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五十嵐 さやか*; 坂本 成弘*; 宇賀田 健*; 西田 明美; 村松 健*; 高田 毅士*
Transactions of the 24th International Conference on Structural Mechanics in Reactor Technology (SMiRT-24) (USB Flash Drive), 10 Pages, 2017/08
原子力施設の安全性向上評価の高度化、信頼性向上を目的として、断層モデルに基づく時刻歴地震波群(ハザード適合地震波)を用いて対象敷地の地震ハザードを評価する手法が提案されている。地震波群は、震源特性の不確定性をモンテカルロシミュレーションを用いて多数作成する必要があるため、非常に解析負荷が大きいのが課題のひとつとなっている。本研究では、任意の機器システムを有する構造物の地震リスクを、断層モデル地震波群を用いて効率的に実施するために、機器システムの損傷と相関の良い地震動強さ指標を選定し、最終的な地震リスク評価に寄与する震源を対象に断層モデル地震波群を作成する効率化手法を提案した。本報では、給水システムを一例として、システム内の脆弱部が異なる複数のシステムケースを設定し、提案手法の妥当性を検証した結果を報告する。
西田 明美; 五十嵐 さやか*; 坂本 成弘*; 内山 泰生*; 山本 優*; 村松 健*; 高田 毅士*
Nuclear Engineering and Design, 295, p.875 - 886, 2015/12
被引用回数:2 パーセンタイル:17.57(Nuclear Science & Technology)確率論的地震リスク評価手法の高度化を目的として、対象サイトの地震ハザードと調和し、震源特性の違いが認識可能な地震動群を生成する手法を提案し、その震源特性の傾向を分析した。原子力施設の地震PRA手法では、地震ハザード評価やフラジリティ評価などを用いた確率論的評価が一般的であり、モンテカルロシミュレーション(MCS)によって多数の地震動を作成して評価する場合にも、一様ハザードスペクトルなどに適合させて生成する場合が多い。しかしながら、このような地震動群には、年間頻度といった対象敷地の危険の程度は考慮されていても震源特性の違いまでは含まれていない。実際には、地震動は様々な震源特性を有しており、これらを考慮した地震動群を用いることによってより精度の高いPRAを行うことができるものと考える。本論文では、地震ハザードと調和し、かつ震源特性の違いを含む地震動群を生成する手法を提案し、その震源特性を分析した結果について述べる。
西田 明美; 五十嵐 さやか*; 坂本 成弘*; 村松 健; 高田 毅士*
第8回構造物の安全性・信頼性に関する国内シンポジウム(JCOSSAR 2015)講演論文集(CD-ROM), p.108 - 113, 2015/10
計算科学技術を活用した原子力施設の地震リスク評価手法の高度化に資するため、3次元仮想振動台システムを用いた次世代地震PRA手法の開発を進めている。次世代地震PRAは、評価対象サイトに強い地震動を生じうる全ての震源を考慮して、個々の地震動の発生頻度が明らかな地震動群を作成し、これらを入力とする原子力施設の地震応答解析により得られた建屋や機器の応答を耐力と比較することで、直接的に建屋や機器の損傷頻度を評価するものである。これまでに、大洗の原子力施設を対象として次世代地震PRAに資する地震波群200波(3方向)(以降、ハザード適合地震波という)等を作成している。本論文では、大洗の原子力施設を対象として生成されたハザード適合地震波を入力とする建屋・機器の3次元有限要素モデルによる地震応答解析およびその結果の分析と考察について述べる。解析結果の分析より、質点系モデルでは表現できない同高さ・異なる通りの建屋応答の違いを3次元解析の結果により確認した。また、地震動の違いによるばらつきと位置(方向、部位)の違いによるばらつきを定量的に比較し傾向を確認した。
五十嵐 さやか*; 坂本 成弘*; 西田 明美; 村松 健; 高田 毅士*
第8回構造物の安全性・信頼性に関する国内シンポジウム(JCOSSAR 2015)講演論文集(CD-ROM), p.535 - 541, 2015/10
これまでに、次世代に向けた確率論的地震リスク評価(PRA)に資する入力地震波群として、対象敷地の地震ハザードに調和し、震源特性の不確定性を含む多数の時刻歴地震波群(ハザード適合地震波)を作成している。ハザード適合地震波は様々な震源とその特性を考慮して作成されたものであり、応答スペクトルのばらつきや周期間相関にはこれらの影響が含まれている。本報では、これらが最終的なリスク評価結果である建物機能にどのような影響を及ぼすかを検討するため、比較用の地震波群3ケースのスペクトル適合波群を作成し、一般建物の給水設備システムの損傷確率および年損傷頻度を試算した。その結果、応答スペクトルのばらつきが給水設備システムの損傷確率に大きな影響を及ぼすことを確認した。
五十嵐 さやか*; 坂本 成弘*; 内山 泰生*; 山本 優*; 西田 明美; 村松 健; 高田 毅士*
Transactions of the 23rd International Conference on Structural Mechanics in Reactor Technology (SMiRT-23) (USB Flash Drive), 10 Pages, 2015/08
本研究は、原子力施設のリスク評価手法の高度化にかかわる共同研究の一環として実施しているものである。従来の地震波群作成手法では、一様ハザードスペクトルなどに適合するように地震波が作成されることが多いため、スペクトルのばらつきを考慮しない場合もあり、考慮したとしても、その周期間相関は完全相関の仮定の下、地震波群が作成されることが多い。これまでに著者らが提案した地震波群の作成手法による地震波群は、従来の距離減衰式による地震ハザードにも調和し、震源特性の違い(不確定性)を含んだものであることから、継続時間や応答スペクトルの形状などの地震動特性も多様性のあるものとなっている。本論文では、地震波群の応答スペクトルのばらつきの大きさやその周期間相関の違いによって、最終的な建物機能損傷にどの程度の影響があるのかを定量的に評価することを目的として、ばらつきや周期間相関の与え方の異なる複数の地震波群セットを用意し、設備機器システムの損傷確率を比較した結果を示す。
五十嵐 さやか*; 坂本 成弘*; 西田 明美; 村松 健; 高田 毅士*
Proceedings of 23rd International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-23) (DVD-ROM), 10 Pages, 2015/05
本研究は、原子力施設のリスク評価手法の高度化にかかわる共同研究の一環として実施しているものである。今般、これまでに大洗地区を対象として作成したハザード適合地震波群のうち、南関東の地震のひとつの震源を対象として作成した時刻歴地震波群による一般建物の地震応答解析を行った。この地震波群には、震源特性の微視的・巨視的震源特性の不確定性が考慮されている。応答解析の結果を用いて、震源特性、地震動強さ指標、建物応答の相関を重回帰分析によって明らかにした。この結果、震源特性のうち地震モーメント、平均応力降下量、媒質のQ値係数は、地震動強さ指標や建物応答と明瞭な正の相関が確認された。この相関の傾向については、震源特性による震源のフーリエ加速度スペクトルへの影響から説明できることが分かった。また、アスペリティ位置は、地震動強さ指標と建物応答と負の相関が確認された。この相関の傾向については、対象敷地と震源断層の位置から説明できることが分かった。
西田 明美; 五十嵐 さやか*; 坂本 成弘*; 内山 泰生*; 山本 優*; 村松 健*; 高田 毅士*
Transactions of the 22nd International Conference on Structural Mechanics in Reactor Technology (SMiRT-22) (CD-ROM), 10 Pages, 2013/08
確率論的地震リスク評価手法の高度化を目的として、対象サイトの地震ハザードと調和し、震源特性の違いが認識可能な地震動群を生成する手法を提案し、その震源特性の傾向を分析した。原子力施設の地震PRA手法では、地震ハザード評価やフラジリティ評価などを用いた確率論的評価が一般的であり、モンテカルロシミュレーション(MCS)によって多数の地震動を作成して評価する場合にも、一様ハザードスペクトルなどに適合させて生成する場合が多い。しかしながら、このような地震動群には、年間頻度といった対象敷地の危険の程度は考慮されていても震源特性の違いまでは含まれていない。実際には、地震動は様々な震源特性を有しており、これらを考慮した地震動群を用いることによってより精度の高いPRAを行うことができるものと考える。本報では、地震ハザードと調和し、かつ震源特性の違いを含む地震動群を生成する手法を提案し、その震源特性を分析した結果について述べる。
松尾 陽一郎*; 西嶋 茂宏*; 長谷 純宏; 野澤 樹; 坂本 綾子; 鳴海 一成; 清水 喜久雄*
JAEA-Review 2009-041, JAEA Takasaki Annual Report 2008, P. 75, 2009/12
本研究では、真核生物の一種である出芽酵母の野生株、塩基除去修復が不活性であるogg1株及びミスマッチ修復が不活性であるmsh2株を用いて、炭素イオンビーム照射で誘発される突然変異について、URA3遺伝子の突然変異を検出する5-FOAによる選択系で、変異スペクトルの解析を行った。その結果、野生株及びogg1株ともに塩基置換の頻度が高く、特にogg1株では変異のすべてが塩基置換であった。また、msh2株では、一塩基欠失が全体の突然変異の大部分を占め、その中でもGC to TAのトランスバージョン変異が多く誘発されることが確認された。これらの結果から、8-oxoGの生成がイオンビームに起因する突然変異をおもに誘導し、OGG1及びMSH2遺伝子が遺伝子の安定性に強く貢献していることが示唆された。
松尾 陽一郎*; 西嶋 茂宏*; 長谷 純宏; 坂本 綾子; 鳴海 一成; 清水 喜久雄*
JAEA-Review 2008-055, JAEA Takasaki Annual Report 2007, P. 60, 2008/11
本研究は、真核生物のモデル生物である出芽酵母を用いて、イオンビームで生じる突然変異誘発の分子機構を解明することを目的とする。今回、野生株とDNAグリコシラーゼ活性の欠損によって8オキソデオキシグアニン(8-oxodG)を除去できない変異株を用いて、5-フルオロオロト酸耐性を指標として取得した変異体を解析し、高LET炭素イオンビームによって生じる8-oxodGの突然変異誘発性を調べた。変異株の100Gy照射での変異の出現頻度は野生株の2倍であった。野生株では遺伝子に起こった突然変異のうちGT塩基置換が全体の41%を占めていたのに対して、変異株ではGT塩基置換が全体の70%を占めていた。野生株では塩基置換のほかに挿入変異や欠損変異が認められたのに対して、変異株では挿入変異や欠損変異が認められなかった。
松尾 陽一郎*; 西嶋 茂宏*; 長谷 純宏; 坂本 綾子; 横田 裕一郎; 鳴海 一成; 清水 喜久雄*
JAEA-Review 2007-060, JAEA Takasaki Annual Report 2006, P. 86, 2008/03
放射線による突然変異生成プロセスには、DNA修復機構が大きく関与すると考えられている。特に重粒子線照射の場合、相同組換えや非相同末端結合反応による二本鎖切断修復の関与が大きいと考えられる。そこで本研究では、野生株及び二本鎖切断修復機構を欠損した株()を用い、高LETの重粒子線による分子レベルでの損傷を、相同組換え,非相同末端結合反応それぞれ独立に調べることで、突然変異誘発の過程をクロマチン損傷と修復経路の観点から明らかにすることを目的とした。変異位置並びにヌクレオソームマッピングのデータと比較した結果、野性株ではリンカーDNA領域に局所的に突然変異が誘発されていた。一方、二本鎖切断修復欠損株株及び株では、変異はヒストンタンパクと結合した領域で特異的に生成した。このことは修復メカニズムの差異によって固定される変異が異なるということを示している。
松尾 陽一郎*; 西嶋 茂宏*; 長谷 純宏; 坂本 綾子; 田中 淳; 清水 喜久雄*
JAEA-Review 2006-042, JAEA Takasaki Annual Report 2005, P. 76, 2007/02
本研究では、高等生物のモデル系として出芽酵母を用い、イオンビームによる突然変異誘発の特徴について分子レベルでの解析を行った。イオンビームによる野生型の突然変異頻度は、炭素イオン100Gy照射で最も高く、自然突然変異と比べて168.5倍であった。変異の種類は、GCからTAのトランスバージョン変異が最も多く見られた。イオンビームでは、線照射では確認できない変異のホットスポットが見られ、約170塩基対の間隔でDNA配列上に分布していた。このことから、変異ホットスポットとゲノムの高次構造との関係が示唆された。
松尾 裕一郎*; 西嶋 茂宏*; 長谷 純宏; 坂本 綾子; 田中 淳; 清水 喜久雄*
Mutation Research; Fundamental and Molecular Mechanisms of Mutagenesis, 602(1-2), p.7 - 13, 2006/12
被引用回数:29 パーセンタイル:58.31(Biotechnology & Applied Microbiology)真核生物におけるイオンビーム誘発突然変異の特徴を解析する目的で、出芽酵母に対する炭素イオン照射の効果を線照射の効果と比較した。酵母遺伝子をマーカーとして、炭素イオンビームによって誘発された54個の突然変異をシークエンスし、突然変異の特異性を解析した。その結果、炭素イオンビームによって誘発された突然変異の種類は、トランスバージョンが68.7%, トランジションが13.7%で、挿入/欠失は17.6%であった。トランスバージョンはおもに、G:C塩基対からT:A塩基対へ置換であったのに対し、トランジションのすべてはG:C塩基対からA:T塩基対への置換であった。突然変異が生じた塩基の周辺の配列を比較すると、ACA又はACT配列の真ん中のCが置換されているケースが多く見られた。高等植物であるシロイヌナズナに対しては、イオンビームは短い欠失や染色体の再編成を生じさせることが報告されているが、これとは対照的に酵母では大きな欠失や配列の重複はみられなかった。さらに、酵母におけるイオンビーム誘発突然変異で最も特徴的だったのは、ヌクレオソーム構造のリンカー領域の付近に変異が集中し、ホットスポットを形成している点である。一方、線ではこのようなホットスポットは見られなかった。このことから、炭素イオンビームは、DNA配列とヌクレオソーム構造の両方に依存して突然変異を誘発させていることが示唆された。
松尾 陽一郎*; 西嶋 茂宏*; 長谷 純宏; 坂本 綾子; 田中 淳; 清水 喜久雄*
no journal, ,
近年、放射線を用いた突然変異による育種技術として重粒子線が注目されているが、突然変異誘発のメカニズムは未だに不明な点が多い。本研究では、高等生物のモデル系として酵母細胞を用いて、重粒子線並びに線による突然変異について、分子レベルでの解析を行った。イオンビームによる野生型の突然変異頻度は生存率が約50%となる100Gyで最も高く、自然変異率と比較して168.5倍であった。シーケンス解析の結果、イオンビームでは、局所的に変異が起こる部位(ホットスポット)が見られたが、線では確認できなかった。イオンビームが線とは異なる遺伝子損傷を生み出すものと考えられる。変異パターンを解析した結果、イオンビーム並びに線では塩基置換の頻度が高く、なかでもトランスバージョンの割合が高かった。
松尾 陽一郎*; 西嶋 茂宏*; 清水 喜久雄*; 長谷 純宏; 坂本 綾子; 田中 淳
no journal, ,
本研究では、イオンビームによる突然変異を高等生物のモデル系として出芽酵母を用い、分子レベルでの解析を行った。イオンビームによる野生型の突然変異頻度は、炭素イオン100Gy照射で最も高く、自然徒然変異と比べて168.5倍であった。変異の種類は、GCからTAのトランスバージョン変異が最も多く見られた。イオンビームでは、線照射では確認できない変異のホットスポットが見られ、約170bpの間隔でDNA配列上に分布していた。このことから、変異ホットスポットとゲノムの高次構造との関係が示唆された。
松尾 陽一郎*; 西嶋 茂宏*; 長谷 純宏; 坂本 綾子; 田中 淳; 清水 喜久雄*
no journal, ,
イオンビームによる突然変異生成のメカニズムについて、高等生物のモデル系として出芽酵母を用い、分子レベルで解析を行った。イオンビーム及び線照射で得られた 変異体の変異位置を解析し、比較を行った。照射試料として、のS288c( )と、変異株g160/2b ()を用い、照射線源として日本原子力研究開発機構・高崎研究所・イオン照射研究施設(TIARA)のAVFサイクロトロンを用いた。イオンは、Cカーボンで、エネルギーは220MeV、LETは107keV/mである。生じた突然変異体をシークエンスした結果、イオンビームはトランスバージョンの頻度が高く、なかでもGCからTAへの変異の割合が高かった。今回の結果から、イオンビーム・線ともに酸化損傷がその置換変異の主な部分を占め、特に8-oxo-dGTPなどによる損傷が優勢であったと考えられる。一方で、イオンビームではリンカーDNAの領域などに局所的な変異が起こりやすいことが推測された。また、野生型へのイオンビーム照射の場合、突然変異が誘発される部位としてACAやACT配列中のC塩基の変異が大きな割合を占めていた。このことから、遺伝子の構造や配列と変異が起こる部位との間に何らかの関係があることが示唆された。
松尾 陽一郎*; 西嶋 茂宏*; 清水 喜久雄*; 長谷 純宏; 坂本 綾子; 鳴海 一成
no journal, ,
放射線による突然変異生成プロセスには、DNA修復機構が大きく関与すると考えられている。特に重粒子線照射の場合、相同組換えや非相同末端結合反応による二本鎖切断修復の関与が大きいと考えられる。そこで本研究では、野性株及び二本鎖切断修復機構を欠損した株()を用い、高LETの重粒子線による分子レベルでの損傷を、相同組換え,非相同末端結合反応それぞれ独立に調べることで、突然変異誘発の過程をクロマチン損傷と修復経路の観点から明らかにすることを目的とした。変異位置並びにヌクレオソームマッピングのデータと比較した結果、野性株ではリンカーDNA領域に局所的に突然変異が誘発されていた。一方、二本鎖切断修復欠損株株及び株では、変異はヒストンタンパクと結合した領域で特異的に生成した。このことは修復メカニズムの差異によって固定される変異が異なるということを示している。
松尾 陽一郎*; 西嶋 茂宏*; 長谷 純宏; 横田 裕一郎; 坂本 綾子; 鳴海 一成; 清水 喜久雄*
no journal, ,
放射線を用いた突然変異による育種技術として、イオンビームが注目されている。本研究ではイオンビーム照射による育種技術のさらなる発展に寄与するため、カーボンイオンビーム並びに線による突然変異への寄与について酵母細胞を用い、分子レベルでの解析を行った。S.cerevisiaeのS288c(RAD+),二本鎖切断修復不活性株であるrad52、及び酸化型前駆体8-oxodGTPの除去活性を失ったogg1株を用いた。最も突然変異の頻度が高かった照射条件を用いて突然変異の誘発を行い、URA3領域(804bp)についてPCR法を用い増幅させ、変異位置をシーケンス解析によって決定した。二本鎖切断修復不活性株であるrad52の感受性は高く、一方ogg1は野生型に近い生存率を示した。これはイオンビーム照射によって生成した二本鎖切断による致死効果が高いことと、照射によって発生した酸化型前駆体が致死性ではないことを示している。シーケンス解析の結果、イオンビーム照射では局所的に変異が起こる部位(ホットスポット)が見られるが、線では確認できなかった。この野性株において重粒子線による変異が局所的に起こる部位と、リンカーDNAの領域が一致することが示された。
松尾 陽一郎*; 西嶋 茂宏*; 長谷 純宏; 坂本 綾子; 鳴海 一成; 清水 喜久雄*
no journal, ,
本研究は、イオンビームによる突然変異誘発のメカニズムを分子レベルで解析することを目的として、野生株並びにDNA修復欠損株を用い、イオンビームによる損傷とDNA修復の機序について解析することを試みた。照射試料として野生株,二本鎖切断修復不活性株である欠損株、及び酸化型核酸塩基前駆体8-oxo-dGTPの除去活性を失った欠損株を用いた。炭素イオンビーム(エネルギー:220MeV, LET:107keV/m)の照射は、日本原子力研究開発機構イオン照射研究施設(TIARA)のAVFサイクロトロンを用いた。最も突然変異頻度が高かった照射区で得られた突然変異体のURA3領域(804bp)をPCR増幅後、シーケンス解析によって変異位置を決定した。その結果、欠損株では、ヒストンタンパクと結合した部位にhot spotがあり、一方、野生株及び欠損株では、ヌクレオソーム構造におけるリンカーDNA領域に局所的に変異が誘発された。また、変異パターンの解析から、イオンビーム誘発突然変異の要因として8-oxo-dGTPが大きく関与することが示唆された。
松尾 陽一郎*; 西嶋 茂宏*; 長谷 純宏; 横田 裕一郎; 坂本 綾子; 鳴海 一成; 清水 喜久雄*
no journal, ,
出芽酵母における線及び重粒子線による突然変異誘発では、グアニンの酸化型前駆体である8-oxodGの生成が突然変異誘発に大きく寄与することを報告してきた。本研究では、出芽酵母野性株及び8-oxodGの除去修復遺伝子が不活性な株を用い、重粒子線による突然変異誘発の過程を修復経路の観点から明らかにすることを目的とした。最も突然変異の頻度が高かった100Gy照射条件で突然変異株を選抜し、遺伝子領域(804bp)における変異位置をシーケンス解析によって決定した。野性株及び株ともに塩基置換の頻度が高く、特に株では変異のすべてが置換変異であった。また株ではG・CからT・Aのトランスバーションが70%を占め、野性株の場合と比較して有意な差を示した。これは株では誤挿入された8-oxodGの除去がなされないためであると考えられる。これらの結果から、重粒子線照射による突然変異はヌクレオチドプールの酸化及び誤挿入のプロセスが大きく寄与することが推測された。
松尾 陽一郎*; 西嶋 茂宏*; 長谷 純宏; 坂本 綾子; 鳴海 一成; 清水 喜久雄*
no journal, ,
本研究は、真核生物のモデル生物である出芽酵母を用いて、イオンビームで生じる突然変異誘発の分子機構を解明することを目的とする。今回、野生株,DNAグリコシラーゼ活性の欠損によって8オキソデオキシグアニン(8-oxodG)を除去できない変異株及びミスマッチ修復欠損の変異株を用いて、5-フルオロオロト酸耐性を指標として取得した変異体を解析し、高LET炭素イオンビームによって生じる突然変異誘発性を調べた。変異株の100Gy照射での変異の出現頻度は野生株の2倍であった。野生株では遺伝子に起こった突然変異のうちGT塩基置換が全体の41%を占めていたのに対して、変異株ではGT塩基置換が全体の70%を占めていた。また変異株では一塩基欠失の割合が高かった。以上のことから、重粒子線照射による突然変異誘発は、クラスター損傷とともに誘起されるヌクレオチドプールの酸化、そして酸化ヌクレオチドの誤挿入という多段階的なプロセスによって誘起されると考えられる。