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川村 英之; 古野 朗子; 小林 卓也; 印 貞治*; 中山 智治*; 石川 洋一*; 宮澤 康正*; 碓氷 典久*
Journal of Environmental Radioactivity, 180, p.36 - 58, 2017/12
被引用回数:12 パーセンタイル:35.86(Environmental Sciences)本研究では、単一の海洋拡散モデルと複数の海洋大循環モデルを使用して、福島第一原子力発電所事故起因のセシウム137の海洋拡散相互比較シミュレーションを実施した。シミュレーション結果は、福島県沿岸、日本沖合及び外洋で観測されたセシウム137濃度を比較的良好に再現していることが確認された。セシウム137は事故後数か月間は沿岸を南北方向に拡散し、その後、黒潮や黒潮続流により沖合へ拡散されたことが、福島県沿岸、日本沖合及び外洋を対象とした海洋拡散相互比較シミュレーションにより共通して示唆された。事故から1年間のセシウム137の海洋中存在量を定量化することにより、セシウム137が活発に福島県沿岸及び日本沖合から外洋へ拡散し、同時に海洋の浅い層から深い層へ拡散したことが示唆された。
小林 卓也; 印 貞治*; 石川 洋一*
Journal of Nuclear Science and Technology, 52(6), p.769 - 772, 2015/06
被引用回数:1 パーセンタイル:9.26(Nuclear Science & Technology)東京電力福島第一原子力発電所(F1NPP)事故は、大量の放射性物質を大気・海洋環境へ放出する結果となった。2014年8月時点でF1NPPに滞留・貯留している汚染水は、タービン建屋、海側トレンチ、海側地下水、貯留設備等に存在する。これらの汚染水が海洋へ漏洩する可能性に備え、漏洩した放射性物質の日本の沿岸域及び日本周辺の海洋における移行過程を事前に把握しておくことは、漏えいによる海洋汚染範囲の予測や、迅速なモニタリング計画の策定に対して有効である。そこで原子力機構ではF1NPPから漏洩する汚染水の拡散の概略を把握するために、単位放出率の仮想放出シミュレーションを季節ごとに実行し、アンサンブル平均を求めて海洋拡散相対濃度マップを作成した。マップの検証として、2つの異なる季節における実際の放出事象に適用し、実測値をよく再現することを確認した。
川村 英之; 小林 卓也; 古野 朗子; 印 貞治*; 石川 洋一*; 中山 智治*; 島 茂樹*; 淡路 敏之*
Reports of Research Institute for Applied Mechanics, Kyushu University, (143), p.111 - 117, 2012/09
2011年3月11日に発生した東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故により、周辺環境へ放射性核種が放出された。日本原子力研究開発機構では、事故当時からこれらの放射性核種が海洋環境へ与える影響を評価するため、海洋中放射性核種移行モデルと海洋大循環モデルを用いて数値シミュレーションを行ってきた。本研究では、事故後の約2か月間における放射性核種の移行を当時の海況場と関連させて解析を行った。その結果、おもに3月中旬に大気中へ放出された放射性核種は日本の東方向の太平洋の海表面に沈着し、それらが黒潮続流や海洋中規模渦等の海流により移行されたことが示唆される。また、福島第一原子力発電所から海洋中へ直接放出された放射性核種は、おもに沿岸に沿って南下し、その後は黒潮続流により拡散されながら東に輸送されたと考えられる。
川村 英之; 小林 卓也; 古野 朗子; 印 貞治*; 石川 洋一*; 中山 智治*; 島 茂樹*; 淡路 敏之*
Journal of Nuclear Science and Technology, 48(11), p.1349 - 1356, 2011/11
被引用回数:186 パーセンタイル:99.77(Nuclear Science & Technology)福島第一原子力発電所の事故により海洋中へ放出されたIとCsの移行を数値シミュレーションにより計算した。計算結果は、海洋モニタリングで得られた観測点における放射性核種の時系列と良い一致を示した。また、4月上旬に北茨城市沖で採取されたコウナゴ内で検出された高濃度のIは大気から海洋表面へ沈着したIが原因であることが示唆された。さらに、太平洋の日本の東海域における放射性核種の濃度分布を計算し、3月中旬に大気中へ放出された放射性核種の海表面への沈着の影響が大きいことを示唆した。
小林 卓也; 印 貞治*; 石川 洋一*; 川村 英之; 中山 智治*; 島 茂樹*; 淡路 敏之*; 外川 織彦
Progress in Nuclear Science and Technology (Internet), 2, p.682 - 687, 2011/10
青森県六ヶ所村に立地する使用済燃料再処理施設は、近い将来に稼動する。再処理施設の通常運転時には、放射性廃液が海洋放出口から計画的に沿岸域に放出される。放出された放射性核種は、海洋中を物理・化学・生物過程を経て移行する。そのため再処理施設から沿岸海洋へ通常放出される放射性核種の移行挙動を理解することは、環境安全の観点からも重要である。そこで、海洋大循環モデルと海洋中放射性物質移行モデルから構成される六ヶ所海域における放射性核種の移行挙動を予測する計算システムを開発した。海洋大循環モデルは、4次元データ同化手法と3段のネスティング手法を用いるために高速の計算機環境が必要である。海洋中放射性物質移行モデルには、溶存態と懸濁態との吸脱着過程を取り扱う吸脱着モデルと、鉛直重力噴流モデルをコード化した。適用計算として2007年の海況場を再現し、仮想的な放射性物質の拡散実験を実施した。
小林 卓也; 外川 織彦; 伊藤 集通; 乙坂 重嘉; 川村 英之; 林 圭佐*; 島 茂樹*; 中山 智治*; 印 貞治*
JAEA-Research 2009-040, 63 Pages, 2009/12
使用済燃料再処理施設の平常運転時には、施設から少量の放射性核種が海洋へ計画的に放出される。このため、再処理施設の平常時に海洋へ放出される放射性核種に起因する環境影響を把握することは、施設に対する周辺住民の理解・安心の醸成に貢献するうえで重要なことである。そこで筆者らは、再処理施設から六ヶ所村沖合の下北海域へ放出される放射性核種の移行を予測することを目的として、それまでの日本原子力研究開発機構での研究成果を当該海域に適合させるために、気候値を使用した海水循環予測コードの整備、及び海水中放射性核種移行予測コードの整備を行った。これに併せて、下北海域において沈降粒子特性データを実測し、海水中放射性核種移行予測コードに用いるパラメータを検討した。本報告書は、平成15年度から20年度までに実施した下北沖海域を研究対象海域とした研究成果から、特に重要と思われる成果についてまとめたものである。
小林 卓也; 印 貞治*; 石川 洋一*; 松浦 康孝*; 島 茂樹*; 中山 智治*; 淡路 敏之*; 川村 英之; 外川 織彦
日本原子力学会和文論文誌, 7(2), p.112 - 126, 2008/06
下北沖海域における使用済燃料再処理施設の平常時及び異常時に海洋へ放出される放射性核種の移行を予測する海況予測システムを開発した。開発されたシステムのケーススタディを実施した結果、下記の結論が得られた。(1)沿岸域の海況予報は、海洋大循環モデルにデータ同化手法とネスティング手法を用いることにより、十分実用に耐えられるレベルに到達した。(2)Hの仮想放出計算から海産物摂取による最大個人線量を推定したところ、0.45Sv/yであった。この値は一般公衆の線量限度よりも十分低い値である。(3)吸脱着モデルを用いたCsの仮想放出計算の結果、60日間の計算期間では海底に堆積するCsは全体の約4%であった。今回の仮想放出計算によるCs濃度は、当該海域で測定されたグローバルフォールアウトと同程度以下であった。
印 貞治*; 中山 智治*; 松浦 康孝*; 島 茂樹*; 石川 洋一*; 淡路 敏之*; 小林 卓也; 川村 英之; 外川 織彦; 豊田 隆寛*
Proceedings of International Symposium on Environmental Modeling and Radioecology, p.58 - 64, 2007/03
下北半島沖の太平洋北西部は複雑な水塊構造を成している。海況予報システムを構築するためには、海水循環モデルを使用してこの海域の循環や水塊構造を正確に再現する必要がある。そのため、ネスティング手法を適用してきた。また、海況場の計算結果を初期化するために四次元変分法を使用してデータ同化を適用している。データ同化用のデータは、GTSPPと呼ばれるプロジェクトで得られた現場観測データと人工衛星による海面水温・海面高度データである。2003年に行われた観測データと同時期の計算結果を比較したところ、海況予報システムが高い性能を持つことが確認された。特に、下北半島沖の沿岸モード・渦モードと呼ばれる流れや両モード間の移行過程がよく再現されることがわかった。
印 貞治*; 島 茂樹*; 中山 智治*; 石川 洋一*; 外川 織彦; 小林 卓也; 川村 英之
月刊海洋, 37(9), p.674 - 680, 2005/09
本報告は、日本海洋科学振興財団,京都大学及び原研が協力して実施している下北沖海域における現況解析・海況予測システムの構築について解説するものである。この事業の中で、原研は同財団からの受託研究として、気候値を使用した海水循環モデル及び海水中放射性核種移行モデルの整備、並びにモデルの検証と改良のための沈降粒子特性データの取得実験を担当している。本解説では、解析・予報システムの概要と整備の進捗状況を述べるとともに、システムを使用した予備計算結果を示した。予備計算の結果、データ同化モデルにより西部北太平洋における解析・予報結果が改善されることが理解され、また下北沖海域特有の沿岸モード(冬季)と渦モード(夏季)がほぼ再現されることがわかった。
印 貞治*; 中山 智治*; 松浦 康孝*; 島 茂樹*; 石川 洋一*; 淡路 敏之*; 小林 卓也; 川村 英之; 外川 織彦; 豊田 隆寛*
no journal, ,
下北半島沖の太平洋における放射性核種の移行を短期(12週間)程度の時間スケールで予測することを目的とした六ケ所沖現況解析・海況予報システムの開発を進めている。本システムで用いる沿岸域を対象とした六ケ所沖海域モデルの検証を行った。対象期間は2003年とし、計算値と観測値を比較したところ、本システムが目的に対して十分な計算精度を持つことを確認した。
小林 卓也; 川村 英之; 印 貞治*; 島 茂樹*
no journal, ,
海洋中における放射性物質等の移行過程を詳細にモデル化するため、海水中放射性核種移行予測コードに鉛直重力噴流過程を追加し、青森県六ヶ所村沖における流動場の再解析値と、再処理施設からの放出情報を用いて2007年11月6日から12月6日までの30日間の適用計算を実施した。放出されたH-3は、11月6日から13日までは、放出口周辺海域では西向流(岸向き)が卓越し、流速が小さいこともあり、1Bq/L以上のH-3は放出口から10km以内の海域に停滞していた。14日から17日は南東流によって南下し、20日頃には南北に広く伸長し、それ以降は広範囲に拡散しながら全体的に南下した。流速の鉛直分布が異なるため、H-3の移行挙動は海表面と放出口深度とでは若干異なることが確認された。鉛直重力噴流を考慮した計算と、鉛直重力噴流を考慮せずに海表面から放出をした計算結果とを比較したところ、放出初期における放出口極近傍域において2つのケースの計算結果に明確な相違が認められ、今回の計算期間では鉛直重力噴流の影響は無視できないことが示唆された。
小林 卓也; 川村 英之; 古野 朗子; 石川 洋一*; 淡路 敏之*; 印 貞治*; 中山 智治*; 島 茂樹*
no journal, ,
福島第一原子力発電所から海洋へ放出された放射性核種(I-131, Cs-137)について、放出量を推定するとともに福島沖海域近傍から日本近海域における拡散挙動を予測した。流動場は、京都大学が開発した観測データの同化計算機能を持つ海洋大循環モデルによる再解析値を用いた。この再解析値を初期値及び境界値として1, 2段のネスティング計算を経てそれぞれ日本近海域及び福島沖海域の流動場とし、SEA-GEARNの計算に使用した。放出情報に関しては、推定した海洋への直接放出量に加えWSPEEDI-IIによる大気拡散シミュレーションによる海面沈着量も入力した。農林水産省によって公表されたイカナゴ(コウナゴ)に比較的高濃度の放射性物質が検出された事象について検証したところ、2011年4月9日以前に公表されたイカナゴ中の濃度は大気経由で海面に沈着した海水中の核種濃度の上昇に起因し、それ以後のイカナゴの濃度の上昇は海洋への直接放出に起因する濃度上昇によることが示唆された。
印 貞治*; 石川 洋一*; 島 茂樹*; 中山 智治*; 淡路 敏之*; 小林 卓也; 川村 英之; 外川 織彦
no journal, ,
核燃料再処理施設から海洋へ放出される放射性核種の移行挙動を推定するために、六ヶ所村沖合海域における海況の再現・予報システムを開発してきた。この海域の季節変化は冬季の沿岸モードと夏季の渦モードという二つのモードによって特徴付けられる。正確な海況の再現や予報を行うのに必要な解像度の高い四次元変分法を使用するため、ネスティング手法は有効な手段となる。システムで計算された結果は、沿岸モードと渦モードを現実的に再現できることが確認された。
川村 英之; 古野 朗子; 小林 卓也; 印 貞治*; 中山 智治*; 石川 洋一*; 宮澤 康正*; 碓氷 典久*
no journal, ,
本研究では、複数の海況データを入力データとして、海洋拡散モデルSEA-GEARN-FDMを使用し、福島第一原子力発電所から放出されたセシウム137の海洋拡散シミュレーションを実施した。セシウム137のソースタームとしては、WSPEEDI-IIを使用した大気拡散シミュレーションで計算された海表面沈着量と福島第一原子力発電所から海洋への直接放出量を考慮した。海洋拡散シミュレーションで計算された沿岸・沖合・外洋のセシウム137濃度は、観測されたセシウム137濃度を良好に再現した。福島第一原子力発電所から海洋へ直接放出されたセシウム137は、事故後の数か月間は沿岸に沿って南北方向に拡散し、黒潮や黒潮続流により沖合へ東向きに拡散されたことが示唆された。黒潮や黒潮続流が流れる海域では、これらに伴う中規模渦により、セシウム137が活発に希釈されたと考えられる。事故後の1年間における沿岸・沖合・外洋のセシウム137の海水中存在量を解析した結果、セシウム137が外洋へ活発に拡散されるとともに、表層から深層へ沈み込んだことが示唆された。
印 貞治*; 中山 智治*; 松浦 康孝*; 島 茂樹*; 石川 洋一*; 淡路 敏之*; 小林 卓也; 川村 英之; 外川 織彦; 豊田 隆寛*
no journal, ,
本州北端に位置する下北半島周辺海域は高温高塩分の海水が日本海から津軽海峡を通過して低温の親潮と混合し、複雑な海洋構造が観測されている。また本海域では日本海を起源とする津軽暖水の季節変動により、津軽暖水が冬から春の季節は沿岸に沿って南下(沿岸モード)し、夏から秋の季節は半島沖で時計回りの循環流を形成する(渦モード)。下北半島周辺海域の海況予報システムを開発するためには、このような水塊構造を数値モデルで詳細に再現することが必要である。そこで1-2km程度の詳細水平格子及び4次元変分法を用いたデータ同化手法を用いて2003年における対象海域の予報計算を実施した(現況再現実験)ところ、良好な再現結果を得た。
印 貞治*; 中山 智治*; 松浦 康孝*; 島 茂樹*; 石川 洋一*; 淡路 敏之*; 小林 卓也; 川村 英之; 外川 織彦
no journal, ,
発表者らにより、本州北部に位置する六ヶ所村沿岸域を対象とした海況予報・現況解析システムが開発されてきた。地形の影響を受けて、この海域の海洋循環は非常に複雑である。過去の海洋観測により、この付近の海洋循環は二つのモードにより季節変化することが明らかになっている。一つは冬季に日本沿岸に沿って南下する沿岸モードであり、もう一つは夏季に時計周りの循環を形成する渦モードである。このような複雑な海洋循環を示す海域に対して正確な海況予報・現況解析をするうえで、高解像度の四次元変分法の使用を可能にするダウンスケーリングは非常に有効である。数値実験の結果、高解像度の四次元変分法を適用した海況予報・現況解析システムは過去に観測された沿岸・渦モードをよく再現することに成功した。
印 貞治*; 中山 智治*; 松浦 康孝*; 島 茂樹*; 石川 洋一*; 淡路 敏之*; 小林 卓也; 川村 英之; 外川 織彦
no journal, ,
本研究では、六ヶ所村沖合海況予測システムを構成する京都大学で開発された海洋大循環モデルの検証を行う。本システムでは、第一段階として太平洋北西部に対して四次元変分法を用いて初期条件を推定し、海況予測を行う。水平解像度は東西1/6度,南北1/8度である。これに二段階のネスティング手法を用いて高解像度化し、最終的には東北沖と北海道南岸を含む海域を東西1/54度,南北1/72度のモデルで計算を行う。この海域は、津軽海峡から流出した津軽暖水が夏季から秋季にかけて渦を形成し、一方冬季から春季には岸沿いに南下することが知られている。モデルの計算結果で水深200mの水温8C以上の水温域を津軽暖水の指標とし、その面積の季節変化を解析したところ、渦モードから沿岸モードへの移行過程と沿岸モードから渦モードへの移行過程がよく再現されていることが確認された。また、夏季には親潮水がこの海域に流入して強い南下流を形成することがわかった。
印 貞治*; 中山 智治*; 島 茂樹*; 石川 洋一*; 淡路 敏之*; 小林 卓也; 川村 英之; 外川 織彦
no journal, ,
津軽暖流は津軽海峡から太平洋に出た後、夏から秋にかけて津軽海峡の東で時計回りの循環(津軽ジャイア)を形成することが知られている。過去の研究から、津軽ジャイアが形成される条件は津軽海峡から流出する低密度水と混合する高密度水とで形成される内部変形半径が海峡幅より大きくなる必要があることが示されている。しかしながら、津軽ジャイアの形成過程についてはほとんど明らかになっていない。本研究では、数値モデルと観測データを使用して、津軽ジャイアの形成過程を解明することを目的としている。使用した数値モデルは京都大学が開発した海洋大循環モデルであり、4次元変分法を用いて北西太平洋の数値計算を行った後に2段階のネスティングを行って、下北半島沖の海域を約1.5kmの解像度で計算した。数値計算結果と観測結果から、親潮が津軽暖流の間に貫入して生じる沿岸の強い南下流と発達した津軽ジャイアの沿岸からの切離に大きな関係があることが示唆された。
川村 英之; 古野 朗子; 小林 卓也; 印 貞治*; 中山 智治*; 石川 洋一*; 宮澤 康正*; 碓氷 典久*
no journal, ,
福島第一原子力発電所から海洋へ放出されたCsの海洋拡散シミュレーションはこれまで数多く行われてきたが、シミュレーションには放出量や海況データ等に起因する誤差が含まれている。本研究では、5種類の海況データを入力データとした海洋拡散シミュレーションを実施することで、海況データの相違によるCsの海洋中移行への影響を解析し、福島県沿岸から北太平洋広域までのCsの海洋中移行を明らかにすることを目的としている。水平解像度が低いシミュレーションと比較して、高解像度シミュレーションは福島県の海岸線と沖合で観測されたCs濃度を良好に再現しており、事故から数か月間は海洋へ直接放出されたCsが福島県沿岸を主に南北方向に拡散したことが示唆された。北太平洋西部や北太平洋全域を対象としたシミュレーションは、比較的解像度が低いがデータ同化手法により主な海流の変動を良好に再現しており、Csが沿岸から外洋へ輸送される過程で黒潮続流が大きな役割を担っていたことが示唆された。また、Csは事故直後は主に混合層に存在していたが、1年後には混合層以深にも輸送されたことが定量的に示された。
松浦 康孝*; 中山 智治*; 印 貞治*; 賀佐 信一*; 島 茂樹*; 小林 卓也; 外川 織彦; 石川 洋一*; 淡路 敏之*
no journal, ,
海洋での放射性核種の挙動を明らかにすることを目的として、京都大学が開発した海水循環モデル及び日本原子力研究開発機構が開発した核種移行予測モデルSEA-GEARNを使用し、これらのモデルの性能確認を行っている。このシステムの性能を検証するために、北太平洋で行われた大気圏核実験の影響について、Csを対象に海洋での放射性核種の拡散計算を行い、その計算結果と観測値との比較を実施した。
石川 洋一*; 淡路 敏之*; 印 貞治*; 中山 智治*; 松浦 康孝*; 島 茂樹*; 豊田 隆寛*; 小林 卓也; 外川 織彦; 川村 英之
no journal, ,
本研究は、六ヶ所沖現況解析・海況予報システムを開発し、下北半島沖における放射性核種の移行を数週間程度の時間スケールで予報することを目的としている。本発表では、このシステムを構成する要素の一つである北西太平洋域の循環場を現況解析・海況予報するためのデータ同化システムについて紹介する。本研究で用いたデータ同化手法は、4D-VAR(adjoint法)である。海水循環モデルの水平分解能は東西方向・南北方向に各々1/61/8であり、鉛直分解能は最深部で78層とした。数値モデルに同化する観測データは、海面水温データ(東北大学 NGSST)・海面高度データ(AVISO NRT-MADT)・現場観測データ(NOAA GTSPP)を用いた。数値計算は、2003年2月7日から観測データを同化して解析場を求めた。2003年4月の計算結果と観測結果を比較すると、データ同化により親潮の南下等の海況場が現実的に再現されることが確認された。下北半島沖の循環場は津軽暖流によっても大きな影響を受けることから、太平洋の循環場だけでなく、日本海の循環場を現実的に再現することが重要である。また、データ同化により観測で見られるような中規模渦が確認されたが、その発生場所は観測結果とは多少異なるという問題点も見られた。このことは、最適化がまだ十分に行われていないことが原因の一つであると考えられる。今後、同化実験を進めていけば、より精度の高い計算が可能であると期待される。