体を含むさまざまな構造をとることが知られている。ニワトリ卵白リゾチーム(HEWL)は高濃度エタノール中でアミロイド繊維を形成することが知られている。われわれは、このHEWL-エタノール系をモデル系として、その種々の塩濃度下における繊維構造形成過程を時分割中性子散乱法により調べた。その結果、90%エタノール存在下において、NaCl濃度0.1-1.0mMの範囲でHEWLのゲル化が起こることが示された。このゲル化はプロトフィラメントの会合による繊維形成とその繊維同士の架橋によるゲル化という2段階で起こることが示唆された。繊維の構造及びその形成速度はNaCl濃度に依存することが示された。また、NaCl濃度2mM以上では、繊維状構造ではなくアモルファスな沈殿の形成が観測された。このようなさまざまな構造体が試料中の塩濃度に依存して形成されることから、これらの構造体の形成には静電相互作用が本質的な役割を果たしていることが示唆される。こうした観点から多様な繊維状構造体の形成過程についての議論を行った。
藤原 悟; 松本 富美子; 中川 洋; 遠藤 仁*; 小田 俊郎*
no journal, ,
F-アクチンの細胞運動や輸送等にかかわる実に多様な機能を可能とするF-アクチンの柔らかさの起源を解明し、機能多様性の分子機構を明らかにするための第一段階として、さまざまな時空間階層における運動モードのうち、ピコナノ秒領域におけるアクチンのダイナミクスの測定を行った。東京大学物性研究所所有の中性子スピンエコー分光器(iNSE)を用いて、時間領域30ナノ秒までのQ-領域0.03
0.2
の中性子スピンエコー測定を、F-アクチン溶液及びその対照としての単量体G-アクチン溶液のそれぞれについて行った。この時空間領域は、蛋白質の並進拡散や蛋白質内ドメインの運動などの起こる領域に対応し、中性子スピンエコー法によってのみ測定可能な時空領域である。得られた中間関数から、F-アクチン及びG-アクチンのいずれも単一の緩和過程で記述できることが示された。そして、緩和の早さ、すなわち(みかけの)拡散係数がF-アクチンの方が小さくなることが明らかとなった。G-アクチン及びF-アクチンのいずれも、単純な溶液中の自由併進拡散のみでなく、内部運動が影響していることが示唆された。
藤原 悟; Plazanet, M.*; 松本 富美子; 小田 俊郎*
no journal, ,
F-アクチンは、真核細胞に最も豊富に存在し、細胞運動に関係する実に多様な機能を持つ。このようなF-アクチンの多様な機能には、アクチン分子のらせん状重合体であるF-アクチンの「柔らかさ」に由来する。F-アクチン機能の多様性を理解するためには、F-アクチンの運動特性を明らかにしなければならない。われわれは、中性子非弾性散乱のさまざまな技術を用いてF-アクチン及びアクチン単量体(G-アクチン)の運動特性を調べてきた。中性子非干渉性弾性散乱測定を行い、得られた平均自乗変位の解析からF-アクチン及びG-アクチンの運動特性の違いを明らかにした。さらに中性子準弾性散乱測定によりアクチン分子内部の運動特性の特徴付けを行った結果、F-アクチン及びG-アクチンのいずれも、異なった振幅と速度を持つ運動が存在し、G-アクチンはF-アクチンよりも、より大きな振幅及び速い速度の運動を示す傾向があることを明らかにした。F-アクチンとG-アクチンの運動特性の違いは、この動的不均一性の違いに由来する。また、こうしたアクチン分子の内部運動に対する水和水の効果がF-アクチンとG-アクチンで異なっていることも併せて明らかにした。
藤原 悟; Plazanet, M.*; 松本 富美子; 小田 俊郎*
no journal, ,
F-アクチンは、アクチン単量体(G-アクチン)の繊維状重合体であり、細胞運動に関係する実に多様な機能を持つ。どのようにして、このような多様な機能が可能となるかを理解するためには、アクチン分子の内部運動から分子間の相対的運動、そしてF-アクチン全体の運動までのさまざまなレベルでの運動特性を明らかにすることが重要である。われわれは、そのためにF-アクチン及びG-アクチンの中性子非干渉性弾性散乱実験を行い、F-アクチン及びG-アクチンの運動特性の違いを明らかにした。さらにアクチン分子内部の運動特性を詳しく特徴付けるため、中性子準弾性散乱実験を行った。第1水和層まで含む水和粉末試料及び「バルク」水まで含む試料についての測定を行った結果、F-アクチン及びG-アクチンのいずれも、少なくとも2種類の異なった振幅と速度を持つ運動が存在すること、そして含水量の増大は、これらの動きを速くさせること、そしてG-アクチンはF-アクチンよりも、より大きな振幅及び速い速度の運動を示す傾向があることを明らかにした。
藤原 悟; Plazanet, M.*; 松本 富美子; 小田 俊郎*
no journal, ,
アクチンは細胞運動に関係する実に多様な機能を持つ。アクチンは単量体(G-アクチン)が会合して繊維状会合体(F-アクチン)を形成し機能を発現するが、このような多様な機能の起源を理解するためには、アクチン分子の内部運動から分子間の相対的運動、そしてF-アクチン全体の運動までのさまざまなレベルでの運動特性を明らかにすることが重要である。われわれは、そのためにF-アクチン及びG-アクチンの中性子非干渉性弾性散乱実験を行い、F-アクチン及びG-アクチンの運動特性の違いを明らかにした。さらにアクチン分子内部の運動特性を詳しく特徴付けるため、中性子準弾性散乱実験を行った。第一水和層まで含む水和粉末試料及び「バルク」水まで含む試料についての測定を行った結果、F-アクチン及びG-アクチンのいずれも、複数の異なった振幅と速度を持つ運動が存在すること、そして含水量の増大は、これらの動きを速くさせること、そしてG-アクチンはF-アクチンより大きな振幅及び速い速度の運動を示す傾向があることを明らかにした。
藤原 悟; Plazanet, M.*; 松本 富美子; 小田 俊郎*
no journal, ,
蛋白質アクチンは、真核細胞に最も豊富に存在し、細胞運動に関係する多様な機能を持つ。アクチン単量体(G-アクチン)は重合して螺旋状重合体F-アクチンを形成する。このF-アクチンの「柔らかさ」が機能の多様性において重要であることが指摘されているため、われわれは、F-アクチンの柔らかさの起源であるアクチンの内部運動特性を中性子散乱により調べてきた。中性子非干渉性弾性散乱及び中性子準弾性散乱(QENS)測定により、F-アクチン及びG-アクチンの運動特性の違いを示した。蛋白質の運動特性は、蛋白質水和水の運動特性と密接に関係すると言われている。そこで、F-アクチン及びG-アクチンの内部運動特性と水和水の運動特性との関係を調べるために、F-アクチン及びG-アクチンそれぞれのHO水和粉末試料及びD
O水和粉末試料の中性子準弾性散乱測定を行い、その差から水和水のQENSスペクトルを抽出した。解析の結果、G-アクチン水和水の方がF-アクチン水和水よりも速い運動をすることが明らかとなった。これはF-アクチン及びG-アクチンの内部運動の違いと対応しており、水和水の運動が蛋白質内部運動に影響を及ぼすことを示唆している。
松本 富美子; 前田 佳代*; Piroddi, N.*; Belus, A.*; Poggesi, C.*; 前田 雄一郎*; 藤原 悟
no journal, ,
肥大型心筋症(HCM)は、心筋のトロポニン(Tn; TnT, TnI, TnCの三量体で構成)の変異が原因となる遺伝性の疾患である。HCMは張力-カルシウム感受性の異常として定義されるが、その発症の分子機構は未だ解明されていない。心筋症を発症させる変異はTn分子中に散在するが、われわれはTnの機能と深くかかわると考えられるコイルドコイル部位にある2つの変異(TnT(E244D)とTnT(K247R))に注目した。本研究では、これらの変異が心筋の機能異常を引き起こす原因を探るために、アミノ酸側鎖の体積や電荷の異なる種々の変異を導入した筋原繊維のATPase活性変化と張力測定を行った。その結果、変異を導入した筋原繊維のATPase活性と張力変化がパラレルであることを明らかにし、またこれまで不明であったTnT(K247R)心筋症がカルシウム感受性を変えることなく最大張力を増大させる疾患であることを発見した。さらに、Tnのアミノ酸変異によるHCM疾患の原因は、コイルドコイルの外側部位で形成されている水素結合ネットワークの異常に起因することを生化学実験と計算シミュレーションから明らかにした。
清水 瑠美; 松本 富美子; 新井 栄揮; 大原 高志; 安達 基泰; 玉田 太郎; 黒木 良太; 西宮 佳志*; 近藤 英昌*; 津田 栄*
no journal, ,
不凍タンパク質(AFP)は、氷の表面に結合することで氷結晶の成長を抑制し、体液の凝固点を下げる働きを持つタンパク質である。AFPは、非常にユニークな機能を持つことから、食品,医療などさまざまな分野での産業利用が期待されている。北海道沿岸に生息するナガガジの体内では多数のアイソフォームが発現しており、これらはSP型及びQAE型に分類される。われわれは、活性が低いSP型のnfeAFP6と活性が高いQAE型のnfeAFP8の間で、アミノ酸配列が異なる部分に着目し、キメラ体4種類と部位特異的変異体14種類を大腸菌発現系により調製して、氷結晶成長抑制活性を比較した。その結果、nfeAFP6の分子表面に存在するAla19一か所のみをValに置換したnfeAFP6 A19V変異体がQAE型と同様の高い氷結晶成長抑制作用を持つことを見いだした。さらに氷結晶の成長抑制活性と分子構造の安定性の相関を検討するために、各変異体の構造安定性を円偏光二色性の温度依存性から比較した。その結果、nfeAFP6 A19V変異体の構造安定性は、野生型よりも低く、その他の変異体に関して活性の強さと構造安定性に相関は見られなかった。よって、変異型AFPの不凍活性変化は、その安定性の変化に由来するのではなく、変異部位の導入によって、水和構造を変化させたからであると考えられる。