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廃炉環境国際共同研究センター; 東京大学*
JAEA-Review 2024-021, 126 Pages, 2024/11
日本原子力研究開発機構(JAEA)廃炉環境国際共同研究センター(CLADS)では、令和4年度英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業(以下、「本事業」という)を実施している。本事業は、東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所の廃炉等をはじめとした原子力分野の課題解決に貢献するため、国内外の英知を結集し、様々な分野の知見や経験を、従前の機関や分野の壁を越えて緊密に融合・連携させた基礎的・基盤的研究及び人材育成を推進することを目的としている。平成30年度の新規採択課題から実施主体を文部科学省からJAEAに移行することで、JAEAとアカデミアとの連携を強化し、廃炉に資する中長期的な研究開発・人材育成をより安定的かつ継続的に実施する体制を構築した。本研究は、令和3年度に採択された研究課題のうち、「ジオポリマー等によるPCV下部の止水・補修及び安定化に関する研究」の令和4年度分の研究成果について取りまとめたものである。本研究では、PCV底部の止水及び補修を目的として、改良したジオポリマーや超重泥水によりジェットデフレクター等を止水し、併せてドライウェル下部を補修する施工法を提案する。また、堆積状況など未解明な状況にある現場施工の選択肢を増やすため、止水・補修材の対象部位周辺への局所的施工のみならず、ペデスタル外の広範囲にわたる施工についても検討し、最新の熱流動シミュレーション法により、工法実現性を評価する。広範囲に施工する場合には、ペデスタル外に流出した燃料デブリや堆積物は止水・補修材で被覆されて廃棄体となる。このため、燃料デブリの成層化状態等性状を実験及び解析により把握した上で、廃棄体を安定化する方策を検討するとともに、核種浸出性を含めた廃棄体の長期寿命を評価する。
結城 光平*; 堀口 直樹; 吉田 啓之; 結城 和久*
Proceedings of 31st International Conference on Nuclear Engineering (ICONE31) (Internet), 4 Pages, 2024/11
福島第一原子力発電所の燃料デブリは浸漬状態で冷却されている。しかし、予期せぬ水位低下が発生した場合、冷却水が多孔質構造を持つ高温の燃料デブリに接触する。このような場合、燃料デブリを早急に冷やす必要があるが、固液接触時の毛細管現象といった熱挙動は不明である。本論文では、基礎研究として、1mm以下の小孔を有する金属多孔体に接触した後の液滴蒸発特性を評価した。実験では、液滴のライフタイム曲線を得るために、孔径1, 40, 100umのブロンズまたはステンレス多孔体を用いた。実験結果から、発生した蒸気が小孔から排出されることで、多孔質体表面ではライデンフロスト現象が抑制されることがわかった。さらに、ブロンズ多孔質体では多孔質体の温度上昇と共に毛細管現象が観察され、これは微細な構造を持つ酸化膜が生成されたためであった。一方、ステンレス多孔体では低い濡れ性のため、毛細管現象は起こらず、液滴が小孔に吸い込まれて広がることはなかった。このことから、燃料デブリがステンレス多孔体と同じ特性を持つ場合には、毛細管現象による急冷を期待できないことが示された。
廃炉環境国際共同研究センター; 東京工業大学*
JAEA-Review 2024-026, 80 Pages, 2024/10
日本原子力研究開発機構(JAEA)廃炉環境国際共同研究センター(CLADS)では、令和4年度英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業(以下、「本事業」という。)を実施している。本事業は、東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所(以下、「1F」という。)の廃炉等をはじめとした原子力分野の課題解決に貢献するため、国内外の英知を結集し、様々な分野の知見や経験を、従前の機関や分野の壁を越えて緊密に融合・連携させた基礎的・基盤的研究及び人材育成を推進することを目的としている。平成30年度の新規採択課題から実施主体を文部科学省からJAEAに移行することで、JAEAとアカデミアとの連携を強化し、廃炉に資する中長期的な研究開発・人材育成をより安定的かつ継続的に実施する体制を構築した。本研究は、令和元年度に採択された研究課題のうち、「放射線・化学・生物的作用の複合効果による燃料デブリ劣化機構の解明」の令和元年度から令和4年度分の研究成果について取りまとめたものである。本研究は、放射化学、核化学、核物理、燃料材料科学の専門家に環境微生物の専門家を加えた研究者により、模擬デブリの作製から、照射、化学的作用及び生物作用による溶出試験を行い、富岡町の国際共同研究棟等にJAEAが有する先端分析機器を駆使してデブリの性状の変化、元素の溶出挙動を分析し、放射線損傷と酸化環境下における化学的及び生物学的損傷の複合作用による燃料デブリの劣化機構を解明することを目的とした。令和4年度には、放射線・化学・生物的作用の複合効果による燃料デブリ劣化機構の解明のため、線照射下における微生物の模擬燃料デブリ劣化試験、Feと錯形成能を有するシデロフォアであるdesferrioxamine (DFO)あるいは代替物とFe、Uの錯形成能、模擬燃料デブリやマイクロ粒子を計測できるマイクロ流路を用いた溶解試験、Fe酸化物への収着へのシデロフォアなどの影響、モデル微生物や1F付近で採取した菌種による模擬燃料デブリの劣化に関する知見を実験により得た。更に、模擬デブリの劣化を時間の関数として表すモデルを作成し、計算を行った。
Battulga, B.; 中西 貴宏; 安藤 麻里子; 乙坂 重嘉*; 小嵐 淳
Environmental Science and Pollution Research, 31, p.60080 - 60092, 2024/10
プラスチックの破片が水生環境および陸上環境で遍在的に分布していることが報告されている。しかし、プラスチックと放射性核種との相互作用や、環境プラスチックの放射能についてはほとんど知られていない。今回われわれは、環境中のプラスチックと放射性セシウム(Cs)の間の相互作用媒体としてのプラスチック関連バイオフィルムの役割を調査するためにプラスチック破片の表面で発達するバイオフィルムの特徴を調べる。バイオフィルムサンプルは日本の二つの対照的な沿岸地域から収集されたプラスチック(1-50mm)から抽出された。プラスチックの放射能は、バイオフィルムのCs放射能濃度に基づいて推定され、周囲の環境サンプル(つまり、堆積物や砂)と季節ごとに比較された。Csの痕跡は、バイオフィルムの放射能濃度21-1300Bq kg(乾燥重量)のバイオフィルムで検出され、これは0.04-4.5Bq kgプラスチック(乾燥重量)に相当する。われわれの結果はCsとプラスチックとの相互作用を明らかにしバイオフィルム中の有機成分と鉱物成分が環境プラスチック中のCsの保持に不可欠であるという証拠を提供する。
中島 慎介*; Moro, A.*; 小松 廉*; Faragasso, A.*; 松日楽 信人*; Woo, H.*; 川端 邦明; 山下 淳*; 淺間 一*
Proceedings of International Topical Workshop on Fukushima-Daiichi Decommissioning Research 2024 (FDR2024) (Internet), 4 Pages, 2024/10
Fuel debris retrieval at the bottom of the primary containment vessel (PCV) is one of the significant tasks for the decommissioning of the nuclear power plant and in particular for 1F. It is challenging for conventional manipulators to perform the retrieval process due to the presence of radiation, water leakage, and poor lighting conditions. We tackle those problems with the design and fabrication of a novel mechanical manipulator and its control and navigation algorithm. Continuous Variable Transmission (CVT)-based actuation improves the robot's shock resistance. AI-based navigation algorithm enables semiautonomous navigation and grasping in the cluttered environment inside the PCV.
廃炉環境国際共同研究センター; 東京工業大学*
JAEA-Review 2024-022, 59 Pages, 2024/09
日本原子力研究開発機構(JAEA)廃炉環境国際共同研究センター(CLADS)では、令和4年度英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業(以下、「本事業」という。)を実施している。本事業は、東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所の廃炉等をはじめとした原子力分野の課題解決に貢献するため、国内外の英知を結集し、様々な分野の知見や経験を、従前の機関や分野の壁を越えて緊密に融合・連携させた基礎的・基盤的研究及び人材育成を推進することを目的としている。平成30年度の新規採択課題から実施主体を文部科学省からJAEAに移行することで、JAEAとアカデミアとの連携を強化し、廃炉に資する中長期的な研究開発・人材育成をより安定的かつ継続的に実施する体制を構築した。本研究は、令和4年度に採択された研究課題のうち、「マイクロ・ナノテクノロジーを利用したアルファ微粒子の溶解・凝集分散に及ぼすナノ界面現象の探求」の令和4年度分の研究成果について取りまとめたものである。安全で合理的な燃料デブリ取出しを進めるためには、デブリ加工時に発生するアルファ微粒子の溶解や変性挙動の把握は不可欠であることに鑑み、本研究は、金属酸化物ナノ粒子の凝集、溶解、変性挙動を熱力学的・速度論的に解明し得るマイクロ・ナノデバイスを創出すると共に、数理科学と組み合わせることで、アルファ微粒子の溶解・凝集・変性プロセスのメカニズム解明と反応モデル化を実現することを目的としている。具体的には、(1)ナノ粒子溶解特性評価、(2)溶解ダイナミクス分析、(3)凝集ダイナミクス分析、(4)表面微構造解析、(5)数理科学的モデリングの5項目を日本側・英国側で分担し、互いに有機的に連携しながら推し進める。令和4年度には、マイクロ限外ろ過分離法を用いて金属酸化物ナノ粒子(TiO、CeO、ZrO、ZnO)の溶解特性を調べ、これら金属酸化物ナノ粒子と反応溶媒(純水、硝酸、HO)との組み合わせによって、個々のナノ粒子の変性挙動は異なっており、特に、HO処理がナノ粒子の変性と溶解の促進を引き起こすことを見出した。また、金属酸化物ナノ粒子と反応溶媒との衝突反応を観測できるマイクロデバイスを創出し、観察画像の輝度変化からナノ粒子の凝集速度を求めることに成功した。
廃炉環境国際共同研究センター; 海上・港湾・航空技術研究所*
JAEA-Review 2024-020, 77 Pages, 2024/09
日本原子力研究開発機構(JAEA)廃炉環境国際共同研究センター(CLADS)では、令和4年度英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業(以下、「本事業」という)を実施している。本事業は、東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所の廃炉等をはじめとした原子力分野の課題解決に貢献するため、国内外の英知を結集し、様々な分野の知見や経験を、従前の機関や分野の壁を越えて緊密に融合・連携させた基礎的・基盤的研究及び人材育成を推進することを目的としている。平成30年度の新規採択課題から実施主体を文部科学省からJAEAに移行することで、JAEAとアカデミアとの連携を強化し、廃炉に資する中長期的な研究開発・人材育成をより安定的かつ継続的に実施する体制を構築した。本研究は、令和2年度に採択された研究課題のうち、「無人航走体を用いた燃料デブリサンプルリターン技術の研究開発」の令和2年度から令和4年度分の研究成果について取りまとめたものである。本研究は、日英共同研究体制の下、耐放射線性を持ちつつ中性子検出効率を向上させた中性子検出器と、強力な切削能と収集能を持ったエンドエフェクタ並びにマニピュレータを融合させた燃料デブリサンプリング装置を開発し、それらを無人航走体へ搭載させた燃料デブリサンプリングシステムを構築することを目指したものである。さらに、システム位置を同定する測位システムと、光学カメラ、ソナー、今回開発する中性子検出器の計数情報を仮想現実システムへ投影させる技術を開発し、遠隔操作技術の向上に貢献する技術開発を行った。日本側が担当した燃料デブリマッピングツールの開発では、1)高耐放射線小型高効率中性子センサの開発、2)UUVプラットホームの開発、3)放射線環境シミュレーション及び積算中性子線量計の特性評価を実施した。実施項目1)ではシリコン半導体検出器に微細構造を施して中性子の感度を上げ、ガンマ線の感度を下げたMSNDの特性評価と専用集積回路を開発し、小型高効率中性子センサを実現した。実施項目2)では、燃料デブリマッピングツール構成要素(中性子センサ、水中カメラ、ソナー、LiDAR)が連動するための通信制御系とUUVプラットホームとのインターフェースを完成させた。
廃炉環境国際共同研究センター; 福井大学*
JAEA-Review 2024-014, 112 Pages, 2024/08
日本原子力研究開発機構(JAEA)廃炉環境国際共同研究センター(CLADS)では、令和4年度英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業(以下、「本事業」という)を実施している。本事業は、東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所の廃炉等をはじめとした原子力分野の課題解決に貢献するため、国内外の英知を結集し、様々な分野の知見や経験を、従前の機関や分野の壁を越えて緊密に融合・連携させた基礎的・基盤的研究及び人材育成を推進することを目的としている。平成30年度の新規採択課題から実施主体を文部科学省からJAEAに移行することで、JAEAとアカデミアとの連携を強化し、廃炉に資する中長期的な研究開発・人材育成をより安定的かつ継続的に実施する体制を構築した。本研究は、令和3年度に採択された研究課題のうち、「燃料デブリ周辺物質の分析結果に基づく模擬デブリの合成による実機デブリ形成メカニズムの解明と事故進展解析結果の検証によるデブリ特性データベースの高度化」の令和4年度分の研究成果について取りまとめたものである。酸化物デブリの逆解析では、ガス浮遊法や微小な穴を持つタングステンパイプから溶融・噴出させる方法により模擬燃料粒子の合成に成功した。さらに、サンプリングデータに基づき作成されたU1-No.15試料の凝固パス図を再現し、鉄の挙動が熱力学予測と少し異なる結果を得た。金属デブリの混合・溶融・凝固状態の評価では、溶融させた金属デブリのステンレスへの落下試験や溶融ステンレスを模擬金属デブリへの落下試験より、それぞれ溶融反応が低下するメカニズムを明らかにした。さらにステンレス鋼とジルコニウム混合物の各種圧力容器部材や溶接部材との反応速度データに基づく大型試験体系での解析可能な簡素化モデルを提示、また圧力容器下部の材質を参照した大型試験体の実験より酸化物が圧力容器破損に与える影響を評価、さらに炉心部から先行して溶融・移行したステンレス鋼等の金属物質の再溶融過程におけるウラン混入条件の評価を行った。また、試験技術の整備として、二酸化ウランとジルコニウムと金属との半溶融模擬デブリの合成、少量のウランを用いる模擬燃料デブリ合成に最適な加熱炉の検討を行った。
廃炉環境国際共同研究センター; 東京工業大学*
JAEA-Review 2024-010, 112 Pages, 2024/08
日本原子力研究開発機構(JAEA)廃炉環境国際共同研究センター(CLADS)では、令和4年度英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業(以下、「本事業」という。)を実施している。本事業は、東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所の廃炉等をはじめとした原子力分野の課題解決に貢献するため、国内外の英知を結集し、様々な分野の知見や経験を、従前の機関や分野の壁を越えて緊密に融合・連携させた基礎的・基盤的研究及び人材育成を推進することを目的としている。平成30年度の新規採択課題から実施主体を文部科学省からJAEAに移行することで、JAEAとアカデミアとの連携を強化し、廃炉に資する中長期的な研究開発・人材育成をより安定的かつ継続的に実施する体制を構築した。本研究は、令和3年度に採択された研究課題のうち、「福島第一発電所2、3号機の事故進展シナリオに基づくFP・デブリ挙動の不確かさ低減と炉内汚染状況・デブリ性状の把握」の令和4年度分の研究成果について取りまとめたものである。本研究では、シールドプラグ下高線量の原因究明、事故時のCs移行経路や、Csの構造材付着・堆積状態の解明及び先行溶落したと推定される金属リッチデブリ特性評価を行うため、事故進展最確シナリオ評価に基づく材料科学的アプローチを行っている。令和4年度は、3号機RPVの炉心損傷進展においてMoやIを含んだCs系化学種が気相安定条件、3号機PCVではCsとコンクリート成分の相互反応で形成する可能性のあるCs-Si-Al-O系化合物の生成条件などを整理した。Cs含有物質や金属デブリ模擬物質やコンクリートを用いた水蒸気雰囲気における熱分析試験を実施し、金属表面ではCrやFe系化合物が、酸化物表面ではSiやAlなどの成分を含む化合物が化学吸着する傾向があることが分かった。Csを含有するエアロゾルに関して、CsO-FeO系融体の粘度測定を行い、生成浮遊機構解明を進めた。
廃炉環境国際共同研究センター; 東京大学*
JAEA-Review 2024-017, 55 Pages, 2024/07
日本原子力研究開発機構(JAEA)廃炉環境国際共同研究センター(CLADS)では、令和4年度英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業(以下、「本事業」という。)を実施している。本事業は、東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所の廃炉等をはじめとした原子力分野の課題解決に貢献するため、国内外の英知を結集し、様々な分野の知見や経験を、従前の機関や分野の壁を越えて緊密に融合・連携させた基礎的・基盤的研究および人材育成を推進することを目的としている。平成30年度の新規採択課題から実施主体を文部科学省からJAEAに移行することで、JAEAとアカデミアとの連携を強化し、廃炉に資する中長期的な研究開発・人材育成をより安定的かつ継続的に実施する体制を構築した。本研究は、令和3年度に採択された研究課題のうち、「燃料デブリ取り出しのための機械式マニピュレータのナビゲーションおよび制御」の令和4年度分の研究成果について取りまとめたものである。本研究は、未知環境での衝突対応のための機械的可変インピーダンスアクチュエータを用いたロボットマニピュレータの開発および効率的な探査・廃止措置のための人工知能を使った制御手法の構築に取り組む。従来調査では困難だった開口部から奥の領域における調査を行う他、先端部のグリッパーで、ペデスタルの底部に存在する小石状の燃料デブリの回収を目指す。ペデスタル内部の環境制約に対応するためのマニピュレータ機構と遠隔操作システムの開発に取り組む。令和4年度は、最適なマニピュレータのパラメータ設計とナビゲーションアルゴリズムの開発に取り組んだ。令和3年度に開発したシミュレーション環境を活用し、廃炉措置に最適なマニピュレータやアクチュエータのパラメータの設計をライテックスと共同で行った。構築したシミュレーション環境において適したマニピュレータの寸法・速度伝達比および効率的な把持力の推定を目指した。得られた情報・最適なマニピュレータのパラメータは英国と情報交換をすることで、最終的なマニピュレータ設計へと反映させた。並行して、ナビゲーションアルゴリズムの開発をライテックスと共同で進めた。特に、機械学習手法等を活用した手法の構築、二次元画像からの目標点のオペレータ提示に基づく高信頼性ビジュアルサーボの実現を目指した。
廃炉環境国際共同研究センター; 東京工業大学*
JAEA-Review 2024-013, 48 Pages, 2024/07
日本原子力研究開発機構(JAEA)廃炉環境国際共同研究センター(CLADS)では、令和4年度英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業(以下、「本事業」という。)を実施している。本事業は、東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所の廃炉等をはじめとした原子力分野の課題解決に貢献するため、国内外の英知を結集し、様々な分野の知見や経験を、従前の機関や分野の壁を越えて緊密に融合・連携させた基礎的・基盤的研究及び人材育成を推進することを目的としている。平成30年度の新規採択課題から実施主体を文部科学省からJAEAに移行することで、JAEAとアカデミアとの連携を強化し、廃炉に資する中長期的な研究開発・人材育成をより安定的かつ継続的に実施する体制を構築した。本研究は、令和3年度に採択された研究課題のうち、「非接触測定法を用いた燃料デブリ臨界解析技術の高度化」の令和4年度分の研究成果について取りまとめたものである。本研究は、非接触のアクティブ中性子法により燃料デブリの臨界安全上の特性を評価する測定システムの開発と、燃料デブリ取出し作業員の安全確保方策の確立に資する基盤技術として多領域積分型動特性解析コードの開発により燃料デブリ臨界解析技術を高度化することを目的としており、令和3年度から令和5年度の3年計画の2年目として東京工業大学、産業技術総合研究所、長岡技術科学大学が連携して実施した。検出器設計最適化のために新たに基礎実験を行って取得したデータを用いて、中性子輸送計算コードの妥当性及び不確かさを評価することで解析精度の向上を図った。この基礎データを基にした輸送計算コードを用いたパラメトリックサーベイにより、検出器の配置やHeガス圧、減速材、遮蔽材、中性子源配置の最適化を実施することにより検出器を設計した。遅発中性子による核分裂も考慮可能な多領域積分型動特性解析コードMIK2.0-MVPを開発し、予備検証としてGODIVA炉超臨界実験の再現解析を実施した。この結果より、MIK2.0-MVPコードでは、MIK1.0コードが有する計算機能に加えて、遅発中性子による核分裂の効果を考慮することができるようになり、MIK2.0-MVPコードと粒子法コードの弱連成解析の土台となる新たな機能を確立することができた。以上の活動により本研究の令和4年度の目的を達成することができた。
根本 隆弘; 藤原 佑輔; 荒川 了紀; 長山 侑矢; 長住 達; 長谷川 俊成; 横山 佳祐; 渡部 雅; 大西 貴士; 川本 大樹; et al.
JAEA-Technology 2024-003, 17 Pages, 2024/06
RS-14サイクルに発生した1次ヘリウム循環機フィルタの差圧上昇の原因を調査するため、フィルタ付着物を調査した。調査の結果、フィルタエレメント表面にシリコンオイルに起因する付着物を確認した。この結果から、フィルタ差圧上昇の原因は、1次ヘリウム純化設備ガス循環機のチャコールフィルタの性能劣化により、1次系内にシリコンオイルが混入したためであることが明らかとなった。また、この再発防止対策として、従来の1次ヘリウム純化設備ガス循環機の運転時間による管理に加え、チャコールフィルタの交換頻度を3年毎とする定期交換計画を新たに策定した。
廃炉環境国際共同研究センター; 東京大学*
JAEA-Review 2024-007, 83 Pages, 2024/06
日本原子力研究開発機構(JAEA)廃炉環境国際共同研究センター(CLADS)では、令和4年度英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業(以下、「本事業」という。)を実施している。本事業は、東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所の廃炉等をはじめとした原子力分野の課題解決に貢献するため、国内外の英知を結集し、様々な分野の知見や経験を、従前の機関や分野の壁を越えて緊密に融合・連携させた基礎的・基盤的研究及び人材育成を推進することを目的としている。平成30年度の新規採択課題から実施主体を文部科学省からJAEAに移行することで、JAEAとアカデミアとの連携を強化し、廃炉に資する中長期的な研究開発・人材育成をより安定的かつ継続的に実施する体制を構築した。本研究は、令和2年度に採択された研究課題のうち、「燃料デブリにおける特性の経年変化と環境劣化割れの調査」の令和2年度から令和4年度分の研究成果について取りまとめたものである。本研究は、燃料被覆管、制御棒シース等に由来する元素を主成分とする"金属デブリ"に着目し、事故の進展と経年化によるデブリの特性の変化及び材料の変化に由来する金属デブリの機械的特性と形状について、基礎的な知見を取得するものである。今年度が最終年度であり、三ヶ年で得られた知見は次の通りである。金属デブリには、Zr-Fe-B-C系の状態図に即した6つの相が析出する。燃料ペレットから金属デブリ側への酸素拡散による酸化は限定的だと予想される。事故直後を模擬した高温酸化状態では、表面にZrFeを主成分とする外層皮膜が形成される。この物質は良い耐食性を持つので、外層皮膜は金属的な性質を維持している。母相の化学組成に応じた内層酸化皮膜も形成される。内層皮膜の成長は体積膨張を伴うが、ZrB等は硬質で酸化しないので、これを起点に表面隆起や割れが生じる。軽水炉運転温度程度の水蒸気腐食環境で、金属デブリを構成する各相は耐食性を持つ。金属デブリへの水素吸収は限定的である。被覆管材が主成分の金属デブリは金属的だが、原子炉圧力容器や制御材の構成物質を多く含むなら硬くて脆くなる。金属デブリの表面には、硬さの小さな外層皮膜が存在する可能性があるが、内部の機械的特性は主要構成物質の性質による。
廃炉環境国際共同研究センター; アイラボ*
JAEA-Review 2023-029, 77 Pages, 2024/05
日本原子力研究開発機構(JAEA)廃炉環境国際共同研究センター(CLADS)では、令和4年度英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業(以下、「本事業」という。)を実施している。本事業は、東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所の廃炉等をはじめとした原子力分野の課題解決に貢献するため、国内外の英知を結集し、様々な分野の知見や経験を、従前の機関や分野の壁を越えて緊密に融合・連携させた基礎的・基盤的研究及び人材育成を推進することを目的としている。平成30年度の新規採択課題から実施主体を文部科学省からJAEAに移行することで、JAEAとアカデミアとの連携を強化し、廃炉に資する中長期的な研究開発・人材育成をより安定的かつ継続的に実施する体制を構築した。本研究は、令和2年度に採択された研究課題のうち、「マイクロ波重畳LIBSによるデブリ組成計測の高度化と同位体の直接計測への挑戦」の令和2年度から令和4年度分の研究成果について取りまとめたものである。本研究は、MW(マイクロ波)重畳によりLIBS(レーザーブレークダウン分光)の発光強度を上げ、ウラン同位体計測に適用することを目的としている。令和4年度では、半導体マイクロ発振器をさらに小型化するために冷却方式の見直しや必須とならない機能の削減を行い、さらにマイクロ波アンテナにおいてはシミュレーションで得た最適化条件をLIBS実験に適用することにより良好な結果が得られた。同位体計測について、スペクトル調査を行い、同位体をもつウランとスペクトルが似ているジルコニウムでLIBS測定の最適化を行い、100倍以上の増倍率が得られた。さらに、テーブルトップLIBS光学系、小型化されたLIBSセンサー部、マイクロ波アンテナの統合とシステムの評価を行い、ステンレス(Cr含有)・Pb・Al等を用いて計測性の向上効果を検討したところ、材料によらずマイクロ波重畳によるシグナル強度の増大効果・SN比向上の効果が出ることが分かった。MW重畳有り/無しのLIBSスペクトルの差異を検討し、スペクトラムの差異、データ処理の仕様を決定し、ビーム検出精度を向上するパラメータ抽出が可能となった。ピーク検出と背景光のデータ解析ソフトウェアの構築を開始した。最終年度である本年の最後に、目的とするウランの同位体計測を行った。マイクロ波による増強効果が得られ、マイクロ波重畳LIBSの計測は成功した。
Batsaikhan, M.; 赤岡 克昭; 佐伯 盛久*; 狩野 貴宏; 大場 弘則; 若井田 育夫
Journal of Nuclear Science and Technology, 61(5), p.658 - 670, 2024/05
被引用回数:2 パーセンタイル:65.72(Nuclear Science & Technology)この実験研究では、レーザー誘起ブレークダウン分光法(LIBS)を用いて模擬燃料デブリの二次元元素マッピングを実行し、サンプル表面の元素組成と分布を決定した。本物の燃料デブリはサンプルとして入手できないため、化合物や金属などの予測材料から模擬燃料デブリを作製した。Nd:YAGレーザーの第2高調波を使用して、サンプル表面にプラズマを生成させた。さらに、エシェル分光器を使用して、435650nmの可視波長範囲でプラズマからの発光を検出した。収集されたデータセットのサイズと複雑さから従来のデータ分析方法では良い効果が得られないことが判明した。そのため本研究では、主成分分析や多変量曲線分解能代替最小二乗法などのラベルフリー化学測定法に基づく方法を実装して、サンプル内の各成分に関する空間情報およびスペクトル情報を取得した。結果として、LIBSと化学測定法の統合が、事前知識がほとんどまたは全く無くてもサンプル(燃料デブリなど)に関する定性情報を取得するための非常に効果的なツールであることを実証した。
山下 拓哉; 下村 健太; 永江 勇二; 永井 英一*; 安松 智博*; 中島 悟*; 荻野 翔矢*; 溝上 伸也*
Proceedings of 11th European Review Meeting on Severe Accident Research Conference (ERMSAR 2024) (Internet), 11 Pages, 2024/05
Internal investigations of the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant (1F) have been conducted, and the internal situation is gradually becoming clearer. In addition, trial debris removal has been conducted and much information is being obtained. The information obtained from the trial debris removal is managed in the decommissioning fundamental research database (debrisWiki), which was established by JAEA and TEPCO. However, it is difficult to understand the entire accident progress only from individual data. Therefore, we developed a 3D view application (debrisEye) for 1F decommissioning. debrisEye was created by Unity. For the CG displayed in debrisEye, pre- and post-accident conditions were constructed. The pre-accident status was created using design information and point cloud data from periodic inspections. The post-accident status was created mainly from the results of the internal investigation. For areas where internal investigations have not yet been obtained, the information in the estimation diagram was reflected. CG displayed on debrisEye can be viewed from any viewpoint and angle using the functionality contained in debrisEye. It is also possible to clipping at any cross section and to show or hide each part. debrisEye can be linked to and used with debrisWiki to write information in any location, thus displaying the analysis results and location of the debris collected. Visual linking of debris analysis results with on-site information is expected to facilitate understanding of accident progress and improve efficiency of decommissioning work.
廃炉環境国際共同研究センター; 東北大学*
JAEA-Review 2023-025, 117 Pages, 2024/03
日本原子力研究開発機構(JAEA)廃炉環境国際共同研究センター(CLADS)では、令和4年度英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業(以下、「本事業」という)を実施している。本事業は、東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所(1F)の廃炉等をはじめとした原子力分野の課題解決に貢献するため、国内外の英知を結集し、様々な分野の知見や経験を、従前の機関や分野の壁を越えて緊密に融合・連携させた基礎的・基盤的研究及び人材育成を推進することを目的としている。平成30年度の新規採択課題から実施主体を文部科学省からJAEAに移行することで、JAEAとアカデミアとの連携を強化し、廃炉に資する中長期的な研究開発・人材育成をより安定的かつ継続的に実施する体制を構築した。本研究は、令和元年度に採択された研究課題のうち、「燃料デブリ分析のための超微量分析技術の開発」の令和4年度分の研究成果について取りまとめたものである。本研究では、燃料デブリの取り扱い、臨界管理、保管管理等に必要な性状把握において、キーとなるアクチノイド核種の化学分析を中心に、最適な試料前処理・分離・分析プロセスを開発し、将来計画されている燃料デブリ分析の効率化・合理化を図るとともに、一連の研究業務における人材育成を通し、1F廃炉推進に資することを目的とする。特に、近年分析化学分野、放射化学分野で成果を上げつつある誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS/MS)を原子力分野に応用することにより、測定核種を単離するための前処理をせずに高精度で分析できる手法を開発し、分離前処理を省力化し、迅速な分析工程を確立する。
池内 宏知; 小山 真一
日本原子力学会誌ATOMO, 66(2), p.74 - 78, 2024/02
東京電力福島第一原子力発電所(1F)からの着実な燃料デブリの取出しに向けて、性状未知の燃料デブリ試料(未知試料)の分析技術・体制の構築が喫緊の課題となっている。このため、性状既知のサンプル(模擬燃料デブリ)を用いた分析試験と専門家間の議論を通じて、分析結果の妥当性や誤差をもたらす要因など、分析精度の現状の到達レベルを知るとともに、その影響因子の把握と改善に向けた検討が進められている。本稿では、「核種・元素量」の分析・評価技術の基盤整備について、一端を紹介する。
鎌田 正輝*; 吉田 拓真*; 杉田 宰*; 奥村 啓介
日本原子力学会誌ATOMO, 66(2), p.83 - 86, 2024/02
福島第一原子力発電所から取り出された物体の核燃料物質量を計測し、核燃料物質量に基づいて燃料デブリと放射性廃棄物に仕分けることができれば、取り出しから保管までの作業および保管施設の合理化につながる。これまで、廃炉・汚染水対策事業において、2019年度に燃料デブリと放射性廃棄物の仕分けに適用できる可能性がある非破壊計測技術を調査し、20202021年度に候補技術における計測誤差因子の影響を評価した。2022年度以降も引き続き、燃料デブリの取り出し規模の更なる拡大に向けて、燃料デブリと放射性廃棄物の仕分けのための非破壊計測技術の開発を進めているところである。
廃炉環境国際共同研究センター; 日本分析センター*
JAEA-Review 2023-022, 93 Pages, 2023/12
日本原子力研究開発機構(JAEA)廃炉環境国際共同研究センター(CLADS)では、令和4年度英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業(以下、「本事業」という。)を実施している。本事業は、東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所の廃炉等を始めとした原子力分野の課題解決に貢献するため、国内外の英知を結集し、様々な分野の知見や経験を、従前の機関や分野の壁を越えて緊密に融合・連携させた基礎的・基盤的研究および人材育成を推進することを目的としている。平成30年度の新規採択課題から実施主体を文部科学省からJAEAに移行することで、JAEAとアカデミアとの連携を強化し、廃炉に資する中長期的な研究開発・人材育成をより安定的かつ継続的に実施する体制を構築した。本研究は、令和2年度に採択された研究課題のうち、「、、X線同時解析による迅速・高感度放射性核種分析法の開発」の令和2年度から令和4年度分の研究成果について取りまとめたものである。本研究は、燃料デブリ・廃棄物中放射性核種の迅速分析の実現を目指し、多重線検出法などの最新計測システムを整備し、スペクトル定量法(Spectral Determination Method:以下、「SDM法」という。)を開発する。令和4年度の研究においては、令和3年度に引き続き、LSC、シングルスGe、2Dスペクトル(多重)の測定データを統一的に扱うコードを開発するとともに、40核種のそれぞれの測定におけるスペクトルデータを実測およびシミュレーション計算により求め、統合データベースを整備した。粗化学分離法については、最終的に7分離法-12ステップを経由し、10個のフラクションとすることで、39核種の定量が可能であることがわかった。SDM法はスペクトル分析一般に適用できるため、今後広い分野への応用が期待される。また、SDM法の高精度化のため、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いた複数核種の核種識別法を本研究で対象とする全核種について対応を行った。