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島田 太郎; 島田 亜佐子; 三輪 一爾*; 鍋倉 修英*; 佐々木 利久*; 高井 静霞; 武田 聖司
JAEA-Research 2024-004, 115 Pages, 2024/06
原子力施設の廃止措置の終了確認について、平成29年に原子力規制委員会の検討チーム会合で提示された「サイト解放の流れ」をベースに、敷地土壌を対象に確認方法を検討し、手順として整理した。はじめに福島第一原子力発電所事故によって放出されフォールアウトとして地表に沈着した放射性核種をバックグラウンド放射能として除外し、敷地内の施設起源の放射能濃度分布を地球統計学的手法クリギングを用いて評価する。そのうえで、地表の浸透能を超えた降雨によって発生する地表流によって土砂が下流へ移動する現象を考慮して、評価した初期の放射能濃度分布が将来変化することを反映した被ばく線量評価方法について、一連の評価手順を示し、線量基準と想定した0.01mSv/yとの比較方法を提案した。さらに、地下の放射能濃度分布評価についても、地下水の影響を受けた場合の評価手順の一例を示した。
島田 太郎; 笹川 剛; 三輪 一爾; 高井 静霞; 武田 聖司
Proceedings of International Conference on Environmental Remediation and Radioactive Waste Management (ICEM2023) (Internet), 7 Pages, 2023/10
原子力発電所の廃止措置段階の原子力規制検査をリスク情報に基づいて実施する必要があるが、このリスクを定量的に評価する手法が整備されていない。そこで、本研究では、廃止措置安全評価コードDecAssessをもとに、廃止措置段階で発生する可能性のある事故事象のイベントツリーを整備し、解体対象機器ごとに事故シーケンス別被ばく線量と発生確率から放射線リスクを評価するコードDecAssess-Rを開発した。その際にHEPAフィルタなどに蓄積し、事故時に一挙に放出される可能性のある移動可能な放射能量が解体作業の進展に伴って時間的空間的に変動することを考慮した。起因事象は廃止措置段階及び類似する分解・交換作業における国内外のトラブル情報を調査した結果をもとに設定し、その起因事象からイベントツリーを構築した。また、事象発生頻度は一般産業の情報も参考に、事象進展確率は運転段階の機器故障確率などをもとに設定した。このとき、廃止措置の進展に伴って削減される安全機能を解体作業スケジュールに沿って設定できるようにした。米国参考BWRを対象に解体作業を設定してリスク評価を行った。その結果、炉内構造物の解体作業時に火災が発生して、周囲に一時保管されていた放射性物質を含む可燃物やフィルタ類に延焼する場合に公衆被ばく線量が最大になった。本事象は、事故シーケンスの発生確率も大きいため、最大の放射線リスクを示した。
島田 太郎; 行川 正和*; 三輪 一爾; 武田 聖司
Proceedings of Waste Management Symposia 2023 (WM2023) (Internet), 8 Pages, 2023/02
廃止措置段階に発生する可能性のある事故においては、解体作業中にフィルタ等へ蓄積した粉じんが一挙に環境に放出され地表に沈着した放射性粉じんが降雨に伴う地表流とともに傾斜の下流へ移動し、窪地に蓄積することも想定される。降雨や地形、表面の被覆状態などの条件によって変動する核種の移動量と公衆の被ばく線量を評価するコードの開発を進めている。その評価にあたっては必要な評価パラメータの設定方法を整備する必要がある。そこで、地表面に沈着した粉じんの傾斜面上の流下を模擬した室内降雨試験を実施して、核種移動量評価に必要なパラメータ値を廃止措置段階で想定される劣化状態を含めて取得し、その設定方法を検討した。被覆表面と表面を流れる水との抵抗量を示す等価粗度係数が既知の平滑なアスファルトをもとに得られた劣化アスファルトと平滑なコンクリートの等価粗度係数は文献で得られた値の範囲に収まった。しかし劣化コンクリートの等価粗度係数は、想定と異なり平滑なアスファルトよりもやや低い値となった。これは本試験では地表流による浮遊と雨滴衝撃による浮遊を同時に評価しているため、雨滴衝撃による浮遊のばらつきの影響によるものと考えられる。また、3Dスキャナで各表面の凹凸を点群として取得し表面粗さを評価したところ、等価粗度係数との相関が示唆され、実際の適用の際に利用できる可能性が示された。
三輪 一爾; 行川 正和*; 島田 太郎; 武田 聖司
MRS Advances (Internet), 7(7-8), p.165 - 169, 2022/03
本研究では、地表流と土砂移動により生じる地表面における核種移行を土中の鉛直核種濃度と粒径に応じた核種濃度を考慮して評価する方法を作成した。作成した核種移行評価法により、水平方向に均一なCs-137の初期汚染分布を有する仮想的なサイトにおいて1年間の核種移行評価を実施した。その結果、Cs-137がサイト内の窪地に集中することにより初期汚染分布濃度と比較して20%程濃度が上昇した。また、地表面における核種移行により、初期汚染分布の総核種量の0.18%が海洋へ流出した。これらの結果から、廃止措置終了確認における被ばく線量評価において地表面における核種移行を考慮することで、サイト内における外部被ばく線量の上昇と海洋へ流出した核種による水産物摂取による内部被ばく線量の上昇の可能性が示唆された。
三輪 一爾; 小畑 元*; 鈴木 崇史
Journal of Nuclear Science and Technology, 57(5), p.537 - 545, 2020/05
被引用回数:2 パーセンタイル:18.62(Nuclear Science & Technology)本研究では、チャクチ海, ベーリング海において人為起源の放射性核種であるIodine-129(I)の鉛直分布の観測を実施した。現在、
Iの主なソースはヨーロッパの核燃料再処理施設である。2013年6月から8月の観測結果よりチャクチ海, ベーリング海における
I濃度はフォールアウトレベルであった。ヨーロッパの核燃料再処理施設から海洋に放出された
Iを高濃度に含んだ海水の流入は確認できなかった。また、海洋の生物生産に重要な役割を果たしているヨウ化物イオンの鉛直分布をチャクチ海, ベーリング海にて初めて観測した。観測の結果、当海域においては海底付近でヨウ化物イオンの濃度が高くなる傾向が見られた。
三輪 一爾; 武田 聖司; 飯本 武志*
Radiation Protection Dosimetry, 184(3-4), p.372 - 375, 2019/10
被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Environmental Sciences)福島事故後の除染作業によって発生した除去土壌を再生資材として再利用する方針が環境省により示されている。有効な再利用用途の1つである海面埋立地では、施工時に溶存した放射性Csの他に土粒子に付着した放射性Csの海洋への流出が予想されるため、安全評価上、両形態の核種移行を評価できるモデルが必要となる。そこで本研究では、施工時および供用時の放射性Csの流出をモデル化し、海洋に流出した核種についてはOECDにより示されたSediment modelにより移行評価を行った。沿岸域における核種移行評価にSediment modelを用いることの妥当性を、福島沿岸域の実測値の再現計算により確認した。施工時および供用時の核種流出を評価するモデルおよびSediment modelをクリアランスレベル評価コードPASCLR2に組み込むことで、海洋へ流出した核種からの被ばく線量評価を行えるようにした。
三輪 一爾; 寺阪 祐太; 越智 康太郎; 普天間 章; 佐々木 美雪; 廣内 淳
日本原子力学会誌ATOMO, 61(9), p.687 - 691, 2019/09
本報告は、日本原子力学会2019年春の年会にて実施した、保健物理・環境科学部会の企画セッションの内容をまとめたものである。本企画セッションでは、原子力・放射線分野に携わる学生および若手研究者6名が、それぞれの専門的知見を通して見た保健物理・環境科学の在り方について講演を行った。全講演者の発表終了後には来場者を含めて当分野の課題や今後の発展についてディスカッションを行った。本報告書では、各講演概要とディスカッション内容の取りまとめを行った。
島田 太郎; 三輪 一爾; 武田 聖司
日本原子力学会誌ATOMO, 61(7), p.531 - 534, 2019/07
福島第一原子力発電所(以下、1Fという)敷地内に保管されている表面線量率5Sv/h未満の汚染がれき類を資源化して敷地内に限定して再利用することが検討されている。1F敷地内のように放射線管理が実施されている現存被ばく状況において、汚染した資機材等の限定的な再利用の考え方などが示された例はない。そこで、適切な安全規制のために、1F敷地内での線量管理下の現存被ばく状況における再利用評価の考え方、1F敷地内での運用されている作業者及び周辺公衆の安全確保策に応じためやす濃度算出の方法論を構築するとともに、1F敷地内での道路材及びコンクリート構造材に関して用途別の資源化物のめやす濃度を試算して、とりまとめた。本報ではこの評価の方法について解説するとともに、1F敷地内の限定的な再利用の評価の一例について紹介する。
片岡 憲昭*; 中嶌 純也; 三輪 一爾; 廣田 誠子*; 坪田 陽一; 山田 椋平; 藤通 有希*; 石川 純也*; 砂押 正章*
保健物理(インターネット), 54(2), p.140 - 145, 2019/06
2018年12月1日に日本保健物理学会若手研究会と若手放射線生物学研究会が開催した合同勉強会(東京大学本郷キャンパス)について報告するものである。
三輪 一爾; 島田 太郎; 武田 聖司
Progress in Nuclear Science and Technology (Internet), 6, p.166 - 170, 2019/01
本報告では(その1)において算出した限定再利用に対するめやす濃度の妥当性を確認するため、再利用後の線源(再生資材)に対し、(1)1F敷地内の作業者に対する追加被ばく線量、(2)1F敷地境界の空間線量率への寄与、(3)地下水移行による海洋出口での水中濃度、について評価した。(1)の評価では、1F敷地内で線源に最も接近をする作業者の被ばく線量を評価し、その線量が放射線作業従事者の年間被ばく限度20mSv/yと比較し十分に低い値であることを確認した。(2)の評価では、1F敷地内で再利用された全再生資材から受ける敷地境界での空間線量率を解析し、その結果がバックグラウンドを合算しても敷地境界での目標値1mSv/y以下を満足することを確認した。さらに(3)の評価として、敷地内の流速条件等を考慮した道路路盤材及びコンクリート構造物の基礎から溶出する核種の移行解析を行い、算出した水中放射性セシウム濃度が現在の1F敷地内の排水基準を満足していることを示した。
島田 太郎; 三輪 一爾; 武田 聖司
Progress in Nuclear Science and Technology (Internet), 6, p.203 - 207, 2019/01
福島第一原子力発電所(以下1F)敷地内に一時保管されている放射能で汚染されたがれき類を資源化して敷地内のある特定の用途に限定して再利用することが検討されている。1F敷地内のような放射線管理が実施されている現存被ばく状況において、汚染した資機材等の再利用に対し、線量のめやすとなる数値は現在まで提示されていない。そこで、本研究では、現状の1F敷地内のバックグラウンド(BG)線量率に着目し、資源化物(線源)が使用された場所において上昇する1m高さでの空間線量率が、BGの線量率変動範囲を超えないことを必要条件とした。また、算出されためやす濃度による再利用が作業者及び公衆へ影響を与えないことを、作業者の追加被ばく線量、敷地境界への線量寄与、地下水核種濃度を評価することによって確認する評価フローを構築した。さらに構築した評価フローに従い、資源化した骨材を道路路盤材及びコンクリート構造物の基礎に適用する場合を想定し、評価対象核種のめやす濃度を試算した。
澤口 拓磨; 三輪 一爾*; 島田 太郎; 武田 聖司
no journal, ,
これまでの放射性廃棄物処分における線量評価では、処分場から漏出した溶存核種は天然バリアを通して生活環境(海、湖、河川など)に直接流入すると仮定していた。しかし、福島第一原子力発電所事故以降の知見から、地下水を経由した核種は、湧水地点付近の土壌と収脱着する可能性があること、また、生活環境では放射性セシウムは主に浮遊粒子に収着した状態で移行する可能性が考えられた。そこで、本研究では、中間深度処分の線量評価に資するため、核種が沿岸域に流入する際に海底土壌への核種収着を考慮することの有無が生活環境での移行に与える影響を解析的に把握した。また、浮遊粒子に対する核種の収脱着や当該粒子の沈降等の現象の有無の影響についても検討した。その結果、海底土壌や海底直上の海水中の核種濃度は、収着・脱離、沈降を考慮した場合の方が、考慮しなかった場合よりも高くなった。これらの結果は、海底土壌への放射性核種の収着や浮遊粒子に収着した放射性核種の移行が、境界層や海底土壌の放射性核種濃度の上昇や底生魚介類の摂取等による被ばく量の増加を引き起こす可能性があることから、生活環境における放射性核種の移行を推定する上で、これらの現象を考慮することが重要であることを示している。
三輪 一爾; 小畑 元*; 鈴木 崇史; 乙坂 重嘉
no journal, ,
ヨウ素の放射性同位体I-129の地球規模での主な放出源はSellafield(英)とLa Hague(仏)にある核燃料再処理施設であり、放出されたI-129は北海を経て東部北極海(大西洋側)や北極海中央部へ大量に流入している。一方、北極海の北西部に位置するチャクチ海へのI-129流入も考えられるがその実態はわかっていない。そこでチャクチ海及びその南側にあたるベーリング海におけるI-129の鉛直分布と水塊構造から北極海(東部、中央部)からのI-129流入の可能性を検討した。観測の結果、チャクチ海の北緯66度までの表層にはベーリング海由来と考えられる高温の海水が存在した。また、チャクチ海北部の北緯69度以北の底層には低温の海水が存在した。この底層低温海水が北極海由来の高I-129海水である可能性が考えられたが、いくつかの測点におけるI-129濃度の鉛直分布の範囲は0.79 - 2.8910
atoms/Lであり表層高温海水と底層低温海水におけるI-129の濃度に大きな違いはなく、北極海からI-129を高濃度に含む海水の流入の可能性は低いと考えられた。
三輪 一爾; 島田 太郎; 高井 静霞; 鍋倉 修英; 武田 聖司
no journal, ,
福島第一原子力発電所(1F)敷地内に保管されている汚染がれきを資源化物として敷地内のある特定の用途に限定して再利用することが検討されている。本研究では、1F敷地内での道路材(舗装材、路盤材)への再利用を想定し、再利用可能とする資源化物中の放射性セシウム濃度のめやす値を試算した。1F敷地内では廃止措置に向けた作業に従事する作業者はすべて放射線業務従事者として登録され、被ばく線量管理が行われている。こうした状況下において、限定的に再利用される資源化物のめやす濃度を設定した例は国際的にもなく、新たな考え方を導入する必要がある。そこで、本研究では、現状の1F敷地内のバックグラウンド(BG)線量率に着目し、汚染がれきから取り出された放射性物質を有する資源化物を使用することによって上昇する空間線量率が、BG線量率を超えないことを必要条件とした。1F敷地内サーベイマップからBG線量率を1Sv/hと設定し、再利用によって上昇する空間線量率がこれを超えないように、各再利用用途のめやす濃度を試算した。試算の結果、1F敷地内で限定的に再利用可能なめやす濃度はアスファルト道路の舗装材で最小の7,400Bq/kg、コンクリート道路の路盤材で最大の10万Bq/kgとなった。
島田 太郎; 三輪 一爾; 武田 聖司
no journal, ,
福島第一原子力発電所(以下、1F)敷地内に一時保管されている放射能で汚染されたがれき類を資源化して敷地内のある特定の用途に限定して再利用することが検討されている。1F敷地内のような放射線管理が実施されている現存被ばく状況において、汚染した資機材等の再利用に対し、線量のめやすとなる数値は現在まで提示されていない。そこで、本研究では、現状の1F敷地内のバックグラウンド(BG)線量率に着目し、資源化物(線源)が使用された場所において上昇する1m高さでの空間線量率が、BGの線量率変動範囲を超えないことを必要条件とした。また、算出されためやす濃度による再利用が作業者及び公衆へ影響を与えないことを、作業者の追加被ばく線量、敷地境界への線量寄与、地下水核種濃度を評価することによって確認する評価フローを構築した。さらに構築した評価フローに従い、資源化した骨材を道路路盤材及びコンクリート構造物の基礎に適用する場合を想定し、評価対象核種のめやす濃度を試算した。
三輪 一爾; 島田 太郎; 武田 聖司
no journal, ,
本報告では(その1)において算出した限定再利用に対するめやす濃度の妥当性を確認するため、再利用後の線源(再生資材)に対し、(1)1F敷地内の作業者に対する追加被ばく線量、(2)1F敷地境界の空間線量率への寄与、(3)地下水移行による海洋出口での水中濃度、について評価した。(1)の評価では、1F敷地内で線源に最も接近をする作業者の被ばく線量を評価し、その線量が放射線作業従事者の年間被ばく限度20mSv/yと比較し十分に低い値であることを確認した。(2)の評価では、1F敷地内で再利用された全再生資材から受ける敷地境界での空間線量率を解析し、その結果がバックグラウンドを合算しても敷地境界での目標値1mSv/y以下を満足することを確認できた。さらに(3)の評価として、敷地内の流速条件等を考慮した道路路盤材及びコンクリート構造物の基礎から溶出する核種の移行解析を行い、算出した水中核種濃度が現在の1F敷地内の排水基準を満足していることを示した。以上の評価から、算出しためやす濃度での限定再利用が妥当であることを確認した。
三輪 一爾; 武田 聖司; 飯本 武志*
no journal, ,
福島事故後の除染作業によって発生した除去土壌を再生資材として再利用する方針が環境省により示されている。有効な再利用用途の1つである海面埋立地では、施工時に溶存した放射性Csの他に土粒子に付着した放射性Csの海洋への流出が予想される。海産物体内への核種濃縮には、溶存した核種だけでなく粒子に付着した核種も影響することが既往研究で示されており、除去土壌の海面埋立地への再利用に対する安全評価では両形態での核種移行を考慮する必要がある。そこで本研究では、施工時および供用時に流出した放射性Csについて、核種形態を考慮した海洋中の移行を評価可能とするモデル作成を行った。作成したモデルを用いて海面埋立地に再利用した際の海洋中放射性Cs濃度の経時変化を推定し、海産物摂取による内部被ばく線量の影響について、その他の主要な被ばく経路との比較から評価した。
島田 太郎; 笹川 剛; 三輪 一爾; 高井 静霞; 武田 聖司
no journal, ,
廃止措置中における原子力規制検査において、リスクに応じて検査の対象とする解体対象機器や作業工程を選定できるように、廃止措置中の原子力発電所を対象とした事故時公衆被ばくリスク評価手法の開発が必要である。廃止措置中は、運転中と異なり、事故時に放出される可能性のある放射能汚染が解体作業の進展に伴って空間的・時間的に変動するという特徴がある。本研究でリスクとは、事故の発生確率と事故時公衆被ばく線量の積で表される被ばくリスクと定義し、評価手法の構築に着手した。本報告では、はじめに、廃止措置段階での解体作業の特徴を踏まえた事故時の被ばく線量評価と発生確率を評価するリスク評価の全体像を構築した。また、廃止措置及びそれに類する定期検査作業時のトラブル事象の事例を調査した結果、解体作業特有の溶断による切断作業時の火災に関連する事例が多く見られた。これらの調査結果をもとに、故障モード影響解析(FMEA)等の品質工学的手法を用いて人的過誤による起因事象を選定し、事故シーケンスごとの線量と発生確率を評価するため、それらの起因事象に対し緩和策の失敗により事象が進展するとしてイベントツリーを作成した。
小畑 元*; 三輪 一爾*; 近藤 能子*; 蒲生 俊敬*; 乙坂 重嘉; 鈴木 崇史
no journal, ,
北極域は、人為的な環境変化による影響を受けやすいことが知られている。本研究では、北極域の縁辺海であるチュクチ海及びベーリング海において、海水中のヨウ素濃度分布を化学種(ヨウ素酸イオン, ヨウ化物イオン, 有機態ヨウ素)別に調査し、これらの海域へのヨウ素の供給経路について解析した。加えて、人為起源ヨウ素の分布を明らかにするために、海水中のI濃度分布を調査した。多くの観測点で、海水中のヨウ素濃度は海底付近で増加傾向を示した。この傾向はヨウ化物イオンや有機態ヨウ素で顕著で、これらの化学種が大陸棚の海底から溶出していることがわかった。海水中の
I濃度は、0.8
2.9
10
atom/Lの範囲であった。この濃度は北太平洋における濃度の数倍であり、北大西洋からの海水の流入を示す顕著な濃度増加は見られなかった。調査海域が高緯度であることを考慮すると、本研究で観測された
Iは欧州を起源とする
Iが大気経由で沈着したものと推測された。
島田 太郎; 三輪 一爾; 笹川 剛; 高井 静霞; 武田 聖司
no journal, ,
原子力発電所の廃止措置段階における原子力規制検査のリスク情報に基づいた実施のために、解体対象機器ごとに事故シーケンス別被ばく線量と発生確率から廃止措置工程に応じた被ばくリスクの経時変化を評価するコードDecAssess-Rの開発を進めている。廃止措置段階での起因事象からイベントツリーを構築するとともに、過去のトラブル事例から起因事象の発生頻度及び事故進展確率の整備を進めた。開発をしているリスク評価の手法により、米国の110万kW級のBWR解体作業を例として、火災を起因事象とした被ばくリスクを評価した。その結果、放射能保有量の大きい炉内構造物の水中解体作業時に発生する火災よりも、放射能保有量の小さい原子炉建屋内の周辺機器の気中解体時に発生する火災の方が被ばくリスクが大きくなるなど、単なる残存放射能インベントリの大小だけではない、廃止措置工程に応じたリスク情報を提供できることが確認できた。