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上羽 智之; 伊藤 昌弘*; 石谷 行生*
JAEA-Technology 2025-002, 25 Pages, 2025/06
ワイヤスペーサ型の高速炉燃料集合体では、バンドル-ダクト相互作用(Bundle-DuctInteraction; BDI)が厳しくなると、ワイヤを介して被覆管に加わる接触荷重によって被覆管断面の扁平化が生じるようになる。特に、バンドル最外周のピンは、ワイヤを介してダクトから被覆管に加わる荷重が大きくなって、この扁平化が顕著になることがある。この場合、扁平化はワイヤが被覆管にめり込んで被覆管が局所的に窪む状態となる。このような被覆管の局所変形をモデル化し、BDI解析コード"BAMBOO"のピンバンドル変形解析において被覆管の局所変形を考慮できるようにした。炉外バンドル圧縮試験では、バンドル最外周ピンとダクトの間にワイヤが存在するにもかかわらずピンとダクトの隙間がワイヤ径を下回ることが確認されているが、被覆管の局所変形モデルを組込んだBAMBOOコードによるバンドル圧縮試験の解析においても、バンドル最外周ピンの被覆管の局所変形によってバンドル圧縮試験結果と同様の傾向を再現できた。
廃炉環境国際共同研究センター; 東北大学*
JAEA-Review 2024-064, 118 Pages, 2025/06
日本原子力研究開発機構(JAEA)廃炉環境国際共同研究センター(CLADS)では、令和5年度英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業(以下、「本事業」という。)を実施している。本事業は、東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所(1F)の廃炉等をはじめとした原子力分野の課題解決に貢献するため、国内外の英知を結集し、様々な分野の知見や経験を、従前の機関や分野の壁を越えて緊密に融合・連携させた基礎的・基盤的研究及び人材育成を推進することを目的としている。平成30年度の新規採択課題から実施主体を文部科学省からJAEAに移行することで、JAEAとアカデミアとの連携を強化し、廃炉に資する中長期的な研究開発・人材育成をより安定的かつ継続的に実施する体制を構築した。本研究は、令和元年度に採択された研究課題のうち、「燃料デブリ分析のための超微量分析技術の開発」の令和元年度から令和5年度分の研究成果について取りまとめたものである。本研究は、燃料デブリの取り扱い、臨界管理、保管管理等に必要な性状把握において、キーとなるアクチノイド核種の化学分析を中心に、最適な試料前処理・分離・分析プロセスを開発し、将来計画されている燃料デブリ分析の効率化・合理化を図るとともに、一連の研究業務における人材育成を通し、1F廃炉推進に資することを目的とする。特に、近年分析化学分野、放射化学分野で成果を上げつつある誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS/MS)を原子力分野に応用することにより、測定核種を単離するための前処理をせずに高精度で分析できる手法を開発し、分離前処理を省力化し、迅速な分析工程を確立するとともに大学、企業を含めた体制が構築された。
吉田 一雄; 桧山 美奈*; 玉置 等史
JAEA-Research 2025-003, 24 Pages, 2025/06
再処理施設の過酷事故の一つである高レベル放射性廃液貯槽の冷却機能喪失による蒸発乾固事故では、沸騰により廃液貯槽から発生する硝酸-水混合蒸気とともにルテニウム(RuO)の揮発性の化学種が放出される。このためリスク評価の観点からは、Ruの定量的な放出量の評価が重要な課題である。揮発性Ruは施設内を移行する過程で床面に停留するプール水中の亜硝酸によって化学吸収が促進されることが想定され、施設内の硝酸-水混合蒸気の凝縮水量がRuの施設内での移行に重要な役割を担う。当該事故の施設内の熱流動解析では、水の熱流動を解析対象とするMELCORコードを用いている。解析では、凝縮の支配因子である蒸発潜熱が、事故時での施設内の温度帯域で同程度であることから硝酸をモル数が等しい水として扱っている。本報では、この解析モデルの妥当性を確認するために、MELCORの制御関数機能を用いて硝酸-水混合蒸気を水蒸気で近似することによって生じる誤差を補正する解析モデルを作成し解析を実施し補正効果を比較することで従来の解析モデルの妥当性を確認した。その結果、補正解析モデルの適用によって各区画のプール水量の分布は変化するものの施設内のプール水量の総和には影響しないことを確認した。
柳澤 宏司; 求 惟子
JAEA-Research 2025-001, 99 Pages, 2025/06
中性子吸収棒の反応度価値に関する安全検査データのより深い理解と反応度価値の測定技術の向上のために、TRIGA-ACPR(環状炉心パルス炉)に分類されるNSRR(原子炉安全性研究炉)の初回起動炉心の臨界解析用詳細計算モデルを作成した。本モデルの形状、材料、運転データの誤差から伝播する中性子実効増倍率(keff)の不確かさを、最新の核データライブラリJENDL-5及び旧版のJENDLライブラリとMVP第3版コードを用いて詳細に評価した。その結果、本モデルにおけるkの全体的な不確かさは、0.0027から0.0029
k
の範囲と評価した。本モデルは、TRIGA-ACPRのk
のベンチマークとして利用されることが期待される。さらに、全体的な不確かさは、NSRRで測定された吸収棒価値よりも十分小さいことを確認した。よって、本モデルはNSRRにおける吸収棒反応度価値に関する今後の解析にも適用できる。
岩澤 譲; 松本 俊慶; 森山 清史*
JAEA-Data/Code 2025-001, 199 Pages, 2025/06
水蒸気爆発では、揮発性を有する低温の液体に高温の液体が接触した場合に高温の液体から低温の液体への急激な熱伝達により、高温の液体の細粒化と低温の液体の爆発的な相変化が連鎖的に発生する。爆発的な相変化により発生する衝撃波は低温の液体の内部を伝播する。衝撃波の伝播に伴い高温の液体と低温の液体の混合物が膨張することにより、周囲に存在する構造体に機械的な負荷を与える可能性がある。軽水炉のシビアアクシデントでは、原子炉格納容器へ移行した溶融炉心(溶融物)と冷却水との相互作用に起因して発生する水蒸気爆発が原子炉格納容器の健全性に対する脅威となることが想定される。このことから、水蒸気爆発の発生が周囲に存在する構造体へ与える機械的な負荷を評価することが安全評価の観点から重要となる。原子力機構では、実際の原子炉にて発生した水蒸気爆発が周囲に存在する構造体へ与える機械的な負荷を評価することを目的としてJASMINEコードを開発した。機構論的な手法を取り入れることにより、JASMINEコードは水蒸気爆発を数値解析上で取り扱うことができる。本書はJASMINEコードに採用されている基礎方程式、数値解法及び数値解析例を記載した取扱説明書である。本書に記載した数値解析例を参照することにより、JASMINEコードによる数値解析で得られた結果を検証できるように配慮した。入力条件の作成方法、コードの実行手順及び補助ツールの使用方法を記載することにより、JASMINEコードを用いた数値解析を実践できるよう配慮した。本書は「水蒸気爆発解析コードJASMINE v.3ユーザーズガイド(JAEA-Data/Code 2008-014)」の改訂版である。公開されているJASMINE 3.3bの軽微な不具合の修正に加えて、UNIX 系システムで広く使用されているGNU コンパイラー等に適合するための修正を施した最新版を JASMINE 3.3cとした。改訂版は、新規に公開される JASMINE 3.3cによる数値解析の結果に基づき作成されているために、掲載されている数値解析の結果を再現できる。数値解析の実施に際しては、既存研究により提案されている調整係数の決定方法を採用した。
木下 淳一; 坂本 裕; 鈴木 一朗; 中嶋 瞭太; 森田 祐介; 入江 博文
JAEA-Technology 2024-027, 55 Pages, 2025/05
第2廃棄物処理棟は、原子力科学研究所内で発生する比較的放射能レベルの高い放射性廃棄物を処理することを目的として建設された施設であり、旧建築基準法に基づき設計、建設されたものである。平成25年12月に施行された「試験研究の用に供する原子炉等の位置、構造及び設備の基準に関する規則」の要求事項に従い、現行の建築基準法に基づき耐震評価した結果、耐震強度が不足していることが判明したことから、耐震強度を向上させるための耐震補強工事を平成30年11月から令和2年2月にかけて行った。本稿は、第2廃棄物処理棟の耐震補強工事の設計、工事及び試験検査について取りまとめたものである。
佐賀 要
JAEA-Review 2025-003, 23 Pages, 2025/05
医療分野における放射性同位体(以下、RI)を用いた診断と治療は、人々の福祉向上に貢献している。一方で、国内に流通している医療用RIのほぼすべてが海外からの輸入である。そのため、これまでにも地政学的な影響や自然災害の影響を受けて輸入が困難になる状況が発生した。これらの背景を踏まえて、国内では原子力委員会内に医療用等ラジオアイソトープ製造・利用専門部会を設置し、2022年5月に「医療用等ラジオアイソトープ製造・利用推進アクションプラン」を策定した。このアクションプランではRIを輸入に依存している課題に対して、RIの国産化を目指し、安定供給に向けたオールジャパン体制での研究・技術開発を実施する旨が記載されている。日本原子力研究開発機構(以下、JAEA)では、2024年度よりNXR開発センターを立ち上げ、使用済み燃料の再処理工程で発生する高レベル廃液中に含まれる有価元素を分離・リサイクルすることで、産業分野及び学術分野での有効利用、原子力発電により発生する廃棄物量の低減並びにリサイクルによる収益化への検討を行っている。高レベル廃液を使用する利点は、多種多様かつ大量の核種が含まれていることにある。そこで本検討では、高レベル廃液に含まれるRIに着目し、医療用に供給可能であるか評価を実施した。具体的には、現在許可を得ている核種であるY-90を評価対象核種として、Y-90の親核種であるSr-90の目標供給量と高レベル廃液に含有するSr-90の量及び高レベル廃液の年間必要処理量を試算した。試算結果を基にして、供給施設の例として、JAEA内の再処理研究設備での実施可能性を評価した。評価の結果、高レベル廃液中のRI濃度によっては小規模の処理量(数百mL数L)で国内需要に匹敵する量の医療用RIを生産できる可能性があるとわかった。また、必要な処理設備として、JAEAのNUCEF等の再処理研究設備であれば対応可能であると評価した。以上の評価結果から、既存の再処理研究施設を活用することにより、小量(数百mL
数L)の高レベル廃液から国内需要に見合う医療用Y-90用のSr-90を分離できる可能性があると結論付けた。
横山 佳祐; 渡部 雅; 大西 貴士; 矢野 康英; 所 大志郎*; 菅田 博正*; 加藤 正人*
JAEA-Research 2025-002, 18 Pages, 2025/05
高速炉の開発目標の1つとして「高レベル放射性廃棄物量減容・潜在的有害度低減のため、マイナーアクチノイド(MA)を分離・回収し、燃料として利用できるようにすること。」が示されている。これに向けて、MAを添加したMOX燃料を高速炉で燃焼する燃料サイクルが提唱されている。MAを添加したMOX燃料を高速炉で使用するには、燃料設計や照射挙動の解析に向けて熱伝導率等の熱物性を把握することが重要である。しかし、MAを添加した燃料の熱物性は、報告例がわずかであり、MA添加濃度や酸素不定比性の影響を含めて十分に把握されていない。そこで本研究では、MAの1つであるAmがMOX燃料の熱伝導率に与える影響を評価することを目的として、化学量論組成近傍における15%までのAmを含有したMOX燃料の熱伝導率を測定した。また、Am含有MOX燃料の照射挙動評価に資するため、Amを含有したUO燃料の熱伝導率を測定し、Am含有MOX燃料のものと比較評価を実施した。本研究では、Pu含有率を30%とし、Am含有率が5%、10%及び15%と異なる3種類のMOX燃料と、Am含有率が15%のUO
燃料を用いた。熱伝導率は、レーザーフラッシュ法を用いて測定した熱拡散率に試料密度及び比熱を乗じて求めた。熱拡散率の測定においては、測定雰囲気の酸素分圧を調整することで試料の酸素・金属原子数比(O/M比)を制御した。すべての試料の熱伝導率は、温度及びAm含有率の増加と共に低下し、特に、1,173K以下で顕著な低下が見られた。また、得られた熱伝導率に対して古典的フォノン散乱モデルによる解析を行った結果、熱抵抗率の変化については、Am添加によって生じるイオン半径差に起因した格子ひずみの影響が大きく、MOX及びUO
の両者で同程度の影響であることがわかった。
方野 量太; 阿部 拓海; Cibert, H.*
JAEA-Research 2024-019, 22 Pages, 2025/05
マイナーアクチノイドの核変換を目的とする加速器駆動システム(ADS)は未臨界状態で運転される。ADSの未臨界度管理においては、燃焼反応度の予測が重要であるが、予測精度の検証のためには、特に第一サイクル運転時では燃焼反応度を精度良く測定する必要がある。本検討では、燃焼反応度測定手法としてCurrent-To-Flux(CTF)法に着目し、連続エネルギーモンテカルロ計算コードSERPENT2を用いて固定源燃焼計算を実施し、炉内に配置する核分裂計数管を模したタリーを用いることで、CTF法によるADS通常運転時の燃焼反応度測定のシミュレーションを実施した。シミュレーション結果から測定手法起因の燃焼反応度測定不確かさの推定を行い、燃焼期間に依らず燃焼反応度に対して10%程度のバイアスが生じ、その検出器位置依存性が体系外側で小さいことを明らかにした。
冬島 拓実; 佐谷戸 夏紀; 大塚 薫; 遠藤 泰一; 飛田 正浩*; 竹本 紀之
JAEA-Testing 2024-008, 38 Pages, 2025/03
材料試験炉(Japan Materials Testing Reactor: JMTR)では燃料試料及び材料試料を照射するため、キャプセルに試料を装荷して照射試験を行ってきた。照射試験では、多種多様な照射試料を目標とする温度で照射するため、キャプセルの熱計算が重要である。令和3年3月にJMTRは廃止措置計画が認可され、環境技術開発部では現在、JMTRの代替としての海外の試験研究炉を用いた照射試験を実施している。海外の試験研究炉を用いた照射試験に向けてキャプセルの設計・検討に必要な熱計算を行う際、米国のオークリッジ国立研究所で開発された1次元熱計算コードGENGTCを用いている。GENGTCはこれまでパソコン性能の向上に伴って改良・拡張が繰り返されてきたが、従来のGENGTCを用いたプログラムには機能の一部に不良事象箇所が確認されていた。そこで、その原因を究明してプログラムを修正するとともに、FORTRAN77言語のプログラムからExcelのマクロ計算機能を使用したVisual Basic言語のプログラムに変更した。また、当該コードをさらに利用しやすくするためのプログラムの整備を行った。本稿はそれらの改良箇所について報告を行うものである。
武田 遼真; 柴田 裕司; 武内 伴照; 中野 寛子; 関 美沙紀; 井手 広史
JAEA-Testing 2024-007, 33 Pages, 2025/03
日本原子力研究開発機構及び日本原子力研究所では過去30年以上、自己出力型の中性子検出器(Self-Powered Neutron Detector: SPND)やガンマ線検出器(Self-Powered Gamma Detector: SPGD)の開発・照射試験が行われており、複数の研究成果が報告されている。本稿では、これらの試験結果に対して、JAEA報告書『自己出力型放射線検出器の出力電流値計算コードの作成(JAEA-Data/Code 2021-018)』において作成した計算コードによる理論的な出力結果との比較・検証を行った。比較対象はコバルト60ガンマ線照射施設SPGDの照射試験結果とした。その結果、ガンマ線によるコンプトン散乱電子の飛程に対して比較的にエミッタ径が細い場合には計算結果は試験結果を良く再現することが分かった。一方、比較的にエミッタ径が太い場合には計算結果と比較して試験結果における出力電流値は半分程度にとどまった。エミッタ径の違いによる差異が生じた要因としてエミッタによる自己遮蔽効果が考えられ、エミッタ径が太い場合や線場が等方的でない条件に由来する自己遮蔽による影響を、計算コードにおける電子の平均飛程や平均最小エネルギーの変化として採り入れる等の新たな定式化が必要であると思われる。
高久 雄飛; 掛札 豊和*; 矢城 重夫; 木村 英雄; 久野 哲也
JAEA-Testing 2024-006, 31 Pages, 2025/03
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(原子力機構)では、各部署に多種多様なサーバが存在しており、現場のサーバ管理者がセキュリティ対策をはじめとするサーバ管理業務を担っているため、業務負担や現場での運用コスト負担は無視できないものとなっている。また近年、国内外で多発しているセキュリティインシデントへの対策は、多くの機微情報を扱う原子力機構の業務を遂行する上で必要不可欠であるが、各サーバ管理者が能動的にこれらの措置を講ずることは困難なのが現状である。これらの課題を解決するため、コスト削減に観点を置いて機微情報を含まない一般情報システムの外部クラウド環境への移行を実施した。移行の結果、コストを大幅に削減しつつ円滑に外部クラウド環境へ移行するための条件を明らかにし、かつセキュリティインシデントへの対策を実現する基盤を整えた。
鍵 伎; 荒木 大輔; 箭内 智博; 桑原 涼太; 菅谷 直人; 西村 嵐; 海老沢 博幸; 綿引 俊介; 谷本 政隆
JAEA-Testing 2024-005, 24 Pages, 2025/03
令和元年(2019年)9月9日、台風15号の強風により材料試験炉(JMTR)にある、二次冷却系統冷却塔の倒壊事象が発生した。二次冷却系統冷却塔は東側から西側に向けて倒壊し、二次冷却系統冷却塔に接続している4本の二次冷却系統配管もともに倒れ、立ち上がり部で4本とも破損した。倒壊した二次冷却系統冷却塔を覆っていた外壁スレート材(石綿スレート材)にはアスベスト(石綿)が含まれているため、撤去作業に当たっては、作業者の安全を確保するとともに、周辺環境へのアスベスト(石綿)による影響を小さくする必要があった。本報告書は、二次冷却系統冷却塔の石綿スレート材の撤去作業及び保管管理並びに搬出において、関係する法令・規則を遵守しながら作業者の安全を確保するとともに周辺環境へのアスベスト(石綿)による影響を最小化するべく作業計画を立案し、その実施内容についてまとめたものである。
明午 伸一郎; 岩元 大樹; 杉原 健太*; 平野 幸則*; 堤 和昌*; 斎藤 滋; 前川 藤夫
JAEA-Technology 2024-026, 123 Pages, 2025/03
J-PARC核変換実験施設ADSターゲット試験施設(TEF-T)の設計をベースとし、J-PARC陽子ビーム照射施設の概念検討を行った。これは、文部科学省の分離変換技術評価タスクフォースの提言「ADSの工学的課題解決に加え、多様なニーズへの対応の可能性を含め、既存のJ-PARCの陽子加速器を利用可能な利点を最大限活用する施設仕様を検討することが望ましい。」を受けたものである。TEF-T設計で不要となった設備を削減する一方、多様なニーズに対応可能な設備の具体化を行った。多様なニーズとして、諸外国の大強度加速器施設の利用法の調査を行った。その結果、1)材料照射試験、2)核破砕中性子を用いた半導体機器のソフトエラー試験、3)医療用RI製造および4)陽子ビーム利用を主な利用目的と特定し、これらの利用に必要な施設の検討を行った。施設概念の検討にあたっては、2022年に施設のユーザーコミュニティを立ち上げ、ユーザーの意見を広く取り入れて施設設計に反映した。本報告書は、陽子ビーム照射施設の概念検討結果、多様なニーズとその対応、施設建設に向けたロードマップおよび今後の課題についてまとめたものである。
江森 達也; 北辻 章浩; 伴 康俊
JAEA-Technology 2024-025, 20 Pages, 2025/03
太陽光発電が期待できない木星以遠の深宇宙探査機用の電源として主にPu-238の崩壊熱を利用した放射性同位体熱電気転換器(RTG: Radioisotope Thermoelectric Generator)が使用されている。しかし、日本国内ではPu-238を生産するための設備が無い上、宇宙利用を目的とした核燃料物質の使用は法規制上の観点から困難である。そこでPu-238の代替として適当な半減期を持つAm-241(半減期: 432年)に注目し、研究目的で貯蔵されている高経年Pu試料中からのAm-241の分離及び精製法について検討を行い、分離回収試験を実施した。分離の方法については固液分離のみと液液分離と固液分離を組み合わせた2パターンの検討を行い、試験を実施した。液液分離と固液分離を組み合わせた場合では、固液分離のみと比べてカラムの本数を1/5以下に抑えられ、試験に要した時間も半分以下に短縮できた。また、得られた試験結果を用いて計6回のPuとAmの分離試験を実施し、約0.43gのAmをシュウ酸塩として分離回収した。
朝日 良光; 福田 茂樹; 白水 大貴; 宮田 晃志; 刀根 雅也; 勝岡 菜々子; 前田 裕太; 青山 雄亮; 新妻 孝一; 小林 秀和; et al.
JAEA-Technology 2024-024, 271 Pages, 2025/03
東海再処理施設で発生した高レベル放射性廃液のガラス固化に用いるTVF3号溶融炉(以下、3号炉)を製作し、この溶融炉でガラス固化体18本分のガラスを溶融・流下するコールド運転を行った。ガラス原料には、ホット運転で処理するものと同等の廃液成分を非放射性元素で置き換えた模擬廃液とガラスファイバーカートリッジを使うことで、溶融ガラス液面に仮焼層を形成させた。TVF2号溶融炉(以下、2号炉)と3号炉の構造の違いに起因する溶融炉固有の温度特性を考慮し、運転操作に用いるパラメータには、2号炉で使ってきたものを修正して適用した。本試験の結果、溶融炉各部の温度推移を確認しながら適切に運転できるパラメータ値を見出すことができ、2号炉のコールド運転に比べ、溶融ガラス温度は高く、二つある主電極の冷却は片側あたり約1kW小さいとき、安定的に運転できることが分かった。主電極間のジュール加熱電力を39kW、主電極冷却空気流量を26Nm/hで運転し炉底加熱方法を改良することで、流下前の炉底加熱時間をこれまでより2時間短い約5時間で完了できる見通しを得た。運転期間中は、炉内のガラス温度分布やケーシング表面の温度推移を計測し、今後のシミュレーションモデル開発に有効なデータが得られた。炉内の溶融ガラスの白金族元素濃度が飽和した後に、原料供給と流下を2日間停止する保持運転を行い、炉底部への白金族元素の沈降を遅らせる一定の効果があることを確認した。保持運転中に仮焼層の溶融過程を観察し、薄膜状の流動しない層が確認されたことから、流動計算で液面にNo-slip境界条件を設定する根拠を得た。流下ガラスの成分を分析して白金族元素の流下特性を調査した結果、運転中に溶融炉に蓄積する白金族元素の量は2号炉と比較して少なかった。溶融ガラスを全量流下した後の炉内には、残留ガラスやレンガ片などの異物は確認されなかった。白金族元素の蓄積による運転停止を判断する基準は、流下終了から炉底ガラス温度850
Cへ低下するまでの時間を10.3h以上、主電極間補正抵抗値を0.12
以下と試算したが、今後のホット運転の結果に応じ再検討が必要である。
富岡 大; 河内山 真美; 小曽根 健嗣; 仲田 久和; 坂井 章浩
JAEA-Technology 2024-023, 38 Pages, 2025/03
日本原子力研究開発機構は、我が国の研究施設等から発生する低レベル放射性廃棄物の浅地中埋設事業の実施主体である。これらの放射性廃棄物の放射能濃度に関する情報は、埋設事業の許可申請及びその適合性審査に向けた廃棄物埋設施設の設計や安全評価に不可欠である。このため、埋設事業センターでは、埋設対象廃棄物のうち試験研究用原子炉から発生する解体廃棄物について、放射化計算に基づく解体廃棄物の放射能評価手順の改良を進めている。今回、多群中性子スペクトルを用いてより精度の高い放射化計算が可能なORIGENコード(SCALE6.2.4に付属)の適用性を検討するため、これまで使用実績が多いORIGEN-Sコード(SCALE6.0に付属)との比較検証を行った。この検証では、炉心周辺の原子炉構造材の放射能分析データを取りまとめている立教大学研究炉の解体廃棄物を対象として両コードにより放射化計算を行った。その結果、ORIGENコードとORIGEN-Sコードの計算時間の差異はほとんどないこと、放射能濃度の評価値として前者は後者の0.81.0倍の範囲となり、放射化学分析による放射能濃度と概ね0.5
3.0倍の範囲でよく一致した結果から、ORIGENコードの適用性を確認した。さらに、原子炉構造材に含まれる微量元素の放射化を想定してORIGENコード及びORIGEN-Sコードによる放射化計算を行い、比較を行った。また、浅地中処分における被ばく線量評価上重要な170核種のうち大きな差が見られたものに対してその原因を核種毎に調べた。
普天間 章; 眞田 幸尚; 中間 茂雄; 佐々木 美雪; 越智 康太郎; 澤幡 義郎*; 川崎 義晴*; 岩井 毅行*; 平賀 祥吾*; 萩野谷 仁*; et al.
JAEA-Technology 2024-022, 170 Pages, 2025/03
2011年(平成23年)3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震による津波が原因で、東京電力福島第一原子力発電所事故が発生し、大量の放射性物質が周辺環境に飛散した。事故直後から、放射線の分布を迅速かつ広範囲に測定する手段として、有人ヘリコプター等を用いた航空機モニタリングが活用されている。日本原子力研究開発機構は、原子力規制庁からの受託事業として、本モニタリング技術を原子力施設等の事故時における緊急時モニタリングに活用し、モニタリング結果を迅速に提供するため、全国の発電所周辺におけるバックグラウンド放射線量や地形的特徴、管制空域等の情報を事前に整備している。令和5年度の受託事業では以下について実施した。九州電力(株)川内原子力発電所の周辺について航空機モニタリングを実施し、バックグラウンド放射線量及び管制区域等の情報を整備した。緊急時における航空機モニタリングの実効性向上に資するため、原子力総合防災訓練において航空機モニタリングを実施するとともに、国内初となる原子力防災訓練での無人機の訓練フライトを実施した。無人航空機による放射線モニタリングの技術開発を進め、緊急時モニタリングに必要とされる要件を満たす無人航空機を選定し、その飛行性能を調査した。本報告書は、これら令和5年度の受託研究において得られた結果及び抽出された技術的課題についてまとめたものであり、今後の緊急時対応技術向上に資する知見を提供する。
普天間 章; 眞田 幸尚; 中間 茂雄; 佐々木 美雪; 越智 康太郎; 長久保 梓; 澤幡 義郎*; 川崎 義晴*; 岩井 毅行*; 平賀 祥吾*; et al.
JAEA-Technology 2024-021, 232 Pages, 2025/03
2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震による津波に起因する東京電力福島第一原子力発電所事故では、大量の放射性物質が周辺環境に飛散した。事故直後から、放射線の分布を迅速かつ広範囲に測定する手段として、航空機を用いた空からの測定方法が採用されている。日本原子力研究開発機構は、原子力規制庁からの受託事業として、有人ヘリコプター及び無人ヘリコプターを使用して、東京電力福島第一原子力発電所周辺の航空機モニタリングを継続的に実施してきた。本報告書では、令和5年度に実施したモニタリング結果について取りまとめ、過去のモニタリング結果との比較から空間線量率等の変化量を評価し、その変化要因について考察した。また、航空機モニタリングによる計数率から空間線量率への換算精度向上のために、地形の起伏を考慮に入れた解析を行った。地形の起伏を考慮する前後の解析結果を比較し、本手法による換算精度向上の効果を評価した。さらに、有人ヘリコプターについては、空気中のラドン子孫核種の弁別手法を測定結果に適用し、ラドン子孫核種が航空機モニタリングに与える影響を評価した。加えて、より効率的に広範囲な航空機モニタリングを展開するため、無人航空機によるモニタリングの技術開発を進めた。
畠山 祐一; 平井 功希; 池上 雄太*; 佐野 成人; 冨田 健; 宇佐美 浩二; 田上 進
JAEA-Technology 2024-020, 33 Pages, 2025/03
廃棄物安全試験施設(WAste Safety TEsting Facility: WASTEF)は、使用済燃料の再処理によって発生する高レベル放射性廃棄物の長期貯蔵とその後の地層処分に関する安全性試験研究を実施することを目的として、昭和57年12月に運転を開始した施設である。本施設は、コンクリートセル5基、鉛セル1基、グローブボックス6基、フード7基から構成され、ウラン、プルトニウムを含む核燃料物質、ネプツニウム、アメリシウムなどの放射性同位元素を使用できる大型施設である。施設には、消防法及び使用施設等の技術基準に関する規則に基づき建家全体を対象とした自動火災報知設備が設置されている。これは、安全管理上重要な位置付けにあり、健全性、信頼性の十分に高い設備であるが、設置後30年以上の長期使用により自動火災報知設備の構成機器のうち、火災受信盤の老朽化が著しく、更に使用部品の多くが生産中止となり調達が不可能な状態となったため、設備の性能・維持が困難な状況に陥ってきた。そのため、WASTEFの安全・安定な運転を確保する目的で、火災受信盤の更新を実施した。本報告書では、令和4年度に実施した火災受信盤の更新についてまとめたものである。