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伊藤 久義
放射線と産業, (138), p.2 - 3, 2015/06
福島第一原子力発電所事故で飛散した放射性物質による環境汚染を修復するため、放射線加工・計測技術を活用して、環境モニタリングや除染技術の開発が精力的に進められ、着実に成果が創出されている現況を概説するとともに、科学技術イノベーションを産み出すための基盤技術としての放射線技術の重要性・必要性を論述する。
伊藤 久義
Proceedings of SPIE, Vol.8725 (CD-ROM), 7 Pages, 2013/05
被引用回数:0 パーセンタイル:0.01(Nanoscience & Nanotechnology)原子力機構では、宇宙,加速器,原子力施設等の過酷な環境で使用する電子システムへの応用を目指し、耐放射線性半導体の研究開発を推進してきた。このような耐放射線性半導体は福島第一原子力発電所の廃止措置に必要なロボットや機器類にも不可欠と考えられる。このため、半導体材料の中でもバンドギャップが大きく、高い耐熱性・耐放射線性が期待できる炭化ケイ素(SiC)半導体に着目し、SiC基板を用いたトランジスタを製作して線照射を行い、素子特性の放射線劣化を評価した。この結果、SiCトランジスタは1MGyの高線量照射後もほとんど素子特性が劣化せず、極めて高い耐放射線性を有することが実証できた。本報告では、このような耐放射線性SiC半導体に関する最近の研究成果についてレビューする。
伊藤 久義; 瀬古 典明; 黒木 良太; 矢板 毅; 長縄 弘親; 中山 真一
放射線化学(インターネット), (93), p.31 - 36, 2012/03
福島第一原子力発電所事故で飛散した放射性物質による環境汚染を修復するため、高性能セシウム捕集材の創製研究を進め、セシウム吸着機能を持つ官能基を付加したグラフト重合捕集材,高いセシウム吸着選択性を有するタンパク質及びクラウンエーテル捕集材の開発に成功した。また、放射性物質を含む土壌の発塵を抑止しながら除去を行う実用的手法として、ポリイオン及びベントナイト(粘土)による土壌の固定・回収技術を開発した。開発技術を用いた除染フィールド試験を福島県飯舘村にて実施し、当該技術の有効性が実証できた。
長縄 弘親; 熊沢 紀之*; 斉藤 浩*; 柳瀬 信之; 三田村 久吉; 永野 哲志; 鹿嶋 薫*; 福田 達也*; 吉田 善行; 田中 俊一*
日本原子力学会和文論文誌, 10(4), p.227 - 234, 2011/12
2011年3月15日に発生した東京電力福島第一原子力発電所2号機の水素爆発で放出された放射性物質によって汚染された、福島県相馬郡飯舘村長泥地区のビニールハウス用農地,水田,牧草地,家屋周辺等の土壌の除染を試みた。除染方法は、高分子陽イオンと高分子陰イオンが生成する固体状の高分子イオン複合体(ポリイオンコンプレックス: PIC)を用いて固定化した、土壌の表層部を剥離することを原理とする。2種類のPIC水溶液を用いて異なった特性の土壌を対象に除染試験を実施し、90%以上の高い除染率が得られること、及び同法が除染作業中の土壌の飛散の抑制に効果的であることを明らかにした。
大島 武; 岩本 直也; 小野田 忍; Wagner, G.*; 伊藤 久義; 河野 勝泰*
Surface & Coatings Technology, 206(5), p.864 - 868, 2011/11
被引用回数:4 パーセンタイル:18.91(Materials Science, Coatings & Films)炭化ケイ素(SiC)を用いた粒子検出器の開発を目的に、酸素(O),シリコン(Si),ニッケル(Ni),金(Au)イオンが六方晶(6H)SiC npダイオードに入射したときに発生する電荷をイオンビーム誘起過渡電流(TIBIC)により評価した。ダイオードへの印加電圧と収集電荷量の関係を調べたところ、すべてのイオンで印加電圧の増加とともに電荷収集効率(CCE)が増加し、ある印加電圧以上ではCCE値は飽和することが見いだされたが、これは、印加電圧とダイオード中の空乏層(電界層)の関係で説明できる。一方、イオン種依存性を調べると、Ni, Auと原子番号の大きなイオンになるほど、CCEの値が小さくなることが観察された。KKモデルを用いてSiC中に発生する電荷を調べたところ、原子番号が大きくなるに従い、高濃度の電荷(電子-正孔対)が発生することが見積もられた。高濃度電荷プラズマ中ではオージェ再結合といった電子-正孔対の消滅が発生することから、NiやAuで観察されたCCEの低下は、高濃度電荷プラズマ中での再結合によると帰結できた。
Lee, K. K.*; Laird, J. S.*; 大島 武; 小野田 忍; 平尾 敏雄; 伊藤 久義
Materials Science Forum, 645-648, p.1013 - 1016, 2010/04
六方晶(6H)炭化ケイ素(SiC)の電界効果トランジスタ(MOSFET)に対して重イオンを照射した際、ドレイン,ソース、及び背面電極において発生する過渡電流を計測した。その結果を、半導体デバイスシミュレータ(TCAD)を用いて解析した結果、MOSFETが動作していないOFF状態であっても、動作状態であっても、MOSFETのソース-ウェル-ドレインからなる寄生バイポーラトランジスタが原因となる両極性の過渡電流が発生することがわかった。
Weidner, M.*; Trapaidze, L.*; Pensl, G.*; Reshanov, S. A.*; Schner, A.*; 伊藤 久義; 大島 武; 木本 恒暢*
Materials Science Forum, 645-648, p.439 - 442, 2010/00
耐放射線性半導体として期待される立方晶炭化ケイ素(3C-SiC)中に発生する照射欠陥をDLTS(Deep Level Transient Spectroscopy)により調べた。H, Heイオン、又は、電子線照射により3C-SiC中へ欠陥を導入したところ、W1W9までの欠陥準位が観測されたが、すべての照射でW6と名付けられた欠陥準位が主要な欠陥であることが見いだされた。W6について詳細に調べたところ、電子を放出後に中性化することが判明した。これより、W6はアクセプタ型の深い準位を持つ欠陥(ディープレベル)であると帰結できた。
小野田 忍; 平尾 敏雄; 大島 武; 伊藤 久義
Radiation Physics and Chemistry, 78(12), p.1116 - 1119, 2009/12
被引用回数:7 パーセンタイル:45.00(Chemistry, Physical)イオントラックの空間分布が、高エネルギー重イオンが半導体に入射することで発生する異常ノイズ(過渡電流)に及ぼす役割を解析した。イオントラック半径をさまざまに変えた条件で数値計算を実施し、過渡電流波形を求めた。実験結果と計算結果を比較した結果、数MeVの重イオンの場合、イオントラックの空間分布は過渡電流にほとんど影響を及ぼさないことがわかった。しかしながら、数百MeVの高エネルギー重イオンの場合、過渡電流波形はイオントラックの空間分布に大きく左右される結果が得られた。両者の違いは、イオントラック中心のキャリア密度が異なることによる移動度の違いに由来すると考えられる。数値計算においてイオントラック半径をペナンブラ半径と同等、もしくは小さい値とすることで、数値計算により実験結果をよく再現できることが明らかとなった。
中川 聰子*; 田島 道夫*; 廣瀬 和之*; 大島 武; 伊藤 久義
Japanese Journal of Applied Physics, 48(3), p.031201_1 - 031201_4, 2009/03
被引用回数:4 パーセンタイル:18.49(Physics, Applied)極薄トップシリコン層を有するシリコン-オン-インシュレータ(SOI)中の軽元素不純物を電子線照射による発光活性法により調べた。さまざまな製法により作製したトップシリコン層厚が62nmのSOI基板を用い、紫外光を励起光としたフォトルミネッセンス測定を行うことで、格子間炭素と酸素不純物の複合欠陥に起因するCライン及び格子間及び置換型炭素の複合欠陥に起因するGラインを観察した。その結果、電子線照射によりCライン,Gラインの発光強度が増大し、さらに、SOI基板に含有する不純物濃度により、発光強度に差異が生ずることが判明した。このことより、極薄SOI中に含まれる微量な炭素や酸素といった不純物濃度は、電子線照射による発光活性法で評価できると帰結できた。
菱木 繁臣; Reshanov, S. A.*; 大島 武; 伊藤 久義; Pensl, G.*
Materials Science Forum, 600-603, p.703 - 706, 2009/00
被引用回数:1 パーセンタイル:47.20(Materials Science, Ceramics)炭化ケイ素(SiC)半導体は優れた耐放射線性を有するため、高い線量下での動作が期待できるが、これまで数MGyといった高線量域までの照射効果を調べた報告はあまりない。そこで今回、n型六方晶(6H)SiCを用いたnチャンネル金属-酸化膜-半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)を作製し、数MGyまでの線照射による特性評価を行った。MOSFETのチャンネルに流れるキャリアについてHall効果測定からHall移動度,キャリア移動度を評価した結果、MGy級の線照射により界面準位が減少しそれに伴いチャンネル移動度が増加することが明らかとなった。
菱木 繁臣; 岩本 直也; 大島 武; 伊藤 久義; 児島 一聡*; 河野 勝泰*
Materials Science Forum, 600-603, p.707 - 710, 2009/00
炭化ケイ素(SiC)半導体は優れた耐放射線性を有するため高い線量下での動作が期待できる。これまでn型六方晶(6H)SiCを用いたnチャンネル金属-酸化膜-半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)の線照射による特性変化がゲート酸化膜作製後の熱処理により異なることを明らかにしている。このようにMOSFETの放射線耐性は作製手法によって影響されるため、素子作製プロセスと特性変化の関係を明らかにすることが重要となる。今回、異なる注入後熱処理により基板表面の荒さ(RMS)が0.67nmと1.36nmとなったnチャンネル6H-SiC MOSFETを作製し、線照射による電気特性の変化を調べた。その結果、基板表面の荒れが大きなMOSFETは1MGy程度でチャンネル移動度が減少するのに対し、荒れの小さなものは3MGyまでチャンネル移動度の減少がなく、耐放射線性に優れていることが明らかとなった。
Son, N. T.*; 磯谷 順一*; 森下 憲雄; 大島 武; 伊藤 久義; Gali, A.*; Janzn, E.*
Materials Science Forum, 615-617, p.377 - 380, 2009/00
耐放射線性半導体として期待される炭化ケイ素(SiC)の欠陥研究の一環として、低温下での電子線照射により生成される欠陥の同定を電子常磁性共鳴(EPR)を用いて行った。試料は立方晶(3C),六方晶(4H, 6H)SiCを用い、80100Kの温度範囲で2MeV電子線を照射した。照射後も試料を低温下で保持し、EPR測定を行った結果、LE1LE10とラベル付けされたスペクトルが観測された。このうち、3C-SiCで観測されたC対称、スピン3/2を持つLE1とラベルされたスペクトルを理論計算結果と併せて考察することで、シリコン空孔と100方向に存在するシリコン格子間原子のフレンケルペアが3価に荷電した(V-Si)複合欠陥であることを決定した。
梅田 享英*; 森下 憲雄; 大島 武; 伊藤 久義; 磯谷 順一*
Materials Science Forum, 600-603, p.409 - 412, 2009/00
炭化ケイ素(SiC)半導体中の固有欠陥については、電子常磁性共鳴(EPR)及び第一原理計算の手法を用いて微視的構造が解き明かされつつあるが、それらの電子準位はほとんどわかっていないのが現状である。そこでわれわれは、SiC半導体の中でもデバイス応用が最も期待されている六方晶SiC(4-SiC)に着目し、基本的な点欠陥であるSi単一空孔(si),C単一空孔(c),二重空孔(sic)等の電子準位を明らかにするため、窒素ドープn型及びホウ素ドープp型4-SiC単結晶に3MeV電子線を高温(600800C)で照射して点欠陥を導入し、キセノンランプとモノクロメータを使って単色化した光を試料に当てながらEPR測定を行う、いわゆる光EPR測定を実施した。この結果、si, c, sicに関与するEPR信号強度がエネルギー領域0.901.25eVの範囲で光照射により増大することが見いだされ、これらの欠陥の電子準位が伝導帯下端から0.901.25eV範囲に存在することが示唆された。本論文では、光励起による欠陥の荷電状態の変化を考慮しながら、上記固有点欠陥の電子準位について実験・理論両面から探求する。
南波 秀樹; 田中 淳; 伊藤 久義
日本原子力学会誌ATOMO, 50(12), p.785 - 789, 2008/12
前回の解説では、近年技術革新のキーテクノロジーとして世界的に注目されている量子ビームの応用研究の概要について紹介した。線,電子線やイオンビームを用いた荷電粒子・RI利用研究は、量子ビームの利用の中でも最も長い歴史を持ち、学術研究分野はもとより、工業,農業,医療活動の幅広い分野において、さまざまな形で利用されている。本稿では、この荷電粒子・RIを用いたバイオ技術・医療応用・環境・エネルギー分野での研究開発を紹介する。
伊藤 久義
FBNews, (374), p.1 - 6, 2008/02
放射線は医療,農業,工業等の幅広い分野で利用され、放射線を直接的,間接的に使って作られた製品や技術が広く普及し、今では私達の暮らしの中に深く浸透している。特に工業利用は、経済規模で見ると放射線利用全体の8割にあたるほど盛んに行われてきた。本稿では、放射線の工業利用に的を絞り、使われている技術の概要を説明するとともに、私達の生活にどう役立てられているかについて紹介する。
伊藤 久義
放射線の世界2008, p.77 - 82, 2008/00
現在では私達の生活の隅々にまで浸透している半導体の分野では、加工や評価技術として放射線利用の重要性がいち早く認識され、イオン注入,リソグラフィ技術,中性子転換ドーピング技術,宇宙用半導体評価技術等の開発が精力的に行われ、実用化が進み、産業技術として広く普及している。本稿では、放射線による半導体の加工や評価について、最新の事例を挙げながら解説する。
Son, N. T.*; Ivanov, I. G.*; Kuznetsov, A. Yu.*; Svensson, B. G.*; Zhao, Q. X.*; Willander, M.*; 森下 憲雄; 大島 武; 伊藤 久義; 磯谷 順一*; et al.
Physica B; Condensed Matter, 401-402, p.507 - 510, 2007/12
被引用回数:3 パーセンタイル:17.80(Physics, Condensed Matter)酸化亜鉛(ZnO)中の欠陥の挙動を解明するために、3又は6MeV電子線照射を行ったZnOの光検知磁気共鳴(ODMR)評価を行った。その結果、浅いドナー及びZu空孔に起因するシグナルに加え、スピン1/2を有する幾つかのシグナルが観測され、このうち、LU3及びLU4とラベル付けされたシグナルがキャリアの再結合中心として働くことが判明した。また、400Cまでの熱処理後もLU3,LU4は安定に存在することも併せて明らかとなった。
Son, N. T.*; Ivanov, G.*; Kuznetsov, A.*; Svensson, B. G.*; Zhao, Q. X.*; Willander, M.*; 森下 憲雄; 大島 武; 伊藤 久義; 磯谷 順一*; et al.
Journal of Applied Physics, 102(9), p.093504_1 - 093504_5, 2007/11
被引用回数:18 パーセンタイル:56.58(Physics, Applied)室温にて3MeV電子線照射したZnO中に発生する欠陥をODMR(Optical detection of magnetic resonance)を用いて調べた。その結果、キャリアの再結合中心として働くZn空孔に起因する欠陥及びその他幾つかの空孔型欠陥が観測された(LU1LU6センター)。また、電子線未照射のZnOに関しても併せてODMR測定を行ったところ、電子線照射ZnOで観測された欠陥のうち、Zn空孔及びその他の空孔に起因する欠陥であるLU3及びLU4センターが観測された。このことから、LU3及びLU4センターはキャリア再結合中心として働く真性欠陥であることが結論できた。
Frank, T.*; Pensl, G.*; Tana-Zaera, R.*; Ziga-Prez, J.*; Martnez-Toms, C.*; Muoz-Sanjos, V.*; 大島 武; 伊藤 久義; Hofmann, D.*; Pfisterer, D.*; et al.
Applied Physics A, 88(1), p.141 - 145, 2007/07
被引用回数:48 パーセンタイル:82.82(Materials Science, Multidisciplinary)酸化亜鉛(ZnO)中の欠陥準位を明らかにするため、気相成長したZnOの深部準位計測(Deep Level Transient Spectroscopy: DLTS)を行った。その結果、E4とラベル付けされた深い欠陥準位が観測された。さらに、試料に対し170keV又は2MeV電子線を照射し、発生する欠陥準位を調べたところ、E2, E3, E4, E5と呼ばれる欠陥準位が観測された。170keVと2MeV照射の結果を比べたところ、酸素及び亜鉛がはじき出されるエネルギーである2MeVの電子線照射では微量にしか観察されないE3中心は、酸素のみがはじき出される170keV電子線照射では大きなシグナルとして観察され、E3センターが酸素起因の欠陥であることを見いだした。
高橋 芳浩*; 大木 隆弘*; 長澤 賢治*; 中嶋 康人*; 川鍋 龍*; 大西 一功*; 平尾 敏雄; 小野田 忍; 三島 健太; 河野 勝康*; et al.
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 260(1), p.309 - 313, 2007/07
被引用回数:4 パーセンタイル:35.63(Instruments & Instrumentation)Si基板上にAlゲートp-MOSFETを作製し、TIARAの重イオンマイクロビームシステムを使用して重イオン照射を行い、照射誘起過渡電流の測定を行った。その結果、ゲート端子における過渡電流は、照射中負のゲート電圧を印加した状態でのみ観測されることがわかった。また、ソース・ドレイン電極を接地(基板と同電位)してゲート領域に重イオンを照射した場合、ピーク値の異なる正・負の電流が観測され、その積分値は照射後100ns程度でほぼ0となることがわかった。本誘起電流が伝導電流によるものであれば、正方向の電流のみが観測されることが予想される。よって本測定結果より、酸化膜を介した照射誘起電流は、変位電流に由来すると帰結できる。また測定結果は、酸化膜を完全絶縁体と仮定した計算により再現できることが確認できた。